ダンクマニア / Dunk Mania


  • ナムコ/namco
  • 業務用ビデオゲーム
  • 1995.10-1996.10
  • 楽曲制作

  • ゲームにおける楽曲のジャンルを徹底して統一させる事を実現した。
    • それまで自分が知る限り、ゲーム楽曲製作において、製作前に方向性を確定させておく事はほとんど無かった。
    • それに加え、ゲームのボリュームが増えるにつれ複数のコンポーザーが担当する事になり、楽曲の方向性のブレが顕著になっていった。これをバラエティ豊かだと表現する人もいるが、自分は我慢出来なかった。
    • よって、自分で製作前にジャンルを確定し、それに沿って作業していく事を試したのがこの製品である。その後、メインで担当した製品に関しては全てこの手順で作業をしていった。
  • ジャズグルーヴ
    • サンプリングされたジャズ系のフレーズを再構築した楽曲。
    • プロジェクト担当前、何かのバスケットボールの試合のCMがよく流れていた。この時のBGMがcantaloop/US3だった。ダンクシュートを決める映像にこのダルめの曲が非常に合っていて、この雰囲気で行こうと決めた。
    • 資料として、この手の楽曲を聴きまくろうと調べたのだが、US3、UFO、他に2〜3アーチスト(正確には2〜3曲)程度しか見つからなかった。ジャンルとして確立されていなかったのである。
      • よってこの「ジャズグルーヴ」というジャンル名も一般的な名称ではない。が、レアグルーヴ、アシッドジャズ、フューチャージャズ、ダウンテンポ、そのどれもがハマらない。
  • とはいえ、当時入手したサンプリングCDに使ってみたくなるネタが豊富に収録されていた事もあり、最初に作った曲が自分のイメージ通りになり、その勢いで後の楽曲製作は大変スムーズに進んでいった。
  • 使用できる同時発音数は確か18程度だったが、この貴重な発音数を一本まるまる使い、レコードノイズを入れた。針がレコード盤をトレースする音とパチパチというノイズをループさせたものである。そして、全楽曲に渡り、レコード盤に針の落ちる音〜レコードノイズをスタートさせた後に楽曲をスタートさせるようにした。結果、楽曲に非常に味のある質感を加えることが出来た。
    • コンティニュー勧誘時、カウントダウンが始まった際に、レコード針が飛んで一部がくり返されてしまっているような曲にした。その後この楽曲はデバッグチームからバグとして報告された。薄々期待はしていたが、まさか現実になるとは!
  • サンプルネタは実際の演奏なので当然生々しいのだが、この上に普通に打ち込んだフレーズを載せると凄まじく浮く。よって、打ち込みには大変気を使った。打ち込みだけでなく、ボリュームコントロール、ピッチベンド、パニング等もそれまでより極めて細かく書き込んでいった。
  • 具体的な方向性ではなく、楽曲の空気感、雰囲気のイメージは当時よく行っていた西麻布のBLUE(というクラブ。現在は閉店)、だった。
  • 4拍子のブレイクビーツを3拍子として使用した楽曲が一番気に入っていた。
  • 自信満々で実機で鳴らし始めた頃、本プロジェクトのスタッフの一人に「もっとこうノリの良い曲がいいんじゃないかなあ、テクノとかさ」などと自慢げに言われ、楽曲の方向性が全く理解されていない事に愕然とした。
  • とはいえ、この楽曲群は今でも大変気に入っている。通常同プロジェクト内では、必ず1曲はあまり冴えない、自信のない曲があるものだが、このプロジェクトに関してはそれが全く無い。また、曲数としてはかなり少ないほうだったが、楽曲の統一感と質感、ゲーム用音楽としてのジャンルの特異性などは特筆すべきだと思っている。将来、余裕が出来たらnamco社から許諾を取り自費でCD化したいと思っている。

佐野電磁業務履歴