プロフィール
法正 字：考直
- ほう せい 字：こうちょく
- （176年〜220年）
- 扶風郡
蜀軍軍師。
はじめは劉璋に仕えたが、後に見限って劉備を担ぎ上げる。
益州攻略の後は、劉備の腹心として数々の献策を上げる。
劉備と諸葛亮との関係を「水魚の交わり」とあらわすが、劉備と最も相性が良かった謀臣はこの法正である。
性格に問題のある人物で、「目には目を、歯には歯を」的。
劉備入蜀後、劉璋時代に受けた屈辱を相手にことごとく仕返ししていたという。
劉備につき従ってからはその智謀を遺憾なく発揮していく。夏候淵を殺し、漢中を手に入れたのは全て法正あればこそであった。
内政で諸葛亮、軍事で法正の二人がそろっていた時が蜀漢政権の最盛期と言えるだろう。
法正が死んでから後、蜀漢が戦略的勝利を手にする事はついに無かった。
正史
- 益州入り。
- 劉備を蜀に呼び寄せることを決意。
- 215年 益州攻略戦
- 軍師として尽力。
- この後は諸葛亮よりも高い地位に就く。
法正が前線で献策を行い、諸葛亮は後方で内政を行っている。
- 219年 漢中争覇戦
- 定軍山で効果的な献策を行い、黄忠に夏侯淵を討ち取らせる。
- 220年 死去。謚は「翼候」。
- 222年の夷陵の戦いで大敗した劉備は「法正が生きていれば…」と嘆いたといわれる。
また、諸葛亮も「彼がいればこの戦いを止められただろうし、戦いになってもこれほど負けることもなかった」と言ったとされる。
演義
Pick Up
「報復マニア」
劉備が益州の長となったことで、法正の権力も増大する。
法正は、昔の同僚や知人から受けた怨みを些細なことまで全て記憶していて、片っ端から報復していた。
また、少しでも自分を悪く言った数人を勝手に殺したとの記述も残されている。
（逆もしかりで、少しでも恩を受けた人間に対しては莫大な恩賞を与えたという）
そのことで諌言を呈そうとした臣下に、
「彼のおかげで劉備が蜀をとることが出来たんだから、大目に見よう」
と、諸葛亮が止めさせたと云われている。
厳格な法治主義を志向した諸葛亮にしては公平さを損なう判断ではあるが、極端な人材不足に悩む蜀漢陣営に置いて法正は最高にして唯一の軍師であった為、致し方なかったと思われる。
- 注釈をつけた裴松之は「公私混同で法に反する」とこの行為を批判している。
「劉備の留め役」
曹軍と戦っていて、頭に血が上っていた劉備が、引くべき時を見切れずに戦場に留まり続けたことがある。
主の反感を買うことを恐れた群臣たちは、思い切って諌言できなかったらしい。
矢が降り注ぐ中、法正が劉備に近づく。
突然の行動に気づいた劉備が、「何を留まっている、矢を避けないか」といえば、
「主が矢の中にいるんです。つまらぬ男ならば当たりましょう」と切り返す。
これを聞いて、法正を失うことを恐れたのか、自分の過ちを悟ったのかは定かではないが、
劉備は全軍に即時撤退を命ずる。
諸葛亮が、夷陵の戦いに出陣しようとする劉備に関して、
「法正ならば止められた」と嘆いたのは、このエピソードが由来だ。
ちなみに、劉備存命中に諡号を受けたのは法正ただ一人である。
恐らくはこのような勲功に加え、諸葛亮が後に来るであろう派閥問題を考慮した上で与えられたのであろう。
