Hiblid Child


 ――あの日落ちた3mの爆弾は世界をすっかり変えてしまった――

 西暦二〇九八年八月一五日、『日本』は消滅した。  誰がそれを為したのか、未だにわかっていない。  ただ、何処からともなく飛来した一発の爆弾が日本本土の36%を消し飛ばしたことは、間違いのない事実だ。  そして図体の大きな国々で本音と建前を取り違えた声が幾つか漏れて、一瞬で世界中がひっくり返った。

 地上で使うべきではない幾つかの兵器が空を飛び交い、大地が抉れ、空は暗く濁った。

 三日間――いや、実質的にはたった42時間で世界地図は大きく書き換えられた。  ユーラシアの東西もアメリカの南北も、アフリカもインドもオセアニアも穴だらけになった。

 人類はその版図を縮小し、身を寄せ合うように縮こまっていった。

 ――それから二十年。  西暦二一一八年代の地球は様変わりしていた。

 大戦の傷痕は今だ消えず、都市の復興も遅々としてすすんでいない。その原因は各国間の争いや人口の現象だけではなかった。  戦争の最中、世界の狭間を覆っていた“帷”が破け、人類の歴史から抹消された“魔”――魔術、錬金術、神々の力、そして異世界への道――が表出したのだ。  一時に現れたそれは世界にさらなる混乱をもたらし――それは今もって続いている。

 それでも、人類の時計はまだ止まっていない。  技術の限界や倫理の枷を切り捨てて、人類は生存のために戦いを続けるのだ。