コキュートス


 情報のブラックホール。高密度に集積された情報媒体の行き着く究極。
 アカーシックレコードと呼ぶ人もいる。

 第三次世界大戦以前、ウェブ上の情報を集積・圧縮し、長期保存するサービスが存在した。高密度に堆積したデータは現実世界のインフラが消滅してもウェブの一点に圧縮されて残り、情報だけが浮遊するという異常事態が発生した。
 この浮遊する情報が第三次世界大戦後に再建されたウェブに接続された結果、情報の重力井戸と言うべき空間が生まれた。
 並の腕では接触しただけで脳細胞まで粉砕されてしまうが、超一流のハッカーはその情報重力の波に乗り、中心まで辿り着くことが出来るという。そこではウェブが開発されて以来すべての情報が手に入り、またウェブという領域を乗り越えて人類の共通記憶に踏み込むことすら可能とされる。

 これは、あくまでも噂に過ぎないが、この領域、そしてそこに集う超人たちの組織は「コキュートス」と呼ばれているという。