『サンデー毎日』連載の人気コラム「満月雑記帳」一年分を収録。「映画と本と世の中の話」が満載の痛快コラム集。本文や各月ごとの書き下ろしエッセーに添えられた著者手描きのイラストも必見。楽しさも倍増。
隠居気分に浸ろうと、下町風情漂う月島に住んで久しい著者だが、昨今の東京湾岸の開発により、高層ビル群が間近に。東京の端と思っていた月島も、再開発計画で東京の端ではなくなってきた。と、このところ予想外の展開に戸惑う日々がつづいている。
「人間って川をみつめる時、どこか思索的な気分になるものだ。江戸は隅田川とたくさんの掘割を持つ水の都だった。それは江戸っ子=下町っ子の心に案外大きな影響を与えたんじゃないか。すべては移り変わるもの、という無常観や諦観を」(本文より)。
映画『東京タワー』や『ALWAYS』などの昭和の東京回顧ブームとは別に、自分自身の暮らしの中で、この一年はいつになく「東京」を考えることが多かったと著者はいう。
消え行く長屋のある路地裏散策から、水上バスでの隅田川巡り、浜離宮を散策したりと、江戸文化の地層の上に築かれた東京の姿を見つめ直す機会も増えた。一方、高層ビル群が織り成す夜景や日々の暮らしの場としての東京。雑食文化の象徴のような巨大都市東京。>「満月雑記帳」の発信の場としての東京。そうした東京がもつ多層性の中に、それまで気づかなかったロマンチックな部分を発見! そんな著者の頭に思わず浮かんだ言葉が、ムード歌謡コーラスグループ名でおなじみの「東京ロマンチカ」。東京のロマンチックをラテンな感じで、東京ロマンチカ。
装幀家の菊地信義さんがデザインするカバーには、大正・昭和前期に版画家・漫画家として活躍した前川千帆?(1888~1960)のちょっとユニークなタッチの漫画が登場、なんともいえない味わいを醸しだしています。
路地裏ロマンチカ、ぶらりロマンチカ、隅田川ロマンチカ、落語ロマンチカ、夜景ロマンチカ、本書とともにあなたの「ロマンチカ」を探してみてください。