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天保十年、江戸伝馬町の牢内に火が入った。近火切放により、三日の猶予をうけた囚人たちが娑婆に消え、刻限を過ぎても六名が帰参しなかった。横領の罪で入牢中の伊丹主馬もその一人だ。夏目影二郎は、実父の勘定奉行常磐豊後守秀信から、破牢した主馬一統の始末と公金奪還の命を受ける。影二郎は愛犬あかとともに、信州へ向かった。文庫書下ろし長編時代小説。