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いまはなき市井の面影を永遠の放蕩歌人が綴った回想記。著者曰く「私の市井好きは少年時代からであつて、中学の三年頃から寄席や芝居通いをはじめ、“十五から酒を飲み出で今日の月”という其角の句ではないが、年少早くも酒肆の縄暖簾を潜り、樽に腰掛けてのんで一升、市井に於ける酒の味を解した。懺悔々々六根清浄、ここらあたりで長年胸に鬱屈している酒気を吐いて、すつきりとした心持になつて老後を楽しむのも、亦人生のひと趣向ではないだろうか」。