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セッションログ(第九話〜第拾話)

第九話「人魚狩り」

はい、第九話も引き続き修善寺歩の視点から物語を振り返ってみたいと思いま〜す♪
ん?私が痛いし病んでるから偏った内容になるのでやめろって?
ガスッ(硬い棒ようなもので思い切り叩いた音)
さて、物語も後半に差し掛かり、いよいよ現代社会に闇が忍び寄る足音が聞こえ始め、最終決戦の予感を伺わせてきます。
そして、私にとっても分岐点に差し掛かってきます。
果たして三人揃って無事試練を乗り越える事が最後できるのでしょうか?

あ、スタッフさん。
そ こ の 生 ゴ ミ 、 片 付 け て お い て く だ さ い ね 。

※ ログ内の()は思った事、括弧なしが通常の内容。

[登場人物]
 PC       : 柄楠狩刃(PC1),三田舞(PC2), 修善寺歩(PC3)
 NPC(イノセント) : [堀越学園 ] 空寝遊, 石原弘美,姉崎紅子,村咲茶々,主野景子,十文字圭
          [中野の住人] 柄楠沙耶,三田の父,藤原一片,修善寺の父,修善寺の母,修善寺さだめ
 NPC(ウィザード) : [印具堂  ] 閻魔ふたつ,犬神明
 NPC(妖怪)    : [六葉社  ] カラス天狗「かぁ爺」,河童「くぅ」
          [仲魔   ] 妖精「コロボックル」,聖獣「金狼」
          [敵    ] 魔人「修善寺明美」,魔王「クトゥルー 」

[数日前:深夜]
誰もいないはずの堀越学園。
静粛が不気味に支配するこの空間に、いるはずのない声が空間に響く。
「待て、大人しくしなさい!」
その女学生はスクール水着にカッターという学校という場そのものに相応しくない格好を廊下を駆け抜けていました。
そしてその先には、文明社会に存在するはずのない者が浮いていたのです。
「人魚」
若い娘の上半身に魚の尾を下半身に持つ妖怪が薄笑いを浮かべて追跡者から逃げていた、いえ誘っているようにも見えます。
女学生は必死の表情で逃げる人魚を追い、学園の闇に消えていったのです。

この非現実的な世界を私はある夜に見たのです。
後から聞きましたが、舞ちゃんも柄楠君も同じ夢を見たそうです。
これが今回のお話の予兆だったのです…。

[数日前:昼]
時を別にしてある日曜日、六葉社で私は、ある決意を胸に久しく入る事の無かった父の部屋にいました。
数年ぶりに目を合わせての父との対面、私は飛行機事故の事実と六葉社売却について問うために覚悟を決めていました。
その時、部屋に離婚したはずの母が入ってきたのです。
父とよりを戻し再婚して一緒に暮らす事を、私に伝えるために六葉社に来たとの事ですが…。
(何よ、大人の事情を押し付けて勝手に物事を決めて。そのために明美と私は引き裂かれたというのにどんな顔してここにいるのよ!)
二人に苛立ちをぶつける私でしたが、父の言葉より私の記憶にはない事実を知ることになったのです。

明美の飛行機事故から何度も父は事実を伝えて明美の死を受け入れるよう言い聞かせようとしたそうです。
その度に私は拒絶反応を示して精神科の病院に担ぎ込まれていた、というのです。
そして、私は
「事実を捻じ曲げて明美が生きているという事実をこじつける妄想を現実として思い込むようになり、その自己暗示として女装を始めた。」
と。

私は父の言葉を否定し、明美が生きており、この姿はあなた達二人への戒めだと反論しました。
明美がバックベアードとの戦いに関わっている、という見越し入道が残した微かな手がかりがありました。
ですが、今まで自分が真実だと思っていた事と、この手がかりが明らかに矛盾している事にも気づいていたのです。
何が正しくて真実は何処なのか?その答えがない今の私でしたが、一つだけ確かな事は
「明美は死んではいない」
という事です。
離婚の件も私が精神科の常連だった事も小さな事、明美さえここに連れてくれば全ては解決する、と確信していました。
ですので、こう両親に言いました。
「明美をここに生きて連れてきたら、一つ何でも言う事を聞いてもらいますからね。」
父は、何故か悲痛な表情を浮べ頷いたあと、もし連れてこれなかったらその条件を私に飲むように言ってきました。
(いいわよ、明美は死んではいないのですから適う事はないでしょうけどね。)
快く承諾した私は、理由はわかりませんが哀れむような目で部屋を去る私をただ見ていました。
(明美が帰ってきたら、お願いする事は決まっていますけど、ね。)

自分の部屋に戻る足で私はこれからの事について覚悟を決めていました。
明美と二人で暮らしてきたこの六葉社、誰にも渡すものですか。
例え命運が尽きる事になっても…、いえ明美がいればこんな病にも打ち勝てるはず。
社の祭司に私がなり、明美と二人でこの六葉社を守るのよ。

誰 に も そ の 邪 魔 を さ せ る も の で す か 。

[数日前:夜]
明美を連れて帰るため、私は早速調査を開始しました。
探索魔法(ロケーション)で明美の居場所を追跡したのです。
(本来は、このような目的のために力を行使するべきではないのですけど、もう手段を選んでいられないわね)
柄楠君の両親の居場所を追跡した時のように月匣による魔法消滅を予想していたのですが、意外にあっさりと反応が帰ってきました。
結果は地下数十メートルの東、地下鉄大江戸線中井駅方面と出たのです。
これにより、物理的に明美が存在する、という証明となったのです。
逸る気持ちを抑えきれず即座におこんさんの力を使い中井駅に向かったのですが、時間も時間だったため現地に到着した時は既に営業時間が終了して入る事はできませんでした。
(また勇み足だったかな?でも、これで中井駅の場所は問題なし、後は中の構造と正確な位置を別途割り出せばいいわね。)

帰り道、冷静になって考えていたのですが、少し引っかかるのです。
探索魔法程度で容易に発見できた事に。
しかも、確か六葉社の妖が守る封印とほぼ同じ位置だったのです。
見越し入道の口振りでは、明らかに組織の中では上位、少なくても下位には属していない立場にいるはず。
そのような存在が、こんな簡単にわかるような居場所(六葉社が監視している封印の場所)、しかも簡単に探知されるような無防備な状態でいる事が不自然に感じたのです。
(罠?しかも私だけを陥れるための?それとも封印に何かあるのかしら?)
ある意味、地下鉄に入れなくてよかったかもしれない、と思いました。
そして色々思考を巡らせているうちに、知らなければならない事がいくつも浮んできました。
五年前の飛行機事故の真相、手術の効果などの詳細、封印の正確な情報と歴史、そして今この街に他に刺客がいないか、もしくは何らかの行動を起こしていないか?
明美がこの街に来ている以上、もう既に何かが始まっているはず。
いつ会えるのかわからないですが、出来うる限り早く私は動かないといけないでしょう。
(待っててね、明美。もうすぐ迎えにいくから…。)

[一日目:朝]
いつも通りの朝、学園への通学路で私達は見覚えのある手帳を拾いました。
数日前に見越し入道に小さくされた時にこっそり見ていた姉崎さんが持っていたものでした。
しかし、その手帳がやけに濡れていたのです。
(おかしいわね、ここ数日は雨なんて降っていなかったのに…。)
よく調べると海水で濡れているようなのです。
中を見てみると、御呪いの類についての情報がぎっしり書かれていたのですが、最後の頁が破られていました。
その頁は内容からして昨日の日付のようです。
あの姉崎さんですから、このような内容が漏れるような事はしないはず、何かあったと見ていいでしょう。
そういえば、あの時人魚の御呪いがどうとかって言っていたわね。
またエリーさんの時のような事になっていなければいいけど…。

学園の教室へ入ると、村咲さんと主野さんが慌てて騒いでいました。
姉崎さんと連絡が取れず、自宅にも帰っていないとの事でした。
どうやら嫌な予感は的中したようです、本当に懲りない人ね…。
人魚の御呪いについて遊ちゃんに確認してみたところ、
「学園に人魚が出るらしく、その肉を食べれば願いが適う」
というもののようです。
その噂についてあれこれ話している時、ふと窓の近くに見慣れない像が置いてあるのに気づきました。
近くの人に聞いてみたのですが、昨日はなかったとの事。
タコを模した像のようですが、表面にぬめりがありとても触りたくないもののようです。
気味が悪いと思っていたところでHRのチャイムがなったのです。

石原先生が普段通りの手続を終え(そういえば先生は出番久しぶりね)、転校生を紹介するとの事。
この時期に転校生とは珍しいわね、と思っていたところに、なんと閻魔と犬神が入ってきたのです。
(何故印具堂のウィザードが?)
席は閻魔が舞ちゃんの前、犬神が柄楠君の右隣に座る事に(結構席空いていたのね…)。
私の席は、二人とも離れた席だったので、後で事情を聞こうと思って、ふと犬神の方を見た瞬間、大きな音がしたのです。
何かと思ったのですが、どうやら柄楠君が犬神に足をかけて転ばしたようです。
(転校生への挨拶、としては知っている仲だし、ありえない行動ね;;) 睨みつけてメモを取る犬神と、その姿を満面の笑みで見る柄楠君。
一体柄楠君は何を考えているのでしょう、さっぱりわかりません…。
その後も柄楠君は犬神に対して、もう虐めと見ていいでしょう、執拗に恨むを買うような事をしていました。
(椅子を座る寸前に引く、足をわざとらしく踏む などなど…)

[一日目:昼]
そして昼休み、三人で昼食を取る時、舞ちゃんが閻魔と犬神を誘っていました。
この学園では、周知な人は私達三人だけ、やはり不安はあるでしょうしね。
しかし、それが二人のクラスでの立ち位置を確定させる事になったのです。
いくら問題がない普通のクラスとはいえ、所詮は人間の集団、どうしてもグループというものは出来てしまいます。
そしてそのグループが見える形になるのが昼食時というわけです。
そこで私達の枠の中にいた、という事実がこの三人の仲間という事になるのです。
自宅警備員希望,中ニ病(小六病?),で自分で言うのもどうかと思うのですが女装趣味。
(ふと冷静に考えると偏った集団よね…。)
つまり偏ったグループの一員、二人は偏った人という印象が確定する、というわけです。
とはいってもこの二人も「花魁口調で着物姿」「陰険で近寄りがたいオーラを纏っている」ですからね。
ある意味自然な流れなのかしら…。

私としても、色々聞きたい事があったので好都合、と思いながら席を固めていたところで、また大きな音が…。
どうやら柄楠君が犬神が足元を見た瞬間に拳を突き上げたようです。
呻きながらメモを取る犬神、あなたもある意味冷静よね、怒って怒鳴ってもいいのよ?
流石に見かねた石原君が柄楠君を廊下に連れ出し、説教をしていました。
当然よね、確かに競争相手の印具堂の方とはいってもあれはからかうという次元ではありません。
それを笑顔で聞き流す柄楠君ですが…。
(一体何が面白いのかしら? というか、柄楠君ってそんな人だったのかしら?)
ここ最近、軽蔑に値する行動が目につくけど、何か面白くない事があるのかなぁ…。
芽衣ちゃんに会えない時間が続いている事に苛立つ気持ちもわかりますけど、いくらなんでも酷い荒れ方です。
(…人の事はいえないかな、私も。)

閻魔と犬神、いえ立場は色々あるけど何かの縁で同級生となったわけですし、敬称はつけないとね。
閻魔さんと犬神君のお話では、なにやら大きな企みが動いているとの事でした。
てっきり人魚の噂の件かな、と思ったのですが、もっと大きなもののようです。
妖怪蝗の大量発生、そして妖怪の中でも上位級の存在がこの街に複数来ており何を企んでいるとの事。
その企みに「六葉社が監視している封印が何らか絡んでいる」という情報があるらしく、その調査のため二人は学園に転校してきたというわけです。
(明美は、その企みに絡んでいる事は間違いないわね。だって、封印と明美の位置が…。)
二人は、組織の対立はとりあえず置いておき協力してほしいと依頼してきました。
明美の件もあり、私としては快く承諾したのですが、まずは身近にある人魚の件を手伝ってほしい、と舞ちゃんが条件を出してきました。
ここ最近、上位級の妖による事件が多発しているから、その企みにつながっているかもしれないですしね。
二人はそれを承諾し契約は成立、一時的に六葉社と印具堂が手を組む形となったわけです。

そういえば、印具堂にはもう一人ウィザードがいたような…。
それについて舞ちゃんが閻魔さんに聞いたところ、鹿島仁というウィザードが印具堂にいるそうなのです。
一緒に行動してない理由は、二人とは格が違うとため、単独行動で動いているとの事。
なんでも怪異「カシマレイコ」を使役し、強大な霊力を持っているのだそうです。

話題はそこから学園祭の出し物についてな事に。
出し物は、以前耕した畑の産物もつかって喫茶店をやる事のだそうです。。
しかも、そこでは男子はメイド服,女子は執事な服を衣装にするとの事。
男子はネタでしょうけど、女子の執事な服は変な輩がきそうね^^;
石原君は、私には好きなのを選ばせてくれるそうです。
(どっちも着こなす自信はあるからその心遣いは嬉しいわね。さてどちらにしようかしら…。)

と、私が迷っているところに、遊ちゃんが入ってきました。
なんでも今日学園に忍び込まないか?と。
(あ、どっち着るか言いそびれちゃったわね、まぁ後でいいかな。)
理由は、人魚の御呪いをやりたい、との事。
姉崎さんの件もあるため、承諾した私達は詳細を確認しました。
なんでも学園に夜出没するらしく、水着か運動着など水辺で行動するような服装でないといけないらしいです。
(私、水着はちょっと…。)
はい、実は私は泳げないのです。
病気の影響で体力がつかない体のため、体育も最低限出席する程度しかできません。
水泳は体力消耗が大きいため常時欠席しており、いつもプールの端で体育着姿で見ているだけなのです。
それに一応男子として学園には登録されているため、水泳となると水着は…。
(ごめん、どんな理由をつけてでも上半身裸は恥ずかしいから嫌なの…。)
ということで私はこっそり体育着を準備して今回は望む事にしたのです。
集合時間は20時に校門前、各自準備のため一回は帰宅して集合となりました。
(どうして今回はこうも私が苦手とする状況になっていくのかしら…。)

…ふと思ったのですけど、明美の件を置いておいても本当に女装が板についちゃったわね。
気がつけば本当は男だという事を忘れている自分がいるのよね。
仮にこの偽りの姿を捨てる事になったとして、元に戻る事が出来るのかしら、私…。

[一日目:夜(学園集合前)]
一度自宅に戻った私は、集合時間までの間、学園潜入の準備を適当に済ませて休んでいました。
しかし、窓の外に気配を感じた私はとっさに身構え、そっと覗いたところに明らかに怪しい格好をした女性がこちらを見ていたのです。
覆面に古風な服装(なんて表現すればいいのかちょっとわからないw)で、しかも浮いているところから少なくても物理的な犯罪者ではないでしょうね。
(妖というよりは霊体の類のようですけど、敵意を感じない。何者・・・?)
様子を伺っていると、自称「覆面の美少女」と名乗る呆れてものがいえない存在は語り始めました。
「あの子を大切にしてほしい。」
いったい誰の事を指しているのか、全く見当がつかなかったのですが続く内容から「あの子」とは父の事のようでした。
(私を大切に思っている、ですって?)
じゃぁ、どうして六葉社を売ろうなんて考えるのよ?
死んだと決まったわけではない自分の娘の帰る場所を手放す親が何処にいるっていうの?
私のため?私なら大丈夫よ、だって明美が帰ってくればどんな苦難も乗り越えられるのですもの!

覆面の美少女は、私の反応に何か悲しいそうな目をして「時間がない」と言って去って行きました。
その夜空を舞うように飛ぶ傍らに金色の狼が付き添っているのが見えたのです。
ただものではない、とは思ったのですが、あの口調と雰囲気からまさか…。
祖母は既に死期が近づいている事から霊感が戻っているようですが、幽体離脱まで出来るほどまでに力が戻っているのでしょうか?
(折を見て様子を確認した方がよさそうね…。)
夜空に輝く金色の月を背景に、その存在は星空の中へ消えていったのです。

一方その頃、舞ちゃんは藤原さんと昔の事について聞いていたそうです。
聞いたところによると、風呂上りに遭遇したらしく上半身裸でまともに見る事ができなかったとの事です(//_//)
古傷が全身にあり、かつて妖と戦っていた事を語っているようだったと。
その会話の中で、くぅとの関係について語ってくれたそうです。
くぅの母親とは相思相愛だったらしく、妖との戦いの中で藤原さんを庇って無くなったそうです。
妖怪の死ぬ条件、それは
「自ら死を選ぶ事」
「他の妖の物語に取り込まれる事」
「信じられた弱点を突かれる事」
だそうです。
自らの死を引き換えに藤原さんを救う事を願ったため、「自ら死を選ぶ事」という条件に当てはまってしまったのです。
(でも悲恋とはいえ、いいお話よね…)。
舞ちゃんは、その娘であるくぅが六葉社にいる事を伝え、必ず藤原さんに会わせると約束したのです。
その決意に満ちた約束に感動した藤原さんは、風呂上りの半裸な状態で舞ちゃんに抱きついたようなのです…。
そして、そこに最悪のタイミングで舞ちゃんの父が居間に入ってきたのです。
その後の展開はお約束なので割愛しますね^^;

[一日目:夜(堀越学園)]
そして約束の時間となってので堀越学園の校門前に集合したのです。
閻魔さんと犬神君、遊ちゃんと私たち三人,そしてくぅちゃんの七人という構成です。
人魚のお話を聞いたくぅが一緒に行きたいとの事なので連れてきました。
(相手が人魚となると水を司る妖、戦力になるからって事だけどよかったのかな?)

校舎に近づいて気づいたのですが、中は既に水でいっぱいになっており、空を見ると紅い月が輝いていました。
周囲を見渡して人がいない事を確認し、各自軽装もしくは水着に着替えて(とは言っても中に皆着てましたけど)月匣の中へ進みます。
入ってみると息は水の中でも出来た事から、この水は結界を具現化しただけものもののようです。
それでも、動くとは水中と同じですので、厚着をしているとそれだけ抵抗が強くなって動きに制約がかかりますけど。
ちなみに当然私は体育着、閻魔さんは着物姿で入りましたが、予想通り重さで動けず脱ぐ事になりました。
そして進んでいくと、姉崎さんを発見したのです。
しかし、姿は上半身裸で下半身は魚、つまり人魚の姿だったのです。
(予想通り取り込まれたのね…^^;)
こちらを薄笑いを浮かべ、まるで挑発するかのように逃げていきました。
行き着く先は罠だとはわかっていましたけど、彼女を救うには行くしかないようです。

後を追うかを確認するため、みんなの方向を向いた時…。
柄楠君は、追う事より先にすばやく携帯のカメラで姉崎さんを撮っていたのです。
(…この状況でよくそういう行動が取れるわね。)
他のみんなも彼に構うことなく姉崎さんを追いました。
しかし、流石に水を司る妖、人の身では追いつく事は到底できる速さではなかったのです。
くぅはその中、凄い速さで後をおっており、舞ちゃんがそれに続く形となってしまい、私を含む他の皆は二人を見失ってしまいました。
向かった方向と気配から探し当て、ようやく追いついて入った教室には、床一面に魔法陣が描かれた如何わしい空間が広がっていたのです。
そこには他の行方不明になっていた女子生徒達が、姉崎さんと同じように人魚の姿で私達を囲っていました。
くぅちゃんは姉崎さんを捕まえようと悶着しており、舞ちゃんは魔方陣の中央で意識が遠のきかけた目をして何かの魔法に耐えていました。
後で聞いたのですが、この時舞ちゃんは、
「人魚になってもいいなぁ〜」
って思っていたそうで、人魚にするための呪いにかけられかかっていたそうです。
後ろで携帯のカメラで撮影を続ける柄楠君を無視して魔法陣を消しそうとしたのですが、そこに魔法陣を守るべくタコが魔法陣から出現して襲い掛かってきました。
まぁ、二人の前には無力でしたけど。
しかし、魔法陣を消しても姉崎さん達の呪いは解けず、何処かへ逃げていったのです。
呪いの本体となる魔法陣は別なところにあると判断し、彼女達の後を追いました。
彼女達は学園の地下に向かっており、その先は確かボイラー室など建物の管理用設備がある狭い部屋しかないはずなのですが…。

その地下の入り口を潜った時、この学園の地下には存在するはずのない闇が満ちた巨大な空間があったのです。
そして、その先には一人の少年が立っていたのです。
(も、もしかして…)
その少年、いえ「少年の姿をした女の子」は口を開いたのです。
「やっと会えたね、兄さん。」
修善寺明美。
私の愛しい妹。
私は、やっと会えたという喜びと同時に認めたくない事実を突きつけられたのです。
その服装は五年前の旅行に出発した時のものであり、容姿も当時の中学生の時のままだったのです。
(どういう事? あの時の姿のままって事は、それってつまり…。)
認めたくない、でも否定する事も出来ない。
「バックベアード様の命で、この学校で力を集めようと思ったのだけど失敗のようだね。」
明美の言葉から魔王の単語が出てきた時点で、もう覆しようがなかったのです。
私の妹は、バックベアードの力によって妖怪化し、魔王の僕となっている事に。
妖怪化しているという事、そして最期に見た明美の姿のままという事。
それはつまり彼女は「五年前に死んだ」という事を裏付けていたのです。
明美は、まだここで戦うつもりはない、と言い、転送魔法でこの場を去っていったのです。 (待って明美、まだ話したい事が…。)
その願いは虚しく明美は姿を消し、その変わりに足元の闇から巨大なタコのような妖が現れたのです。
魔王「クトゥルー」
近代の語り部が生み出した空想の魔物。
しかし、その語り部が生み出した秀逸な物語に魅了された人々の信仰とも言える強い想いによって、古の魔王と肩を並べるだけの妖となった存在。
明美の事で頭がいっぱいになりかけた私の前に、それを許さないかのようにそのクトゥルーが立ちはだかってきたのです。
その攻撃は凶悪の一言に尽きるほどのもので、人の心を操り、抵抗する人間の攻撃が強ければ強いほどに強力な攻撃を繰り出してくるのです。
舞ちゃんと柄楠君は何とか対峙できていましたけど、他の皆はクトゥルーの術で混乱状態で戦闘に参加できそうにありませんでした。
(何かを叫ぶ、服を脱ぎだす などなど…)
そんな中、柄楠君はその中でクトゥルーの術にかかり、突然「芽衣ちゃんに会いたい。」と叫びだしたのです。
私も明美に会いたい一心でここまで来たのもあって、その気持ちは十分にわかりました、でも…。
(だったら、他の女の子の裸の写真なんて撮ってるんじゃないわよ。)
ある意味浮気よね、芽衣ちゃんがこの事知ったら悲しむでしょうね…。
そんな事をふと思いましたが、今は明美の後を追わないといけません。
(この邪魔な存在を早く葬らないとね。)
私は二人を支援し、強力な攻撃を柄楠君が凌ぎ、舞ちゃんが討って出る体制で挑み、辛うじてクトゥルーを倒す事が出来ました。

クトゥルーは調伏という形になり、何を言っているかはわかりませんでしたが、その姿を小さく変えて何処かへ消えていきました。
行き先は六葉社だと思いますけど、かぁ爺達はびっくりするでしょうね…。
その後、明美の後を追おうと私はしたのですが、月匣が解けてしまい痕跡が消えてしまったので追えませんでした。
しかし、クトゥルーがいた場所に朽ちた櫛が落ちていたのです。
その櫛は疑いようもなく、明美がいつも肌身離さず持っていた愛用の櫛でした。
櫛は何か強い衝撃の中にあったかのようにぼろぼろに朽ちており、持ち主の身に何があったのか想像するのは簡単でした。
私はその櫛を胸に抱き、覆しようのない現実に涙を堪えるのが手一杯だったのです。
(認めなくなかったのに…。明美のいない世界なんて、私にとって世界が滅びたのと同じなのよ…。)

感傷に浸りかけた私を目覚めさせたのは、女の子の羞恥の叫び声でした。
姉崎さんを含む人魚にされていた女子生徒達が我に帰り、一糸纏わぬ姿に驚き叫びだしたのです。
舞ちゃんは私にシャツを脱いで渡すよう行ってきましたが、その時私は思わず両手で胸元を覆い拒みました。
(だから、胸がないのばれるでしょ!)
あのやり取りのお陰でで沈みかけていた心を忘れてさせてくれたわね…。
舞ちゃんは、近くのカーテンなどの布地を集めて彼女達に配り、邪な存在からその姿を守るために動いていました。
えぇ、柄楠君はその状態に歓喜し、携帯のカメラで大量撮影していたのです。
(最低…。)
舞ちゃんもその姿に怒りを通り越して呆れたらしく、静かにその邪な姿を携帯のカメラで撮影し、沙耶ちゃんに送ったのです。
その返事が柄楠君の携帯に届き、一言「死ね」とあったそうです^^;
(あんなお兄さん持って、沙耶ちゃんも大変ね…。)
舞ちゃんは柄楠君を教室から追い出し、私にも出て行くよう鋭い目つきで勧告してきました。
(はいはい、わかっていますよ。)
邪な気持ちは全くなかったのですが、一応従う事にしました。
明美だったらともかく、他の女の子の裸を見ても特に何も思わないのですけど、面倒になるから出て行かないとね。
とりあえず、私は部屋の外で柄楠君が覗かないよう入り口に立ちはだかって監視していました。
その後、女子生徒の保護者に各自連絡してもらって迎えに来てもらう事にし、私達は事の顛末を報告するため六葉社へ向かう事にしたのです。
閻魔さんや犬神君も報告ため印具堂へ、遊ちゃんはエンターテイメントを満喫した表情で帰っていきました。

でも私、本当はどちらの性別が本当に性別なのか疑いたくなってきたわね。
以前、舞ちゃんの家に芽衣ちゃんの幽霊が出た時(第壱話参照)も、舞ちゃんの胸元が肌蹴ていたのを見たとき、特に欲情しなかったのよね。
舞ちゃんや今回の女子生徒達に魅力がない、というのではなくて、なんて言うのかな?同性の裸を見ている感覚というのかしら。
明美以外見えていない、というのが正しいのかもしれないけど、でもその明美は…。
整理できない気持ちがまた蘇り、六葉社への帰路では一言も私は誰とも口を訊かなかったです。

[一日目:深夜]
しかし、六葉社に戻る帰り道で驚く事が起こったのです。 商店街を普通に通ろうとしたのですが、大人達にくぅが見ていたのです。
姿は河童で人間にかなり近いので妖とは思われなかったのですが、姿は裸なのでこのまま進むわけにはいかなくなりました。
とりあえず、途中まで一緒だった閻魔さんの服(厚着だったので何枚か重ねていた)を借りてその場を凌いだのですが…。
(大人達に妖が見えているなんて本来ありえないはず。となると…。)
空を見たのですが、紅い月が消えておらず、その月を覆うように蝗が飛んでいたのです。
間違いなくこの街で何かが起こっているのは確かでした。

何とか帰ってきた私達は、事の顛末をかぁ爺に報告しました。
流石のかぁ爺もクトゥルーが調伏されてきたときは驚いたようです。
かぁ爺も最近の妖の活動が活発な事を懸念したいたらしく、守っている封印を確認しにいったそうです。
特に問題はなかったとの事ですが、私は気になる事があったのです。
(明美の物理的な反応は封印からだったはず、かぁ爺が確認して特にそのような事は確認されていないのは何故かしら…)
まだ整理できていない気持ちもあり、今この場で明美の事を口にすると自分が壊れてしまうように感じた私は、そこでは何も聞きませんでした。
少し整理する時間がどうしても欲しかったのです。

そこで舞ちゃんは、くぅを藤原さんのところに連れて行くと言い出しました。
どうやらたとえ姿が見えなくても会わせる、と約束していたらしく、経緯はどうあれ大人達に妖が見えるこの状況を利用して会わせたいとの事でした。
折角会うならおめかししないと、という事で、舞ちゃんにくぅに服を買おうと提案してきました。
藤原さんからせめて何か買ってあげて、という事でお金を貰っていたようです。
そこで舞ちゃんに指摘されたのです。
くぅは妖だから私は全く意識していなかったのですが、河童という妖なので裸なのですよね。
私の服を上げればよかったのですが、言われるまでその発想がありませんでした。
(そういえば、くぅも女の子の姿だったわね…。)
とりあえずサイズが合いそうな服を見繕って着せてあげました。
ちゃんとするとなると下着もいるわね、と思った私はまだ使っていない下着も一緒に着せました。
舞ちゃんは、何故持っている?と聞いてきました。
(胸がなかったらかっこがつかないでしょ?)
と思い答えたのですが、二人はあっけに取られて以後無言になりました。
どうしたのでしょうね、この二人?何も間違った事は言ってないはずですけど?

そして準備が整い、舞ちゃんの家へ向かいました。
藤原さんは、くぅの姿を見て涙を流して抱きつきました。
本当に会いたかったのでしょう、その気持ちはよく伝わりました。
後から出てきた舞ちゃんの父もくぅが見ているようで、子供の頃に見た妖達が何故ここに、そして見えているのか?と驚いていました。
喜びの反面、この異常な状況を憂うと共に、明美の櫛を握り締め紅い月が輝く禍禍しい夜空を私は見上げていたのでした。
目の前の受け入れなくない現実を前に、これからどうすればいいか、その時はわからなかったのです…。

第拾話「封印都市」

第拾話も引き続き、修善寺歩の視点から物語を振り返ってみたいと思います。
物語の主軸は、迫り来る滅びの足音と私の試練となっております。
今回は妙に静かに語るね、って?
その理由はこの話と次の話が大きく関わっています。
流石に軽い気持ちで語る事はできない内容となりますので、まずはお付き合いください。
※ ログ内の()は思った事、括弧なしが通常の内容。

[登場人物]
 PC       : 柄楠狩刃(PC1),三田舞(PC2), 修善寺歩(PC3)
 NPC(イノセント) : [堀越学園 ] 空寝遊, 石原弘美
          [中野の住人] 柄楠沙耶,主治医,修善寺の父
 NPC(ウィザード) : [印具堂  ] 閻魔ふたつ
 NPC(妖怪)    : [六葉社  ] 化狐「おこんさん」
          [仲魔   ] 妖怪「泥田坊」,怪異「B29」,聖獣「金狼」
          [敵    ] 魔王「バックベアード」,魔人「修善寺明美」,魔王「パズス」

[前回の事件後]
大人達にも妖が見え始めた先日、その範囲は中野区全域のみと判明しました。
大混乱が発生するかと思ったのですが、意外にも大人達も冷静で急速に融和が進んでいったのです。
大人達もその昔、子供だった頃に妖を見ていた事が要因のようです。
TVでも取り上げられましたが、他の全国ではカメラ越しにも見る事は出来ないらしく、思ったより騒がれる事はありませんでした。
予想していてたより妖がこんなにもいたのね、というくらいの数が出現していました。
人間の目を恐れ、今まで隠れ住んでいたからだろう、と六葉社の妖達は言っておりました。
しかし、これは滅びが迫り来る前兆だったのです…。

そんなことを知る由もなく、順応性が高かった中野の住民達と妖達はすっかり生活に溶け込んでいました。
ちょっと前には、堀越学園のグランドでゾンビアーミー達と草野球チームが野球、いえベースボールをやっていたわね。
野球っていうと、ゾンビアーミー達がベースボールだってもう煩くて…。
でも、やっと相手が見つかって嬉しそうね。
だからって、自分の頭部をボールの代わりにするのはやめてね。
次やったら本当に成仏させるわよ、恐怖で泣いちゃった子供達をあやすの大変だったのですからね。

[一日目:朝]
学園祭が近づき、残暑も過ぎ去って風も秋の気配を感じさせるものになりつつありました。
柄楠君はいつも通り自宅で怠惰な生活を送っており、いつもなら沙耶ちゃんがそのお世話に振り回されているはずなのですが…。
今日は、その沙耶ちゃんが調子悪いと言って寝込んでいたのです。
本来であれば、兄として柄楠君は沙耶ちゃんの看病をしなければならないはずですが、横でWiiで遊んでいました。
(いつもながら、どうしてそんな事ができるのか、理解に苦しむわ。)
当然ながら沙耶ちゃんが苦しみだしたので、柄楠君は沙耶ちゃんが連れて病院へ向かったのでした。

時を同じくして、舞ちゃんは商店街を適当にぶらついていたのですが…。 そこに見覚えるある少女、修善寺明美が歩いていたのです。
即座に肩を掴み振り向かせたところ、虚ろな目で見つめてきました。
すかさず拳を浴びせ、六葉社に連れていこうとしたところで突然、眩暈や頭痛といった病気の症状が舞ちゃんを襲って膝をつきました。
(舞ちゃんって結構手が出るの早いわよね、そんな事で彼氏できるのかしら?)
そして明美はこう言ったそうです。
「もうすぐこの街の人々に死が訪れる。尊い生贄として、ね…。」
薄れ行く意識の中で舞ちゃんは、明美が歩いた後に倒れていく人々をただ見ているしかできなかったのです。

一方私は、六葉社でPCで五年前の飛行機事故について調べていました。
しかし、ニュースにあるような情報しか手に入らず、明美が唯一の行方不明者で今だ見つかっていないというところまでです。
蔵にあった当時の資料から、妖関連の情報があるかな、とも思ったですが収穫なし。
PCで情報を調べていた中で、最近新型のインフルエンザらしき病気が流行っている事も知りました。
(明美が魔王の僕になっているとなると、真実を知らないままのはずだわ。自分を殺めた相手に使われているなんて…。早く助け出さないと。)
私は、明美を説得するための材料として、飛行機事故について真実を知りたかったのです。
進展がない状況ちょっと途方に暮れていたところに、おこんさんが私のところに来たのです。
丁度よかったと思い、飛行機事故について訊いてみました。
私は残念ながら拒絶反応により記憶から抹消されてしまっているため、覚えていないのです。
おこんさんの話では、当時のウィザードがバンシーによって飛行機が落とされるのを阻止できなかったそうです。
他の妖との戦いで、そこまで行き着けなかったそうです。
当時のウィザードの方の所在について教えてもらったので、折を見て尋ねようと思います。
(やはりバックベアードの仕業だったのね…。)
舞ちゃんの飛行機もバンシーによって落とされた事は、藤原さんより聞いていました。
そこから、バックベアードが関与している事は疑いようがなかったのです。
つまり、明美を殺したのはバックベアードであり、その魂を操り手先として使っている、という事です。
(これで説得の材料は揃ったわね、待っててね、明美。)
そして、おこんさんは舞ちゃんがインフルエンザで倒れて病院へ搬送された事を教えてくれたのです。
で、おこんさん一同お見舞いに行くので一緒に私も行く事にしました。
ただ、インフルエンザへの認識が甘かったのもあり、マスクをせずにそのまま病院へ向かったです。

[一日目:昼]
商店街の近くにある総合病院。
伝染病用の隔離施設があり、新型インフルエンザの重病患者を受けれて隔離治療を行っているこの病院に、舞ちゃんは搬送されていました。
舞ちゃんは病室では元気そうでしたけど、隣に寝ていた沙耶ちゃんは意識が朦朧とした状態で、素人から見ても重症だとわかりました。
そこに石原君と遊ちゃんがお見舞いにきました。
しかし、遊ちゃんの状態は明らかに発病しており、近くの看護婦さんに見つかって即刻別な部屋に隔離されてしまいました^^;
(私もそういえばマスクつけていなかったわね。)
危険なものを感じたのでマスクをつけた私は、石原君を見送った後、舞ちゃんから驚く事を言われたのです。
「明美が病原菌を街で撒き散らしている」
魔王の僕となっている以上、何かはすると思っていましたけど、予想よりも派手に暴れているようです。
私の愛しい妹が周りの人達に害を与え始めている事に、心が痛かったです。
そこで沈んでいるわけにもいきませんでしたので、私は病気と呼ばれている呪いと思わしきものに立ち向かう事にしました。
(明美が撒いているとなれば、ほぼ間違いなく魔法的なものね…。)
横でWiiで遊んでいる柄楠君を見なかった事にし、舞ちゃんの症状を魔法的に確認します。
(やはり魔法的なものね、思ったより重いけど何とかなるわね。)
状態異常回復魔法(キュア)で対応可能な旨を皆に伝え、夜に魔法を行使して治すことにしました。

そこに急患と思われる悲痛な表情の少女が、運び込まれ奥の部屋に入っていきました。
その後に金髪で聖職者の服装をした老婆が後をついていきました。
柄楠君は興味半分で着いて行ってしまいました…。
(沙耶ちゃんがこんな状態なのに、どうして平然とあんな事が出来るのかしら…。)
暫くして、柄楠君が老婆と一緒に戻ってきました。
シンシアと名乗るこの老婆は、私の祖母であるさだめさんより助けが欲しいと連絡があって来日したそうです。
先ほどは、何らかの悪霊が少女に取り憑いていたために除霊の儀式を行っていたみたいです。
彼女は、以前に時空が狂った時に柄楠君が助けた米軍兵士の方で、あの時依頼、さだめさんと親交があったそうなのです。
今はエクソシストとして、そして人狼の一族として、妖と対峙しているそうです。
シンシアさん曰く、この呪いは「パズス」という魔王の仕業であり、対抗するには「疱瘡神」の力が必要だ、と。
(つまり、明美はパズスの力を借りて呪いを撒いている、って事ね…。)
疱瘡神は、かつての軍病院の廃墟にいるらしいのですが、かなり警戒心の強い妖らしく病原菌の呪いを使って攻撃してくる可能性もあるとの事。
そのため、呪いに対抗する術をシンシアさんに教えてもらいました。
舞ちゃんは弱っていたせいか、かなりてこずったようです。
(普段魔術の鍛錬をしている私には大したことないけど、そうでない人に大変よね、こういう類のものって…。)
その後、柄楠君が閻魔さんにも電話していました。
しかし、既に発病していて使い物にならない、と言ってましたね…。
犬神君にもかけたようですけど出なかったようです。
恐らく彼も発病していると見ていいでしょう。
準備を終えた私達は、シンシアさんの携帯番号を教えてもらい、普段は洋館の方にいるとの事なので何かあれば連絡してほしい、との事でした。
(あそこね…。私だけ成果なかったのよね…。)
(しかし、携帯って最近機能が増えて追いかけきれないのよね、赤外線機能って何?)
二人に色々で突っつかれた後、意志消沈しながら私は夜を待ったのです。

[一日目:夜]
病院で私は舞ちゃんの呪いをちょっとてこずりましたが治療しました。
柄楠君が沙耶ちゃんを治療して欲しい、と珍しく私にせがんできたので一緒に治療をしました。
(遊ちゃんまでは手が回らないわね、申し訳ないけど…。)
元気になった沙耶ちゃんに自宅で待機しているよう伝えて家まで送りました。
(いつも沙耶ちゃんは可愛いわね、柄楠君がこういうときは羨ましい。)
準備を終えた私達は、私達は病院の廃墟に向かったのです。

この病院は数十年前に閉鎖されており、今は完全な廃墟となっています。
何でも結核などの当時の重病者を隔離する施設があり、この病院で亡くなった方も多かったそうです。
そのため、今では心霊スポットの一つとなっており、興味半分で肝試しに来る人以外は怖くて近寄らない場所なのです。
そこに足を踏み入れた私達は、待合室でパジャマ姿の少女が立っているのを見つけました。
声をかけようとしたところで、すっと彼女は奥の方へ行ってしましました。
(待って、まさか明美?)
年頃と背格好が似ていたのもあり、私はすかさず二人を置いて後を追いました。
追いついて声をかけましたが、振り返ったその姿は明美ではなく、ここで亡くなった少女の呪縛霊だと気づきました。
疱瘡神が祭られている場所は何処か尋ねたところ、少女は無言で地下への階段を指差したのです。
そこは長年振り続けて溜まった雨水で水没しており、結界なしでは入る事ができそうにありませんでした。
(シンシアさんのご助力の賜物ね…。)
心で改めてシンシアさんに礼を述べ、少女に別れを告げて私達は水の中へ入り、疱瘡神の祭られている祭壇を見つけました。
そして、気配を感じたのか、疱瘡神が姿を現したのです。
疱瘡神に支援をお願いしたのですが、自らを見捨てた人間達に不信感を募らせており、中々応じてくれません。
何とか病院に別な祭壇を祭る事を条件に、今広がっている病原菌の呪いの力を抑えてくれることになりました。
疱瘡神の力を持ってしても、パスズの力を消し去る事はできず、抑えるのが手一杯とのことです。

約束を取り付けて疱瘡神に別れを告げ、病院を出ようと待合室まで戻ったその時…。 入り口に先ほどの少女が立っていたのです。
しかし、様子がおかしくその表情は悪意に満ちた笑みを浮かべていたのです。
少女の霊から何か別なものが姿を表したとき、その姿からそれが「パズス」である事はすぐに気づきました。
この魔王は、疱瘡神を討伐するためにここにやってきたのです。
「明美様の策を妨げる輩を始末し、ご所望である少女の体を頂いてく。」
そうパズスはいい、私を指差してきたのです。
(明美が少女の体を求めているってどういう事?っというか私!?)
神々って結構性別を偽って騙される事が多いと聞いてはいましたけど、嬉しい反面ちょっと複雑な心境です。
柄楠君と舞ちゃんは、騙されているパズスに真実を伝えましたが、瓜二つの容姿であるならば問題あるまい、としてあくまで私を狙ってきました。
(…結構いい加減なのね、神様って。)
風と熱風の悪霊と呼ばれるこの存在は、爆風と病気の呪いを駆使して、私達に襲い掛かってきました。
柱を駆使して爆風を抑えつつ、この魔王を調伏しました。

早速知っている事を白状して頂こうと追及したのですが…。
パズス曰く
「貴様(歩)が無理なら代わりを用いるまで。他の候補は既に見つけてあり、別のものが確保済のはずだ。」
と言ったのです。
どういう事か追求したところ、驚愕の事実を知る事になったのです。
少女の体を求める理由、それは…。
「明美が死んでから、私(歩)が壊れてしまった。だから、現世に蘇って私の元に戻るための依り代として使うため。」
そして他の候補とは、私達の近くにいた同じ妹属性のもの、とのことです。
心当たりがある人はただ一人…!
(まさか沙耶ちゃん…。)
急ぎ柄楠君の家に向かい、家を隈なく探したのですが沙耶ちゃんがいません。
TVはついたままになっており、台所も夕飯を作っている途中の状態である事。
そして庭に微かな魔力が残っているアゲハチョウの羽が落ちていた事から誘拐された事は間違いありませんでした。
私は頭が真っ白になりました。
明美は私のために魔王の力で幽霊として現世に留まり、復活のために沙耶ちゃんを依り代として使うつもりなのです。
(明美、貴方なんて事を…。)
幽霊となってもまだ私の事を想ってくれていた事を喜ぶより先に、私達の問題に無関係な人を、しかもよりによって柄楠君の妹である沙耶ちゃんを巻き込んでしまった事に私は言葉を失ってしまったのです。
「貴様の家の問題に、俺らを巻き込むな!」
柄楠君の罵声が私に降り注いできます。
私が明美を想うように、柄楠君も沙耶ちゃんを想っている事は疑う余地もなく当然のことです。
私はその憎悪に抗う事などできず、一刻も早く沙耶ちゃんを救い出し、明美の暴走を止めなければならない、と考えました。
(取り返しのつかない事になる前に、明美を止めないと…。)
ここで放心している余裕などない、私の頭の中は明美の事で一杯だったのです。

そこに病気から立ち直った閻魔さんが駆け込んできたのです。
閻魔さん曰く、妖怪蝗を一掃する策があるから手伝ってほしい、との事。
その策には、六葉社が調伏した妖の力が必要なのだそうです。
時間が惜しい状況でしたが、柄楠君は快く引き受けB29と泥田坊を召喚して策を実行に移しました。
その策とは、B29で上空まで昇り、雲を刃に変えて蝗を一掃、降り注ぐ刃が街に落ちる前に泥に変えるというものです。
舞ちゃんがメディア関係の方にコネがあったので、TV局を用いて街に妖イベントの一環として注意報を流して被害を最小限に抑えるために動いていました。
柄楠君がB29の力で上空まで閻魔さんを背中に乗せて昇り、閻魔さんが妖怪蝗が一掃、街には泥が降り注いでいきました。
策をこのまま続ければ成功と思い、遠くで閻魔さんが柄楠君に勝ち誇るように胸を張ったその時…。
遥か天空より一筋の光が、閻魔さんを貫いたのです。
柄楠君の目に飛び散る血と指や腕の破片。
閻魔さんの右腕がなくなり、彼女は気を失っていたのです。
私は式神である隼でその状況を確認し、着地地点となる病院に即座に向かいました。
そして、瀕死回復魔法(リヴァイブ)と飛び散った破片を探索魔法(ロケーション)で見つけて集め、何とか五体無事な状態で一命を取り留める事に成功しました。
出血量が多かったため、意識は回復しないままとなっており、病院でそのまま見てもらう事になりました。

先ほどの上空からの光は、発射地点が成層圏辺りと考えられる事から、恐らくバックベアード本体からでしょう。
敵はそこにいるのです。
空を見上げると、先ほど一掃したはずの妖怪蝗が、また数を増やして空を覆い始めていました。
しかし、今は沙耶ちゃんの救出と明美の暴走を止める事の方が最優先でした。

明美にこれ以上の罪を重ねさせるわけにはいかない、私は明美の兄として、いえ最愛の者として覚悟を決めるのでした。

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