Trim


水中での姿勢

 水中では水平姿勢が基本です。テクニカルダイビングの観点でいうと、微妙に調整を入れた水平姿勢が理想です。レクリエーショナルダイビングでは、ほぼ水平程度の曖昧な姿勢で充分です。
 安全停止のときに立ち姿勢になってしまうのは中性浮力がとれていないことが原因です。フィンキックをしなければ沈んでしまい停止できないためです。まずは中性浮力の練習からはじめましょう。ここでは水中で体が斜め、具体的に下半身がさがってしまう姿勢を正す方法を説明します。
 下半身がさがった状態だとフィンキックで砂を巻き上げてしまいます。そして水平に進むのではなく斜め上に向かって進んでいき深度が上がってしまいます。泳いでいるうちに、いつの間にかに深度があがる原因は斜め上に向かって泳いでしまっているからです。このときウエイトが足らないと勘違いしウエイトを足すガイドがいます。これは大きな間違いであり、オーバーウエイトを誘発します。適正ウエイトになっているのであれば、むやみにウエイトを足すのではなく、中性浮力(肺の使い方)と姿勢で解決します。
 上手くいかない原因を分析し、理論的に対応することで問題は解決します。体が斜めになる原因は下半身がさがることと上半身が起きあがってしまうからです。言われれば当たり前のことですが、この当たり前のことを分析します。
 下半身がさがってしまう原因はふたつあります。ひとつめはフィンが重いためです。最初のうちはできるだけ軽いフィンを使いましょう。ショップやインストラクターがすすめるからと言って最初から大きくて重いフィンを購入するのは避けたほうが良いです。最初は安いプラスティックフィンで自分の脚力や泳ぎ方を見極めます。その後、本格的に自分にあうフィンを購入されるのが良いでしょう。フィンの選び方に関しては器材のところで説明します。
 次にウエイトです。ウエイトベルトで腰に巻くにせよ、ウエイトポケットでBCDに装着するにせよ、分散し、バランスよく配置するのが基本です。オーバーウエイトは論外です。通常は腰まわりにウエイトが集中してしまいます。適正ウエイトでも最初のうちは重さを感じ、どうしても下半身がさがってしまいます。水中姿勢を正すために、インストラクターは講習生の太ももを持ち上げます。太ももを持ち上げたくらいでは姿勢は正せません。太ももではなく股間あたりを持ち上げる必要があります。いくら講習のためとはいえ、他人の股間に手をそえるのは躊躇します。ダイバー自身がお尻を上に突き出すように意識して腰を持ち上げる必要があります。こうすることで下半身が起き上がってきます。ただし常に力を入れて持ち上げていると腰に負担がかかりますので、正しい姿勢とはどんな姿勢なのかを体験するときだけにしておくのが無難です。姿勢に大きく影響するのがウエイトバランスです。ウエイトの配置を工夫することで全体のバランスをとります。ウエイトベルトとウエイトはガイドが用意してくれることが多いと思います。渡されたウエイトベルトをそのまま使うのではなくウエイト位置は自分なりに調整しましょう。左右対称にウエイトを配置するのは基本です。初心者はタンクの重さで水中でバランスがとれず、あおむけになりがちです。タンクの重さに慣れないうちはウエイトはおへそのまわりに集めたほうが良いです。慣れるにしたがい前に2kg、左右に1kgづつなどウエイトの位置を変えていきます。タンクにウエイトを装着するのは慣れるまでやめておいたほうが良いです。意図せず水中であおむけになってしまいます。ウエイトベルトを使うときに多くのウエイトをつけるのは避けます。最大でも6kg、できれば4kg以下におさえます。重すぎると腰に負担がかかります。それ以上のウエイトはBCDのポケットに入れます。ポケットにウエイトを入れるとBCDが傷むので本当は良くないのですが腰を痛めるよりマシだと考えます。ウエイトポケットのあるBCDの場合はウエイトポケットを使いを分散します。4kgはウエイトベルト残りはウエイトポケットに入れるなどです。すべてをウエイトポケットに入れるとBCDが重くなりすぎます。上半身にもウエイトポケットがあるBCDは使い勝手が良いです。一部のウエイトを上半身のウエイトポケットに入れることでウエイトバランスを良くします。体型の関係で大量のウエイトを必要とする方もいます。ウエイトベストを買いましょう。上半身にウエイトを分散させることで水中での姿勢が驚くほど水平になります。水中でウエットスーツが薄くなることは中性浮力のところで説明しました。ウエットスーツが薄くなった分、水中ではウエイトベルトが緩んでしまいます。ウエイトベルトを装着するときはおなかをへこまして少しきつく締めておきます。余裕があれば水中ではめなおしても良いです。水中で自動的に締め具合が調整される優れもののウエイトベルトもあります。
 次に上半身が起き上がってしまう原因です。ガイドを見失ってはいけないと思い、常に顔をあげてガイドのお尻を追いかけていませんか? こうなると自然に上半身が起き上がってしまいます。ゲストに「ガイドを見失ってはいけない」と思わせるガイドが問題です。スピードを落として、頻繁にゲストとアイコンタクトをとるのが上手なガイドです。筆者は背面泳ぎで後ろ向きに泳ぐことを得意としています。常にゲストと向き合っているわけです。ガイドについていくポジションはガイドの左右どちらかの少し上が理想です。顔をあげるのではなく、少し横を向いたところにガイドがいるようなポジションをとります。ガイドとしてもちょっと横を向いただけでガイドとアイコンタクトがとれるので助かります。ゲストの立場だと、ガイドの真後ろの上部がガイドを見下ろす形になり水平姿勢をとりやすいです。ガイドの立場からすると一番の死角ですので、できることならそのポジションは遠慮していただきたいです。
 適正ウエイトで潜り、中性浮力がとれているのであれば、あとはちょっとしたことで姿勢が改善されることが理解できたことと思います。水中の姿勢は自分ではわかりづらいものです。筆者はときどきバディに写真撮影あるいは動画撮影してもらいチェックしています。カメラ派の方は魚ばかり撮影するのではなく、たまにはバディの泳いでいる姿あるいはホバリングしている姿も撮ってみましょう。

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