SelfDefence2


自己防衛(2)

 次にダイビング中の自己防衛について説明します。
 ダイビング前の水分補給は重要です。これは少しでも血流をよくするためです。ドロドロ血液の方は多めに水分をとっておきましょう。1リットルくらい飲むようにと言われたことがあります。さすがにそんなには飲めないですが、最低でもコップに1-2杯は飲みます。水中での尿意を避けるため水分補給を敬遠する方もいますが、よい習慣とはいえません。減圧症になるより、おもらしするほうをおすすめします。
 急浮上は絶対に厳禁です。コンパートメントからの急激な窒素排出とマイクロバブルの増大を引き起こします。急浮上したときに、どのくらいの危険度があるかは、そのときの圧力変化とたまっていた窒素量によります。Suuntoのダイブコンピューターが強制安全停止を表示した場合は、かなり危険な状況だといえます。無理をしないで、ダイブコンピューターが指示する深度までゆっくり戻り、ダイブコンピューターの指示に従い安全停止をしてダイビングを終了します。エクジット後は念のため、減圧症の初期対応をしておきます。
 窒素のためすぎも危険です。多くのダイブコンピューターでは窒素の量をバーグラフで表示しています。90%は危険領域。80%以下になるよう気をつけておきます。安全停止時も窒素のバーグラフが下がるまで安全停止をおこないます。ただし長すぎると窒素をためこむコンパートメントがでてきますので、排出しているコンパートメントとのバランスをみながら長くても5-7分にしておきます。7分以上の安全停止が必要になるようなケースは窒素がたまりすぎていますので、エクジット後は窒素が排出されるまで次のダイビングを待つか、その日のダイビングを終了にしたほうが安全です。逆に窒素がたまっていない場合は安全停止をスキップします。具体的には潜航中にバディとはぐれたとか、潜航後、水底までいってすぐに戻ってくるケースです。
 NDLがゼロにならなければよいというのは必要条件であり充分条件ではありません。ダイブコンピューターのアルゴリズムにもよりますが、30mでNDLが3分、20mではNDLが10-15分。15mでは20-30分になると危険領域ですので、緩やかに水深をあげるようにします。中間くらいの水深(15-20m)ではエアーの減りが少なく、どうしても長時間滞在しがちです。この水深でNDLが5分を切ると、水深30mでNDLが1分になるより危険であり、人によっては排出できない量の窒素をためこんでいます。にもかかわらず、ダイブコンピューターは何の警告も言ってきませんので、ダイバー自身が気をつける以外にありません。
 理想のダイブプロファイルは前半で最大水深に達し、少しづつ深度をあげていくコース取りと深度管理です。しかしながらすべてのダイブサイトが理想的な地形になっているわけでもなく、すべてのガイドが正しいダイブプロファイルをえがくコース取りができるわけでもありません。レクリエーショナルダイビングではある程度の鋸ダイブプロファイルや短時間での深度変更は避けられません。何度も説明するようにマイクロバブルに対応しているダイブコンピューター以外はこの事象を計算結果に反映しません。ダイブプロファイル上での自己防衛は必要です。筆者はダイビング時間30分で10mの水深に戻るようにしています。最大深度にもよりますが、1分間で1mの浮上速度から逆算し、最大深度を離脱する時間を決めます。10m以浅にはいったら、10m以深には戻らないようにします。船(エクジットポイント)までの距離と時間から逆算し、船に到達するまでに安全停止深度(浅瀬)を経由して安全停止を終わらせておきます。こうすることで船に戻ったときにプラス3分間の水中待機(安全停止)が不要になり、余分な窒素をためずに済みます。いつの間にかに窒素が排出されていた、安全停止も終わっていたというのが理想的なコース取りです。とまぁ、すべてのガイドがこのようなコース取りをしてくれたらよいのですが、できないガイドの方が多いので、筆者はダイビング後半では少しづつ島寄りのコースをとり、「深度あげるよ」とバディに無言の圧力をかけています。深度をあげたほうが良いときは遠慮することなくダイブコンピューターの表示をガイドに見せるなりして浅瀬に移動したい意思表示が必要です。
 ダイビング前後の急激な運動、ダイビング後の飲酒、熱いお風呂、喫煙習慣、高血圧や基礎疾患、水温、体調不良も減圧症を引き起こしやすい状況と言われています。これらの中には科学的根拠があるものもあれば、都市伝説のように語り継がれているものもあります。減圧症に直接関係するか否かはともかく、ダイバーにとって健康管理は重要です。特に筆者のような中高年は自分では健康だと思っていても、あちこちに潜在的問題をかかえているものです。筆者がダイビング後の付き合いが悪いのは少しでも体を休めるためです。ダイビング旅行そのものが本当に楽しいのかという問いになりますので、同じことを他人にすすめることはしません。

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