自分自身の適正ウエイトがわかり、中性浮力の基本が理解できたことでしょう。ここでは実際のダイビングを想定し、どのように中性浮力を維持していくのかを説明します。
ダイビングは標準的なダイビング、すなわちエントリー後に最大深度まで潜り、少しづつ深度をあげながら最後に安全停止をおこないエクジットするという流れです。
まずは潜航です。前章で説明したとおりダイビング開始時は1-2kgのオーバーウエイト状態です。それゆえにBCDからエアーを抜けば苦も無く沈みはじめます。沈むにつれてウエットスーツの厚みがつぶれ体積が減ります。それを補うために深度が下がるのにあわせてBCDにエアーを入れます。このとき少し多めにエアーを入れます。なぜならば最初はオーバーウエイト状態ですので、相殺し中性浮力をとるために体積を増やす必要があるからです。ダイビングをスタートし、最初は深いところを目指して深度を下げていきます。それにあわせてBCDにエアーを入れていきます。ダイブプランで決めた(ブリーフィングで説明のあった)の最大深度に達したときがBCDに入れるエアーの最大値になります。これから先はBCDにエアーを入れることはありません。すなわちBCDにエアーを入れるのはダイビングの最初、最大深度に達するまでだと覚えておきましょう。これはとても重要なことです。
ダイビング時間が経過するとともにタンク内のエアーが減っていきます。エアーが減り、軽くなった分を相殺するために時々BCDからエアーを抜いて調節します。深度が上がればウエットスーツの厚さが元にもどり体積が増えます。それにあわせてBCDからエアーを抜くことで比重を一定に保ちます。またBCD内のエアーは深度が上がるにつれて体積が大きくなり何もしなくてもBCDが膨らんでいきます。膨らんだ分だけエアーを抜く必要があります。最大深度でBCD内に入れたエアーはダイビング時間とともに少しづつ排出していくことになります。そして安全停止に入ったときにすべての排出が終わりBCD内のエアーが空になるのが理想です。なぜならば安全停止時は適正ウエイトを実測した環境とほぼ同じだからです。
これが一連の流れになります。今までBCDにエアーを入れたり、出したりしていた人は中性浮力を正しく理解できていなかったことになります。多少の深度調整は肺でおこないBCDは最大深度に達したあとは少しづつ排出するだけの操作になります。ダイビングの最初から終わりまで、中性浮力を維持するためには、比重を一定に保つことです。そして比重を一定に保つためには、ダイビング中に比重が変化する要因を正しく理解し、それを相殺する方向で肺とBCDの体積を変化させることを肝に銘じて実践することです。
理論が理解できれば、あとは練習あるのみです。ここで初めて「本数を重ねればできるようになる」という一言を使うことができます。