Navigation3

ナビゲーション（３） †

　初めて潜るダイブサイトや初めてのコース取りでも正しくナビゲーションできるようになれば上級者です。この章ではナチュラルナビゲーションのノウハウを記載します。大事なことは常に頭の中の地図に自分の位置や軌跡を書き入れることです。
　島に近くなれば浅くなり、遠くなれば深くなります。水深が浅くなる方向に島があります。当たり前のことですが、これはとても重要です。そして基本です。ゴールの水深にあわせるため水深を上げたり、下げたりします。あるいは減圧症を防止するため、少しづつ水深をあげていきます。外洋では上下移動で水深を管理します。島沿いのダイビングでは島に近づく、離れるというコース取りで水深管理をおこないます。最後は安全停止深度まで島に近づき安全停止をしながら泳ぐのが上手なコース取りになります。詳しくは減圧症の章で説明します。
　島に近づくほど珊瑚の群生が増えます。島から遠くなれば流れの影響を受けやすいため島に近いほうが珊瑚の密度が高くなります。そして珊瑚が多くなればなるほど、珊瑚を根城とする生き物が増えます。水深がわからなくても景色で島に近づいていることや水深が浅くなっていることがわかります。
　流れは地形を把握する材料になります。実は流れがあるほうが水中での地形を把握しやすく、船上から観察した地形と自分の位置を割り出す情報になります。湾内から出ると、流れが強くなります。逆に湾内に船がとまっており、湾内がエクジットポイントになる場合は、自分が湾内に到達したことがわかります。
　島の角（岬）では流れの向きがかわったり、流れが合流することにより急激に強くなります。岬まで行き、少しだけ裏側を見て、戻ってくるコース取りは中級者以上のコース取りの定番です。島の角や岬を船上で観察することは大事です。鋭利な場合は水中でそのまま水中に根がのびています。断崖絶壁の場合は水中では緩やかなカーブとなっています。違うケースも多々あるので初めてのポイントは地元ガイドに聞いてみるのが良いでしょう。根がのびている場合は水中で根にぶつかります。これで島の角まできたことがわかります。根を超えると急激に流れていることがあるので慎重に山越え（根超え）をします。緩やかなカーブのときは同一水深を保ちながら泳いでいるとコンパスの表示が少しづつ変化していくのがわかります。このとき大事なことは頭の中の地図にも軌跡を書き込むことです。ここまで練習したダイバーならば頭の中の地図に方角も記載できていることでしょう。
　水中で海面にいる船をさがすスキルです。透視度が良いときは海面ではなく水底をみます。遠くからでも水底に影がある（何となく暗くなっている）部分が見つかります。海面に何かがある証拠です。船を見つけたら、自分のダイビングボートか否かを確認します。数艘ある場合は、自分の船を見つけます。ラダーの位置や形状で判断するガイドが多いようです。筆者にはいまだにすべてが同じに見えます。船裏にショップ名（船名）を記載するか、カンパニーカラーで色を塗ってほしいと常々思っています。
　プロは音を頼りに船に戻ります。エンジンをかけていたり、タンクの充填をしていれば聞き取ることができます。水中では音がすすむ速度が空気中とは違うため音のする方角を正しく把握するのにはコツがいります。筆者は両手を耳に当ててレーダーのごとく音のする方向を感じ取ります。正しい方位がつかめなくても、音の大小で船が近いのか遠くなのかを判断することができます。船を通りすぎてしまったか否かも音で判断します。まさに人間ソナーと言われるスキルになります。これはワンウエイで、どこにとまっているかわからない船を水中から見つけるスキルになります。
　ナビゲーションスキルは、ここまで出来たら完了というスキルではありません。水中地形や海況（透視度や流れ）は毎回違います。それゆえにどんなに上達しても失敗することがあります。そして一般ダイバーは練習する機会にめぐまれないことも事実です。上達が実感できるスキルであり、上手なコース取りやナビゲーションができたときは自己満足に浸れるスキルでもあります。何より水中を自分の意思で好きな方向に好きなように動けるのは自立できたダイバーならではです。最初は失敗することも多いですが、それにめげずに練習を重ねることが大事です。ただし危ないなと思ったら海面に戻る、これだけは忘れないでください。

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