Inflator


インフレーター

 BCDの基本機能はブラダー(浮き輪)にエアーを入れることと出すことです。これだけでは他社との差別化ができないためエントリーモデルをのぞけば付加機能を追加するメーカーが多いです。そのなかでインフレーター機能には特色があります。
 BCDからエアーを排出する基本操作はインフレーターを高くかかげ排気ボタンを押すことです。このとき左肩がBCDの中で一番上部になるようにする必要があります。さらにその上にインフレーターの排出口をもってきます。立ち姿勢のとき(フィンファーストで潜航しているようなとき)は自然な体勢です。しかし水中では水平状態が基本です。このため水中でのインフレーターを使っての排出操作は不自然な動作となります。四十肩を患ってくると左肩をあげるのが辛くなります。
 腰や肩のところにダンプバルブがあります。これを引っ張るとバルブからエアーが抜ける構造です。水平状態のとき、腰を少し浮かせてバルブについている紐を引っ張ります。肩のダンプバルブは潜航時にフィンファーストでエアーを抜くときに便利に使えます。インフレーターそのものを引っ張ることにより左肩から勢いよくエアーが抜ける構造のBCDもあります。これらの排出機能は姿勢にあわせた排出ができますので、使いこなせるようになりたいものです。ただし基本はインフレーターを使っての排出です。どんなときでも確実にできるように、ときおり基本操作は忘れずに練習する必要があります。
 Aqualungの一部のBCDには左の脇のところに吸排気のレバー(i3)があり、このレバーを操作することで吸排気をおこなうことができます。SASの一部のモデルはインフレーターに3つボタンがあります。従来の吸排気ボタンと、インフレーターを掲げることなくエアーが抜ける排気ボタンです(AACS)。i3やAACSは水中で苦も無く排出操作が行えます。と、ここまではカタログの宣伝文句です。筆者はこれらの機能を評価していません。まずAqualungのi3ですが、レバーの上下だけでBCD内のエアーが調整できるのは一見優れた機能に思えます。しかしながらBCDは吸排気を繰り返すものではなく、最大深度でエアーを入れたら、あとは抜いていくのが基本です。i3は肺ではなくBCDで浮力調整をおこなうという中性浮力の基本に反するものです。次にSASのAACSですが、吸気ボタンのすぐそばに新しい排気ボタンがあります。間違えて押さないようにロック機能があります。しかしながらロックを外したあとに吸気ボタンを押してしまったら元も子もありません。そもそもエアーを排出するときは浮上気味のときですので、そのようなときに吸気ボタンを押したら急浮上になります。完全に違う場所にボタンを配置する構造になっていない限り安全とはいえません。i3もAACSも構造的には良く考えられていますが、初心者が使うにはリスクが大きい機能です。そしてなにより両者とも構造が複雑です。オーバーホールの費用があがります。構造が複雑になるということは日頃のメンテナンスが重要です。BCDはレギュレターに比べると雑にあつかわれる、雑に洗われることが多い器材です。インフレーターの不具合は水中での急浮上や海面での浮力確保の失敗につながります。筆者はごく普通のトラディショナルなインフレーターが一番だと思っています。ダンプバルブを併用すれば腕をあげる必要もありません。
 インフレーターでもう一つ考えることがあります。予備のセカンドステージ付きのインフレーターです。代表的なものにScubaproのAIRIIがあります。ホースが一本減りオクトパスをぶら下げる必要がないのが最大のメリットです。デメリットは構造が複雑ですので、オーバーホール費用がかかることと日ごろのメンテナンスを丁寧におこなう必要があることです。筆者としてはおすすめもしなければ、否定もしません。日ごろから自分で分解、清掃している立場からすると普通のオクトパスのほうがメンテナンスがしやすいので好きです。

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