Feathering


フェザリング

 水中ではマスクがなくなろうが、フィンが片方水底に落ちてしまおうが、ダイブコンピューターが壊れても死ぬことはありません。エアーさえあれば、どんな状況でも生きることができます。逆にエアーがなくなれば確実に死にます。
 水中で最も阻止しなければならないトラブルがエアー切れです。使いすぎに気づかないのは論外です。ホースの破裂やファーストステージの故障、セカンドステージのフリーフローでエアーが漏れてしまった場合の対処方法です。高圧ホースに亀裂が入った場合、1分たたずにタンクが空になります。最悪でも30秒以内に対応する必要があります。数あるダイビングスキルの中で唯一時間制限のあるトラブル対応スキルです。
 サイドマウント、減圧潜水の講習ではエアー漏れが発生したタンクのバルブを即座にしめるというスキルを学びます。セイフティードリル(シャットダウンドリル)というスキルです。特にマニフォールド式のツインタンクを背負う減圧潜水ではセンターバルブとサイドバルブの両バルブを同時にしめます。両手を使い、うしろに手をまわして手探りでふたつ同時にしめるわけです。このときバルブがどちら側にもまわり、間違えて逆にまわしてしまったらどうなるでしょうか? 正しい方向がわからなくなりパニックになります。そしてエアー切れで確実に死ねます。それゆえにテクニカルダイビングではバルブは全開にするのが基本です。エントリー前に他人がバルブに手をふれた場合は、念のため器材をすべて外して自分で再チェックするルールになっています。半回転もどされてしまい、それが原因でパニックになり、死んだとしても再チェックしなかったダイバーの自己責任です。誰も同情しません。そのくらい厳しいルールがテクニカルダイビングには存在します。
 講習でセカンドステージがフリーフローをおこしたときにエアーを逃がしながら吸い、海面に戻るスキルを学びます。これはテクニカルダイバーからすると眉をしかめるスキルです。エアーが漏れた場合は即座にバルブをとじるのが鉄則です。漏れるエアーをそのままにするなどありえないことです。「シングルタンクでバルブをとじたらエアーが吸えなくて死んじゃうじゃない?」と疑問に思うことでしょう。本当にそうでしょうか? タンクのバルブはエアーを吸うときだけあいていれば大丈夫です。エアーを吸うタイミングにあわせてバルブを少しだけひらき、すぐにとじます。この動作を繰り返します。水深30mからでも5-6回繰り返せば海面に戻ることができます。エアー漏れが発生したら、うしろに手をまわしてバルブをしめる。そして吸うときだけ少しだけあける。これがフェザリングというスキルです。背中のバルブに手が届かないときはタンクの底を少しだけもちあげてファーストステージが頭のうしろにくるようにします。こうすると体のかたい方でもバルブに手がとどきます。不安ならば浮上しながらBCDを脱いで、タンクを両足ではさみバルブを操作してもかまいません。水中でBCDを脱ぐスキルは次の節で記載します。

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