ダイビング用コンパスは安価なこともあり、器材購入のときに何気に他の器材と一緒に買います。しかしながら毎回持って潜るものの、ほとんど使われることなく飾りになっているダイバーも少なくありません。コンパスの使い方に関してはダイビングスキルの章に記載してあります。ここでは視点をかえてダイブコンピューターに内蔵されているデジタルコンパスについて考察してみます。
ダイブコンピューターに内蔵されているコンパスはキャリブレーションが必要です。キャリブレーションを忘れると、あるい外れていると正しい方位をしめしません。水中でコンパスが正しい方位をしめさないのは致命的です。ナチュラルナビゲーションと併用しているときは良いのですが、遠浅の砂地で島の方向(浅くなる方向)を確認したいときに反対方向に泳いでいくと事故になります。筆者は一時期ダイブコンピューターに内蔵のコンパスを使っていたこともあります。ポケットの中には通常のコンパスを予備で持っていました。安心感というか信頼性はトラディショナルなコンパスです。実際、ダイブコンピューターのメーカーによってはカタログやマニュアルに「ナビゲーション目的で使うものはありません」と免責事項として記載されている場合があります。
ダイブコンピューター内蔵のデジタルコンパスが役にたつこともあります。レックスペシャリティ―(沈船ダイビングのスペシャリティ―講習)では沈船の大きさを測ったり、沈んでいる方向を測量します。このときに正確な方位(角度)を測ることができます。過去に不発弾の調査ダイブをおこなったときは、不発弾間の距離と正確な方位、ブイからの方位をデジタルコンパスを使い測量しました。新しいブイを沈めるときも、正確な方位を測量して決めます。プロユースでは活躍の場があります。
これは通常のナビゲーションがだいたいの方角がわかれば、あとは目視で確認するのに対して、測量では真っすぐに張られたリールの上を泳ぎながら正確な方位が必要だからです。