理想気体


熱力学入門


単原子理想気体

平衡の条件から温度や化学ポテンシャルや圧力の定義ができました。 平衡状態ではあらゆる場所の温度、拡散的な系ではさらに化学ポテンシャルが 等しくその時に状態数が最大であること分かりました。

それでは実際に理想気体では化学ポテンシャルやエネルギー等がどう表されるのか見てみましょう。

化学ポテンシャル

理想気体の化学ポテンシャルは原子の総数 N から決めることができます。

therm14_01.png

いま、L の長さをもつ立方体の中にあるスピンゼロの自由粒子を考えます。 並進運動をするスピンがゼロの自由粒子の量子数 n と n+dn の間にある軌道の数は

therm14_02.png

なので、古典分布*1を仮定すると

therm14_03.png

エネルギーは

therm14_04.png

これを上の積分に代入すると

therm14_05.png

よって絶対活力は次式のようなシンプルな表現になります。

therm14_06.png

量子体積 VQ は粒子のドブロイ波長程度の体積なので 絶対活力は粒子が空間をどれくらい占めているかを表しているようです。

化学ポテンシャルは

therm14_07.png

エネルギー

理想気体の温度と全エネルギーの関係は

therm14_08.png

で、前と同様に計算できますが分配関数から求めるほうが見通しがよいかもしれません。

therm14_10.png

これより全エネルギーは非常にシンプルな形で表されます。

therm14_09.png

並進運動の1自由度のエネルギーが 1/2τ だからその自由度(3)倍になっています。

エントロピー

化学ポテンシャルの定義は次式です。

therm14_11.png

これを U,V を一定にして積分すると

therm14_12.png

となります。理想気体のエントロピーと体積の関係を考察する の式と非常に似通っています。

圧力

圧力の定義式は次式です。

therm14_13.png

これにエントロピーを代入すると

therm14_14.png

となり、状態方程式が得られます。

ここで初めて統計力学と高校で習った気体の運動論から導かれた圧力が一致しました。


Next >> 重力場の中の理想気体の化学ポテンシャル Previous<<フェルミ分布とボーズ分布

最新の20件

2020-12-25 2007-03-14 2006-10-30 2006-11-09 2007-03-14 2006-11-09 2006-11-10 2006-11-09 2008-05-20 2007-11-07 2007-11-01

今日の20件

  • counter: 492
  • today: 1
  • yesterday: 0
  • online: 2


*1 軌道を占める粒子数は少ないと仮定している