同軸線とエネルギー輸送
反射を理解するには長い道のりを旅する必要があります。
そこで最初に概要を示します。これを読んで理解できた人はこれ以上読む必要はありません。
理解できなった人は先に進んで追々理解していけば良いのです。
大抵の場合、答えはいたってシンプルなものです*1。
負荷で電磁波のエネルギーを消費しきれない時や運ばれてきたエネルギーをすべて輸送しきれないと反射する。
電気回路内では電源の電気エネルギーが電磁波として電線を経由して輸送され、負荷で消費されています。
輸送されるエネルギーはポインティングベクトル S=ExH で表されます。
電場を積分すれば電圧に、電流が磁場を作ることからわかるように
電圧と電流は電場と磁場の別の顔です。
回路のスイッチをいれた瞬間は、電源は向こうに何がつながれているかを知りません。
そこでみじかの同軸線の特性インピーダンス分だけの電圧電流を流します。
特性インピーダンスは後の方で説明しますが、電場で運ぶエネルギーと磁場で運ぶエネルギーが同じであるという条件から電圧と電流の比は決まっています。
それを特性インピーダンスと呼んでいます。
電磁波が負荷に到達して送ったエネルギーが負荷ですべて消費しきれないと反射します。
電線の特性インピーダンスと負荷が一致していれば反射は起こりません。
これをインピーダンスマッチング(整合)といいます。
マッチングがとれていなければ反射します。
反射した波は電源側に戻り、電源は電圧や電流を再調整して、例えば定電圧源なら電圧を一定にして送り返します。
これを何回か繰り返すと電源側が負荷を正しく認識するかのように 適当な電圧電流を流すようになります。
例えば、電源が1Vの定電圧源*2で特性インピーダンスが50Ωの同軸線につながれているとするとスイッチをいれた瞬間、1Vの電圧、20mAの電流を流します。
この電源はスイッチを入れた瞬間は単位時間当たり20mJの送電をします。
もし負荷の抵抗が特性インピーダンスと同じ50Ωならば1V、20mAの電圧電流が抵抗にかかり、エネルギーを単位時間当たり20mJ消費します。この場合は反射するものがありません。
もし、負荷の抵抗が1000Ωならば20mAの電流を流すためには20Vも必要となりもはやその電流を流すことが
できません。
ところで反射するということはポインティングベクトルの向きが反対に向くということです。
ということは反射波は電場か磁場かのどちらか一方だけの向きを変わっているはずです。
上記の場合、電流は減らなければならないので電流の向きが(磁場の向き)が反転し、電圧(電場の向き)は元の向きと同じである反射波が返ります。
反対に負荷が1Ωの場合は負の電圧が反射することになります。
発電所は常に消費された電力分だけ発電しなければなりません。
もしどこかのクレーンが送電線を切ってしまえば、消費されるはずだったエネルギーはそこで反射して発電所に向かっていきます。その時、発電所では負荷の変動を初めて知ることになります。*3
『負荷で電磁波のエネルギーを消費しきれないと反射する。』の劇的な例が大停電なのです。
ここで、我々が学ぶべきことが見えてきました。
Next >> 電磁場のエネルギー