今度もしつこく、散逸効果を見てみましょう。 次の例はZピンチです。 一瞬のうちに大電流を流すと電流が作る磁場によってプラズマが収縮します。 磁場による圧力、磁気圧は1/2BHです。これがピストンとなってプラズマを押します。 ピストンはイオンの音速を超えて動くので前面に衝撃波がでます。 衝撃波が中心に到達すると一瞬淀んで高温高密度のプラスマができます。
この過程は輻射を除けば断熱過程で、輻射も温度が低いうちは効きません。
前の例と同様、プラズマをどれくらいまで圧縮できるかは散逸がどれくらいあるかで決まります。
衝撃波は強い不連続面なので、散逸を起こします。
また、圧縮が対称でなければ渦が発生し大きな散逸を起こします。
散逸の大きい方が体積をより増加させてしまうので圧縮できません。
もし、同じエネルギーを磁気ピストンに与えたすると淀み温度は散逸があろうとなかろうと変わりません。
よどみ点ではピストンは止まっていてピストンがもっていたエネルギーはすべて気体の内部エネルギーに変換されています。
一般に密度をあげるよりも温度をあげるほうが簡単です。
そのことをもって熱が発生し温度が上がり圧力が上がるから圧縮しづらいと考えてはいけません。
もし、同じエネルギーを圧縮だけに使えた場合と散逸して温度を上げるだけに使われた場合どちらが圧力をあげるか
考えてください。圧縮したほうが圧力は上がります。
あくまで、仕事に使われるべきエネルギーの一部が(散逸して)温度を上げるだけに使われるから圧縮できないのです。
目標の温度と密度を両立するには散逸がどれくらいあるか知らなければなりません。
圧縮する方が温度を上げるより難しいのです。
前のばねの例をみれば球状のターゲットを一様に圧縮することがいかに難しいか直感できるでしょう。
慣性核融合炉がいまだに実現しないのも基本的に圧縮が難しいからです。
慣性核融合炉のように瞬間的に燃料を燃やすには密度を上げるか燃料を大きくするかです。
圧縮が難しいのである程度ターゲットを大きくせざるを得ません。
そのため温度をあげるのにレーザーエネルギーを大きくしなければなりません。
エネルギーを上げればいずれ、水爆のように燃焼に成功することは間違いありません。
今は、どこまでターゲットが大きくなってしまうのかを探っています。
また、温度と圧縮の両立をあきらめて中心部だけをあたためて点火する高速点火方式が提案されています。
問題は何の犠牲もなく中心部にエネルギーを輸送できるのかにかかっています。
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