インダクション加速器


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誘導加速器

誘導加速器は一般の静電加速器と違って何段も直列に並べていくスタックが可能です。また、基本的にRF加速器とは違い、負荷電流に制限がありません。さらにRF加速では電磁波一部の位相しか使用できないので、ミクロなバンチを持っているのに対し、誘導加速器は正パルス領域のほぼすべてを加速に使用できます。

一般的に、誘導加速器の原理は1対1トランスで説明されます。このモデルは完全に正しいのですが、あくまでモデルなので使用法には注意が必要です。

tutorial_fig5.gif

では、米国のHIFグループの絵と説明をもとに、トランスモデルを説明しましょう。1次回路に電流が流れるとコアの磁束を打ち消すように誘導起電力が生じて、2次回路に負荷電流が流れます。上図のように2次回路はビーム電流です。

ビームが流れてこない時即ち無負荷の時、それでも一次側に流れる電流をリーケージ電流といいます。 通常のトランスでは何巻きも巻いてあるのでインダクタンスが大きくリーケージ電流は小さいのですが、 誘導加速器では一巻きなので無負荷だろうと大きな電流が流れコアを磁化させます。 コアが飽和するとほとんど短絡状態になるのでそこで印加を止めなければなりません。

ところでビームは誘導電場で加速される訳ではありません。それをこれから説明します。

完全導体内部では電場が生じることはありません。電場が発生しそうになると電子が電場を打ち消すように素早く移動します。金属はほぼ完全導体なので中に電場がありません。 導線の中に電場がないのですから誘導電場があるとそれを打ち消す電場があることになります。 その電場は電子が移動して作るクーロン場です。ケーブルの中では電場は0ですので

induc01_01.png

となり、ギャップの所には誘導起電力と等しいクーロン電場による電圧がかかることになります。

trans.png

ビームはこのクーロン電場で加速されるので、ギャップの形状が加速電場を決めます。 インダクション加速器は誘導加速ではありません。

ここでトランスモデルの注意点をまとめます。

インダクション加速器の等価回路は 1:1の結合定数 K が1のトランスと同じである。
加速電場は誘導電場ではなく、クーロン場である。

この2点に気をつければトランスモデルは正しいと言えますが、回りくどさは否めません。 ではもっと原理的で直感的に理解できる見方があるのでしょうか。


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