読書メモ / 賢明なる投資家


読書メモ

このページは、私のサイトに昔あった、「賢明なる投資家読書会」の再録です。

序文

いつぞやの日記にも書いていることなんですが、何か新しい概念を習得しようという時には、いきなり分析に走ってはいけないんだと思います。あまり知識のない段階で分析をしはじめると、なにやら間違った結論に到達してしまい、分裂に陥ってしまうからです。

新しい概念を主張している人はどんな人なのか、一番主張したいのはどういうことなのか、それを知ってから細部について検討しても遅くないと思うんです。まずは、ウォーレン・バフェットが書いた序文を読んでみて、ベンジャミン・グレアムがどんな人だったのか、私の感じたことを記しておきます。

序文では、グレアムのことを自分の父を除くすべての人のうちで、もっとも影響を与えた人であると、バフェットは記しています。おそらく、バフェットの投資手法は、この序文を書いた頃には、グレアムのそれよりもフィッシャーのそれに大きく影響を受けていたにもかかわらず、です。

もちろん、グレアムが投資における最大の思想家であることもそうなんですが、それよりも、グレアムの人間性のすばらしさが、バフェットにこれほどまでの深い敬愛の念を抱かせる原因になったのでしょう。

バフェットはこう書いています。「寛容さこそが彼の成功そのものである」と。他者に対する尊敬の念を忘れずに、自分の持っているものを他者に分け与えることを厭わない人。それが、グレアムだったのだろうと思います。

そして、その資質は、バフェットにも引き継がれているのだと、私は思います。

はしがき

はしがきに記されている、「賢明なる投資家」の目的を私なりに大胆にまとめると次のとおりになります。

同書が目的とするのは、投機ではなく、投資です。まず、投資と投機の違いを明確にすることが重要です。では、投資に必要なものは何か。もっとも重要なのは、過去の経験に基づく冷静な判断力です。

グレアムは、25歳にして60万ドル(1919年当時のことです!)の年収を得ていた超優秀なファンド・マネジャーだったのですが、1929年の大恐慌時にはほとんど破産状態にあったそうです(「バフェット投資の真髄」P56〜57)。

その経験が、グレアムの超保守的とも言える投資手法に大きな影響を与えたことは想像に難くありません。

1にも2にも損をしないこと。経験豊かな人材を抱えた投資信託会社でさえ、市場平均以下のパフォーマンスしか上げられないという事実を厳しく受けとめ、自信過剰にならないことが肝要です。

では、損をしないためにはどうすれば良いのか。しっかりとした投資方針に基づき、少々のことには動じないで、きちんとした調査の上で価値判断をする必要があります。上っ面を見て決めるのではなく、きちんと中身を見て選ぶということですね。投資をするのは、一生のパートナーを選択するのと同じだと思えばいいのかも知れません。

上記の約束を守った投資方針、知の巨人と言っても過言でないグレアムですら陥った破産の危険をくぐりぬけて編み出された投資方針を投資の初心者に提供すること。それが、グレアムが「賢明なる投資家」を書いた目的ではないかと思います。

なんとありがたいことなんでしょうか。

第1章

第1章で、グレアムは、「証券分析」で試みた投資の定義について紹介しています。

投資とは、詳細な分析に基づいたものであり、元本の安全性を守りつつ、かつ適正な収益を得るような行動を指す。  

そして、上記条件を満たさないものはすべて投機だとしています。つまり、投資と投機は、リスクの有無をメルクマールとした、全く別の概念であるとしているわけです。

別の言葉で説明しましょう。グレアムの定義では、収益を目的とする売買のうち、リスクのないものが投資で、そうでない(リスクのある)ものが投機です。


投資の定義の次に、グレアムは、「防衛的投資家」と「積極的投資家」が採るべき投資方針について説明しています。

おっと、「防衛的投資家」と「積極的投資家」の説明がまだでしたね。

投資家のうち、「防衛的投資家」は(元本の保全を前提として)収益を上げるための努力を惜しむ人のことで、「積極的投資家」はその努力を惜しまない人のことを指します。それほど高いリターンは望まない代わりに、人生の大切な時間やエネルギーを、投資には最低限しか裂かない人のことを「防衛的投資家」と言えば良いのでしょうか。

しかし「防衛的投資家」とか「積極的投資家」という邦訳は何とかならないものでしょうか。特に、「積極的」投資家というと、何だかリスクを背負っているようなイメージがついて回るのは、私だけなんでしょうかね。本来、投資はリスクとは無縁なのに(防衛的か積極的かにかかわらず)。


防衛的投資家がとる方針として、グレアムが勧めるのは、債券と株式への分散投資です。投資の割合は、原則として半々で、状況に応じて25%〜75%に調整することを、グレアムは勧めています。

株式市場が好況の時には株式の比率を25%、その正反対の時には比率を75%にまで調整することが可能です。

比率をタイプミスしてるって?う〜ん、やっぱり正しいよ。

債券にしろ株式にしろ、購入を選択する際には、長期にわたって収益を上げていて財政状態の良い優良企業のものを選択すべきだとしています。

ここで言う優良企業というのは有名企業ではありません。優良企業とは、様々な指標をもとに優良と判断された企業のことを指します。


積極的投資家がとるべきでは「ない」方針として、グレアムは次の3つを挙げています。

  • トレーディング

そもそも、元本が保全されるような類のものではないから、投資からは除外

  • 短期的な銘柄選択

予想は外れるかも知れないし、予想が当たっていたとしても、すでに株式市場の他のプレーヤーが予想済みで、自分がカモになっている可能性が十分にある

  • 長期的な銘柄選択

短期的な予想以上に、将来の収益に関する予想は外れる可能性が高く、仮に当たったとしても、プロのアナリストを出し抜くことは至難の業である

では、積極的投資家は何をすべきか。グレアムは、(1)本質的に安全で将来性のあることをする、(2)ウォール街(兜町や北浜と読み替えてください)では一般的でないことをするべきだとしています。

それは具体的にはどのようなことを言うのでしょうか。結論を先に言うと、

  • 割安株への投資

    内在価値以下の価格で株式を購入すること

  • 特殊な状況への投資

    裁定取引や不良債権流動化・ある種のヘッジ取引

の2つが、積極的投資家のとるべき方針です。ただ、「特殊な状況」への投資については、もはや投資にならない(とまでは言ってませんが、それに近い)状況になっていると、グレアムは説明しています。その初版の出版以来、収益が減少したということですから、「賢明なる投資家」の影響が大きかったのでしょう。日本では、あまり読まれていない同書ですから、もしかすると、そういう状況は沢山あるのかも知れません。

割安株への投資について、グレアムは3つの公式を発表したと言っていますが、そのうちの1つだけをここでは紹介しておきましょう。

それは、純流動資産(運転資本)よりも時価総額が大幅に下回っている株式を購入することです。具体的にどうすれば良いかですって?慌てないで、「賢明なる投資家」の2章以下を読み進んで行きましょう。

第5章

この章では、防衛的投資家の株式ポートフォリオに関する4つの基準が示されています。

  • 過度にならない程度の十分な分散投資
  • 財務内容の良い有名な大企業
  • 長期にわたる継続的な配当金支払いの実績
  • 過去7年程度の平均企業収益に照らして支払うべき価格の上限を決めること。

これを、Makky 流に株式投資を始めたばかりの日本の個人投資家のPFにあてはめてみると、

  • 10銘柄程度の分散投資
  • 株主資本比率が50%以上
  • 総資産額もしくは売上高が100億円以上
  • 規模の大きさが業界内で3位以内に入ること。それ以外の理由でも有名だ と思えれば、選択してもよい。
  • 7年以上無配がない(7年以上のデータは得られないことが多い)
  • 株価収益率(PER)が10倍以下

となります。

上記基準により選択された銘柄は、年に1度は見直す必要があります。収益が悪化したり、株価が高い水準になりすぎた場合には、PFを組み替える必要があるかも知れません。


いつ買うかということは、株式投資の初心者にとっては難しい問題です。グレアムは、ルシル・トムリンソン女史の発表した「ドル・コスト平均法」による投資を紹介しています。

ドル・コスト平均法とは、同じ銘柄を一定の数額、毎年決まった時に購入する方法です。株価に大きな変動がある場合、悪い時期に集中的に買い付けしてしまう危険性があるのですが、ドル・コスト平均法をとることによって、その危険を分散することが可能になります。

「ナンピン買い」は投資下手な証拠と揶揄されることが多いのですが、変動の激しい相場において、株式の価値を認識した上でした計画的なドル・コスト平均法は、結果的に「ナンピン」になったとしても、平均取得価格を一定の金額に抑えることのできる極めて有効な買い付け方法と言えるでしょう。

第6章

この章では、グレアムは、積極的投資家にも株式と債券への分散投資を勧めています。リスクを避けるべきという観点からは、防衛的投資家も積極的投資家も同じ行動をとるべきだとしているわけです。

実は、私は債券投資をしたことがありません。超低金利の今の時代は、それで良いと思いますが、いずれ債券投資も視野に入れなければならないのでしょう。まだ、きちんとした勉強ができていないので、「賢明なる投資家読書会」のページでは、債券投資についての記載は極力省いています。いずれ、勉強した上で補充しなければなりません。

次に、グレアムは、積極的投資家がとるべきで「ない」方針を掲げています。まず、リスクを避けるべき、というグレアムらしい発想ですね。グレアムは、

  • 優良な優先株・・・機関投資家に任せるべき
  • 劣後債や優先株・・・割安価格でなければ手を出すべきでない
  • 外国政府債・・・利回りがいくら魅力的でも避けるべき
  • 転換社債や新規発行証券・・・用心すべき

としています。結局、安心して手を出せるのは、既存の普通株と、優良課税債券・良質な非課税債券だけだということになります。

なんとも回りくどい説明です (^_^; なお、グレアムの定義によれば、今の日本に安心して手を出せる債券はないと言っても過言ではありません。超低金利のため、それを保有すること自体がリスクだからです。


グレアムが避けるべきとした投資対象のうち、新規公開普通株(いわゆるIPO)について、Note しておきたいと思います。グレアムは新規公開普通株のことをこう説明しています(鍵括弧は Makky)。

・・・個人企業の株式を一般に上場する場合で、多くはその企業の過半数の株式を保有
している「大株主たちが有利な市場価格で持株を売却」し、その現金を他に投資するという
形で資産を分散するものである・・・  

鍵括弧内部分がどういう意味か、賢明なる読者のみなさんならおわかりでしょう。そう、売主である大株主にとって有利ならば、買主にとっては不利なのです。

新規公開普通株の価値はどうやって計ればよいのでしょう。過去の業績のデータもあまり公表されておらず、過去の平均 PER もわからない、不況においても配当を実施できる体力があるかどうかもわからない、等々・・・という状況では、私にはその価値を計ることは不可能です。

DCF法によって、価値を計ることは可能じゃないかという反論が予想されますが、その基となるデータはどの程度信用できるのでしょうか。公開前に、株価をつり上げるために、合法な範囲で決算書を見栄えよくしている可能性はないのでしょうか。特に、それが大株主の利益に直結しているのならば・・・。

この章の締めくくりとして、グレアムの次の言葉を紹介しましょう。

賢明なる投資家ならば・・・(新規公開株の)短期的利益とその結果としての痛ましい
損失は他のだれかにまかせ、自分たちは手を出さないことを肝に銘じているはずである。

第7章

前章では、積極的投資家がとるべきでない方針について説明がありました。いよいよ、積極的投資家がとるべき方針についての説明に入ります・・・と思ったのですが、グレアムの説明はまだまだ慎重です。

グレアムは、積極的投資家が普通株を売買する際に見られる特徴的な以下の4つの行動を掲げています。

  • 1.相場の変動に合わせて売り買いをする
  • 2.よく吟味した「成長株」を買う。
  • 3.割安株を買う。
  • 4.「特殊な状況」下の株式を買う。

上記行動のうち、1と2については、グレアムは肯定的な評価を下していません。必ずしも投資にならないわけではないのですが、よほどの知識を持ち合わせない限り、判断を誤ってしまうことが、否定的な評価の理由です。

さらに、4については、グレアムは「賢明なる投資家」で説明するのは適当ではないとしています。プロがする投資であり、アマチュアが手を出すべきではないというのでしょう。

結局、グレアムが積極的投資家に勧めるのは割安株の購入です。これを言うために、いったい何頁を費やしているのでしょうね。でも、実際の投資でも、グレアムはこのくらいのエネルギーと慎重さをもって判断をしていたのだと思います。


割安株の購入の前に、グレアムは、比較的人気のない大企業への投資を積極的投資家にも勧めています。つまり、低 PER な株式への投資ですね。

つぎに、ようやく割安株の購入に関する説明に入ります。グレアムは、割安株を次のように定義しています。

割安株とは、詳細に分析した結果、現在の価格よりも大幅に価値が高いと思われる銘柄であり、・・・その価値が本来の価格よりも、少なくとも50%以下になっていて初めて「割安」銘柄と呼ぶこととする。

読んでいて唖然としますよね。倍になるような株しか買ってはダメだというのですから。でも、何度も読んでいるうちに、皆さんも同じように考えるようになっているはずです。

割安株を見つけだす方法として、グレアムは次の2つの方法を挙げています。(ただし、あまり具体的なことは説明していませんが。)

  • 1.見積もりによる方法
  • 2.事業者にとっての価値を計る方法(資産の換金価値)

1については説明を省きます。2について、この章では、グレアムはあまり具体的な説明はしていません。運転資本により注意が払われるとし、もっとも見分けやすい割安株として、優先負債をすべて差し引いた後の純運転資本以下の価格で売られている株式を挙げています。

なぜ見分けやすいかというと、評価の難しい、固定資産や無形資産の評価を避けて通ることができるからです。


グレアムは、割安株のうち、二流企業の株に関する説明に、かなりの頁を割いています。そう、防衛的投資家には避けてとおるべきだとした二流株に関してです。

第7章の要約も長くなってきていますし、ただ、書き写すだけになってしまうので、詳しい説明は省きますが、私が最も注意すべきだと思う点について、説明しておきましょう。

それは、二流株は、往々にして低めに評価されがちであり、本来の価値よりも低い株価であっても、必ずしもそれが見直されないという結果に終わる場合があるということです。

例えば、PER5倍程度の株式があったとしましょう。それだけを見れば、かなり割安だと感じるかも知れませんが、二流株の場合には、往々にして、その程度の水準が当たり前になっていて、ちっとも株価が騰がらないということが起きうるわけです。

だからこそ、グレアムは言います。「投資家は、二流株をその企業のオーナーにとっての価値よりもずっと低い価値、つまり割安価格で買ったときのみ、平均して満足のいく収益を得られる」のだと。

第8章

この章では、グレアムは、株式市場における、株式の価格の変動に対して、投資家がどのように対応すべきかを説明しています。

有名な、「Mr.マーケット」の登場です。市場全体の、株式価格の変動を、同氏の機嫌になぞらえて説明しているのです。同氏は、感情の起伏が激しく、機嫌の良い時は高値での売買を持ちかけ、逆の場合は、大バーゲンセールで持ち株を放出します。

Mr.マーケットに、まともに付き合えばどうなるでしょうか。理論武装も何もなく、自分を保護してくれるものが何もなければ。ジェットコースターよろしく、上下動激しく、めまぐるしい取引に忙殺されること請け合いですが、いずれ、自滅の道を辿ることは間違いないでしょう。

同氏に翻弄されない唯一の方法として、グレアムが投資家に勧めるのが価値への投資です。ファンダメンタルズに基づき、企業の価値を計って(機嫌を計るのではありません)、機嫌が悪くなり、その価値よりも大幅に低い値段をつけたときにMr.マーケットから買い、同氏の機嫌が良い時に高く売りつける、これが価値への投資です。

価値への投資を心がける者にとって、相場の変動というのは、暴落場面においては価値ある投資先を見つけ、暴騰場面においては、その実りを収穫するための、いずれも大きなチャンスなのです。さて、いつものように、グレアムの言葉でこの章の説明の締めくくりとしましょう。

株価が大幅に上昇したすぐ後には絶対に株を買ってはならない。
また、大幅に下落したすぐ後には絶対に売ってはならない。

第11章

この章では、グレアムは、債券及び普通株の分析方法について紹介しています。もっとも、その有効性については、かなり懐疑的なようですが(特に成長株において)。

証券分析にあたって、まず投資家がなすべきことは、財務諸表の正確な解釈です。そのための教本として、「インタープラテーション・オブ・フィナンシャル・ステイツメンツ」というグレアムの共著にかかる書籍が取り上げられています。

そんな本知らないって?いいえ、少なくとも、私のサイトを何度か訪れて頂いている読者の皆さんは、すでにその存在をご存じなはずです。上記書籍の邦題は「賢明なる投資家(財務諸表編)」なのです。

財務諸表の点検が終わったら、今度は証券の価値の見積りを行い、それと現在の価格を比較して、大幅に安い時に買うのが理想的です。普通株の価値の見積りにあたっては、将来の何年かにわたる平均収益を見積り、それに適切な「資本ファクター」を乗じることで求められるものだとされています。

具体的な、平均収益や資本ファクターの求め方は、ここでは紹介しません。おそらく、絶対的な方法というのは存在しないでしょうから。どうしても知りたいという方は、「賢明なる投資家」を実際にご覧になって下さい。

私がここで紹介しなくても、おそらく読者の皆さんは、自分なりの価値の見積もり方法をお持ちでしょう。どうしても価値の見積もり方を知りたいという方は当サイトと相互リンク頂いている、masa0301jp さんのバリュー投資情報局を訪問されれば、正しい知識を得ることができるはずです。

ただ、どんな見積もり方をしても、それはある程度正しいし、ある程度は間違っているはずです。完璧な方法で価値を見積もったつもりでも、それは、実は当期利益をただ10倍するのと、大差ないようなことも、往々にしてあることなのです。

だからと言って、価値を見積もるのを放棄するよう薦めているわけではありません。個別銘柄の見積もりに対する過信を捨て、見積もった価値よりも大幅に安くなった銘柄を分散して購入する方が、予測に全てを託して株式を購入するよりも、多少はマシな行為なのです。

第14章

この章では、グレアムは、防衛的投資家対して、具体的な銘柄選択方法を示しています。

防衛的投資家に対して示した方法は、

  • ダウ平均採用銘柄(日本でいえば、日経平均採用銘柄)で構成されたポートフォリオを組むこと
  • 計量的な基準で選択された銘柄からなるポートフォリオを組むこと

の2つです。

計量的な基準につき、具体的な数字を掲げることはここでは避けますが、防衛的投資家は、企業の適切な規模・「十分に」健全な財務状況・収益の安定性・配当歴・収益の伸び・妥当なPER・妥当なPBRを有する企業の銘柄を選択し、十分な数の銘柄に分散投資すべきだと、されています。

正確な価値の見積もりをする術を持たない、あるいは、それだけの時間的余裕を持たない、大多数の個人投資家に対して、グレアムは、その経験上、大きな損失を被ることのないポートフォリオの組み方を提示してくれているのです。

ただし、グレアムは、防衛的投資家に対して、市場平均を上回るようなリターンを期待してはいけないと、釘を刺しています。プロのファンドマネジャーですら、そのほとんどは市場平均を上回ることができないのですから。

具体的にどのような銘柄を選べばいいのか、「賢明なる投資家」には書いてありません。しかし、ひとつの解決策として、公益企業株が提示されています。上記計量基準を満たす電力会社やガス会社の株に分散投資してみるのも、面白いかも知れませんね。

第15章

個別銘柄からなるポートフォリオで市場平均を上回るリターンを求める積極的投資家に対して、「その勝算が低いことは初めにはっきりと断っておかなければならない。」と、グレアムは、のっけから突き放した態度をとっています。

じゃあ、どうすればいいんだ、「賢明なる投資家」は個別銘柄選択により並はずれた利益を上げようとする者のバイブルじゃなかったのか、という読者の皆さんの声が聞こえそうですね。

グレアムはなぜこんなことを言うのでしょうか。それは、バリュー投資が、大多数の人にとっては、それを継続して実行するのが耐え難いものであるという、人間性に関する深い考察があるからではないかというのが、私の意見です。

ほんとんどの人は、それが利益に繋がらないことが頭ではわかっていても、ことお金に関しては冷静さを保てないものです。株価が騰がれば買うし、下がれば売る。そして、将来性抜群だと思う企業の株は、どんなに高くても買うし、人気のない企業の株はいかに安くても見向きもしない。

全部が全部、そうだとは言いませんが、多かれ少なかれ、人は上記のような性質を持っていて、感情の支配から免れることは非常に困難だということを、グレアムは経験上よく承知していたのでしょう。

それでもなお、バリュー投資を目指そうというならば、自分の説明を注意深く聞きなさい、さもなければ防衛的投資家として、市場平均以下の成績で満足しなさいと、グレアムは警告しているのです。

さて、前置きが長くなりました。グレアムが積極的投資家に対して勧めるのは、市場から見捨てられた割安銘柄から利益を得ることです(これを、「神の届かざる手戦略」と名付けたのが、4u さんです)。そのためには、一般に受け入れられていない特別な手法に従う必要があります。

グレアムが示した特別な手法のうち、ここでは、比較的真似をしやすそうな、正味流動資産価値以下の割安銘柄への分散投資を紹介しておきましょう。

正味流動資産とは、流動資産から流動負債を差し引いたものを言います。グレアムは、株価が正味流動資産価値に戻ることに対して、かなり絶対的な自信を持っていたようです。

十分な銘柄数に分散投資し、2・3年は待つことのできる忍耐力があれば、必ず利益を得ることができるとまで、グレアムは言っています。

賢明なる投資家で紹介された銘柄を買って、報われるまでに3年半(ただし、利益は165%−単利にして年間47%)の時間を要したそうですが、それは最も時間の必要な部類に属していたそうです。

「たった」2・3か月程度の値動きに失望せずに、辛抱強く割安銘柄を保有していれば必ず報われると知っていれば、あなたは待ちますか?それとも待てませんか?

前者ならば積極的投資家として、今すぐ四季報を使って割安銘柄を探して分散投資すれば、私と同じく報われることでしょう。後者ならば、市場平均を上回るリターンなど忘れて、防衛的投資家として着実に資産を増やすことを考えてください。

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