いま俺は故あって探偵の真似事なんぞしている。本当はそんな面倒なことしたくないのだが頼んでないのに依頼人が来るのだからしようがない。そしてきょうも俺の元には依頼人が迷い込んでいた。
「今日の依頼人は?」
依頼人と会うことも話す事もできない俺は相棒に尋ねる。
「今庄香織さん、17歳高校生。依頼内容は恋人への伝言だそうよ」
「わかった。簡単だな」
「そうそう、伝言を伝える時に着て欲しいのがあるって」
「うげぇ、またかよ・・・」
「仕方ないよ、おにいちゃん。すてきな思い出がある服なんだよ、きっと」
脇に置いてある人間の子供ぐらいの大きさのぬいぐるみから声がした。中に内蔵されているスピーカーが音の発生源だ。ちなみに声の主は俺の最初の依頼人である少女。依頼を解決したのがきっかけで俺に懐いてしまい、そのあとも俺につきまとっている。まあ、追い払うのも面倒なので好きな様にさせている。なお、いまのところ名前は企業秘密なので『ぬいぐるみの少女』と呼ぶことにする。
「はぁ、めんどくせぇ」
「いやなら、このまましとく?」
「い、や、だ。誰が好き好んでこのままにするか! ちゃっちゃと片付けるぞ」
「伝言だけだし前回の依頼より楽だよ。お兄ちゃん」
「はぁ、このままにするのも面倒だしやるか」
俺は観念してため息をもらす。
それを見て相棒たちは「分かっているよ。ほんと優しいんだから」とでもいうように笑っていやがった。いや、2人の内の1人、つまり『ぬいぐるみの少女』は俺には見えないのだが、間違いなく笑っているだろう。
そろそろ俺の置かれている状況を説明した方がいいかも知れないな。
俺はいま幽霊に体を乗っ取られている。とは言っても俺の場合は普通とは違う。
俺は霊に乗り移られても体の支配は奪われることはない。
だか、代わり身体的特徴が乗っ取った霊のものになると言う特異体質らしい。
つまりその霊が女性なら俺の体は女のそれになる。
例えばいま俺には依頼人・今庄香織が憑依している為17歳ぐらいの少女の体つきになっている。
元に戻るにはその霊が成仏するなどで俺から離れなければならない。
そう、俺が元の体に戻る為には霊の願いを叶えて成仏させるしかないと言うことだ。
と言うことで元に戻るにはまず憑いている霊の願いを知らないといけないのだが面倒なことに俺には霊感が全くない。
そこで俺に代わり霊(つまり依頼人)の話を聞いてくれるのが相棒だ。
相棒は霊能力が高いらしく、霊と話すことは勿論、除霊もできるらしい。
一度俺に憑いた霊を除霊しようかと聞かれたことあるが、それはなんというか面倒なので遠慮した。
外へ出て依頼人の自宅に向かった。伝言する為に着る服を取りに行くためだ。
そうでなくでもこの状態(依頼人の体のサイズ)では着れる服がない。本来の俺の服では大きすぎるのだ。
なら、いまどんな格好しているかって?いま俺の体には依頼人の他に『ぬいぐるみの少女』が憑いている。
俺への『俺の役に立ちたい』という思いが強い為か、この子が俺に憑くと他にどんな霊が憑いていたとしてもこの子の本来の姿、つまり9歳ぐらいの少女の姿になる。
この姿に合う服は俺の家に(なぜか)常備してあるので、今はその服を着ているというわけだ。
ちなみに普段は俺に憑いていたのでは『俺と遊べない』のでスピーカー内蔵のぬいぐるみに憑依してそれを動かしている。
「で、俺の着る服ってどんなのだ?」
「香織ちゃんが彼に買ってもらった水着よ。香織ちゃんが元気になったらそれを着て一緒に泳ぐ約束してたんだって。でも香織ちゃん、一度も着ることなく病気で死んちゃったから、せめて着ている所だけでも着ている所見せてあげたいんだってさ。あっ、ちなみにビギニだって」
「うわぁ、きつ〜」
“でも、願いを叶えてあげないと元に戻れないよ? お兄ちゃん。”
俺の中の『ぬいぐるみの少女』が喋る。相性の問題か慣れなのか『ぬいぐるみの少女』が俺の中に憑いてる時だけは俺もこの子とは話す事ができるようになった。なんというか後付けサクサクな感じの設定だ。
「それに香織ちゃんの送ってくれたイメージによると香織ちゃんに似合いそうな大人し目の奴だったわよ。よかったじゃん、派手なんじゃなくて」
「とは言ってもだなぁ・・・。はぁ、めんどくせぇ」
それを聞いて相棒と俺の中の『ぬいぐるみの少女』は面白そうに笑っていた。
《後書きというかなんというか》
設定というかSS?
・【天体観測】
・プリティーサーラ
・ガルヴェローザ
・胡蝶の見る夢
・探偵物
・目覚めの夜に別れを告げて
・華代ちゃん
・華代ちゃん番外編
・ハンターシリーズ
※提供:真城悠さま
・これは夢オチシリーズ
※提供:Zyukaさま
・花子の悩み相談室!
※版権:流離太さま
・六門世界
※版権:グループSNE
少年少女文庫
喫茶ブルーコスモス
真城の城
※リンクフリー確認分のみリンク