カンタンジェイピー グラップラー刃牙


グラップラー刃牙』(グラップラーバキ)は、『週刊少年チャンピオン』に連載された板垣恵介の格闘漫画。第1部はOVA化、TVアニメ化されている。通称『バキシリーズ』。連載中にタイトルが変更されたため『グラップラー刃牙』『バキ』『範馬刃牙』の三つのタイトルを持つが、世界観やキャラクターは同一のものである。 叫び声や悲鳴を表すセリフの最後に「ッ」、「ッッ」といった表現を多用するのが特徴。

外伝作品として、『バキ外伝 -疵面(スカーフェイス)-』(原作:板垣、作画:山内雪奈生)がある。

作品概要

[編集] 第1部 グラップラー刃牙

テレビアニメ化されたのはこの部のみ。全42巻。

   * 地下闘技場編
   東京ドーム地下に存在する地下闘技場をめぐる物語。主人公の最年少チャンピオン範馬刃牙を始めと鎬兄弟や、マウント斗羽等、個性の強いキャラクターとの試合が行われた。また、序盤から最強マッチといえる独歩対勇次郎戦を惜しげもなく描く。物語の導入部分にあたる。
   * 幼年編
   時系列的には地下闘技場編より以前。幼年時の刃牙の戦いを描く。連載中作者が母を亡くしたこともあってか、「母」というテーマが大きな核となっている。死に逝く母のために最強の地位を通したい花山薫に、母の愛を求めそのために父の強さを求める範馬刃牙。巨大な父としての範馬勇次郎の人間像や、朱沢江珠の女と母の間での葛藤が描かれる。特に朱沢江珠は存在感が強く、刃牙を通しての勇次郎への野生的な愛はグロテスクなほどに描かれ、それがラストシーンを強烈に印象づける。また、戦いの中で互いの「絆」を見い出し、それを糧として自らを鍛え上げるという範馬刃牙の思想も具体的に描かれる。戦いの舞台は、闘技場での試合ではなく屋外での喧嘩となる。ヤクザ界最強の喧嘩師花山薫や、ガイア率いる軍隊、野生動物の夜叉猿等、より強い物と戦いたいという刃牙の姿勢がうかがえる。
   * 最大トーナメント編
   刃牙と、実在の闘技者をモデルとしたキャラクター達(登場人物参照)によるトーナメント戦。その中には、愚地独歩などの過去にこの作品に登場したキャラクターもいる。開会式の入場シーンは通常連載の倍以上のページを使って全選手を紹介、全試合をダイジェスト化する事なく描き、次から次へと出てくる個性的なキャラクターによる試合は、どちらが勝つか想像し難い戦いの連続だった。途中で夜叉猿が出てきたり、勇次郎が乱入したり、予測を覆す展開も。トーナメント戦という対戦方式は、破天荒な物語を破錠させることなく終幕へと導くのに有用であった。第一部は全編最強に対する問いが述べられているが、特に最大トーナメント戦では多くの戦いの中にその主題を盛り込んでいる。ちなみにトーナメントは31試合をたった一夜で行なうという殺人的なスケジュールで開催されている。

独創的でリアリティをも感じさせる展開の数々は現実の世界にも水面下ながら絶大な影響を与えた。地下闘技場の試合会場は、後に現実の米国格闘技界にも影響を与えたと思われる。また本気になった際、ヒッティングマッスルが浮かび上がる勇次郎の背中を「鬼の顔」と表現するなど、巷でも背中の筋肉がブームとなった。

[編集] グラップラー刃牙(外伝)

   * 最大トーナメントの翌日、本編内でプロレス界の二大巨頭であったマウント斗羽とアントニオ猪狩が長年の決着を着けるため、東京ドームのリングで戦いを繰り広げる。この時点で各々のモデルとなった二人はリングから姿を消してしまい(片や逝去、片や引退の形で)、現実世界での直接対決は無くなってしまった「夢の対決」と言える。刃牙対猪狩戦でも出てきていた「プロレス」というテーマが大きくかかわってきている。

[編集] 第2部 バキ

「グラップラー刃牙」の続編。全31巻。

   * 最凶死刑囚編
   第1部に登場したキャラクターと、シンクロニシティ[1]で脱獄した5名の死刑囚たちとの戦い。最大トーナメントの予測不可能な展開はさらに加速し、花山対スペック戦といった名勝負を生み出す。第1部に比べ、「恋愛」や「性」の要素が濃厚。全編に渡って、「敗北とは何か」が主題といえる。画風もより立体的なものに変化している。「敗北を知る」ということを志したことから、逆に自分の欲することを手に入れること=勝利を一度もつかむことが出来なくなってしまっていたドリアンの敗北と、その後の救急車のシーンは、作者入魂の場面だという。また、「武器の使用以外すべてを認める」のルールの下で闘ってきた第1部からさらに発展させ、「武器の使用」をも認め、ステージや人数など戦い方も限定しない完全ノールールの戦いが描かれた。このころから作者は範馬勇次郎のステージにどうにか息子の刃牙をたどり着かせたいと考えていたふしがあり、SAGAもそのためという見方もある。
   * 大擂台賽(だいらいたいさい)編
   中国武術界最強の「海皇」(詳細は後述する)を決める大会を舞台とした物語。範馬刃牙の解毒治療のために、烈海王が刃牙を大会に出場させる。真相は毒手(詳細は後述)をもつ敵と対戦して毒を裏返すという荒業の治療法だった。全編にわたって「武力対暴力」をさらに様々な戦いを通して多角的に追求され、最終戦の郭海皇対勇次郎戦で、武の極致は死にありといった結論を導き出した。アライと刃牙の試合はアライ編への伏線として互いの強さを引き立てるための試合内容で、期待されていた範海王(登場人物参照)はあっけなくやられ、2秒で倒された郭春成の噛ませ犬っぷりは伝説となった。
   * 神の子激突編
   マホメド・アライJr.を中心とした種々の戦闘模様。死刑囚編終盤より刃牙の彼女・梢江にアピールしていたアライJr.が、最強と最愛の二つを手に入れるために範馬刃牙に勝負を挑む。最終的には刃牙が圧勝し、勇次郎に挑戦状を叩き込む展開となった。

[編集] バキ特別編SAGA

   * 刃牙と梢江の初性交を描く。全1巻。『バキ』の中で発生したエピソードであるが、非常に濃厚な性的描写が大半を占めることなどから「ヤングチャンピオン」に掲載された。極端な描写からファンの間ではイロモノ作品として扱われたが、作者の「性」と「戦い」との近似性などのテーマが描かれて興味深い。後半は本編の柳との戦いにつながる。作中で使われたティッシュ箱は8箱で刃牙の絶倫ぶりが伺える作品でもある。

[編集] 第3部 範馬刃牙

連載開始前の宣伝では、刃牙と勇次郎の決着戦が行われることが示唆された。現在10巻まで刊行。超規格外の巨大象、刃牙の作る幻影との戦い、『ピクル』に登場した原人ピクルなど、ほかの作品と比べるとストーリーやキャラクターの意外性、独創性が目立つ内容となっているのが特徴。

   * 異"種"格闘技編
   第3部の序章編であり、超規格外の巨大象を仕留めた父・勇次郎に対し、全盛期のヘビー級ボクシングチャンピオン・アイアンマイケルや体重100kgの昆虫(カマキリ)などの幻影と戦いスキルを積む刃牙の姿が描かれる。
   * アメリカ刑務所編
   ミスターアンチェインこと、ビスケット・オリバと立ち会うために、アリゾナ刑務所(ブラックペンタゴン)に入所した刃牙。だがその前に二代目アンチェインを称する「ミスター2(セカン)」こと純・ゲバルがオリバと戦うことに。ゲバルを打ち倒し、怪物ぶりをアピールしたオリバを、刃牙はどう攻略するのか。
   * ピクル編
   1億9000万年の眠りから覚めた未知の原人であり、T-レックスを捕食していたという"史"上最強の生物・ピクル。その彼がストライダムの提案により来日する事になるが…。

[編集] バキ外伝 -疵面(スカーフェイス)-

   * 「チャンピオンRED」に連載されている。現在4巻まで刊行。花山薫を主人公としたスピンオフ作品。本編で語られることのないヤクザとしての花山の姿が描かれている。花山が服役中のエピソードなどもあり、本編との時間軸との関係は不明。だが、コミックス2巻の第12撃「息子」以降、花山の頬にスペックから受けた傷跡(銃弾を口に入れられ、爆発させられた痕)がある。