懇談会座長古屋議員の決意


懇談会座長古屋議員の決意

懇談会座長の古屋圭司衆議院議員は、北朝鮮による拉致被害者の救出を期して開かれた四月二十四日の「小泉首相の決断を求める国民大集会」において、<この法案が国会に提出されることが無いように徹底的に頑張ってまいりたい>と決意を述べています。また当日出席していた懇談会顧問の安倍晋三議員にも言及し<この法案には徹底して反対>である旨を明言しています。 この古屋議員が、御自身のホームページで書かれていることを紹介します。

日本の自由と民主主義を守るために(マンスリーIIC 6月号インタビュー)

平成17年6月1日 <人権擁護法案> かつて国会で廃案になった法案が、突然降って湧いたように登場してきました。

 この発端は、平成三年に国連で人種差別等の人権侵害への対応が決議されたことからでした。その後、日本でも審議されましたが、平成十年、政府は“我が国は、既存の法制度や立法以外の措置によって差別行為を抑制することができないほど明白な人種差別行為が行われている状況ではなく、人種差別禁止法等の立法措置が必要とは考えていない”との正式見解を出しました。その後、当時の連立与党のプロジェクトチームにて政治的配慮もあって、本法案が提出されました。しかし、いわゆる「メディア規制」の可否以外は、本法案の根幹について議論されることなく廃案となりました。

 再度登場した法案の骨子は以前と変わりありませんが、詳細に調べますと、人権侵害の定義「不当な差別、虐待その他の人権を侵害する行為」が極めて曖昧(あいまい)で、根本的に問題があります。

 それは、“恣意(しい)的な解釈が可能”であり、人権侵害された人やその疑いがある人を救う法案ではないからです。人権侵害への擁護は断固行なっていかなくてはなりません。しかし、この法案は自由と民主主義、表現の自由を侵害する恐れがあり、悪用される危険性があるのです。

 このような法案を議論もなく、国会に提出していくことは日本の民主主義を破壊する行為です。

 私たちは行動を起こしました。

 四月五日、「真の人権擁護を考える懇談会」を発足させ、会長に平沼赳夫衆議院議員、顧問に安倍晋三衆議院議員等、三十人を越える自民党の国会議員が結集し、私は座長を務めることになりました。

 この懇談会では、いくつかの問題点を指摘しました。

 第一点は、人権委員会は法務省の外局として人権委員会を国家行政組織法三条委員会として設け、公正取引委員会のように準司法的な強力な権限を付与されることです。これが実現しますと、人権委員会は、特別救済の名の下に、出頭要請、事情聴取、立ち入り検査などの強制力を発揮し、拒否すれば罰則が適用されます。

 裁判所の令状なしに強制執行が可能となることで、国民に畏怖(いふ)の念を与え、自由な言論を抑圧する恐れが出てきます。準司法機関とするならば、本来であれば司法制度改革を通じて対応していくべきものだと思います。

<日本社会の秩序を壊す悪しき人権擁護法案>  第二点は、人権擁護委員の選考規定の不透明さです。現行の委員は一万四千人いますが、地域の名士になっていただいているのが実情です。加えて六千人増員するという法案であり、そこには国籍すら規定されておらず、偏執的な思想の持ち主や特定団体等の影響を強く受ける恐れがあるのです。

 現行法では委員の政治活動が禁止されていますが、新法案では禁止と明記してありません。法務省に問い合わせると、準公務員の扱いだから特に規定していないといいます。しかし、なんらかの目的意識や強大な権力を持った委員が六千人増えることは、事実上、政治・思想活動と等しい活動が可能であり、この法案が成立すると、自由と民主主義、表現の自由が損(そこ)なわれ、国家にとって大変に危険な状況が生まれます。

 言論に生きている文化人、メディア関係者はもちろん、私たち政治家も、不当な差別を受ける可能性が高くなり、あわせて、国民の日常生活にも大きな影響を与える法案なのです。

 例えば、これまでノーネクタイやペットお断りの店、刺青(いれずみ)お断りの銭湯などでも、人権に関わる問題だと訴えられると、委員会が救済手続きを開始する可能性が出てきます。

 お年寄りが年金で経営する小さなアパートでも、外国人お断りという入居条件に対して委員会が特別救済措置を取り、家賃を滞納する素性の知れない人たちを排斥できないことにもなりかねません。

 また、教育現場にも大きな影響を及ぼします。平成十一年に国旗・国歌法が成立し、国旗を掲揚し、国歌斉唱するという教育指導要領に基づく先生の指導に、「歌わない自由もある。人権を侵害された」という生徒や父兄の偏った主張に対して、目的意識を持った人権擁護委員がことさら大きく取り上げて救済を申請した場合、調査せざるを得なくなります。対象となった先生はテレビや新聞で大きく批判され、その挙句に地位すら剥奪(はくだつ)されるかも知れません。

 「間違いの場合は訂正を発表する」と法務省は修正案を出していますが、それは事後の処置であり、人権の回復は決してできません。企業に公正取引委員会が立ち入り調査を行なっただけで新聞に大きく報道され、企業自体に問題がない場合でも、その後、入札が排斥されるなどの被害を受け、場合によっては倒産するケースもあるのです。

 さらに、北朝鮮による日本人拉致被害者救出活動にも影響を及ぼします。卑劣な北朝鮮の犯罪に対して、「金正日はけしからん」という意見を北朝鮮に共感を持つ委員や朝鮮総連や北に近いグループが聞きつけ、「うちの首領さまを批判した。人権侵害だ」と、強烈に繰り返して訴えた場合、救済手続きを開始することもありえるのです。

 私は「北朝鮮に拉致された日本人を早期に救出するために行動する議員連盟」事務局長を務めていますが、議連連盟や家族会による被害者の救出活動そのものが制限される可能性も出てきます。同胞を救出することができない、こんなばかなことが許されていいのでしょうか。KGBやゲシュタポなどの秘密警察が日本に出現するといっても過言ではありません。

 このように極めて大きな問題がある人権擁護法案がなくても、権利侵害を受けた方には現行の司法制度改革をさらに進めることで、対応することが可能なのです。

 高齢者や児童への虐待、家庭内暴力には個別法が立法されており、充分に対応できると思います。また、司法書士などが簡単に裁判の手続きができるADR(裁判外代理制度)を充実し、現行の人権擁護委員の権能を強化し、簡便で公正な司法救済を受けられるようにすることで権利侵害を受けた者は救われると思います。