平成17年8月30日asahi.com


経過報告

「経過報告」と題するページ。http://www.asahi.com/information/release/20050830b.htmlより引用。2箇所、見出し作成のためのオブジェクトを付加した。 引用開始

知事に直接取材せず

 郵政民営化法案が参議院で否決され、衆議院が解散される事態となった政治状況を受けて、朝日新聞は政治部を中心に地方総局を含めた取材態勢をとりました。

 同法案に反対した亀井静香・元自民党政調会長の動向も取材の焦点となり、複数の記者が取材を進めた結果、亀井氏が8月13日に田中康夫長野県知事と会談したとの情報を得ました。

 これを受けて政治部が18日、田中知事の地元である長野総局に、亀井氏との会談場所や会談内容を取材するよう要請。長野総局の西山卓記者(28)は、20日に長野県塩尻市で開かれた田中知事が県民と対話する車座集会で田中知事に直接取材した、としてその結果を政治部に報告していました。

 21日付朝刊に掲載された記事について、政治部では掲載する際、西山記者からの報告内容を記事に盛り込むことを長野総局に連絡。22日付朝刊の記事についても同様の連絡とともに、記事を掲載した紙面のゲラ刷りをファクスで長野総局に送りました。しかし、報告が取材に基づかないものであることはそれまでの時点では分からず、西山記者の報告内容がそのまま紙面に掲載されました。

 田中知事が23日の定例記者会見で、(1)亀井氏と東京で会ったが、長野県で会った事実はない(2)この件について朝日新聞から直接の取材はなかったーーなどと指摘。このため、長野総局の金本裕司総局長が田中知事に直接会って確認を求めるよう西山記者に指示しましたが、同記者は取材しませんでした。

 25日になって、県庁から田中知事が文書で回答を求めていると伝えられ、同日夕から西山記者が虚偽情報であることを認め始めました。

 26日朝には金本総局長が田中知事に会い、会談場所が誤っていたことなどを伝えておわびしたうえで、改めて詳しく説明することを約束しました。田中知事からは報道内容に強い抗議を受け、経緯をより詳しく調べるように重ねて要請されました。

推測で「会談は県内」

 28日まで調査をした結果、(1)西山記者は20日にあった車座集会の取材に行ったが、宿直勤務のため集会が終わる前に取材を切り上げ、田中知事に直接、新党に関する質問をしなかった(2)長野総局に戻った記者は、上司である総局長に、田中知事に直接取材し、知事が亀井氏と会談した事実を認めたなどと虚偽を報告(3)総局長はそうした取材結果を政治部の担当記者にメールで送るように指示(4)西山記者は、会談場所については推測に基づいて長野県内としたほか、会談での田中知事の発言として、これまでの定例記者会見での発言を引用して勝手にメモを作成、政治部の担当者に送ったーーなどの事実がわかりました。

 西山記者は「取り返しのつかないことをした」と話しています。

 政治報道に限らず、朝日新聞社では、複数の記者が互いに取材結果を連絡し合って、真相に迫る取り組みを日常的に行っています。

 また、紙面に掲載する場合には、記事をまとめる責任者が、関係した記者に確認を取っています。今回のケースでは、そもそもの連絡内容が取材に基づかないものであったうえ、結果として、そのことをチェックできませんでした。 (2005/08/30)

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