Purity


来生たかお大百科 >『Another Story』←自作曲→『Dear my company

※原則的に、来生たかおは“来生”に省略、来生えつこは“来生えつこ”と表記。

概要

1997年にリリースされた19枚目のオリジナルアルバムである。

キティエンタープライズ(キティレコード)から日本コロムビアへの移籍後、初めてのアルバムであると同時に、2000年に再びキティMMEへ移籍した為、同社在籍時の唯一のアルバムとなっている。

1994年末の段階では、翌年にオリジナルアルバムをリリースする予定があったが *1、来生えつこは、前作のオリジナルアルバムAnother Story』がそのコンセプト故に緊張を強いられた為、暫く間を空けたいと思っていたという*2。また、歌手デビュー20周年という節目であり、アルバム制作全体をきちんと考え直そうと思っていた所、日本コロムビアへの移籍やスケジュールが決まり、最大限の努力をする事になったと述べている*3。それでも、スタッフの顔触れがこれまでとほぼ同じで、いつものように作業が出来たのは良かったと語っている*4

一方で、移籍第一段故に、初心に還るという気分は皆が意識していたものの、それはいつも心掛けている点であり、コンセプトを具体的にどう表現するのか、中々絞れずにいたが、「ピュアな感じ」「純粋さ」みたいなものをアピール出来れば、という案に落ち着いた*5

また、歌詞に関して、明確に解り易くアピール出来る形をスタッフに相談した所、ディレクターから「女心」と、全曲の主人公を女性にするという提案がなされたが、これまで女性アーティストへの提供曲や、弟によるそのカヴァー等では、女言葉を使う事に割り切りがあったものの、オリジナルアルバムの全収録曲で試みるのは初めての事で、戸惑いを覚えながら作業を始めたという*6。自分自身は女性なのだから女心を描いて当たり前であり、弟も違和感なく女心を歌えるアーティストだとは感じているものの、これまでのアルバムではずっと男性アーティストである弟が歌う前提で情景を考えて来た為、簡単ではなかった事を吐露している*7

最終的には、矢張り弟が歌うのに全くの女言葉というのは抵抗があった為、一人称の「私」や「○○だわ」等のフレーズを意図的に排し*8、1、2曲、歌詞を付けた段階でディレクターと交渉した結果、受け取りようによっては男性の主人公と解釈出来る余地を残す方向で進める事になり、初めの3曲を何回も書き直す内に、それまでの戸惑いが集中力に転じ、弟にも「そういう歌詞であれば違和感はない」と言われてほっとしたという*9

歌入れが半分以上済み、全体のバランスを見ながら歌詞を書く段階に入ると、今度は、コンセプトを「女心」に絞った分、世界観が似通って来るので、上記の縛り(一人称の「私」や「○○だわ」等のフレーズの排除)を考慮しつつ、1曲毎のシチュエーションを見直し、偏らないようにする作業に難儀し、最後の歌入れが終わった時はほっとしたが、不安は残ったままだった*10。その後、ミキシングが終わった時や、収録曲順が決まった頃、改めて歌詞を見た所、それぞれの物語になっており、メロディーやアレンジとの調和が感じられ、自身にとってもピュアな体験だったと語っている*11

ただ、帯にもブックレットにも「女心」というコンセプトについて一切書かれていない為、リスナーが気付かない可能性があり、その点は残念と述べている*12。また、女心のみを描いて行くと、単純に明るい夏真っ盛りの歌になり難いという事は発見だったという*13

一方の来生は、当初は初めての試みに抵抗感があり*14、「どうかな」と感じたものの、以前から「シルエット・ロマンス」や「セカンド・ラブ」等、女性側の楽曲を歌って来た事や*15、元々感情を入れて歌う方ではないので今まで通りで良いと判断するに至った*16。また、自分は男性なので本当の女心は解らないが、いつの時代も男性の最大の関心事は女心である為、自然に歌えたとも述べている*17

アルバムのタイトルには「精神的な恋愛への憧れ」が込められているとしながらも、自分自身は純真ではなく、だからこそ純なものに惹かれると語っている*18。また、最初に10曲程作り、そこに4、5曲を加え、最終的に12曲くらい収めたいと語っていたが、実際は全10曲に落ち着いた*19

当初、アルバムタイトルは「PURE」で確定し掛けたが、前年の9月、同じ日本コロムビアから他のアーティスト*20が同じタイトルでCD*21をリリースしていた事が分かり、「PURE」の名詞形である現在のタイトルに決定した*22

井上鑑が全編曲及びサウンドプロデュースをしており、井上の妻であるシンガーソングライターのやまがたすみこもコーラスで参加している*23

収録曲

トラックタイトル作詞作曲編曲収録時間トラックタイトル作詞作曲編曲収録時間
1闇雲来生えつこ来生たかお井上鑑5:136水色の六月来生えつこ来生たかお井上鑑4:42
2やるせなさの輪郭来生えつこ来生たかお井上鑑5:287裸足の心来生えつこ来生たかお井上鑑4:41
3渇いた季節来生えつこ来生たかお井上鑑5:138黄昏がえり来生えつこ来生たかお井上鑑4:08
4まどろみ時計来生えつこ来生たかお井上鑑4:429さよならの重み来生えつこ来生たかお井上鑑4:10
5もう一度の時間来生えつこ来生たかお井上鑑4:4110さまよう言葉来生えつこ来生たかお井上鑑4:18

参加ミュージシャン

  • Keyboards:井上鑑(1〜10)
  • Vibraphone:井上鑑(10)
  • Electric Guitar:松原正樹(1〜10)、今剛(1)、鈴木茂(3)
  • Acoustic Guitar:松原正樹(2)、吉川忠英(3,4,9)
  • Gut Guitar:吉川忠英(8)
  • 12strings Guitar:吉川忠英(3)
  • Steel Guitar:今剛(9)
  • Electric Bass:高水健司(1,4,8,9)
  • Wood Bass:VAGABOND 鈴木(3,6)
  • Drums:青山純(1,4 - 8)、山木秀夫(3,9)
  • Chorus:比山清咏史(4,7)、やまがたすみこ(4,7)、国分友里恵(4,7)
  • Strings:金原Group(1,3,6,8,10)
  • L.Per.:浜口茂外也(2,3,7,9)
  • Harmonica:八木のぶお(2)
  • Flute:J.H. コンセプション(2)
  • Sop.Sax:J.H. コンセプション(5)
  • Flugel Horn:数原晋
  • F. Horn:南浩之(5)、高野哲夫(5)
  • Harp:朝川朋之(10)

参加スタッフ

  • Produced by 来生たかお & えつこ
  • Co-Produced & Directed by 本間一泰(FBI.J)
  • Sound Producer:井上鑑(PABLO)
  • Recording & Mixdown Engineer:井川彰夫(reM)
  • Additional Engineer:小長谷正美(一口坂st.)
  • Recorded & Mixed at HITOKUCHI-ZAKA STUDIO
  • Mastering Engineer:保坂弘幸(COLUMBIA)
  • Artist Manager:小松裕二(BASIC)
  • Artist Promoter:Tomonori Kambe(ORIGENIUS / COLUMBIA)、石角隆行(六角堂)
  • Sales Promoter:Koji Takahashi(COLUMBIA)
  • Artist Management:BASIC, INC.
  • Supervisor:竹脇隆(BASIC)、神田善啓(FBI.J)
  • Contractor:永井幸治(HOT WAVE)
  • Lyrics Co-ordinator:宮崎真哉(BECAUSE)
  • Art Direction & Design:小松清一(COLUMBIA CREATIVE)
  • Photographey:細野晋司(STAR SHOT)
  • Styling:Kumiko Yamazaki
  • Hair & Make-Up:kate(GA LA LA)
  • Editing:Chika Fujita(COLUMBIA)
  • Special Thanks to 高橋宏幸(S. MAN)、高橋さえ美(T-off)、来生優子、高橋純代(一口坂st.)
  • Executive Producer:岡田謙(ORIGENIUS / COLUMBIA)、本間一泰(FBI.J)

録音

  • 日付記載なし/一口坂スタジオ

初出 & 復刻

発売年月日メディア:規格品番発売元/レーベル備考
1997.02.21CD:COCA-14021日本コロムビア/ORIGENIUS
2009.10.19CD-R:CORR-10543コロムビアミュージックエンタテインメント○オンデマンドCD(銀盤CD-R仕様)

アルバムタイトルの表記

ジャケットケースの側面部
CDオリジナル版ピュアリティー PurityPurityピュアリティー Purity
2007年版ピュアリティー PurityPurityピュアリティー Purity

パッケージの体裁

  • オリジナル版CD:ジュエルケースにブックレットを挿入

帯のコピー

記載なし


*1 『FM STATION』1994年11月28日号“WHO'S WHO いい詞といい曲があれば結局は勝ち ボクの姿勢はずっと変わっていない”(ダイヤモンド社/1994.11.28)
*2 来生たかお Concert Tour '97 Purity』のツアーパンフレット
*3 来生たかお Concert Tour '97 Purity』のツアーパンフレット
*4 来生たかお Concert Tour '97 Purity』のツアーパンフレット
*5 来生たかお Concert Tour '97 Purity』のツアーパンフレット
*6 来生たかお Concert Tour '97 Purity』のツアーパンフレット
*7 来生たかお Concert Tour '97 Purity』のツアーパンフレット
*8 ベストCD-BOX『来生たかお作品集 Times Go By』付属歌詞集“来生たかお×来生えつこ”(2001.05)
*9 来生たかお Concert Tour '97 Purity』のツアーパンフレット
*10 来生たかお Concert Tour '97 Purity』のツアーパンフレット
*11 来生たかお Concert Tour '97 Purity』のツアーパンフレット
*12 オフィシャルファンクラブ「TAKAO CLUB」の会報『égalité』vol.49(ベイシック/1997.02)
*13 オフィシャルファンクラブ「TAKAO CLUB」の会報『égalité』vol.49(ベイシック/1997.02)
*14 『読売新聞』1997年2月5日“芸能 来生たかお 透明感あふれる歌声健在 2年ぶりにオリジナルアルバム”(読売新聞社/1997.02.05)
*15 JFN系列『ヒルサイド・アヴェニュー』(1997.02.23)(オフィシャルファンクラブ「TAKAO CLUB」の会報『égalité』vol.49(ベイシック/1997.02)に掲載
*16 『読売新聞』1997年2月5日“芸能 来生たかお 透明感あふれる歌声健在 2年ぶりにオリジナルアルバム”(読売新聞社/1997.02.05)
*17 JFN系列『ヒルサイド・アヴェニュー』(1997.02.23)(オフィシャルファンクラブ「TAKAO CLUB」の会報『égalité』vol.49(ベイシック/1997.02)に掲載)
*18 TOKYO FM『エモーショナルビート』(1997.01.20)
*19 オフィシャルファンクラブ「TAKAO CLUB」の会報『égalité』vol.54(ベイシック/1997.12)
*20 水原由貴と小澤正澄によるユニット「PAMELAH(パメラ)」の事だと思われる。
*21 1996年9月4日リリースの「PAMELAH」のオリジナルアルバム『Pure』の事だと思われる。
*22 オフィシャルファンクラブ「TAKAO CLUB」の会報『égalité』vol.49(ベイシック/1997.02)
*23 オフィシャルファンクラブ「TAKAO CLUB」の会報『égalité』vol.49(ベイシック/1997.02)