※原則的に、来生たかおは“来生”に省略、来生えつこは“来生えつこ”と表記。
2015年に歌手デビュー40周年を記念してリリースされたセルフカヴァーベストアルバムである。
過去の音源のみを収録した一般的なベストアルバムの形態とは異なるが、帯のコピーでは「セルフカバーベスト」と題されている。
詳細の第一報は、同年11月2日にオフィシャルサイトでなされた。Disc1の楽曲はフルオーケストラを基本に、Disc2のそれはバンドサウンドで新たにアレンジされている。なお、Disc1の「思い出の時差」はバンドアレンジ、「浅い夢」はアコースティックアレンジ(ブックレットではタイトルに「アコースティックバージョン」と添えられている)、Disc2の「風のニュアンス」「
来生は、オーケストラでの全編曲及び指揮で参加した渡辺俊幸の仕事に関して、ポップスの世界を知り尽くしており、センスが良く、今回も余計な事を一切しない自然なサウンドで仕上げてくれたと語っている *2。また、バンドでアレンジされた楽曲に関しては、1960年代のカンツォーネやシャンソン等、ヨーロピアンなサウンドを目指したいう*3。世代的にはオリジナル版を知らないと思われる安部潤だが、来生のピアノとヴォーカルだけのシンプルなデモテープを元に思った通りに仕上げてくれ、また、かつてシンプルに作るイメージだった星勝が、かなりデジタル化をしてスケールが大きくなっていた事に驚いたという*4。
2015年の初め、歌手デビュー40周年を迎えるに当たって2枚組CDの企画を聞かされ、特に趣向を凝らそうとは思っていなかった来生は驚いたという*5。35周年記念アルバム『ひたすらに』を制作した際、もうレコーディングスタジオで歌う機会はないと思っていたが、オーケストラと共に贅沢に作らせて貰い、有り難く感じたのと同時に、懐かしいアレンジャーとの仕事は感慨深いものだったと語っている*6。因みに、来生は歌手デビュー30周年記念の頃からアルバム制作の度に「今回が最後のアルバム」と感じており、本作に関するインタビューでも「最後かも知れない」と語っている*7。
選曲に関しては、メロディーのユニークさ、完成度、ペーソスを感じさせるものを中心に*8、来生自身が気に入っていて、且つヴァーカルが駄目だと感じている楽曲、アレンジを変えたい楽曲の中から選んだ為、どうしても懐かし目のものが多くなり、リリース当時にキーやテンポを変えてもっとゆったりと歌いたかった楽曲や、アレンジに関する不満を言えなかった楽曲等が含まれていると述べている*9。初期の楽曲は、デモテープにある程度サウンドのイメージを入れ、打ち合わせをした後はアレンジャーに託すのが通例だった為、自身の意図と異なる場合があったという *10。リリース当時のイメージで聴き馴染んだ楽曲も、オーケストラのアレンジでがらりと変わったので、新鮮に受け止めて貰えたらと語り*11、機会があれば他の楽曲も歌い直したいと述べている*12。また、選曲をしている最中に、昔の楽曲と今の楽曲とに変わりがない事を再認識したという*13。オーケストラでアレンジされた楽曲に関しては、2014年に行われた『JAバンク石川コンサートVol.4 来生たかお&オーケストラ・アンサンブル金沢コンサート』の際の選曲を基本にしたという*14。
新曲に関しては、本当はもう少し曲数を作りたかったという忸怩たる思いはあるが、姉弟共に乾いたタオルから水を絞り出すかのような大変さがあったと述べている*15。
「ボートの二人」「まなざしの彼方」は同年のコンサートツアー『来生たかお Stand Alone 2015 Acoustic Tracks』のMCにおいて収録が告知されていた。また、新曲の「
同年の9月1日、渡辺俊幸やピアノで参加した紺野紗衣等との詳細な打ち合わせが行われ*17、9月20日にはアバコクリエイティブスタジオにおいて東京フィルハーモニー交響楽団等と共にレコーディングが行われた*18。紺野はレコーディングの感想として、素晴らしい名曲の数々と素晴らしい編曲に幾度となくウルウルし、宝石を鏤めたような煌めきの時間だったと述べている*19。なお、「余白の街」「流れる…」以外の渡辺が携わった楽曲は、2014年の『JAバンク石川コンサートVol.4 来生たかお&オーケストラ・アンサンブル金沢コンサート』で同じ編曲で披露されていた。
アバコクリエイトスタジオのレコーディングでは、音量が大きいパーカッションとドラムを小さ目なスタジオ「302」に、それ以外の楽器を空間に余裕のあるスタジオ「301」に配置し、後者のブース内で歌う来生と共にリンクさせて行われた*20。この模様は、本アルバムのプロモーション動画『来生たかお Special Movie 「夢の途中(セーラー服と機関銃)」 篇 』で垣間見る事が出来る。
オーケストラとの共演に関して来生は、以前行った同様のコンサートツアーの大変さを思い出し、普段はドンカマチック(リズムボックス)を聴いてレコーディングをしている身からすると、指揮棒の合図のタイミングが微妙にずれる事等から、難しかったという*21。大人数(60人*22)のオーケストラは各演奏者のスケジュールを押さえるのが大変な為、1日で10曲をレコーディングする事になり、これまでに経験した事のない試みに前夜は緊張で寝付けなかったが*23、まずは仮歌のつもりで歌い、良くなかったらやり直すつもりで臨んだ所、ほとんどそのまま生かす事になったと述べている*24。
全曲の録音及びサウンドインスタジオ以外でのミックスダウンを担当したレコーディングエンジニアの深田晃によれば、オーケストラらしい音が録音出来るよう、通常スタジオでは余り使用しないメインマイクを指揮者(渡辺俊幸)の頭上付近に設置し、特にストリングスのマス感(大勢で演奏をしている雰囲気)が得られるようにし、ミックスダウンではオーケストラらしいダイナミックレンジを大事にしながらヴォーカルと上手く混じり合うようにしたという*25。
同年11月10日から11月30日まで(支払いが銀行振込の場合は12月1日の入金確認が締め切り。後に、好評につき受付が1週間延長されて12月7日までに、支払いが銀行振込の場合は12月8日の入金確認が締め切りに変更)に「TEN YEARS ONLINE SHOP」のオンラインショップで本アルバムを予約した者には、12月16日から発送され、葉書サイズの特製カレンダーがプレゼントされた。その後、「TEN YEARS ONLINE SHOP」では一時、品切れの状態になったが、コンサートツアー『40th Anniversary 来生たかお Symphonic Concert 2015-2016 夢のあとさき』の公演初日である2015年12月19日からは予定通り会場販売が開始され、翌2016年1月27日からは一般発売された*26。
ブックレット(CD版)には、音楽評論家の天辰保文によるライナーノーツが掲載されている。
ジャケットやブックレット、特製カレンダーに使用された来生の写真は、モノクロ、セピア調で統一されており、煙草を銜えてピアノに向かっている。来生は、世の中の嫌煙ムードに抵抗していると語っている*27。ジュエルケースに収納された特製カレンダーは、2000年代以降の写真を中心に作られている。なお、LP版のジャケット写真は、CD版のそれを拡大し、上下左右の部分を切り取ったものになっている。
2016年2月15日、動画投稿サイト「You Tube」にて、「夢のあとさき ANY 日本音声保存」名義で、本アルバムのリリース及び歌手デビュー40周年記念コンサートツアー『40th Anniversary 来生たかお Symphonic Concert 2015-2016 夢のあとさき』の日程を告知する『来生たかお Special Movie 「夢の途中(セーラー服と機関銃)」 篇 』と題された動画が公開された。
本作は、オリコンチャートの第160位(最高位)にランクインし、来生のアルバム売上のトップ10入りを果たした*28。また、2018年にはDisc1の内容(トラック1を除く)を収録した完全限定生産のLP盤『夢のあとさき(オーケストラバージョン)』として改めてリリースされる事になり、5月10日から同月31日まで「TEN YEARS ONLINE SHOP」で先行予約を受け付け、6月7日に配送完了、その後6月13日に一般リリースされた。
トラック | タイトル | 作詞 | 作曲 | 編曲 | 収録時間 | トラック | タイトル | 作詞 | 作曲 | 編曲 | 収録時間 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | Opening | ※該当なし | ※該当なし | ※該当なし | 0:18 | 8 | セカンド・ラブ | 来生えつこ | 来生たかお | 渡辺俊幸 | 5:15 | |
2 | 夢の途中 | 来生えつこ | 来生たかお | 渡辺俊幸 | 5:20 | 9 | 針の雨 | 来生えつこ | 来生たかお | 渡辺俊幸 | 5:33 | |
3 | シルエット・ロマンス | 来生えつこ | 来生たかお | 渡辺俊幸 | 5:55 | 10 | マイ・ラグジュアリー・ナイト | 来生えつこ | 来生たかお | 渡辺俊幸 | 4:38 | |
4 | 流れる… | 来生えつこ | 来生たかお | 渡辺俊幸 | 5:43 | 11 | 涼しい影 | 来生えつこ | 来生たかお | 紺野紗衣 | 5:55 | |
5 | いとしい あした | 来生えつこ | 来生たかお | 渡辺俊幸 | 5:26 | 12 | Goodbye Day | 来生えつこ | 来生たかお | 渡辺俊幸 | 5:48 | |
6 | 思い出の時差 | 来生えつこ | 来生たかお | 紺野紗衣 | 5:44 | 13 | 風と共に去りぬ | 来生えつこ | 来生たかお | 渡辺俊幸 | 5:58 | |
7 | 余白の街 | 来生えつこ | 来生たかお | 渡辺俊幸 | 7:04 | 14 | 浅い夢 | 来生えつこ | 来生たかお | 紺野紗衣 | 4:10 |
トラック | タイトル | 作詞 | 作曲 | 編曲 | 収録時間 | トラック | タイトル | 作詞 | 作曲 | 編曲 | 収録時間 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | これから始まる物語 | 来生えつこ | 来生たかお | RYUMEI/来生たかお | 6:20 | 8 | コンデンスミルク | 来生えつこ | 来生たかお | 安部潤 | 4:03 | |
2 | ボートの二人 | 来生えつこ | 来生たかお | 安部潤 | 4:12 | 9 | 振り向くならせめて | 来生えつこ | 来生たかお | 星勝 | 4:30 | |
3 | 官能少女 | 来生えつこ | 来生たかお | 山崎教昌 | 5:09 | 10 | 潮風のソネット | 来生えつこ | 来生たかお | 星勝 | 5:16 | |
4 | 待ち人来たらず | 来生えつこ | 来生たかお | 安部潤 | 4:01 | 11 | 風の忘れもの | 来生えつこ | 来生たかお | 安部潤 | 4:09 | |
5 | まなざしの彼方 | 来生えつこ | 来生たかお | 萩田光雄 | 6:32 | 12 | 風のニュアンス | 来生えつこ | 来生たかお | 安部潤 | 4:32 | |
6 | とめどなく | 来生えつこ | 来生たかお | 安部潤 | 5:13 | 13 | 来生えつこ | 来生たかお | 安部潤 | 5:47 | ||
7 | 甘い食卓 | 来生えつこ | 来生たかお | 萩田光雄 | 3:55 |
トラック | タイトル | 作詞 | 作曲 | 編曲 | 収録時間 | トラック | タイトル | 作詞 | 作曲 | 編曲 | 収録時間 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
SideA-1 | 夢の途中 | 来生えつこ | 来生たかお | 渡辺俊幸 | 5:41 | SideB-1 | いとしい あした | 来生えつこ | 来生たかお | 渡辺俊幸 | 5:29 | |
SideA-2 | シルエット・ロマンス | 来生えつこ | 来生たかお | 渡辺俊幸 | 5:58 | SideB-2 | 思い出の時差 | 来生えつこ | 来生たかお | 紺野紗衣 | 5:47 | |
SideA-3 | 流れる… | 来生えつこ | 来生たかお | 渡辺俊幸 | 5:46 | SideB-3 | 余白の街 | 来生えつこ | 来生たかお | 渡辺俊幸 | 7:07 |
トラック | タイトル | 作詞 | 作曲 | 編曲 | 収録時間 | トラック | タイトル | 作詞 | 作曲 | 編曲 | 収録時間 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
SideA-1 | セカンド・ラブ | 来生えつこ | 来生たかお | 渡辺俊幸 | 5:18 | SideB-1 | 涼しい影 | 来生えつこ | 来生たかお | 紺野紗衣 | 5:58 | |
SideA-2 | 針の雨 | 来生えつこ | 来生たかお | 渡辺俊幸 | 5:36 | SideB-2 | Goodbye Day | 来生えつこ | 来生たかお | 渡辺俊幸 | 5:51 | |
SideA-3 | マイ・ラグジュアリー・ナイト | 来生えつこ | 来生たかお | 渡辺俊幸 | 4:40 | SideB-3 | 風と共に去りぬ | 来生えつこ | 来生たかお | 渡辺俊幸 | 6:01 | |
SideB-4 | 浅い夢 | 来生えつこ | 来生たかお | 紺野紗衣 | 4:10 |
※タイトル表記=SideB-4:浅い夢(アコースティックバージョン)
発売年月日 | メディア:規格品番 | 発売元/レーベル | 備考 |
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2015.12 | 2CD:ANOC-6173/4 | 日本音声保存/ANY | ○制作:エニー、TEN YEARS/販売:キングインターナショナル ○一般店頭販売:2016.01.27 ○オリコン最高160位 |
2018.06.07 | 2LP:ANOG-0497 | キングインターナショナル | ○限定 ○制作:テンイヤーズ、株式会社エニー ○一般店頭販売:2018.06.13 |
帯 | ジャケット | ケースの側面部 | ||
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CD | 夢のあとさき | YUME NO ATOSAKI | 夢のあとさき | |
LP | ※帯がないので該当なし | YUME NO ATOSAKI | YUME NO ATOSAKI |