エンスージアはレースゲームとは言え、割と正確に車の挙動をシミュレートしており、実際のドライビングテクニックや知識が役に立つ場合があります。
タイヤは車が路面に接する唯一のパーツであり、どんなに高性能な車でもタイヤの限界を超えて走行することは出来ません。逆に言えばタイヤの限界ギリギリを使う事が、車を速く走らせるコツと言えるでしょう。
タイヤのグリップ力には限界があり、限界を超えるとグリップを失いスリップしてしまいます。図は摩擦円といってタイヤのグリップ限界を説明するときによく用いられるものです。エンスージアのVisual Gravity System(以下、VGS)のGボールと似ていますが、別物ですので混同しないようにして下さい。
縦軸はタイヤの縦方向(加減速)に加わる力を表し、上方向を加速、下方向を減速、横軸はタイヤの横方向(左右のコーナリング)に加わる力を表します。そして円の内側がタイヤのグリップ領域、外側は限界を超えたスリップ領域となります。中心点は静止状態を示します。
アクセルを踏み込んで加速するとタイヤは前方向にグリップ力を働かせます(A点)。さらに踏み込んで円の縁に達した状態(B点)が最も効率良く加速している状態となり、それを超えるとタイヤは空転してしまいます。
ブレーキを踏むとタイヤは後ろ方向にグリップ力を働かせ(C点)、更に踏み込んで円の縁に達した状態(D点)で最大の制動力を発揮した状態になります。それを超えるとタイヤはロックしてしまいます。エンスージアでは全ての車にABSが装着されているので通常のブレーキでタイヤがロックすることはありません。サイドブレーキを使用した場合に後輪のみロックします。
ハンドルを右に切るとタイヤは横方向にグリップ力を働かせ(E点)、さらに切り込んで円の縁に達した状態(F点)で最大の旋回力を発揮します。更に切り込んでいくと限界を超え、かえって旋回力は低下してしまいます。
ではブレーキを踏みながらハンドルを切ったらどうなるでしょう。ABSの無い車では、D点の状態からハンドルを切ると、スリップ領域に入ってしまい、殆ど曲がる事は出来ません(G点)。曲がる為にはブレーキを弱めてやる必要があります(H点、I点)。ABS装着車では自動的にブレーキ力を弱めてくれるので、曲がる事ができます。エンスージアのABSではI点くらいのコーナリングフォースを発生させることが出来ますが、それ以上曲がりたい場合はブレーキを弱めてやる必要があります(C点、J点)。
次に最大のコーナリングフォースが発生している状態(F点)からアクセルを急に開けるとどうなるでしょう。TCSの無い車ではスリップ領域に入ってしまい、後輪駆動の車ではスピンしてしまいます(K点)。ステアリングを戻しながら徐々にアクセルを開けていき、F点→L点→B点と摩擦円の縁をなめる様に操作すると、常にタイヤを効率よく使うことが出来ます。
摩擦円を使った説明ではタイヤと路面の状態が、グリップとスリップの二種類しか無いような説明でしたが、実際はグリップ領域で走っていても、微妙にスリップしています。
図は右に旋回している車の右前タイヤを真上から見た様子です。車はタイヤの向いている方向に進む訳ではなく、少し外向きに進みます。このタイヤの向きと車の進む方向のなす角をスリップアングルと呼びます。
図はスリップアングルとコーナリングフォースとの関係を示しています。横軸はスリップアングル、縦軸はコーナリングフォースです。スリップアングルが10°〜15°ぐらいでコーナリングフォースは最大となりますが、それ以上だと低下してしまいます。これはつまり、ハンドルを切りすぎるとかえって曲がらなくなる事を意味します。またグリップ力の高いレース用タイヤではより小さなスリップアングルで最大となり、その変化量も大きくなります。つまりレース用タイヤはグリップの限界は高いのですが、それを超えると急に曲がらなくなってしまうので、扱いが難しいという事になります。
図はタイヤと路面の縦方向のスリップ率とタイヤのグリップ力との関係を示しています。横軸は縦方向のスリップ率、縦軸はグリップ力です。縦方向のスリップ率と縦グリップ力は20%程度までは比例しますが、スリップ率が30%を超えると縦グリップ力は低下していまいます。
点線は縦方向のスリップ率に対して、発生しうる横グリップの最大値を示しています。ブレーキングによってタイヤがロックしてしまった場合、制動力はある程度残っていますが、横方向のグリップ力はゼロになってしまい、全く曲がることが出来ないことを示しています。実際のABSではスリップ率が大きくなりすぎると、自動的にブレーキ力を緩め、スリップ率が小さくなるとまたブレーキ力を強める・・・というということを1秒間に数十回繰り返してタイヤロックを防ぎ、車の方向転換を可能にします。
TCSはスリップ率が大きくなりすぎるとエンジン出力を抑え、ホイルスピンを防ぐことで、最大の加速力を得られるようにする装置です。後輪駆動車で旋回中にアクセルを開けすぎてホイルスピンしてしまった場合、横方向の踏ん張りが効かなくなり、リアが滑ってスピンしてしまいます。TCSだけではこの様な横滑りを完全に防ぐことはできず、それを防ぐにはさらにESCを装備する必要があります。
前項では摩擦円を使ってタイヤのグリップ限界を使った走り方の重要性について述べましたが、タイヤのグリップ限界(=摩擦円の大きさ)は一定ではありません。路面の状況やタイヤの性能によっても異なりますし、車の状態(加速、減速、コーナリング)によっても、四つのタイヤそれぞれの摩擦円は大きくなったり小さくなったりします。
路面の状況では例えば、乾いた路面よりは濡れた路面の方がグリップ力は小さく、つまり摩擦円は小さくなります。また、アスファルトよりもダートの方が摩擦円が小さくなることは容易に想像できるでしょう。タイヤの性能では例えば、細いタイヤよりも太いタイヤの方がグリップ力は大きく、つまり摩擦円は大きくなります。また、ノーマルタイヤよりもスポーツタイヤや、レーシングタイヤの方が摩擦円は大きくなります。
そしてドライビングでは、荷重移動というテクニックを使って摩擦円の大きさを変化させることができます。タイヤにはそこにかかる重量が大きければ大きいほどグリップ力が大きくなるという特性があります(勿論限界はありますが)。
加速時の車を横から見ると、前輪のサスペンションは伸び、後輪のサスペンションは縮んでいる事がわかります。これは前輪の荷重が減少し、後輪の荷重が増加している為です。つまり車が加速している時は前輪の摩擦円は小さくなっていて、曲がりにくくなっているのです。
逆に減速時は前輪の荷重は増加し、後輪の荷重は減少します。つまり前輪の摩擦円は大きくなり、曲げやすくなります。但し、前項で述べた通り、ABSを装着しない実車では、フルブレーキング時にはタイヤのグリップ力を縦方向に使い切っていますので、曲がる為にはある程度弱めてやる必要があります。
コーナリング中は外側のタイヤの荷重が増加し、内側は減少します。コーナリング中にアクセルを開けると、内側の駆動輪が空転する事があるのはこの為です。
図はタイヤに加わる荷重とコーナリングフォースの最大値(以下、CFmax)との関係を示したものです。曲線は上から順に扁平率が60のタイヤ、70のタイヤ、82のタイヤです。
まず、扁平率82のタイヤを見てみましょう。タイヤに加わる荷重が増えると、CFmaxは増加する傾向にありますが、やがて頭打ちとなり、荷重が増えすぎるとCFmaxはかえって低下してしまいます。扁平率の低いタイヤでは荷重とCFmaxの関係は線形に近づきます。
横方向の荷重移動が発生する前の左右のタイヤそれぞれの荷重をAとすると、両輪のCFmaxの平均はFaとなります。コーナリング中の内側のタイヤの荷重をBとすると、内側のタイヤのCFmaxはFb、外側のタイヤの荷重はC、外側のタイヤのCFmaxはFcとなり、両輪のCFmaxの平均はFbcとなります。
これはつまり、横方向の荷重移動が大きくなればなるほど、CFmaxは低下してしまう事を意味します。この傾向は扁平率の低いタイヤでは少なくなります。
路面のアップダウンによっても、荷重は増減します。平坦から上り、下りから平坦では荷重は増加し、平坦から下り、上りから平坦では減少します。
乗用車の多くは高速で移動すると空気の影響で車体に上向きの力が発生します。これをリフトといい、速度が出れば出るほどその力は大きくなります。当然、タイヤの荷重も減少し、主にコーナリングに悪影響を及ぼします。最近の乗用車は空気力学も考慮したデザインになっていて、リフトが小さいものや、ゼロのものもあります。
近年のレースカーは逆に高速で移動すると下向きの力が発生するようにデザインされています。これをダウンフォースといい、リフト同様、速度が出れば出るほどその力は大きくなり、荷重が増加します。これにより、高速でコーナリングが可能になりますが、大きくし過ぎると空気抵抗が増えて、最高速度が伸びなくなってしまいます。
エンスージアの特徴の一つであるVGSのGボールは荷重移動そのものです。タイムアタック中に直視するのは困難でしょうが、エアポートスクエアでGボールを見ながら運転してみるのも、車の動きと荷重移動を理解するのに有効でしょう。
タイヤのグリップ力を使い切る事が速く走る為に必要な事ではありますが、それだけでは十分ではありません。コースの何処を走るか? つまり、ライン取りも速く走る為に必要な事柄の一つです。
アウト・イン・アウトはライン取りを考える上で最も基本的な考え方です。
図のように単純な右コーナーを走る場合、コーナーの手前では左側(アウト)を、コーナーの頂点(エイペックス、以下AP)では右側(イン)を、コーナーの出口では再び左側(アウト)を走ります。単純に距離だけを考えた場合はイン・イン・インと走った方が良いのですが、その場合コーナリング半径が小さくなってしまうので、速度が遅くなってしまいます。
アウト・イン・アウトはコーナリング半径を最大にとることで、コーナリング速度を最大にする走り方と言えるでしょう。コーナーの最もインに付くポイントをクリッピングポイント(以下CP)と呼びますが、この場合APとCPは一致します。
コーナリング速度だけを考えた場合、アウト・イン・アウトは有効なライン取りですが、サーキット1周のラップタイムを考えた場合は必ずしも有効とは言えません。
コーナーの後には少なからず直線部分があり、その通過速度も重要になってくるからです。スローイン・ファーストアウトは、続く直線部分の速度を考慮したライン取りで立ち上がり重視のラインとも言います。
図のようにアウト・イン・アウトの時よりも速度を落として進入し、素早く車の向きを変えます。その後の加速区間を長く取ることでコーナーの脱出速度を高める事が出来ます。この場合、CPはAPよりも奥になります。
コーナー後の直線が長い場合や、車の加速性能が良い場合はスローイン・ファーストアウトのライン取りを心がけ、コーナー後の直線が短い場合や、車の加速性能が悪い場合は、アウト・イン・アウトのラインを心がける様にします。
きついS字コーナーの場合、基本的には2つ目のコーナーの立ち上がりを重視したライン取りを心がける様にします。1つ目のコーナーの出口でアウトに寄り過ぎると2つ目のコーナーが辛くなるので、1つ目は小さくまわる様にします。
図はルート・ド・ラ・セーヌ(順走)の2〜3コーナーです。
水色のラインの様に2コーナーで頑張り過ぎると、3コーナーで曲がりにくくなって、加速が遅れてしまいます。赤色のラインの様に2コーナーはインべた気味にまわり、3コーナーを加速重視にした方がトータルでは速くなります。
図は筑波サーキット(順走)の1コーナー後のS字です。
この様にゆるいS字コーナーの場合や、小さなシケインの場合は直線的に抜ける様にします。
R(曲率半径)の異なるコーナーが連続する複合コーナーでも考え方は同じです。図はオータムマウンテン(順走)のセクター2です。
最初のコーナーはRが大きく、2つ目のコーナーはRが小さくなっています。水色のラインの様に最初のコーナーだけしか考えずに走ってしまうと2つ目のコーナーでアウトに膨らんでしまいます。赤色のラインの様に、最初のコーナーでは無理にインにつかずに、2つ目のコーナーでインにつくラインが有効となります。このコースの場合は立ち上がり重視の為ではなく、すぐ先に左コーナーがあるので右側を走った方が良いのです。
この様に目の前のコーナーばかりに気を取られずに、先のコーナー、そのまた先のコーナーを考えて走ることが重要になります。
これまでに説明した摩擦円、荷重移動、ライン取りを考慮してもう一度単純な右コーナーを走る場合を、進入から脱出まで、5つの区間に分けて説明します。
各項にある図は、左側は車全体で考えた摩擦円、右側はVGSのGボールです。
コーナー手前ではアウト側(左)を走行し、ブレーキングは直進状態で行います。可能な限り短時間で適正な速度まで減速するのが目的です。エンスージアでは全車にABSが装備されていますので、フルブレーキングで構いません。必要に応じてシフトダウンも同時に行います。この時荷重は前に移動していて、フロントタイヤの摩擦円は大きく、リアタイヤの摩擦円は小さくなっています。ABSのおかげで摩擦円の一番下を使った状態になっています。
次にブレーキを緩めながら、徐々にイン側(右)にステアリングを切っていきまが、まだインにはつきません。荷重は前から徐々に左に移動していき、フロント左の摩擦円が最も大きくなっています。エンスージアではABSが装備されてるので、フルブレーキングでもある程度は曲がる事が出来ます。急にステアリングを切ったり、ステアリングを切る量が多すぎるとかえって曲がらなくなります。
ステアリング舵角は一定で、アクセルを少しだけ開けて、加速も減速もしない状態でコーナリングします。アウト・イン・アウトの場合はここでインにつきます。荷重は左に移動し、左タイヤの摩擦円が大きくなっています。最も効率よいコーナリングをしている場合、横Gは最大になります。この区間を短くすればするほど最速のコーナリングと言えます。
ステアリングを切りすぎたり(A)、必要以上に減速してしまっている場合(B)、横Gは小さくなってしまいます。
アクセルを少しずつ開けていき、ステアリングを元に戻していきます。スローイン・ファーストアウトの場合はここでインにつきます。荷重は左から徐々に後ろに移動していき、リア左の摩擦円が最も大きくなっています。コーナーのイン(右)からアウト(左)目がけてコース幅を一杯使って徐々に加速していきます。アクセルを開けるタイミングが早すぎると曲がり切れなくなります。また、急に開けたり、開ける量が多すぎるとホイルスピンしてしまいます。
アクセルをホイルスピンしない様に可能な限り開けて、アウト側(左)を直進状態で加速します。荷重はリアに移り、リアの摩擦円が大きくなっていますが、ブレーキングの時ほどではありません。車は一般的に減速性能より加速性能の方が劣っているので、駆動輪に最大の仕事をさせていたとしても、加速Gは減速Gより小さくなります。
■ENTHUSIA
┣用語集
┣ENTHUSIA LIFE
┣DRIVING REVO
┣TIME ATTACK
┣FREE RACE
┗VS RACE
■各種データ
┣収録コース
┗収録車種
┣Rクラス
┣Aクラス
┣Bクラス
┣Cクラス
┣Dクラス
┣Eクラス
┣Fクラス
┗メーカー別
■その他
┣バグ情報
┣Q&A
┣要望不満点等
┣避難所
┣概要
┣2chテンプレ
┣Tips
┗ドラテク
■Wiki
┣メニュー
┣練習ページ
┣ヘルプ
┗整形ルール