1988 / 12 / 04　松野愛子（当時7歳、女）福岡県飯塚市

松野愛子 †

88年、小学1年生の松野愛子さんが建築現場で遊ぶ姿を最後に行方不明になる。
愛子さんの事件から4年後の92年、愛子さんと同じ小学校の1年生の女児2名が失踪。
福岡県甘木市の国道脇の雑木林で、女児2名の遺体が発見され、容疑者を逮捕、起訴。
愛子さんの失跡当時にも、この容疑者が近くの山林にいたとする目撃情報などから、
容疑者を事情聴取する。この取り調べでポリグラフ(嘘発見器)反応の出た山林一帯を
捜索した結果、愛子さんの物と見られる赤いジャンパーとトレーナーが見つかる。
容疑者自身、愛子さんと会っていた事も認めるも、殺害容疑は完全に否認。
限りなく怪しい人物だが、警察の強引な捜査方法(2女子事件以降、容疑者の実名と
顔写真を公開しながらの近隣での聞き込み、6年間探索をしても出てこなかった衣服が
わずか20分で発見された事、検察に証拠能力を問われ、DNA鑑定等を第三者の大学
研究室で再鑑定したところ、一致の確立が非常に低下した等)もあり、95年に愛子さん
の事件に関しての取調べの打ち切りが決定された。

不明女児の上着、近くの山林から発見　飯塚市で88年失跡 94.11.11　朝日夕刊 †

1988年12月に、福岡県飯塚市明星寺、松野愛子ちゃん（当時7つ、潤野小1年）が行方
不明になった事件で、福岡県警捜査一課と飯塚署は11日朝から捜査員ら約120人を動
員し、自宅近くの山林を捜索、子ども用の赤い上着一着を発見した。
特徴等から、県警は、愛子ちゃんの物である可能性が高いと見て、確認を急いでいる。
愛子ちゃんは、88年12月4日午前9時半ごろ、弟と一緒に自宅から約100メートル離れた
弟の友人宅に遊びに行った後、行方が分からなくなった。
愛子ちゃんは赤地に白色の横じまのトレーナーに赤いジャンパーを着ていた。
当時、県警は愛子ちゃんが何らかの事件に巻き込まれた可能性が高いとみて、飯塚署
員や学校の教師、ボランティアらがため池や山林など付近一帯を捜索。
立て看板やポスター、チラシを使って市民に情報提供を呼び掛けるなどしたが手掛か
りは得られず、行方はつかめなかった。
県警は、当時は気象条件などから十分に捜索できなかった場所があったことから、こ
の日、地元消防団員にも応援を求め、下草を刈るなど徹底した再捜索を行っていた。
飯塚市潤野地区では、92年2月にも、愛子ちゃんと同じ小学校に通う女児2人（いずれ
も当時7つ）が殺害され、死体で見つかっている。
この事件では、団地の近くに住む無職久間三千年被告（56）が逮捕され、今月5日、容
疑否認のまま殺人などの罪で起訴されたばかり。
県警は、上着の発見場所や特徴などから、愛子ちゃんの物である可能性が高いとみて、
確認を急ぐとともに、起訴拘置中の久間被告から事情を聴いている。
同被告は、愛子ちゃん事件との関連についても、強く否定しているという。

「なぜ、今になって？」「生きてて」なお望み
遊びに出かけたまま行方不明になった福岡県飯塚市の松野愛子ちゃんのジャンパーと
トレーナーが自宅に近い山中で見つかった11日、関係者らは「なぜ6年も経って」と
驚きの表情をみせた。失跡から6年目に迎えた事件の展開に、関係者は「事件に巻き込ま
れたと考えたくない」と表情を曇らせた。
愛子ちゃんの衣服は市道建設の工事現場から山中に林道を約100メートル入った雑木林
の斜面の雑草やゴミの中から見つかった。
捜索を始めてわずか25分後の午前10時半ごろだった。
消防団員が目立つ色の赤い物に気づき、ジャンパーと分かった。
一帯は、車でゴミを捨てにくる人が時々おり、「ここにゴミを捨てるべからず」と書
かれた板が木に括りつけられている。
近くにいた測量作業員は「なぜ、今までここを捜してないのか」と不思議がった。
周辺の山林では愛子ちゃんが行方不明になった時に何度も大がかりな捜索が続けられた。
当時、同小PTA会長で、捜索活動にも加わった酒店経営佐々木和彦さん（48）は「当時
としてはできるだけのことはした。早めに見つかればよかった」と残念がった。
愛子ちゃんの母の幸子さん（47）は衣類発見の知らせに、「赤いジャンパーは女の子
物には多い。娘のではないことを信じたい」と気丈に話していた。
その後、衣類をみせられ、愛子ちゃんの衣服と確認したという。

94.11.12 東京読売朝刊31頁 †

同市内では平成4年2月、同じ潤野小の女児2人を殺害したとして、同市潤野、無職
久間三千年被告（56）が殺人罪などで起訴されているが、愛子ちゃんが不明直前に
被告宅に立ち寄ったとの証言があることなどから、県警は失跡との関連を追及する。
久間被告は2女児殺害と同様、愛子ちゃんの失跡についても「関係ない」と否認している。

94.11.12 西部読売朝刊27頁 †

―自宅周辺
「今でも夜中に目が覚めて涙が出る。無事でいてほしい」
飯塚市潤野に住む愛子ちゃんの祖父、田中金作さん（70）は、行方不明の孫の着衣発
見の知らせに不安を募らせながらも、いちるの望みに期待をつないだ。
田中さんは、昼ごろ、友人宅にいて衣類が見つかったことを知った。
「失跡した当時、警察があれほど捜したのに見つからず、今ごろ発見されるとは。
捜索後に（だれかによって）捨てられたのだろうか。人懐こい子だった。
出来れば代わってやりたいが……」と祈るような表情で安否を気遣った。
愛子ちゃんの自宅は夜になっても、ひっそりと静まり返ったまま。
近所の主婦は「6年前に地域総出で行方を捜し回ったことを覚えています。
何とか事件解決の手掛かりになってほしい」と語った。
―学校
潤野小の、島田流水校長（59）は「警察からの連絡はありません」と驚いた様子。
「愛子ちゃんはどこかで元気にしているという願望を持ち続けている。そうあって
欲しい」と言葉を詰まらせた。
同小は約3年前に2女児が殺害される事件が発生して以来、集団登下校を実施。
再発防止に努めており、この日も児童たちは各地区ごとに下校した。
2女児殺害事件発生当時の同小校長で、今年3月に退職した細川清司さん（58）は
「二女児殺害事件が起きた時には愛子ちゃんのことが心配だったが、どこかで生き
ていると信じ続けてきた。衣類の発見は心配でならないが、ここまで来れば一気に
真相を解明して欲しい」と、沈痛な表情で語った。
当時は毎年、愛子ちゃんが失跡した12月4日を「愛子ちゃんの安全を願う日」として、
学年集会を開催。安全教育のビデオを見て、愛子ちゃんが早く帰って来るよう、みん
なで祈ったという。

容疑者の取調べを再開　95.01.03 西部読売朝刊31頁 †

市内の別の女児2人を殺害したとして殺人罪などで起訴されている無職久間三千年
被告に対する取り調べが再開する。
昨年11月、ポリグラフ（うそ発見器）検査で被告が反応した山林から愛子ちゃんの
衣服が発見されたことなどから、県警では失跡に関与した疑いが強いとみている。
被告は認めてはいないが、微妙な言い回しをしているという。
調べによると、愛子ちゃんは1988年12月4日午前9時半ごろ、弟と2人で自宅近くの
被告宅に寄った後、足取りが途絶えている。
被告も報道機関に寄せた書面で「飴を与えた」などと接触したことは認めている。
県警では、この接触のほかに
1)愛子ちゃんが当時、被告に殺害されたとされる2人の女児と同じ潤野小1年だった
2)被告が、衣服が見つかった現場近くの山道を通っていたとの目撃情報があること
などから、失跡と何らかの関連があるとみて調べていた。
昨年11月末に県警本部から福岡拘置支所に身柄を移監した後も取り調べをしていたが、
有力な供述は得られず中断していた。
被告が別の女児2人を殺害したとされる事件は、2月20日に福岡地裁で初公判が開か
れるが、被告はこの事件についても否認している。

愛子ちゃんの捜索打ち切り 95.02.19　朝日朝刊 †

1988年12月に福岡県飯塚市明星寺の松野愛子ちゃん（当時7つ、潤野小1年）が行方
不明になった事件で、福岡県警捜査一課と飯塚署は18日も愛子ちゃんの着衣が見つ
かった自宅近くの山林一帯を再捜索したが、新たな手掛かりはなかった。
9日から続けてきた再捜索はこの日でいったん打ち切った。
永留慶造・飯塚署長は「やるべきことは十分手を尽くしたが、手掛かりは見つから
なかった。新たな情報がない限り、捜索再開はない」と話している。
県警によると、再捜索範囲は昨年11月に愛子ちゃんのジャンパーなどが見つかった
雑木林を中心にした半径約3キロの山林。
10日の捜索で、ジャンパーなどが見つかった「ごみ捨て場」の土の中から、人間の
上腕部の骨とみられる骨3本が出てきたほかは、事件に結び付くような手がかりは見
つからなかったという。
人骨とみられる骨については、九州大医学部で鑑定が続いているが、骨片が小さく
古いことなどから、永留署長は「詳しく調べるにはかなりの時間がかかると聞いて
いる。
人骨と分かったとしても、愛子ちゃんのものと断定するのは困難」との見方を示した。
1981〜1990