勇者飛翔ファルブレイク第六話


117 :勇者飛翔:2008/12/26(金) 15:54:07 ID:rSL0OM/h
第6話、行きます・・・
「食らえ!ジェットスラッシュ!」
上空からファルソードを構えたファルブレイクが維新機士目がけて高速で降下する。
「具儀屋亜亜唖!!?」
その切っ先に触れた維新機士は真っ二つに切り裂かれ、断末魔と共に爆散した。
「やったな!ファルブレイク!」
「ああ、だが、少し呆気なさ過ぎだな・・・」
維新機士の襲撃を聞かされて出撃したシンヤとブレイクだったが、予想よりずっと簡単に敵は倒された。
「まあ、被害が少ないのに越した事は無いし、いいんじゃないか?」
「だと良いんだが・・・」
割と楽観的なシンヤに対し、ファルブレイクは少し気がかりだった。
そして二人がそんなやりとりをしている頃、
「・・・」
少し離れたビルの屋上から、カメラを手に持った男がその光景を凝視していた。
「・・・かっけーなあ・・・・」

第六話 対決!二人のブレイク

「ええいどういう事だ!」
荒木は激怒しながら村上に詰め寄った。
「またしてもブレイバーズに破れるとは!貴様の造る維新機士は何度私に恥をかかせれば気が済むんだ!?」
「・・・気が済むも何も、私はお前さんの要望通りに維新機士をこしらえてやってるだけだ。勝てないのはむしろお前さんの戦略に
問題があるんじゃないのか?」
「ぐ・・・貴様・・・」
村上の反論に荒木は言葉が出ない。
「ふっ、だが、今回の維新機士は少しばかり違うぞ」
そう言うと村上は倉庫の照明を点けた。
「な・・・!?」
驚く荒木。
照明に照らされたその姿は、今まで辛酸を舐めさせられて来た敵、ブレイクそのものだった。
「な、何故これがここに・・・」
「よく見てみろ、所々変わっているだろうが。これは私がブレイバーズのロボを分析して造り上げた維新機士、暴牙だ」
確かに、よく見れば暴牙という維新機士はカラーリングや各部の形状がブレイクとは大きく異なっている。
「今回破壊された維新機士も、これを仕上げる為の囮だったと言う訳だ・・・」
「き、貴様・・・!騙したのか!?」
「人聞きの悪い事を言わないでもらおうか。私は技術者として最高の機体を仕上げる為に当然の事をやったまでだ」
村上は無表情で言い放つ。
「それにこの機体には超AIが搭載されているのだ」
「超AIだと?」
「そうだ。ブレイバーズのロボに搭載されたAIをコピーした物だが、維新機士に搭載されているAIよりも更に高度な代物だ。与えられた
命令を実行するだけの今までのAIと違って自律思考が可能になり、それに伴い更に高度な戦闘能力を得る事が出来るのだ」
「・・・言ってる事が理解できないが、その超AIとやらにより今までの維新機士以上の性能が見込めるという事だな?」
「そう思ってもらって構わない」
「・・・ククク、そういう事か・・・」
説明を受けた荒木は笑いだす。
「ならば良いのだ!私が維新機士に求めるのはブレイバーズを倒せる力だ!それさえ持ち合わせていれば細かい説明など不要!見ていろブレイバーズよ!
今度こそ貴様らを血祭りに上げてやる!フハハハハ!!」
(・・・精々勝手に盛り上がってろ・・・私には貴様の事情など全く関係ないのだからな・・・)


118 :勇者飛翔:2008/12/26(金) 15:56:49 ID:rSL0OM/h
「けどねえ、この程度の写真じゃ私達の方でも用意出来るんだよ」
「だ、だからそこをどうにか・・・」
都内の大手新聞社の一角で、二人の男が揉めていた。
一人はこの会社の重役、もう一人はこの会社に写真を持ち込んだカメラマンであった。
「とにかく、君なんかの力を借りなくてもこっちは十分手が足りてるんだ。どうしても写真を使って欲しいなら他を当たってくれ。さ、仕事
が忙しいからさっさと帰ってくれたまえ・」
「そ、そんな・・・」
自分の写真を酷評された男、依田はがっくりと肩を落とした。

「くそっ、また出直しかよ・・・」
新聞社を出た依田は頭を掻いた。
彼はフリーのカメラマンであると同時に、ブレイバーズと維新夜天党の最初の戦い、つまりはブレイクと烏丸の戦いの場に居合わせて生き延びた人間であり、
その際に命からがら撮影した写真により、無名だった依田の名前は一時的ながら世間に認知される様になったのだ。
しかし、その勢いは本当に一時的な物で、二度、三度戦いが発生するとどの会社も力を入れて取材に取り組む様になっていき、ただ最初に写真を撮っただけという
依田はあっという間にお役御免になってしまい、今ではどこの新聞社にも相手にされなくなっていた。
「・・・もっと踏み込んで撮影しないと駄目なのか・・・」
それでも彼がブレイバーズの姿を写真に収めようと奔走するのは、ブレイバーズへの強い憧れがあったからかもしれなかった。
自分達は維新機士に対して成す術なく逃げ回るだけなのに、その維新機士に果敢に向かって行き、その度に勝利し人々を守るブレイバーズの姿が、依田には
何よりも頼もしく強い、一種のヒーローにすら見えたのだ。
だから、そんなブレイバーズの勇姿を写真に収める事が一般人の自分に出来る精一杯の事だと感じていた。
「・・・諦めるかよ・・・あのロボットの事をもっと色んな人に知ってもらうためにも、オレはまだまだ止まれないんだ!」
妙な使命感みたいな物に動かされ、依田は拳をぐっと握った。

「謎のロボット、またしても大量破壊テロを阻止、か・・・」
パソコンに映し出されたニュースサイトの記事を暗唱する藤野。
「大丈夫なんでしょうかね、こうもオレ達の存在が認知されるのって・・・」
シンヤは現状に少し疑問を感じていた。
ここ数回維新夜天党との戦いにより、マスコミ各社もブレイバーズについて積極的に記事や特集を組む様になっていた。最も、組織についてはどこも何も分かっていないのが
現状ではあちこちで勝手な憶測と擁護批判が入り混じった勝手な意見が飛び交うばかりであったが。
「私としてはむしろ、これが普通だと思いますね。あれだけ派手な戦闘があったのにも関わらず、その情報が隠ぺいされていたらそちらの方が遥かに問題だと感じますね・・・」
横から武藤が口を挟む。
「博士はどう思いますか?」
シンヤは乃木坂の方を見る。
「・・・大体武藤隊長と同意見だな。戦闘が行われる以上、我々の存在が公に認知される事は致し方ない事だ。それに、私はこれはある種の好機でもあるんじゃないかと思っている。
「好機・・・ですか?」
「そうだ。知っていると思うが、ここ数年世界各地で最新鋭のテクノロジーを乱用した犯罪が多発している。日本とてその例外ではない。恐らく奴ら以外にも日本を転覆させる為に
水面下で活動している連中がいてもおかしくはない。にも関わらず、この国の人々はこれ等の脅威に対して無関心過ぎる。問題が起こった時に騒いでも既に手遅れなんだ。その様な
事態を避ける為にも、我々の存在が報道される事は決して悪い事ではないと思うのだが・・・問題は、これが一過性の物に過ぎず事態が収まればすぐに風化してしまう可能性も十分
考えられるという事だな・・・」
「成程・・・そういう考え方もあるんですか・・・」
シンヤは感心していた。同時に、自分も数か月前まではこの国に何の興味も関心も持たずに生きていた人間だったと思うと、なんだか情けなく思えた。
「まあ、人々が常にその様な脅威に悩まされて怯えながら生きていかねばならない社会も困りますがね・・・」
武藤がそう言って苦笑した直後に、基地内に警報が響いた。

「グォォォッ!!」
獅子の姿を持った維新機士、雷頑が咆哮を上げた。だが、その様子はこれまでの維新機士とは幾分異なっていた。
「くくくくく・・・早く現れろブレイバーズ・・・今度こそ貴様らを血祭りに上げてやるぞ・・・」
その様子を見た荒木は薄ら笑いを浮かべていた。


119 :勇者飛翔:2008/12/26(金) 16:00:38 ID:rSL0OM/h
「・・・また避難勧告かよ・・・」
依田は舌打ちする。結局民間人である自分にはここから逃げるしかないのかと思うと情けなくなる。
「・・・くそっ!納得行くかよっ!」
そう言うと依田は逃げ惑う一般人とは逆の方向、雷頑が暴れている方向に向かった。
「絶対あのロボットの活躍を写真に収めてやる・・・!」


「そこまでだ!怪ロボットめ!」
破壊活動を行う雷頑の前に、ブレイク、セイバーヘッド、ビーストブラザーズが駆け付けた。
「私と相馬君はあの怪ロボットを食い止めます!藤野君は救助活動に向かってください!」
「了解!」
炎が燃え盛る方向に飛んでゆくセイバーヘッド。
「チェンジ!」
掛声と共に、ブレイクとビーストブラザーズはロボモードに変形した。
「ライオン型・・・同じネコ科の者同士、」
「できれば争いはあまりしたくないのですが・・・」
「今はそうも言ってられないでしょう。行きますよ!」
パンチジャガーとキックチーターは戦闘態勢を取る。
「グォォォッ!!」
そんな二人の声を無視して、雷頑は襲い掛かる。
「散開!」
武藤の指示で、三体のロボはそれぞれ跳躍し、攻撃をかわした。直後に、地面がごっそり抉られた。
「ホイルスラッシャー!」
ブレイクが両腕のタイヤを雷頑目掛けて射出する。が、
「グォォ・・・」
残念ながら、あまり効果は期待できそうに無かった。
「くっ、ダメか・・・」
「ならばこれならっ!」
ブレイクの背後からキックチーターが出現する。
「チーターファング!」
キックチーターの蹴りが雷頑に迫る。が、
「グォォ!!」
その巨体から想像出来ないスピードで、雷頑は空中に舞い上がった。標的を失ったキックチーターの一撃は空しく地面を抉った。
「グォォ!!」
再度急降下を仕掛けようとする雷頑。が、
「ジャガーファング!」
瞬時に跳躍したパンチジャガーがその懐に飛び込んだ。そして、
「グォォォッ!?」
今度の一撃は確実に決まった。雷頑に一瞬の隙が出来る。
「パンチジャガー!キックチーター!合体です!」
「了解!」
武藤の指示を受け、パンチジャガーとキックチーターは同時に跳躍する。
「ブラザーフォーメション!」
掛け声と共に、ビーストブラザーズは瞬時に合体した。
「双獣合体!ソウトーガ!」
名乗りと同時に、ソウトーガはソウトーボウを構えた。


120 :勇者飛翔:2008/12/26(金) 16:01:42 ID:rSL0OM/h
「出来ればお前みたいな奴とは戦いたく無いんだけど・・・悪く思わないでよ!」
そして雷頑に向かってゆくソウトーガ。当の雷頑は姿勢を取り直した物の、その動きを補足する事は出来なかった。
「行くよっ!双頭棒・百花繚乱!」
目にも止まらぬ速さで、ソウトーガは雷頑に連続でソウトーボウを叩き込む。
「グォォォォッ!?」
雷頑はその連撃に悲鳴を上げ、姿勢を崩して地面に落下する。
「相馬君、今です!合体してトドメを!」
「りょ、了解!博士!ファルコンウイングを」
シンヤがそう言おうとした、その時だった。
「そうは行くか」
突然低い声が響いた。
「なっ!?」
その声にシンヤは一瞬気を取られた、その直後、
「!?ぐああぁっ!」
突然の衝撃に襲われ、ブレイクの身体が宙を舞った。

「相馬君!?はっ!?」
その様子を見て一瞬呆気に取られた武藤だったが、即座に黒い影がこちらに向かって来る黒い影に気づいた。
「ソウトーガ!分離を!」
黒い影がソウトーガを貫いたのと、ソウトーガがパンチジャガーとキックチーターに分離したのはほぼ同じタイミングだった。本当に間一髪である。が、
「何っ!?」
かわしたと思った黒い影は、そのまま軌道を変え、キックチーターに向かって飛んで行く。そして、
「があぁぁっ!」
その影に体当たりを食らったキックチーターは、悲鳴と共に地面に向かって墜落して行く。
「キックチーター!」
「くっ!弟に何をする!」
怒ったパンチジャガーは影に向かって行く。が、
「即座に合体を解除し、攻撃をかわした点は中々だ。が、」
そう呟いて、影は姿を消す。が、
「何っ!?」
影は直後にパンチジャガーの後ろに出現する。
「その後の反応は、残念ながらまだまだだ!」
影の一撃がパンチジャガーを襲った。
「ぐあぁあっ!!」
キックチーターと同じ様に、パンチジャガーも地面に向かって落下して行った。


121 :勇者飛翔:2008/12/26(金) 16:03:29 ID:rSL0OM/h
「くっ・・・皆、大丈夫ですか・・・」
武藤はコックピットに叩き付けられながらも、どうにかパンチジャガーを立ち上がらせた。
「え、ええ・・・」
「こっちも、どうにか・・・」
ブレイク、キックチーターも立ち上がった。
「フッ、無様だな、ブレイバーズ」
そして、直後に黒い影が地面に降り立つ。が、 「な、何・・・!?」
その姿を見て全員が言葉を失った。
色と細部が異なる物の、その姿はブレイクとほぼ瓜二つだった。
「フッ、驚いてくれた様だな・・・」
そう言うと黒い影、暴牙は二ヤリと笑った。
「言葉を喋っただと・・・?」
「き、貴様!何者だ!」
ブレイクは動揺しながらも、暴牙に正体を問う。
「・・・人呼んで、維新機士・暴牙。貴様等ブレイバーズを抹殺する為に作られた、維新機士だ!」

「維新機士、それが貴様等怪ロボットの総称か・・・」
「そう思って貰っても構わない」
ブレイクの問いに、感情のない声で答える暴牙
「だが、私は普通の維新機士とは訳が違う。私は貴様等ブレイバーズ、特にブレイク、貴様のデータをコピーして造られたのだからな」
「な、何!?」
その答えにブレイクは再度動揺する。
「そんなバカな!超AIまでコピーしたと言うのか!?」
通信機越しに乃木坂が驚愕の声を上げる。
「ふっ、貴様等に教えてやるのはここまでだ・・・」
そう言うと暴牙は戦闘態勢を取った。
「それ以上知りたかったら、私を倒して力づくで聞き出すんだな!」
そして暴牙はブレイクに襲いかかった。


122 :勇者飛翔:2008/12/26(金) 16:04:33 ID:rSL0OM/h
「はあぁぁっ!!」
「くっ!」
ブレイクの拳と暴牙の拳が、鈍い音を立てて激突した。
「相馬君!」
武藤は加勢に回ろうとする。が、
「グォォ・・・」
立ち上がった雷頑がそうはさせまいと、ビーストブラザーズの前に立ちはだかった。
「くっ、まだ動けたのか・・・」
「貴様等は我が友雷頑の相手をしていろ。狩りの邪魔をされたらたまらんからな」
そう言うと暴牙は再度ブレイクを見据えた。
「ぐぐぐ・・・」
互いのパワーはほぼ互角なのか、二体は拳を突き合わせたまま動かない。
「うおぉぉっ!!」
数秒間の均衡を破ったのは暴牙だった。ブレイクの腹部を目掛けて蹴りが繰り出される。
「があっ!?」
その攻撃を食らい、ブレイクはわずかによろめいた。
「とう!」
瞬時に上空へ跳躍する暴牙。
「食らえ!回転輪弾!」
そしてホイルスラッシャーと同じ要領で、ブレイク目がけて両腕のタイヤを発射した。 「くっ!ホイルスラッシャー!」
ブレイクもホイルスラッシャーを発射する。
互いの威力はほぼ互角だったらしく、しばらくぶつかり合い、そして空中で乾いた音を立てて弾け飛んだ。
「変化!」
戻って来た回転輪弾を再装着した暴牙は、ビークルモードへと姿を変えた。この状態では色以外は本当にブレイクと全く同じ姿であった。
「変形機構までコピーしただと!?」
再度乃木坂が驚愕した声が聞こえた。
「うおぉぉっ!!」
地面に着地した暴牙はブレイクに向かって突進して行く。
「変化!」
ブレイクの懐で再びロボモードへ変形する暴牙。
「でえぇぇい!」
その拳はブレイクの顔面に向かって飛んで行く。が、
「うおぉぉっ!?」
ブレイクも負けじと蹴りを繰り出す。そして、
「ぐあぁぁっ!!」
わずかだかブレイクの攻撃が先に決まり、暴牙は吹っ飛ばされた。が、
「くっ!回転輪弾!」
吹っ飛ばされる間際、暴牙は右腕のタイヤを射出した。
「何!?」
その攻撃を予測していなかったブレイクは、攻撃を防ぐ事が出来なかった。そして、
「ぐあぁぁっ!!」
絶叫と共に、回転輪弾によって切断されたブレイクの右前腕が宙を舞った。
「ブレイク!」
シンヤの叫びも空しく、ブレイクは背後の三階建てのビルに倒れ伏した。


123 :勇者飛翔:2008/12/26(金) 16:05:48 ID:rSL0OM/h
「す、すげえ・・・」
カメラを手に、依田はその光景を見て立ち尽くしていた。
避難勧告を無視して現場に戻った甲斐が有ったという物だ、と依田は思った。まさか人型ロボ同士が戦う現場をこんな形で見る事が出来るとは。
「・・・そうだ・・・写真・・・写真・・・」
あまりに衝撃的な光景を前に自分の本来の仕事を忘れていた依田だったが、どうにかブレイバーズの姿を写真に撮るという最初の目的を思い出した。
「へへっ・・・すげえ、こいつはすごいぜ・・・」
手は震えながらも、次々と依田はシャッターを押して行く。が、
「ぐあぁあっ!?」
直後に暴牙がブレイクの蹴りによって吹っ飛ばされて地面に倒れ、、暴牙の攻撃でブレイクが姿勢を崩して倒れ掛かった。そのすぐ近くには・・・
「・・・え?」
何が起こったか分からず、倒れようとするブレイクの姿を見て呆然と依田が立ち尽くしていた。
「・・・ひ、ひやあぁぁ!!」
正気に返って逃げようとするが、突然の事に体が思う様に反応せず、尻餅を突いてしまう。
そして動けなくなった依田の事など知る由もなく、ブレイクはビルに激突した。

「ブレイク!大丈夫か!?」
コックピット内でシンヤが声を張り上げた。
「ぐ・・・ああ・・・」
ブレイクは立ち上がろうとするが、腕を切られたのは流石に答えたのか、思う様に力が入らない。更に、
「ひ、ひえぇぇ・・・」
後ろから情けない悲鳴が聞こえて来た。
「なんだ!?」
シンヤが後ろに目を移すと、地面にへたり込んだ依田が、ブレイクの指の隙間からこちらを見上げていた。
かろうじて圧死は免れた物の、恐怖で体がすくんで逃げ出せずにいるのだろう。
「ブレイク!後ろに逃げ遅れた人が!」
「・・・分かってる・・・」
ブレイクもその事は気付いていた。
「・・・」
そんな様子を尻目に、立ち上がった暴牙は無言でこちらに向かって来る。ブレイクと比べてもそのダメージは軽かった様だ。
「くっ・・・どうすれば・・・」
ブレイクは考えた。今動かなければやられてしまう。だが迂闊に動けば、指の間にいる依田が圧死してしまう。
「・・・ここまでの様だな・・・」
ブレイクの目の前で立ち止まった暴牙はそう言うと、腰に装備されていた脇差を構えた。
そして次の瞬間、その脇差を頭上に振り上げた。
「くっ・・・」
シンヤは歯を食いしばった。その眼光は最初の戦い、烏丸に踏みつぶされそうになった時と同じく、カッと見開いたままだった。
「フッ・・・」
そして、暴牙の脇差が振り下ろされた。


124 :勇者飛翔:2008/12/26(金) 16:06:49 ID:rSL0OM/h
コンクリートが切り裂かれる音が響いた。
「な・・・?」
シンヤもブレイクも、思わず拍子抜けする。
ブレイクを切り裂くと思われた脇差は、ブレイクではなく背後のビルを切り裂いたのだ。
「民間人を助けようとして自分が斬られそうになるとは・・・なんと甘い男よ・・・」
そう言うと暴牙は脇差を引き抜き、腰に戻した。そしてそのまま数歩後ずさる。
「・・・早く逃げろ・・・」
ブレイクは依田を睨んで呟いた。
「ひ・・・!?」
その眼光に依田は更にすくんでしまう。が、
「早く逃げろ!」
ブレイクは再度鬼の様な形相で叫んだ。
「ひっ!はいぃぃぃ!!」
その剣幕に圧倒されたのか、依田は一目散にその場から走り去った。
「・・・ブレイク、立てるか・・・?」
「ああ、どうにか・・・」
ようやく安全が確保され、ブレイクは立ち上がる事が出来た。
「・・・何故、トドメを刺さなかった・・・?」
ブレイクは暴牙に問いただす。
「・・・民間人を庇って動けない敵を倒したとて、何の感慨も湧いてこないからな・・・」
そう言って暴牙はフッと呟いた。
「貴様・・・」
「さて、仕切り直しと行こうか・・・」
そう言うと暴牙は腕を上に振り上げた。
「さあ来い雷頑よ!今こそ我らが真の力、奴らに叩き付けてやるのだ!」

「必殺!百花繚乱!」
ソウトーガが放った無数の突きが、再び雷頑に降りかかる。
「グォォォッ!!」
その一撃で、雷頑は吹っ飛ばされた。
「どうだ!」
ソウトーガは勝利を確信した。が、
「グォォ・・・」
舞い上がった土煙りが消えると、雷頑は再び立ち上がっていた。敵の構造上脆い部分を瞬時に見抜き、連続で攻撃を仕掛ける百花繚乱を三発食らっても尚耐え続けている。
無事では無いだろうが、相当タフなのは間違い無い。
「・・・あ〜!!もうやめようぜ〜!ホントはおいらだってお前とは戦いたく無いんだよ〜!」
ソウトーガは突然子供の様に駄々をこね始める。
「・・・どうしたのですソウトーガ・・・」
半分呆れた様な、困惑した顔をする武藤。
「だってえ〜おいらはどうしてもあいつが悪い奴には見えないんだよぉ〜!」
ご機嫌斜めと言った口調で答えるソウトーガ。
「ふむ・・・何を持ってしてそう思うのですか?」
「そんなの分かんないよぉ〜ただ何となくそう思うんだよぉ、おいらだけじゃなくてジャガーもチーターも心の中じゃそう思ってるよぉ!」
「・・・困りましたね・・・」
ここまで相棒にぐずられてしまうと、正直こちらも思う様に動けない。藤野はどうするべきか考えていた。が、
「グォォ・・・」
雷頑はソウトーガに背を向け、ブレイクと暴牙が戦っている方を見た。
「あんちゃん、あいつ、何やってんの・・・?」
その行動に困惑するソウトーガ。が、
「グォォォッ!!」
突然、大地を揺さぶるかの様な雷頑の低い唸りが響いた。そして次の瞬間、
「なっ!?」
ソウトーガは思わず顔を覆った。猛烈な突風と共に、雷頑が上空へと飛翔したのである。
「・・・何をする気だ・・・?」


125 :勇者飛翔:2008/12/26(金) 16:07:41 ID:rSL0OM/h
「ぐっ!?」
突如として突風に襲われ、ブレイクは顔を覆った。
見ると、上空へ飛翔した雷頑が猛烈な突風を引き起こしていた。
「フッ、見るがいい、ブレイバーズよ・・・これが貴様等を倒す為に与えられた、私の力だ!」
そう言うと暴牙は空中へと跳躍した。
「行くぞ!武装変化!」
掛声と共に、雷頑の東部、翼が動体から分離、同時に前脚を収納し、胴体が伸びて人間の脚の様な形を成し、更に後脚が変形し、人間の上半身の様な姿となる。分離した獅子の頭部は
肩に接続された。
「とうっ!」
開かれた雷頑のバックパックに、手足を折り畳んだ暴牙が合体する。
そしてバックパックが閉じると同時に収納されていた頭部がせり出し、双眸に赤い光が宿った。
「暴撃合体!暴雷牙!!」
完成した巨人、暴雷牙は名乗りを上げた。

「暴雷牙・・・だと・・・」
驚愕するブレイク。
「・・・そんな・・・合体機能まで・・・」
もはや乃木坂は言葉も出なかった。
「見たか、これが私の真の姿、暴雷牙だ!」
暴雷牙は地面に降り立った。
暴牙と同じく、基本的なシルエットはブレイクと瓜二つだが、細部の形状とカラーリングが大きく異なっている。肩に接続された獅子の頭部が一際目を引いていた。
「さあ、第二ラウンドの開始と行こうか・・・」
暴雷牙は低く呟いた。

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