勇者飛翔ファルブレイク第八話


331 :勇者飛翔:2009/03/21(土) 12:44:47 ID:cX1ksdeT
第8話、行きます・・・
「沈みゆく太陽、美しい限りだ・・・」
夕焼けに照らされた街を眺めながら、暴牙は呟いた。
「グォォ・・・」
そんな主に対して、雷頑が寄り添う。
「・・・ふっ、分かっているさ、雷頑」
そう言うと暴牙はフッと笑った。
「行くぞ!武装変化!」
掛け声と共に暴牙が跳躍、同時に雷頑は変形して人型になり、パックパックが開いて暴牙が合体した。
「暴撃合体!暴雷牙!」
誕生した暴雷牙は名乗りを上げた。
「ふっ、待っていろブレイバーズ・・・今日こそ決着をつけてやろうではないか・・・」
暴雷牙はブースターをふかし、目的地へと飛んで行く。

第8話 ファルブレイクVS暴雷牙 後編

「また暴雷牙が現れたんですか!?」
一報を聞き付けたシンヤが、司令室に入って来る。
「ええ、これを見て」
モニターに現場の様子が映し出された。
何かの作業現場だろうか、その中央に、暴雷牙が佇んでいる。
「場所はエリア204、マンション建設予定地です」
「被害状況は?」
「確認できる限り、死者、負傷者共にゼロ、現場にいた人たちは全員無事の様です」
洋子の報告通り、暴雷牙は特に現場にいる人間に危害を加える訳でもなく、その場に佇んでいる。
「・・・やはり目的は破壊活動よりもブレイバーズ打倒にあるというのか・・・」
乃木坂は考え込む。
「司令、出撃しますか?」
麻生に向かって尋ねる武藤。
「・・・うむ、ブレイバーズ、出撃せよ!」
「了解!」

「ふっ、お出ましの様だな・・・」
こちらに向かって来るブレイバーズの姿を確認した暴雷牙が呟く。
「皆さん!最初から合体して行きますよ!」
「了解!」
武藤の掛声と同時に、それぞれのロボが合体する。
「飛翔合体!ファルブレイク!」
「緊急合体!トライセイバー!」
「双獣合体!ソウトーガ!」
合体を完了した3体のロボが降り立った。
「待たせたな、暴雷牙・・・」
暴雷牙に対して指を指すファルブレイク。
「ふっ、今日は3人揃ってるな・・・結構結構・・・」
その様子を見た暴雷牙は再度笑う。
「お前達が戦いやすいように、民間人はいない場所を選んだ。これで思う存分戦えるだろう?」
「戦いやすいように・・・ねえ・・・」
辺りを見回すトライセイバー。
「確かにここに人はいないが、その代わりにお前が好きな「遊び」の為の道具が山積みになっているという点に、お前のしたたかさを感じるよ」
続けて言うファルブレイク。確かに、工事現場というだけあって、周りには資材が山の様に積まれていた。
「ふっ、誤解して欲しくないな、資材は自分で歩いて逃げる事は出来ないだけさ・・・」
そう言うと暴雷牙は左手の暴曼陀亜を構えた。
「だからこうやって、我々がどかす必要があるのさ!」
そして鞭状に変化した暴曼陀亜の切っ先は、近くに積まれていた鉄柱に巻き付いた。
「こんな風にな!」
暴雷牙は鉄柱をハンマーの如く、ファルブレイク、トライセイバー、ソウトーガに向けて振り下ろした。


332 :勇者飛翔:2009/03/21(土) 12:45:51 ID:cX1ksdeT
「!散開!」
武藤の指示で三体が飛び退いたのと、鉄柱が地面に叩き付けられたのはほぼ同時だった。
「へっ、中々派手にやってくれるなあ!」
トライセイバーはそう言うとセイバーショットを取り出し、構えた。
「こいつはお返しだ!」
そしてトリガーに手をかけようとした、その時、
「具儀屋亜唖亞!!」
「なっ!?」
突然地面を割って現れた影が、その攻撃を妨げた。
「トライセイバーのあんちゃん!がっ!?」
ほぼ同時に、何者かの体当たりを食らって吹っ飛んだ。
「トライセイバー!ソウトーガ!?」
吹っ飛ばされた仲間を見て、ファルブレイクの動きが止まる。
「どこを見ている!」
暴曼陀亜を構えた暴雷牙が容赦なく斬りかかる。
「くっ!」
ファルシールドで攻撃を受け止めるファルブレイク。
「ブレイク!藤野さん達が・・・」
「分かっている・・・!」
今仲間を心配している余裕は無い。目の前の敵を退けなければ、こちらが斬られてしまう。
「うおぉぉっ!」
ファルブレイクが蹴りを繰り出す。
「がっ!」
暴雷牙は横から攻撃を食らって姿勢を崩し、均衡は崩れた。
「・・・仕方無い、行くぞ!」
「おう!」
ファルソードを構えるファルブレイク。
(・・・荒木め、余計な事を・・・まあいい、これで奴と心おきなく戦えるので良しとしよう・・・)

「フハハハハ!見たか!これが量産型維新機士、狼煙と陽炎だ!」
先頭域から少し離れた場所で様子を見ていた荒木が高笑いする。
「業火と飛影より約22%増したその性能、たっぷり味わうがいい!」
そう言うと荒木は暴雷牙の方を見た。
「・・・暴雷牙よ、これは私からのプレゼントだ、その力を存分に生かしてファルブレイクを亡き者にしてやれ・・・フハハハハ!」

「具儀偽義魏・・・」
トライセイバーとソウトーガに攻撃を仕掛けたのは、以前ブレイバーズによって倒された維新機士、業火と飛影であった。だが、最初に倒された機体とは色が違う。
「何なんだだこいつらは!?オレ達が以前倒した奴らのパチ物か!?」
「分かりません、ですが、野放しにしておく事は出来ませんね・・・」
目の前に立ちはだかる二体の維新機士をにらみ付ける武藤。
「まっさつ・・・まっさつ・・・ぶれいばーず、まっさつ・・・」
「まっさつ・・・具儀屋亜!!」
呻き声を上げて迫る狼煙と陽炎。
「私は向こうの鳥型の機体を叩きます!藤野君は向こうの大柄の機体を倒して下さい!」
「了解!行くぞ、トライセイバー!」
「おうよ!」
武藤の指示と同時に、トライセイバーとソウトーガは、それぞれの敵を目掛けて跳躍した。


333 :勇者飛翔:2009/03/21(土) 12:47:05 ID:cX1ksdeT

「うおぉぉっ!!」
暴曼陀亜を振り回し、暴雷牙が襲い掛かる。
「くっ!」
ファルブレイクはファルソードで攻撃を受け止める。
「どうしたどうした!このまま引き下がるだけか!?」
暴雷牙は攻撃の手を休めずひたすら斬りかかって来る。ファルブレイクは明らかに押されており、一歩、また一歩と後退している。
「こいつ・・・前回以上に鬼気迫っている!」
「何て奴だ・・・!」
シンヤとファルブレイクはその勢いに圧倒されていた。
「はあっ!!」
そして再度二本の剣が交差した。が、
「!しまった!」
鈍い音を立て、ファルソードが宙を舞い、弧を描いて地面に突き刺さる。 「もらったあぁぁっ!!」
その隙を逃すまいと、暴雷牙が暴曼陀亜を振り下ろした。 「ブレイク!飛べ!」
「くっ!」
暴曼陀亜が振り下ろされる間一髪、ファルブレイクはブースターをふかし、空中へ跳躍した。
「今だ!ファルブレイク!」
「おう!」
シンヤの声と共に、ファルブレイクは瞬時にファルシールドを左腕に装備した。
「うおぉぉっ!ジェットスマッシュ!」
そしてファルシールドを構え、暴雷牙目掛けて全力で突進する。
「んっ!?」
突進して来るファルブレイクを捉えた暴雷牙だったが、既に遅かった。が、
「ふっ・・・甘いわっ!!」
迫り来るファルブレイクに向かって、暴雷牙は右腕を繰り出した。
「なっ!?」
直後に、火花を散らしながら、ファルシールドと、暴雷牙の右腕、正確には右腕に取り付けられた獲物がぶつかり合った。
「がっ!!」
均衡は数秒で崩れ去り、ファルブレイクは衝撃で吹っ飛ばされた。

「おらあぁぁっ!!」
トライセイバーの繰り出した拳が、狼煙を蹴散らす。
「具儀屋亜唖亞!?」
狼煙は衝撃で数メートル先まで吹っ飛ばされ、土煙が噴き上がった。
「どうだっ!」
手応えを感じたトライセイバー。が、
「・・・なっ・・・!?」
土煙が晴れたが、そこ狼煙の姿は無かった。
「・・・ど、どこ行きやがったんだ!?」
慌てて辺りを見回すトライセイバー
「・・・まさか・・・!?」
何かに勘付いた藤野は地面を見た。
「!トライセイバー!奴は地面の中だ!」
藤野が叫んだ、次の瞬間、
「具儀屋亜唖亞!!」
地面を突き破り、狼煙がその姿を現した。
「なっ!?」
トライセイバーは咄嗟の事に、一瞬反応で遅れを取った。
「儀偽屋亜唖!!」
狼煙が拳を繰り出した。
「があぁぁっ!?」
アッパーカットを食らい、トライセイバーの身体は宙を舞った。


334 :勇者飛翔:2009/03/21(土) 12:48:15 ID:cX1ksdeT
「儀偽義!!」
「うおぉぉっ!!」
鈍い音を立てて、陽炎の剣とソウトーガのソウトーボウがぶつかり合う。
「ふんっ!」
陽炎の剣を振り払うソウトーガ
「儀偽屋亜!!」
空中へ逃げた陽炎は、全身のミサイルポッドを展開した。
「儀偽屋亜!!」
直後に、複数のミサイルが軌道を描きながら、ソウトーガに襲い掛かった。
「ソウトーガ!地上に被害は出せません!撃ち落とせますか?」
「もちろんだよっ!あんちゃん!」
そう言うとソウトーガはソウトーボウを構えた。
「必殺!百花繚乱!」
ソウトーガは高速でソウトーボウをミサイルに叩きこむ。狙いにほぼ狂いは無く、ミサイルは次々と轟音と共に爆散した。
「どうだいっ!」
建設途中だったビルを足場にして着地したソウトーガが見栄を切る。が、
「儀偽屋亜唖!!」
煙の中から、陽炎が斬りかかって来る。
「おわあっ!」
跳躍して斬撃をかわすソウトーガ。
「敵は飛行能力を持っています!真正面から戦っては不利!機動力を生かした戦い方で行きましょう!」
「了解っ!」

「くっ、今のは・・・」
吹っ飛ばされたファルブレイクはよろよろと立ち上がる。
「フッ、驚いてくれたかな?」
そう言って暴雷牙は手に装備された武器を見せ付けた。
一見するとファルシールドとほぼ同じ形状の楯だったが、ファルシールドとは異なり、先端に取り付けられた得物は日本刀の様な形状をしていた。
「これが我が真打、剛頑男弟棲だ・・・」
「ゴーガンダンデス・・・珍名ってレベルじゃねーな・・・」
思わずシンヤが突っ込む。
「ふっ、名前だけでこいつの凄さは分からんさ!」
その突っ込みが聞こえたかどうかは知らないが、暴雷牙はそう言って剛頑男弟棲を構えた。
「食らうがいい!我が牙の一撃を!」
直後、暴雷牙はブースターを展開し、高速でファルブレイクに向かって突進を仕掛けた。
「!ブレイク!来るぞ!」
「分かってる!」
即座に立ち上がり、ファルブレイクはファルシールドを構えて防御の姿勢を取った。
「うおぉぉっ!!」
剛頑男弟棲とファルシールドが激突した。が、
「がっ・・・!?」
ファルブレイクは踏ん張りその場に留まろうとするが、暴雷牙の突進の勢いは凄まじく、ファルブレイクは後方に押されていく。
「くっ・・・なんてパワーだ・・・!」
「まだまだっ!」
その勢いは更に強まっていく。が、
「こちらとて、ここでそう簡単に押し切られる訳には行かないのだ・・・!」
ファルブレイクも力の限り衝撃を押し返そうとする。徐々にではあるが、暴雷牙の勢いを押し返していた。
そして均衡が数十秒続いた、その時、
互いに聞き取れない程小さな音だったが、物質に亀裂が入ったかの様な小さな音が響いた。そして、
「!ぐあぁぁっ!!」
僅かだった亀裂は数十秒でファルシールドと剛頑男弟棲を砕き、ファルブレイクと暴雷牙はその反動で吹っ飛ばされた。


335 :勇者飛翔:2009/03/21(土) 12:52:23 ID:cX1ksdeT
「地中に潜って攻撃を仕掛けて来るとは、モグラみてえな野郎だな・・・」
痛恨の一撃を食らいながらも起き上がったトライセイバーは、目の前の狼煙を見た。
「儀偽義魏儀・・・」
狼煙の装甲にはダメージらしき傷は見受けられない。以前戦った業火がパンチ一つで粉砕された事を考えると、防御力も強化されているようだった。
「儀偽義!!」
こちらに向かって突進を仕掛けて来る狼煙。その動き辛そうな見た目に反して、意外な程素早いスピードで接近して来る。
「野郎!」
トライセイバーはセイバーショットを構えた。
「食らいなっ!」
引き金が引かれ、強力な空気の弾丸が発射された。が、
「儀偽居!!」
一旦その場に立ち止まったかと思うと、大きく跳躍して弾丸をかわした。
「何だとっ!?」
スピードだけでなく、ジャンプ力も強化されていた事に驚く藤野。
「儀偽居!!」
そして空中で姿勢を反転させた狼煙は地上に落下するのと同時に、再び地中へ潜った。
「チッ!また土ン中に逃げやがったか!」
辺りを見回すトライセイバー。だが、掘られた場所の上の土が変形するという事もなく、その動きを掴む事が出来ない。
「慌てるなトライセイバー!落ち着いて動きをよく読むんだ!」
「分かってらあ!!」
とは言った物の、動きを読むなんてそんな簡単な事ではない。
(ったく、こういう事はどっちかっつうとパンチジャガーとキックチーターの専門だろうが・・・そもそも俺は細かい事は気にしないワイルドな性格だからこんな戦いは向いてな)
「儀偽屋亜!!」
トライセイバーがそんな事を考えていた時、地中から再び狼煙が姿を現した。
「後だ!トライセイバー!」
「くっ!」
すぐさま反対方向へ振り向くトライセイバー。が、
「儀偽居!」
既に狼煙の拳は眼前まで迫っていた。そして、
「があぁぁっ!」
再びトライセイバーの頭部に狼煙の一撃が入り、トライセイバーはよろけた。
「儀偽居!!」
狼煙は再度拳を繰り出した。が、
「・・・そう何度も・・・やられるかよっ!」
正面を向いたトライセイバーは、眼前に迫る狼煙の拳を左手で受け止めた。
「儀偽!?」
攻撃が決まると確信していた狼煙は、その反応に驚く。
「うおぉぉっ!!」
今度は右手で狼煙の肩口を掴み、力を込めた。そして、
「具儀屋亜唖亞!?」
バキッ!という音とともに、狼煙の腕は引き千切られた。
「まだまだだぜ!」
そう言うとトライセイバーはセイバーショットを構え、狼煙の頭部に向けた。
「終わりだっ!」
トリガーが引かれ、再度空気の弾丸が発射された。
「愚絵・・・」
蛙の悲鳴の様な呻き声をあげ、狼煙の頭部は吹っ飛んだ。AIを失い、その体は不安定にふらついていた。
「うおぉぉっ!!」
そしてトライセイバーはそのどてっ腹に、渾身の一撃を叩き込んだ。
吹っ飛ばされた狼煙の体は数メートル宙を舞った後地面に叩き付けられ数回バウンドし、完全に機能を停止した。
「やったな・・・」
コックピットで藤野は胸を撫で下ろす。
「しっかし、お前も荒っぽいやり方で戦うよなあ・・・」
相棒の戦い方に、藤野は少し呆れていた。
「悪ィな大将。オレはこれ位ワイルドな戦いが性に合ってるんだ」
いやそれは何か違うだろと藤野は心の中で思った。


336 :勇者飛翔:2009/03/21(土) 12:53:39 ID:cX1ksdeT
「セイッ!ハッ!」
休む間もなく、ソウトーガは陽炎に対して攻撃を仕掛け続ける。
「儀偽・・・儀偽・・・」
当初はひたすら攻め立てた陽炎だったが、徐々に攻守が逆転しつつあった。
「ソウトーガ!視聴覚連動システムを!」
「おっけー!」
コックピット上部から下がって来たゴーグルを装着する武藤。瞬時に、敵の内部の様子までもが映し出される。
「あれだけミサイルを撃ちながら、まだこれだけの貯えがあったとは・・・しかしこれは・・・」
陽炎の中にはまだ多数のミサイルが隠されており、武藤は驚いたが、同時にある考えが浮かぶ。
「ソウトーガ、烈火炎槍を使いますよ」
「えっ?アレを使うの?」
武藤の言葉にソウトーガは少し驚いた素振りを見せる。
「不服ですか?」
珍しく悪戯っぽい笑みを浮かべて問い掛ける武藤。
「・・・いんやぜーんぜん?」
ソウトーガは何も問題は無いと言わんばかりの声で答える。
「むしろ、やる気満々だよっ!!」
そう言うとソウトーガは、両手で構えたソウトーボウを高速で回し始めた。
「うおぉぉっ!!」
回転速度はどんどん上がって行き、傍から見ればソウトーボウが全く見えないという状態になった。
「儀偽!?」
その光景に戸惑う陽炎だったが、敵は腕以外は動かす事無く静止している。これ以上の好機は無いと悟り、全身のミサイルポッドを展開した。
「頼みますよ!ソウトーガ!」
「任せてよ!」
そう言いつつも、ソウトーガはその腕を休める事無くソウトーボウを回し続ける。
「儀偽居!!」
そして陽炎から放たれたミサイルが、ソウトーガ目掛けて再三襲い掛かる。しかし、今度はソウトーガは避けようともしなければ迎え撃とうともしない。
轟音と共にミサイルが弾けたのはその直後だった。ソウトーガは炎の中に飲み込まれたのだ。
「儀偽義・・・」
陽炎は勝利を確信した。これだけのミサイルに飲み込まれればひとたまりも無い。最後の行動が不自然だったが、気に留めるまでもなかった。が、
「うおぉぉっ!!」
その直後、陽炎は眼を疑った。
立ち上る煙を切り裂き、ソウトーガがその姿を現したのだ。
「儀偽居!?」
陽炎が驚いたのはそれだけでは無かった。ソウトーガの手に握られていたソウトーボウは、燃え上がる炎を纏って槍の様な形状へ変化していたのである。
これが武藤の狙い、ソウトーボウを高速で回転させることで摩擦熱を持たせ、ミサイルの爆発で発生する炎を発火装置代わりにしてソウトーボウに炎を纏わせる、烈火炎槍であった。
「儀偽義魏!!」
その光景に慌てふためいた陽炎は再びミサイルで迎撃しようとする。武藤の睨んだとおり、まだミサイルは尽きていない様だった。
「ソウトーガ!今です!」
「あいよ!」
ソウトーガは燃え上がるソウトーボウを構え、狼煙に狙いを定めた。そして、
「飛んでけっ!!」
殆ど無駄のない姿勢で、ソウトーボウを陽炎に投げ付けた。
「儀偽義魏!?」
そのスピードは陽炎の予想を超えており、まだミサイルを残していた胸部に勢いよく突き刺さった。そして、
「牙偽屋唖亜亞阿!!」
全身のミサイルに炎が燃え移り、陽炎は大爆発を起こした。
「セイッ!」
先に着地していたソウトーガは、残骸に交じって落下して来たソウトーボウをキャッチした。炎上したせいか少し煤けているが、まあ問題ないだろう。
「やったね!あんちゃん!
「ええ・・・ですが・・・」
武藤はファルブレイクと暴雷牙が戦っている方を見た。
「まだ戦いは、終わってませんね・・・」


337 :勇者飛翔:2009/03/21(土) 12:54:27 ID:cX1ksdeT
「まさか、ファルシールドが粉々に砕けるなんて・・・」~ シンヤは今起こった光景に驚きを隠せなかった。
「だが、幸いにもダメージを受けたのは私だけではないぞ・・・」
運よく近くに転がっていたファルソードを手に、ファルブレイクは立ち上がった。
「・・・まさか、真打がたった一瞬でへし折られるとはな・・・」
暴雷牙の剛頑男弟棲は根元からへし折れていた。ファルシールドとの競り合いの結果、ファルシールドを破壊する事は出来た物の、その負荷に耐えられずに折れてしまったのだろう。
「これで結果的には、得物は互いに一対ずつになった訳だな・・・」
刀身のない得物など不要とばかりに、暴雷牙は剛頑男弟棲を投げ捨て、再び暴曼陀亜を構えた。
「・・・」
ファルブレイクも無言でファルソードを構えた。次の一撃で決まる。互いにそう確信していた。
「・・・やれるか、ファルブレイク?」
「やらなきゃならない、だろ、相馬?」
そんな会話を交わすシンヤとファルブレイク。
「・・・ふっ、辞世の句は詠み終わったか?」
挑発するかのような姿勢をとる暴雷牙。
「・・・まだ終わるには早過ぎるさ・・・」
「フッ、良いだろう・・・」
そして互いに、全てのブースターを展開した。
「いざ、勝負!」
跳躍し、加速、必殺技の構えに入るタイミングもほぼ同じだった。
「うおぉぉっ!!ジェットスラッシュ!」
「暴魔連蛇剣!」
暴雷牙は加速しながら、瞬時に暴曼陀亜を鞭状に変化させた。
「切り裂けっ!!」
弧を描きながら、暴曼陀亜がファルブレイクに襲い掛かる。
「くっ!」
ファルブレイクもそれに気付き、攻撃をかわした。が、
「甘いわっ!」
暴雷牙は腕の微妙な動きで暴曼陀亜の軌道を変えた。そして、
「があぁぁっ!?」
叫び声を上げるファルブレイク。暴曼陀亜がファルブレイクの左腕を斬り落としたのだ。そして一瞬、ファルブレイクの姿勢が崩れた。
「これで終わりだ!」
再び暴曼陀亜は剣状に戻り、同時に暴雷牙は空中へ跳躍した。
「ファルブレイク!尋常に斬られよ!」
そして降下しながら、ファルブレイク目掛けて斬り掛かった。が、
「・・・そう簡単に・・・終われるかっ!!」
ファルブレイクは力を振り絞り、跳躍した。
「まだそんな力が残ってるとはな!大したものだ!だが、貴様に勝ち目はない!」
暴曼陀亜を振り下ろす暴雷牙。
「うおぉぉっ!!」
刹那、ファルソードと暴曼陀亜が激しくぶつかり合う。
互いの勢いはほぼ互角で、空中で完全に拮抗していた。
「くっ・・・この期に及んでまだ足掻くか・・・」
「当然だ・・・ここで斬られる気は毛頭ないからな!」
「フッ・・・ならば全力で押し切るまでだ!」
暴雷牙は更に加速しようとした。が、
「・・・まだ気付かないか、暴雷牙・・・」
「フッ・・・この期に及んでなにを・・・」
言い掛けて、暴雷牙は言葉を失った。
見ると、暴曼陀亜のあちこちに亀裂が走っているのだ。
「貴様の剣のカラクリには感心した。だが、そんな特殊な構造の剣にこれ程の負荷がかかれば、剣自体が耐え切れずに崩壊してしまうのは当然・・・!」
既に暴曼陀亜の亀裂は剣全体に渡る程大きくなっていた。
「くっ・・・!馬鹿なぁぁぁ!!」
暴雷牙の絶叫と共に、暴曼陀亜は粉々に砕け散った。
「うおぉぉっ!!」
その隙を突いて、ファルブレイクはファルソードを真横に傾けた。そして、
「ぐあぁぁぁっ!!?」
その一閃は、暴雷牙の腰部を切り裂いた。


338 :勇者飛翔:2009/03/21(土) 12:55:27 ID:cX1ksdeT
「・・・勝った・・・」
ファルブレイクが地面に着地したのと同時に、空中で暴雷牙が閃光と共に爆散した。
「・・・やったな、ファルブレイク・・・」
「ああ・・・」
左腕を切り落とされ、全身傷だらけとはいえ、どうにか勝利を収める事は出来た。が、
「がっ!」
残骸の中に混じって、全身傷だらけの暴牙が落下して来た。
「・・・生きていたか・・・」
ファルブレイクもその姿に気付いた。
「フッ・・・我が友雷頑が私を助けてくれたようだ・・・だが、今回の戦いは私の負けだ」~ 「見れば分かる」
「フッ・・・相変わらず連れない奴だ・・・」
暴雷牙は苦笑すると、仰向けの姿勢になって空を見上げた。
「楽しい戦いだったぞ、ファルブレイクよ・・・」
「楽しくは無かったが、お前が強敵だということは嫌という程伝わった」
あくまで素っ気ない態度を貫くファルブレイク。
「フッ・・・静かだ・・・ここを墓標に選ぶことが出来て良かったよ・・・」
「そうか・・・」
「・・・ファルブレイク、お前とは出来れば別の形でもっと話がしたかったな・・・」
「・・・それは同意だ・・・」
「・・・フッ・・・さらばだ、友よ・・・」
その言葉を最後に、暴牙は全ての機能を停止した。
「・・・友・・・か・・・」
ファルブレイクは空を見上げた。久しぶりに透き通った空から幾千もの星が覗いていた。

「くっ・・・暴雷牙め・・・結局は私に恥をかかせただけではないか・・・」
仕向けた維新機士を全て破壊され、荒木は猛烈な苛立ちを覚えていた。
「・・・だが、貴様の戦いは志士と呼ぶに相応しいものであった・・・安らかに眠るがいい・・・」
そう言うと荒木はファルブレイクを睨みつけた。
「ブレイバーズよ・・・この借り、いつかは必ず返させてもらう!首を洗って待っていろ!!」

「フン・・・やはり暴雷牙は敗れたか・・・」
その様子を見ていた村上は、表情一つ変えていなかった。
「・・・まあいい、所詮は試作機、やはり超AIを持たせるなど失敗以外の何物でもなかったな・・・」
そう言うと村上は椅子から立ち上がった。
「・・・これで大体のデータは出揃った・・・暁よ、もうすぐお前に相応しい鎧をこしらえてやるからな・・・」
そう言った村上の視線の先には、不気味に光る二つの眼があった・・・。

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