勇者飛翔ファルブレイク第二話


297 名前: 勇者飛翔 [sage] 投稿日: 2008/09/11(木) 18:23:34 ID:BqEPTAk1
すいません、しばらく投下自粛しようかなと思いましたが、第二話行きます・・・。

新宿ゴーストタウンと呼ばれている、再開発計画が途中で頓挫した為に開発途中の建造物が朽ち果てている立ち入り禁止地帯
の地下一帯に、それはあった。
「これが、烏丸を撃破したというロボットか・・・」
維新機士・烏丸が爆散する直前に転送した映像を見て、スキンヘッドの大男は無表情で呟く。
「はっ・・・」
後ろには先日烏丸に指示を出し市街地への攻撃を行った男が立っていた。

第二話 緊急出撃!トライセイバー

ブレイバーズへの転属を命じられ、とりあえず警備会社に辞表を提出した次の日から約2週間、シンヤは研修という形で郊外にある
訓練施設で教育を受けることになった。
とりあえず体力面での問題はなかった。体力が自分の数少ない取り柄だと思ってるし、トレーニング自体は割と好きなので、そつなくこなすことができた。
問題は座学だった。学校の勉強よりも遙かに難しいロボットの構造や操縦方法に関する知識など、ブレイバーズに所属する上での必要だとはわかっていても、
延々と毎日5時間以上ぶっ続けで聞かされるのは割ときつかった。まあこの先の事を考えればそんな知識も割とすんなり頭に入っていったのだが。
そしてどうにか研修期間を終えたシンヤは、ようやくブレイバーズの本部を拝むことが出来た。本社ビルの地下一帯に構えられた広大な施設にはシンヤも面喰ったが。
その広大な地下施設の一角にある部屋へ、シンヤは乃木坂に連れられて入った。
「えー諸君、我々の新たなる仲間を紹介しよう。相馬シンヤクンだ」
若干気取った声で乃木坂は言う。
「相馬、シンヤです・・・よろしくお願いします・・・」
少し恥ずかしいと思いつつも、シンヤは深々と頭を下げた。
「えーでは、隊員の皆も私から軽く紹介させていただく」
そう言うと乃木坂は軽いテンポで歩き出した。
「彼女は平野洋子、ブレイバーズの戦局予測を行ってるオペレータだ」
「よろしくね、相馬クン」
紹介された洋子はにっこり笑った。シンヤも軽く頭を下げる。見た目からも活発さがにじみ出ている爽やかな女性だとシンヤ思った。
「そして彼が・・・」
「藤野鉄生。ブレイバーズの実動隊員・・・でしょう?乃木坂博士」
壁に寄り掛かって話を聞いていた藤野は乃木坂の紹介をさえぎりそっけない態度で答える。
「・・・あー、そう、その通りだ・・・」
少し苦笑して乃木坂が答える。日焼けした肌に一部茶色に染めた髪、と相まって、なんとなく荒っぽい感じのする男だった。
「まあ、精々オレ達の足を引っ張らないでくれよ、新人さんよ」
鼻で笑うような、はっきり言うと少し馬鹿にしたような表情で藤野は答えた。初っ端からバカにされたのにはシンヤも流石に少しむっとした。
「あー、藤野クン、後輩に対して初日からそういう態度はどうかと思うよ?」
少し頭を掻きながら、乃木坂は藤野に耳打ちした。
「いえいえ、そんなつもりはありませんよ」
当の藤野には悪びれる様子はない。
「・・・あんまり気にしちゃだめだよ?藤野さん、あれでも根は割と良い人だから・・・」
洋子が耳元でつぶやく。正直あんまりフォローになってない気がするのだが・・・。
「あーコホン、本来は更にブレイバーズの体長である武藤黒さんがいるのだが・・・諸事情によって今はいないのだ」
乃木坂の説明にシンヤは首をかしげた。
「出張・・・ですか?」
すぐそばで藤野がプッと笑うのが聞こえたが、まあ気にしないでおこう。
「まあ、ニュアンス的にはそんな所だろうか・・・現在新たなるブレイバーズのロボの受領の為に出向している」
「ブレイバーズのロボ・・・ブレイクの仲間ですか?」
「そんな所だな・・・それについては今から説明する。ついてきてくれ」


298 名前: 勇者飛翔 [sage] 投稿日: 2008/09/11(木) 19:35:36 ID:BqEPTAk1
「おそらく、これは以前から我々の存在を嗅ぎまわっていた連中の手のものだろうな」
映像を見終わった男、池崎は振り返り、やはり無表情で答える。
日本転覆の為に破壊活動を行う反政府組織、維新夜天党の首領であり、国内外を通して様々な犯罪組織にも顔を知られている、この世界の大物である。
「奴らは自分の事をブレイバーズと名乗っていたと記憶しております・・・」
その後ろに立っていた男、荒木が答える。
「警察の犬か?」
「わかりませんが、我々の脅威となりえる存在であるのは間違いないと思われます」
「・・・少し様子を見させてもらうとしよう・・・我々の脅威となるなら、全力で排除に当たるまでだ・・・」

「ここがブレイバーズのロボを収容する格納庫だ」
乃木坂に連れられて、巨大な格納庫へシンヤは足を踏み入れた。
「・・・すげー・・・」
シンヤは思わず感嘆をもらした。格納庫には見慣れない様々なマシンが並んでおり、整備員があくせくと手を動かしていた。
「ブレイバーズのメカは大抵はここで組み立てられ、修理、強化もここで行われる。この施設の目玉の一つだ」
乃木坂の歩みに合わせてシンヤも後ろからついていく。すると、
「相馬、無事配属が決まったんだな」
シンヤが振り返ると、デッキに固定されたブレイクが立ち尽くしていた。
「ブレイク!」
シンヤは思わず駆け寄った。
「分かっていると思うが、相馬クン、君にはブレイクとともに前線で戦ってもらうことになる。厳しい仕事だが、頑張ってくれ」
「了解、よろしくな、ブレイク」
「ああ」
シンヤがブレイクとそんな会話をしていると、今度は背中から野太い声が響く
「おー、お前さんが噂のブレイバーズの新米隊員か?」
振り返ってみると、やはりブレイクと同様にデッキに固定されたロボが立っている。ただどちらかと言えば細身なブレイクに対して重厚な姿をしていた。
「オレっちはセイバーヘッド、ブレイバーズのロボだ。よろしくな、坊主!」
そう言うとセイバーヘッドは親指を立ててニッと笑った。
「ああ、よろしくな・・・」
なんだか凄く暑苦しそうなロボットだと思った。まあ嫌いじゃないが。
「ちなみに彼は藤野クンの相棒でもある。救助活動なんかが主な役目だ」
乃木坂が説明する。主とは真逆の性格だなあとも思った。まあ自分もだが。ついでに藤野が救助活動と聞いてもイマイチピンとこなかった。
「後は隊長の相棒となる新型機がここに加わる予定だ・・・ビーストブラザーズと聞いたな・・・」
「ひょっとしてさっき言ってた新型機って、そのことなんですか?」
「ああ、その通りだ。現在ブレイバーズで超AI搭載のロボ、ブレイクやセイバーヘッドだな、の研究を行っているのは私を含め三人いてな。隊長の要望したロボの
コンセプトは私の専門外だったため、開発は他の博士に依頼して隊長に直接監修してもらうことになったんだ」
「そうだったんですか」
「隊長といい藤野クンといい、我がブレイバーズの人々は結構我ままでね・・・君はどうかな?相馬クン」
乃木坂はそう言うとにやりと笑った。
「いえ、それはなんとも・・・」
「ククク・・・ああそれと、ブレイバーズは凶悪犯罪が起こればすぐさますっ飛んで行かねばならない。常在戦場だ、あまり気を抜かないでくれたまえ・・・」

乃木坂の説明を聞いて周った後、シンヤは食堂で昼食をとっていた。食堂と言っても飲食が作られているわけではなく、食事は自分で持って来なければいけない。
警備会社ではいつも社員食堂で昼食をとっていた手前、シンヤは弁当を持参する機会は殆どなく、今日も弁当を持ってきていなかったが、有難いことに洋子が
弁当を少し分けてくれることになったので、シンヤはそのおこぼれにあずかる事になった。
「どう?ブレイバーズはやって行けそう?」
にっこり笑いながら洋子は尋ねた。
「ええ、まあ・・・」
シンヤの答えは少し曖昧だった。
「そう言えば相馬クンってなんでブレイバーズに入ったの?」
少し唐突な質問だった。
「え?あ、はい、それはですね・・」
シンヤはこれまでの経緯を説明した。
「ふーん、人を守る仕事かあ・・・」
「大層な理想だな」


299 名前: 勇者飛翔 [sage] 投稿日: 2008/09/11(木) 20:24:15 ID:BqEPTAk1
場の雰囲気を蹴っ飛ばすような言葉とともに、藤野が現れた。
「やっぱ若造は理想の規模が違うねえ。オレみたいな人間にはそういう理想を夢見る余裕もないからある意味羨ましいわ」
「藤野さん、流石にそれは言い過ぎだと思いますよ・・・」
少し怒った様に洋子が反論する。
「まあまあそんなに怒るなよ平野。それより相馬、理想を抱くのは結構だが、自分をヒーローとかと勘違いするんじゃねえぞ。私設武装組織ったって、出来る事に限界があるのは変わりないんだからな・・・」
そう言うと藤野はシンヤが食べようとした唐揚を口に入れた。
「まあ要するに、あんま背伸びしないで自分のやれる範囲内で行動しろってこったな・・・」
シンヤはやはり少しイラっとなった。自分に出来る範囲で行動しろというのはまだしも、その前の言葉に対してはなんでそこまでボロカスに言われなくてはいけないのか理解できない。
「ふっ、まあ精々頑張れや」
そう言うと藤野は食堂から出て行った。
「あんま気を悪くしないでね?藤野さん、あれでも根は悪い人じゃないから・・・」
だからフォローになってませんって・・・。ついでに、あのどこか図々しい性格は向井にも通じる物があると思った。性格は向井の方が10倍マシだが。

「今回は前回のようにはいかんぞ、ブレイバーズよ・・・」
陽が沈みかけた東京の街のビルの上に佇み、荒木は街を見下ろした。
「維新機士・烏丸、業火よ!再び血と殺戮の雨を降らすのだ!」

荒木の叫びと共にに、都心部の道路を突き破り、巨大な二つの赤い影が出現した。熊の様な体格の維新機士、業火だった。
「まっさつ・・・まっさつ・・・」
不気味な機械音と共に、二体の業火は破壊活動を開始した。そしてそれとは別方向に、同じく指示を受けた烏丸が向かっていく。
「今回はこれだけではないぞ・・・」
そう言うと荒木は胸のポケットから通信機を取り出した。
「爆破班、やれ・・・」

耳をつんざくかの様な警報に呼ばれ、シンヤ、洋子、藤野は施設中央にある司令室に駆け込んだ。
「現在被害状況はどうなっている!?」
少し遅れて、麻生が司令室に入る。ブレイバーズの長官は彼が兼任しているのだ。
「都心にて巨大兵器二体が破壊活動を継続中!エリア015に小型兵器が出現!更にエリア126の病院で爆破テロが発生しました!」
先程までとは異なる真剣な口調で洋子が叫んだ。
「小型兵器には付近を巡回していたセイバージャイロ、セイバードリルを向かわせました!病院では40%の人が避難しましたが、それ以外の人は炎に巻かれて取り残されています!」
「うむ、分かった・・・相馬、藤野両名は至急出撃してくれ。相馬隊員とブレイクは都心の巨大兵器の迎撃に向かい、藤野、セイバーヘッドはエリア126の病院に向かって救助活動に当たり、完了次第相馬隊員と
合流して迎撃に向かってくれ」
「了解!」
シンヤと藤野は声を揃えて返事をする。
「よし、ブレイバーズ、出動!」

「初めてのミッションだな、相馬」
コクピットに乗り込んだ相馬に対してブレイクが言う。
「ああ、気張っていこうぜ」
シンヤも相槌をうつ。が、
「おい新米、お前は時間稼ぎにでも徹しとけ」
藤野の声が響く。どうしてこうもこの人は人の決意に水を差すのだろうか。
「ブレイク、お前もこいつが無茶しないように見張っとけよ」
そう言うと通信は一方的に切られた。
「・・・悪く思わないでくれ相馬、ああ見えてもそんな悪い人ではない・・・と思うぞ」

「相変わらず手厳しいねえ大将は」
シンヤに対して毒舌をぶちまけた藤野をからかう様にセイバーヘッドが言う。
「うるせえな、アレは俺なりの労いの言葉だ」
「わかってますって」
大型の輸送機の様な姿に変形したセイバーヘッドの下部には、大型のコンテナ2基が装備された。最大収容数70人を誇るコンテナだが、下部にはブースターが4基装備されていて、セイバーヘッドに接続される事でそれ自体が飛行能力を補う巨大なブースターと化す代物である。
「よし、博士、ハッチ開けてくれ」
「こちらも頼みます」
セイバーヘッド、ブレイクのそれぞれの声が司令室に響く。
「よし、行ってこい!」
そう言うと乃木坂は目の前のレバーを押し倒した。瞬間、セイバーヘッドとブレイクの真上の天井がそれぞれ開き、ブレイクの前には専用のタラップが出現した。
「相馬シンヤ、ブレイク、出撃します!」
「セイバーヘッド、テイクオフ!」


300 名前: 勇者飛翔 [sage] 投稿日: 2008/09/11(木) 21:18:47 ID:BqEPTAk1
「まっさつ・・・まっさつ・・・」
二体の業火は建造物に攻撃を行いながら都心を炎で染め上げてゆく。足元にはその狂気に逃げ惑う人々の姿が見える。
「待て!」
そんな中一つの叫び声が響く。次の瞬間、
「具儀威」
ロボモードに変形したブレイクの体当たりを喰らい、業火はのけぞった。
「街を破壊するロボットども!これ以上の横暴は我らブレイバーズが許さん!」
着地したブレイクは業火を指差し啖呵を切った。
「具疑義、無礼場唖図、まっさつ・・・まっさつ・・・」
もう一体の業火は拳を振り上げた。ブレイクは跳躍し振り下ろされた拳をかわす。
「くらえっ!ホイルスラッシャー!」
両腕のタイヤが分離し、業火目がけて飛んで行く。が、
「儀疑義・・・」
カン、という鈍い鉄の音が響き、ホイルスラッシャーが弾かれる。
「ぐっ!?ホイルスラッシャーが効かないだと!?」
着地したブレイクは跳ね返ったホイルスラッシャーをキャッチする。
「気を付けろブレイク!こいつ、前の奴よりも強いぞ!」

「まっさつ・・・まっさつ・・・」
エリア015には烏丸が出現し、破壊活動を開始しようとしていた。が、
「儀疑義」
突然弾丸が体に命中し、烏丸は足を止めた。見ると、自分と似た様な姿のヘリが攻撃を仕掛けて来た様だ。
「儀疑義・・・」
烏丸は反撃しようとする。が、ヘリは突然各部を展開して変形し、一瞬で人型になったのだ。
「疑義・・・」
烏丸が動揺した次の瞬間、今度は地面を突き破り、先端にドリルを装備した地底掘削車が姿を現し、こちらも各部を展開してロボットに変形する。
「具疑義・・・?」
突然目の前に二体のロボットが出現した事に動揺する烏丸。ブレイバーズの擁する無人ロボ、セイバージャイロとセイバードリルである。
「・・・まっさつ・・・まっさつ・・・」
しばらく静止した烏丸は再び呪いの様な言葉を呟きながら、二体に機関銃を向けた

「エリア126、あそこだな・・・」
藤野の目にもうもうと煙を上げて燃え盛る病院が映る。結構大がかりなビルの様で、下の方では消防車が消火活動を行い、救出された人が次々と運ばれてゆく。人だかりもかなりの物だ。
「救出されたのは40%とか言ったよな・・・」
「あの規模の病院じゃ60%は結構デカいぜ?」
「分かってる、なるべく声が響く距離まで接近してくれ」
そう言うとセイバーヘッドはすぐさま6階建ての病院の5階位の高さに接近した。
「ボリュームは最大限にしとけよ、可能な限り多くの人間に伝えないといけないからな」
藤野は手元に装備された通信機を取り、叫んだ。
「こちらブレイバーズ救助班!この病院の救助に来た!今から取り残された人間の救助及び搬送を行う!死にたくない奴は屋上に向かえ!ただし一度に全員搬送は無理だ!怪我人、老人、
体の弱い者を優先する!心配しなくても他の人間も見捨てはしない!だから焦らず避難してくれ!繰り返す・・・」
多くの人がその大音量の叫びに面食らうと同時に、半身半疑のながらも屋上へ向かい出した。
「全員救えるかは分からないが・・・可能な限りはやるしかないな・・・」

「ぐああっ!!」
業火のパンチを喰らい、ブレイクが吹っ飛ぶ。
「まっさつ・・・いしんやてんとう二はむかウもの、ゆるサナイ・・・」
再度振り下ろされた拳を、跳躍してかわすブレイク。
「儀疑義・・まっさつ、まっさつ・・・」
もう一体の業火は街への攻撃を再開しようとする。
「させるか!」
ブレイクはビークルモードに変形して体当たりを仕掛けようとする。が、
「じゃまスルナ」
再び業火の攻撃を喰らい、ブレイクは吹っ飛んだ。
「ぐあぁぁっ!!」
地面に叩きつけられ、シンヤとブレイクは悲鳴を上げた。
「ぐっ・・・大丈夫か、相馬・・・」
「ん・・・ああ・・・」
どうにか立ち上がるシンヤとブレイク。戦局はかなり悪化していた。


301 名前: 勇者飛翔 [sage] 投稿日: 2008/09/11(木) 23:13:46 ID:BqEPTAk1
「具儀我下後!!?」
セイバージャイロのローターが変形した武器に両腕を切り落とされ、更にセイバードリルに胴体を貫かれた烏丸は断末魔と共に爆散した。
「お前ら、片付いたのか?」
そこへセイバーヘッドが現れる。この三体のロボは合わせてセイバーチームと呼称されている。
「よし、あの馬鹿の元へ急行するぞ」
「大将、なんだかんだ言ってあの坊主が気になるんだろ?」
セイバーヘッドが茶化す。
「ふん、あんな奴とはいえ、勝手に死なれるのはバツが悪いからな」

「ぐ、あ・・・」
首元を締め付けられ悶えるブレイク。
「くっ!離せ、離せ!」
コックピットで叫ぶシンヤ。だが業火の力は収まらず、このまま首を引きちぎろうとせんばかりの勢いだった。
「ククク、いいぞ業火、我らの顔に泥を塗った罪をとことん思い知らせてやれ!」
荒木は高笑いする。
「まっさ、まっさつ、無礼場唖図ハまっさつ・・・」
更に力を強める業火。が、
「具儀下疑義!」
突然何かに撃たれたかの様に業火はブレイクを放り投げて苦しみ出した。
「がっ!」
再度地面に叩きつけられるブレイク。
「ぐっ・・・なにが起こったんだ・・・?」
シンヤは空を見上げた。
「遅くなったな、新米」
「その声は・・・藤野さん?」
そこにいたのは、大型のガトリング報を身構えたセイバーヘッドだった。
「悪いなブレイク、遅れちまってよ」
「セイバーヘッド!来てくれたのか!」
疲弊したブレイクも思わず歓喜の声を上げた。
「ふっ、ザマあねえな新米、一人で向かってって傷一つ与えられずにコテンのパーにやられるとか情けねえにも程があるな」
「・・・」
イラっと来る筈の罵詈雑言にも、今回は反論できなかった。
「ふん。まあ、市街地への被害は最小限に止まってるみたいだし、時間稼ぎとしてはまあ頑張った方か?」
そう言うと藤野は顔を引き締めた。
「そこで指でもしゃぶってろ。後はオレがやってやるよ」
「・・・はい・・・」
シンヤはそう言うとブレイクを後退させる。
「相馬、残念だが我々には・・・」
「わかってる・・・」

「さっきまでの相手と一緒にすんなよ」
程なくしてセイバージャイロ、セイバードリルも駆け付けた。
「よし、行くぞ!セイバーフォーメーションだ!」
「よしきた!お前ら!合体だ!」
「ラジャ」
藤野の叫びに呼応するように、セイバーチームは上空へ跳躍した。
セイバーヘッドの胴体が二つに割れて、つま先を折りたたみ両脚の裏から拳が現れて腕になった。同時にバックパックがスライドし、新たなな胴体と腰部を形成する。セイバージャイロとセイバードリルはビークルモードへと変形、
ヘリのコックピットとドリルが直角に折れ曲がってつま先となり、二対の脚となり、セイバーヘッドが変形したボディに合体する。同時にセイバーヘッドの頭部に背部に収納されていたヘッドギアが被さり、新たな頭部が完成、瞳に緑の光が宿った。
「救急合体!トライセイバー!」
力強い雄叫びと共に、セイバーチームは合体を完了させ、更なる巨大ロボ、トライセイバーが完成した。

「合体・・・した?」
シンヤは驚き眼を見開いた。
「ああ、あれがセイバーチームの合体した姿、トライセイバーだ・・・」
ブレイクが説明した。
「具疑義・・まっさつ、まっさつ、まっさつ」
業火は驚愕して動きを止めたが、すぐさま攻撃を仕掛けようとした。
「力の違いを見せつけてやるよ」


302 名前: 勇者飛翔 [sage] 投稿日: 2008/09/11(木) 23:46:15 ID:BqEPTAk1
トライセイバーは業火に向けて高速で突進する。
「でやあぁぁぁっ!!」
叫び声と共に、トライセイバーは業火の正面に拳を叩きこんだ。
「具下絵得娃江!??」
後方に吹っ飛んで行く業火。その威力はブレイクの物より遙かに強い。
「具我唖亜亞阿!!」
トライセイバーの後方から業火が襲いかかる。が、
「遅いんだよ!」
難なくかわすトライセイバー。
「でやあぁぁぁっ!!」
そして次の瞬間、トライセイバーはつま先のドリルを高速で回転させ、業火にキックを喰らわせた。
「具下毛夏外!!」
回転するドリルによって装甲を抉られる痛みに、業火は絶叫する。更にトライセイバーは背中に装備されていたガトリング砲を引き抜く。空気を圧縮して弾丸の如く敵を撃つ代物である。
「はじけろっ!!」
ドリルで抉られた傷口に、空気を圧縮した弾丸が飛びついた。
「具下絵得娃江!!」
機関部を破壊され、トライセイバーが離れたのと同時に、業火は爆散した。

「凄い、あんな一瞬で・・・」
シンヤは驚愕した。自分達とは比べ物にならない強さだ。
「具下毛夏外・・・」
吹っ飛ばされた業火が立ち上がる。しかし今の一撃で装甲がひしゃげて内部機関がむき出しになっている。
「おい、新米、出番だ」
「え!?」
突然の呼び出しに驚くシンヤ。
「あいつは既に装甲がやられて内臓がむき出しになってやがる。あの状態ならブレイクの装備でも倒せる筈だ」
「・・・オレにやれってんですか?」
「この程度の事も出来ないんなら、さっさと辞表出して来い」
今度はイラっとくる余裕があった。
「わかりました・・・ブレイク、出来るか?」
「大丈夫だ」
そう言うとブレイクは振り向いた。
「具下絵娃江画!!」
業火が死に物狂いでこちらに向かってきた。
「ブレイク、良く狙えよ」
「わかってる」
そう言うとブレイクはホイルスラッシャーを構えた。
「具我唖亜亞阿!!」
業火の巨体が目の前まで迫った、その時、
「今だ!」
むき出しになった内部機関目がけて、二対のホイルスラッシャーが飛んで行く。

「具儀下我儀我唖!!?」
内部からボディを真っ二つにされた業火は、爆散して文字通り業火と化した。
「おのれ・・・一度ならず二度までも・・・!」
荒木は拳を握り締めた。

「やったあ!」
指令室でその様子を見ていた洋子が思わず歓喜の声を上げる。
「・・・任務完了だな・・・皆御苦労だった」
麻生が労いの言葉をかけた。
「・・・」
だが乃木坂だけは顔に笑みがなかった。
(やはり、ブレイクだけでは戦力的に厳しすぎる・・・サポートメカの開発を急がねばな・・・ククク、腕が鳴るねえ・・・)


303 名前: 勇者飛翔 [sage] 投稿日: 2008/09/11(木) 23:52:15 ID:BqEPTAk1
戦闘が終わり、ブレイクとセイバーチームは帰還を始めていた。
「あの、相馬さん・・・」
「あん?んだよ」
「今日はその、助けてもらって、その・・・有難うございます・・・」
「・・・ばーか、誰もおめえを助ける気なんかねえよ。そもそも今回の戦いは100%オレ達セイバーチームの手柄だからな。
お前の活躍なんざ0.1%にも満たねえよ」
相変わらずの罵詈雑言に、シンヤは前言撤回したい気分になった。
「まあ坊主、そう気を悪くしなさんな、大将だってお前さんの事結構気にかけてんだぜ?」
「余計な事言うな、セイバーヘッド」
藤野は舌打ちした。
「まあ、誰だって最初はあんなもんだ、正直お前に見込みがあるとは到底思えないが、精々頑張ってみろよ・・・」
「・・・」
いや、とシンヤは思った。
「相馬・・・大丈夫か?」
「・・・心配すんなよブレイク、こんな言葉でも、今のオレは結構嬉しいよ・・・」
例えひねくれていたとしても、その言葉から滲み出る「頑張れ」という言葉がシンヤにはなによりも嬉しかった。


終わりです・・・前回よりは短くなるだろうとタカをくくっていたら結局同じくらいの量になってしまいました・・・。
いい加減文章を上手くまとめる力を身につけないとなぁ・・・(涙

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