天空勇者フライトナー第1話


天空勇者フライトナー

遠い未来。
世界から戦争という文字はなくなり、人々は平和に暮らしていた。


「出動!フライトナー!」


 とある研究所の休息室。
「こちら、BOSニュースです! たった今、街の中心部に隕石が落下したようです!」
 そこの椅子に座っている白衣を着た青年、大空カイトがコーヒーを飲みながらテレビを見ていた。
 テレビには上空からの映像であろう、市街地にできた大きなクレーターが映し出されている。
「何でしょう? なにか様子が……」
 レポーターがそう言った瞬間だった。
 隕石にひびが入った。まるで何かの卵のように。
 それは大きく広がりやがて全体にひびが走った。

「中から怪物でも出てきたりして……。これはアイツが活躍するかも……なんてな」
 カイトは冗談交じりにいうが……。

 パキッ……。街に似合わぬ静けさの中、ついに割れた隕石。
 そこから出てきたものは……!!
「あ、あれは……なんでしょう! 恐竜のような生物です!!」
 中から出てきたのは、怪物というのか。それとも宇宙人か。
 とにかくこの世のものとは思えぬ生物がそこに。
「大きくなった!? 見間違いでしょうか。いえ、違います! どんどん成長しています!」
 テレビに映ったそれを見て、カイトは飲んでいたコーヒーを盛大に吹いた。
「まさか、本当に怪物が現れるとはな。それも急速成長する、か。こうしちゃいられない!」
 コーヒーを机に残し、休息室を出て行った。


「ギグァーーッ!!」
 耳をつんざくような鳴き声がこだまする。
 ビルの窓ガラスが吹きとび、街に降り注ぐ。
 それは機械にまで影響を与えるらしい。テレビ局のヘリがフラフラと落ちていく。
「くそ! このままじゃ墜落する!」
 まるで、殺虫剤のかけられた蚊のようだ。
 さらに、追い打ちをかけるようにビルをなぎ倒す。
 下では逃げ惑う人たちが……。
 そこへ白煙を上げながら突っ込んでくるバイク。ギリギリのところで止まる。
「おぉっと……危ない危ない。しかし……これはまずいな……はやくなんとかしないと!」
 現場に到着したカイトが、逃げ惑う人々や落ちるヘリを見ながら言う。
 そして、手に持った通信機に向かって叫んだ。
「よし! 出番だ! フライヤー!」
 そう叫ぶと同時に、空の彼方から現れる戦闘ヘリ。
 超高速で崩れ落ちるビルへと向かってくる。
 ちょうどビルの下に来た時だ。
「チェーンジッ!!」
 声が聞こえたかと思うと戦闘ヘリがロボットに変形した。
「なんだあれは!? 変形した!!」
人々は見とれて、立ち止まってしまう。
「フンッ!!」
 ロボがビルを支えるようにして飛んでいる。
「早く! 私が支えている間に逃げるんだ!!」

 その間にすかさず誘導するレスキュー隊。
「皆さん! コチラに避難してください!!」
 あっちこっちから聞こえてくる。
「コチラは通行止めです! アチラに進んでください!!」
 ハッとした人々は誘導にしたがい進んでいく。

「よし! 次はヘリを助けるんだ! 急げ!」
「まかせろ! カイト!」
 あと15メートルほどしかない。
 フルスピード。
「とぉ!!」
 フライヤーが滑り込むようにヘリの下にもぐる。
 ……間一髪。
 すれすれのところでどうにか間に合ったようだ。
 ヘリをゆっくりおろし、避難を確認。


「さぁ、一気に片付けるぞ!」
「おぅ!」
 フライヤーは目の前にいる怪物を狙いガトリングガンの引き金を引いた。
 勢いよく回る銃身、そして撃ち込まれる弾丸。白煙。
「グォァーーー!!」
 怪物の断末魔のような鳴き声が聞こえた。
「やったのか!?」
 着地し、様子を見るフライヤー。
 だが……
「いいや……まだだな。」
 カイトの言うとおり、怪物には傷一つついていなかった。
「まるで効いてる気配がない……なんて硬いやつなんだ!」
 よく見ると怪物の皮膚は金属のような光沢に包まれている。
 どうやらその叫び声は急な衝撃にびっくりして発せられただけのようだ。
「これならどうだ! フライヤーズミサイル!!!」
 結果は同じ。相手は少し汚れたぐらいだ。
 戦争のなくなった世界。すぐに出動できる軍事兵器などない。
 このままでは、なす術もなく街が破壊されてしまう。
「くそ……こうなったら! 天空合体だ!」
「了解! カイト!!」


「ライトナーズ!!!」
 空の雲を割って現れる3機の飛行機。
 ジャンボ旅客機と戦闘機2機だ。

「とぁ!」

 ジェットライトナー1は右脚へ、ジェットライトナー2が左脚へ。ジャンボライトナーは左右の腕と翼へ。
 続いて、ジェットライトナー1・ジェットライトナー2が合体し、下半身を形成する。
 そして、コアに変形したフライヤーの各部に合体。上部に頭部が現れ、赤く眼が光る。

「天空合体! フライトナー!!」
 額に翼を模した角飾り。
 フライヤーの2倍はあろうかという巨大ロボ。

「いいな! フライヤー! 5分しかもたない! できるだけ早くな!」
「わかっている! 行くぞ!」
 腰に提げた刀を抜きながら怪物に突っ込んでいくフライトナー。
「揚力刀!!」
 そのまま抜き去りながら斬り付ける。
 腕に命中したようだ。
 怪物は地響きがするほどの叫び声をあげる。
「よし! いいぞ! あと一息!!」
 相手はかなり苦しんでいる。
 どうやら皮膚が硬い分、中は弱いようだ。
 フライトナーはすべての揚力刀を抜き、すべてを組み合わせた十字刀を造り出す。
 刀の中心部を持ちローターのごとく高速回転させ相手に突進していく。
「揚力刀! 竜巻斬り!!!!」
 フライトナーはその叫びとともに、天まで届くかというような竜巻を起こしながら怪物に接近する。
「はぁーっ!!」
 刀身が光りに包まれる。
 そして、今だと言わんばかりに怪物に向って投げ飛ばす。
 怪物は竜巻により増幅した回転力により一瞬にして真っ二つになる。
 大爆発。こうして街の平和は守られたのだった。

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