創作発表版ブレイブサーガ
街の外れ。
フォグ・ライン研究所――開発室。
時間は真っ昼間だが窓がないため、光源は中央にあるコンピューターのモニターから発せられる光しかない。
しかし、それも前に座る男に遮られ、微かに室内を照らすのみだ。
フォグ・ライン。
自らの手で造るロボットで、フライトナーを倒すことに固執するロボットバカ、もとい研究家。
彼しかいないように見えるが、他に誰かがいるらしい。
「で、私に何の用だ」
キーボードを叩きながら言うフォグ・ライン。
彼の背後で影が微かに動いた。
「突然で失礼。ワタクシ、こういうものです」
微かに見える顔面――白く塗られたそれは、いわゆるピエロのようだ――に不気味な笑顔を浮かべ、一枚の紙切れを差し出す影。
受け取り、眺めるフォグ・ライン。
超次元ワンダランド 開園!
世界中の皆様に、素晴らしい夢を!!
ワクワク ドキドキ ワンダーランド!!
忘れられない思い出を!!
フォグ・ラインは頷きつつも振り返らず、そのチラシを破り捨てた。
そして一言「興味はない。帰ってくれ」
しかし、道化は笑顔を崩さない。
「はっはっは、つれないですなあ。ワタクシはただ、この世界の皆さんにも素晴らしい夢を与えたいだけなのですよ」
困ったような口調だが顔は笑っている。
フォグ・ラインはいよいよ耐えられないといった感じで立ち上がり振り返った。
「興味はないと言っている。早く出ていってくれないか」
それでも、道化は笑顔だ。
「そうですか、残念です。フフフフ……まぁいいでしょう」
道化は一歩下がり、思い出したように、続けた。
「あ、そうそう。ワタクシ、ワンダラーズ幹部ダークラウンと申します。もしお越しの際はご贔屓に……では」
パンッ。
気の抜けるような音と同時に白煙と紙吹雪や紙テープが広がり、超高速で射出される先のチラシ。
シュパパパパパパパッ!
腕で顔を隠すフォグ・ラインの黒衣を切り裂きながら部屋中に突き刺さる。
フォグ・ラインが目を開けた。ダークラウンの姿はない。
「ふん、まぁいい。コンピューターは無事か」
向き直りキーボードを叩く。
"BN-001x WHITEDEVIL"
フォグ・ラインは大口で笑った。
「これが完成すればフライトナーなど鉄屑同然だアーハッハッハッ!!!」
その笑い声に被さり、小さく響いたククククッという笑い声にも気づかなかった。