CANALAZZO 1号


CANALAZZO 1号

2006/02/03(金)発行

━━━(1面)【国内政治】ヴェネツィア西アフリカへ艦隊派遣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

2月1日、元老院は賛成多数により、イングランドとの連盟ならびに西アフリカ方面への艦隊派遣を決定した。
(解説→2面 論説→3面)

2日のモチェニーゴ官房長官の発表によれば、出兵目的として、サンジョルジュ方面への通商路の確保と安定を掲げている。また、すでに先遣艦隊がロンドンに到着、イングランド海軍とテムズ河口付近での共同演習を実施、と述べた。
記者団からの「ヴェニエル、バルバリーゴ両提督の派遣は?」との質問には、「今回はアドリア海の安定に専念してもらう」との答えであったが、外洋艦隊として30隻を下回らない規模を計画している模様だ。

━━━(2面)【解説】連盟の背景━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

1月早々に北海で刃を交えたイングランドとの連盟締結の発表は、各国から「こうもり」とも揶揄(やゆ)されるヴェネツィア外交を象徴する出来事とみられている。
しかしながら、1月の出兵が国論を二分した結果の苦渋の決断であったのに較べ、今回の連盟は、早くから市民大多数の支持を得ていた。南イタリア、西アフリカで軋轢(あつれき)が生じているイスパニアより、権益のあまり衝突しない英国との連盟は受け入れやすいという市民感情が素直に表れた形だ。
外交筋によれば、ロンドン駐在大使も、英国宮廷と水面下で折衝を続け、1月の海戦の影響を最小限度に留める努力を行っていたことが明らかになった。尚、交渉の席上で、英国側は、“アントワープ”沖での健闘をたたえた後、敗因として、戦力不足と練度不足を挙げ、大使を模擬演習に招待する一幕もあった模様である。

逆に英国側にしてみれば、1月の海戦は、女王へのイスパニア王の求婚を阻止できれば充分であった。また、ポルトガルには、宿敵フランスに加え、北海で衝突するようになったネーデルランドが連盟することとなり、ヴェネツィアの修交姿勢はそれだけで英国に利益がある。ここに両国の思惑が一致し、今回の連盟に至ったと見るべきである。

一方、国内事情に目を向ければ、海軍の動向が現在注目を浴びている。海軍は「7カ国最弱」と侮(あなど)られる戦力の向上を現在進めており、実戦経験を何よりも欲している。最近ナポリ沖、アドリア内海での模擬演習も相次いで開催しているのもその表れだ。機会があるごとに、出兵を元老院・共和国国会・市民大集会に働きかけており、その活動が功を奏してきている。
徒に乱を好む訳ではないが、戦力の向上は、地中海の安定に直結する重要事項である。経済界にも、今回の行動が、葡国アフリカ航路の通商破壊から紅海ルートの復活につながればと淡い期待をもち、出兵を歓迎するムードがひろがっており、出兵はヴェネツィア市民多数の支持を得ている状況だ。

━━━(3面)【論説】ヴェニスの商人に告ぐ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

大海戦といえば、軍人が華であるが、そのほかの重要な要素を見逃してはならない。
1月の大海戦では、アントワープが拠点となったが、市内の道具屋の主人はこう語ってくれた。

「年明け早々、手術道具なんかの需要があってね、そりゃあいい商いができました。近所の交易所の主人は、商船がちっとも寄り付かないから商売あがったりだとぼやいてましたがね。イスパニア本国からも商人が大勢押しかけて、即席の大バザールができたのは、開港以来の珍事でしょう。でもね、あんまりヴェニスの商人さんは見なかったですなあ。まあ、あこぎな真似はできませんが、せっかくの商機をフイにしているじゃないでしょうか」

今回は、西アフリカが主戦場となるが、欧州に比べ物資に不自由することは想像に難くない。利に聡きヴェネツィア商人よ、おのおの物資・道具を担ぎ来たれ。ピザの一枚、ビールの一樽、名匠の大工道具の一箱が勝利に貢献するのである。

真っ当に商うもよし。軍人に寄付して名誉を高めるもよし。戦場は海原ばかりではない。その後背地でも起こっているのだ。兵站の確保は勝利への王道である。
もう一度告げる、ヴェネツィア商人たちよ、大西洋を南下せよ。