病理学��
膵臓・内分泌
２． 65歳男性が腹痛を訴えて受診した。精査により膵管拡張を伴う膵腫瘍が認められ、切除された。 切除標本で拡張した膵管内に図2のような組織像がみとめられた。この腫瘍の最も妥当と考えられる診断名を記し、 その特徴を説明せよ。腹痛を来した機序についても説明せよ。
（２００５年病理学小テスト２）
解答
- 膵癌について。
- 膵癌とは、膵臓の外分泌部から発生した癌を意味している。
- 膵臓の癌はほかの構造物に波及しない限り無症状である。
（ロビンスから）
- 膵頭部癌では、総胆管に浸潤し、圧迫するため閉塞性黄疸を生じる。
- 膵体部癌では、後腹膜の神経叢に浸潤し、耐え難い頑固な背部痛を生じる。
これらの癌は十二指腸・胃へ浸潤し、上部消化管の通過障害や出血によって嘔吐（吐血）が起こる。
・・・わっかんね。膵管内腫瘍かもしれない。スライドから。
- 膵管内腫瘍とは、
- 膵管内に限局し、粘液貯留と膵管拡張が起こる。
- 高年男性の膵頭部に好発する。
- 限局性・隆起性のものが多い。
- 乳頭増殖、非乳頭増殖、管状増殖が起こると、膵管内乳頭粘液性腫瘍である。
- 膵管内乳頭粘液性腫瘍（＝intraductal papillary-mucinous tumor 、膵管内乳頭状腫瘍）とは、
粘液産生による膵管拡張を特徴とする膵管上皮性腫瘍である。主膵管型・分岐型・混合型が存在し、腺腫と腺癌がある。
５）急性膵炎と慢性膵炎において以下のそれぞれについて両者の相違を強調しつつ述べよ。
（1）概念 （2）病理組織像上の特徴
（２００４年病理学 小テスト ５）
解答：
- １：概念
- 急性膵炎・・・膵消化酵素の不適当な活性化による膵組織の自己消化により、発症する。
- 慢性膵炎・・・膵組織の障害が持続的に生じる。膵外分泌機能が傷害された状態。
- ２：病理組織上の特徴
- 急性膵炎・・・実質の残存、出血・壊死、脂肪の壊死、急性炎症細胞浸潤
基本的な変化は次の4つ。
- 膵実質のたんぱく質分解による崩壊
- 血管壊死とそれに伴う出血
- 脂肪分解酵素による脂肪壊死
- 以上の損傷に伴う炎症反応である。
もっとも特徴的なのは脂肪壊死巣である。
この病変は酵素による脂肪細胞の壊死であり、空砲状の脂肪細胞が、細胞膜輪郭を影のように示し、中にはピンクの顆粒状沈着物を認めるように変化する。この顆粒状物質は脂肪の水解によって生じる。
- 慢性膵炎・・・実質の萎縮、慢性炎症、繊維化、膵管拡張、腺房消失、ラ氏島の保持
膵の外分泌腺部は著しい萎縮を呈し、繊維化も高度となる。島はしばしば高度に保たれている。腺房や導管周囲には、慢性炎症細胞浸潤が通常見られ、さまざまなサイズの導管がたんぱく質栓子で閉塞している。
12. 膵臓原発の内分泌腫瘍の３つ以上について、病名 および 患者に起こる変化 を記せ。
（２００３年病理学 再試験１２）
10. 膵内分泌腫瘍について分類と特徴を述べよ。
（２００２年病理学 再試験１０）
解答
- １、高インスリン血症（インスリノーマ）
- 患者に起こる変化・・・インスリンを分泌し、低血糖を生じる。神経過敏や錯乱、ときには混乱などの神経・精神症状をきたす。
- 組織学的な特徴・・・
- 常に膵組織内にあり、通常良性、ほとんどは単発性。
- 孤発性腫瘍は小さく、被膜に覆われて、白〜赤褐色
- 巨大な島のように見え、正常な細胞の索構造の配列は保たれている。
- ２、Zollinger -- Ellison 症候群（ガストリン産生腫瘍）
- 患者に起こる変化・・・高ガストリン血症の結果、胃酸の分泌が亢進し、消化性潰瘍が生じる。膵、膵周辺部あるいは十二指腸に発生する。腫瘍の半数以上は診断時に局所浸潤を示すかあるいは遠隔転移を生じている。時には他の内分泌性腫瘍のある患者に複数のガストリン産生腫瘍が認められるが、その場合は多発内分泌腺腫症I型 multiple endocrine neoplasia I と診断される。
- 組織学的におとなしい、つまり悪性度が低く、明らかな退形成はまれである。
- ３、多発性内分泌腺腫瘍multiple endocrine neoplasia
- Type 1 ・・・副甲状腺（９５％）、膵臓（＞４０％）および下垂体（＜３０％）
ここで１００％を超えるのは多発性で、同時に複数の臓器に見つかることがあるから。~
Type 2 ・・・甲状腺、副腎髄質、副甲状腺
ここでは、Type１について説明する。
常染色体優勢に遺伝し、MEN１はがん抑制遺伝子である。
一般に悪性であり、転移・多中心性発生、機能性がある。（ホルモンを分泌する）
9. 急性膵炎と慢性膵炎の違いを発症機序、病態、組織学的特徴に言及しながら述べよ。
（２００２年病理学 中間試験９）
- 発症機序・・・
- 急性膵炎：
- 病因で、最も多いのは胆石と飲酒（８０％）である。膵管の閉塞（たとえば胆石あるいはアルコール症による膵石など）と、膵腺房細胞の直接損傷である。主膵管が総胆管に合流しているため、合流部分が閉塞すれば膵臓内の導管内圧が高まる。内圧の上昇によって間質に浮腫が起こり、この浮腫は胆汁の流出路が閉塞した場合に生じる膵液分泌刺激によってさらに増悪する。浮腫によって吸い組織の血流が低下して虚血性の変化が生じる。これによって、腺房細胞の前酵素（チモーゲン顆粒から流出）が早くに活性化される。活性化された酵素は腺房細胞や膵周囲の脂肪細胞を破壊し、血管の弾性繊維を損傷し出血を起こす。また、損傷を受けた腺房細胞は、サイトカインを放出し、それによって好中球やマクロファージが集まってくる。この炎症反応によってさらにサイトカインが膵組織や血中に放出され、局所や全身の炎症反応が増悪する。
- 慢性膵炎：
- 長期にわたるアルコールの多飲。水分分泌の亢進がない状態で、腺房細胞から過剰のたんぱく質成分の分泌が生じる結果、たんぱく質成分が析出し、細胞から生じる残渣と結合して膵管内に栓子が形成される。アルコールが原因の場合、大きな層状を呈する炭酸カルシウム析出物からなる凝集物（石）が形成される場合がある。アルコールを飲み続けると、腺房細胞からカルシウム析出を抑制する作用を持つたんぱく質の分泌が減少する。このいわゆるlithostatinリソスタチンの濃度が低下し石灰化が生じやすくなり、細い導管の閉塞が進むと、膵実質の萎縮が進行する。
急性膵炎自体も小葉周囲性の繊維化や導管の拡張を引き起こすため、慢性膵炎の原因となりうる。
- 病態・・・
- 急性膵炎：
- 腹痛（上腹部）、悪心嘔吐、重篤になるとショック（膵臓の出血のみならず、ブラジキニンやプロスタグランディンなどの血管拡張因子の放出が原因） 検査所見：血清アミラーゼ値上昇
- 慢性膵炎：
- 間欠性の上腹部痛、体重減少、下痢、急性発作
６、膵臓がんの病理学的特徴を以下の項目に準じて説明せよ。（１）発生、（２）進展、（３）予後
（２００１年病理学 中間試験６）
解答
- 膵臓がんは、膵癌と島細胞腫瘍に分かれる。膵癌は膵臓の外分泌部から発生した腫瘍である。それに対し、島細胞腫瘍は内分泌部（膵島）から発生した腫瘍である。
- 膵癌について。
- 発生・・・
- 発生原因は明らかにされていない。喫煙者は非喫煙者に比べ頻度が２〜3倍高くなる。
- 膵癌は、膵頭部（６０〜７０％）、膵体部（５〜１０％）、尾部（１０〜１５％）、びまん性（２０％）で発生する。
- 癌関連遺伝子に様々な変異が見られ、K-ras（K-RAS）、癌抑制遺伝子ｐ１６（CDKN24）、両者とも９０％の症例で認められる。
- 進展・・・
- 膵頭部癌は乳頭部に浸潤し、胆汁の流出を障害する。十二指腸粘膜への浸潤が生じることもある。総胆管を巻き込む結果、胆嚢の著しい拡張が膵頭部癌の約半数の例で認められる。
対照的に、膵体部や膵尾部に生じた癌はかなりの間症状を出さず、発見されたときは非常に大きくかつ広汎に転移している場合がある。癌は後腹膜に広がり、時には隣接する脾臓や副腎、脊椎骨に侵入する。横行結腸や胃に進展する場合もある。膵周囲、胃、腸間膜、大網そして肝門部のリンパ節には頻繁に転移を認め、肝臓にはしばしば広範囲に番種による腫瘍結節が生じ、肝腫大を呈する。遠隔転移は主に肺と骨に認められる。
顕微鏡的には膵頭部の癌と体部および尾部の癌に相違は認められない。多くの例で分化度の高い腺構造を認める。
- 臨床所見・・・
- 膵臓の癌は他の構造物に波及しない限り無症状である。後腹膜の軟部組織に達し、神経線維に浸潤が及んで痛みが生じる。すなわち、痛みが現れた時点では癌はすでに周辺臓器に達している。
膵頭部癌のほとんどの例で閉塞性黄疸obstructive jaundiceが生じる。自然に発症する静脈血栓症（別名移動性血栓性静脈炎migratory thrombophlebitis）は、特に体部と尾部の膵癌で認められる。しかし、この症候もこの癌に特異的なものではない。
島細胞腫瘍は前に書いたので省略。
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