病理学��
口腔
５） 唾液腺腫瘍について、良性、悪性のものを１つずつあげ、それぞれの病理組織学的特徴を文章として簡略に記しなさい。
（２００５年病理学期末試験５）
唾液腺腫瘍は、
１、 腺腫として、
１） 多形性腺腫
２） 単形性腺腫がある。
２、 粘表皮腫
３、 腺房細胞腫
４、 癌腫
１） 腺様嚢胞癌
２） 腺癌
３） 類表皮癌
４） 未分化癌
５） 多形性腺腫内癌腫 がある。
良性腫瘍・・・多形性腺腫pleomorphic adenoma(唾液腺混合腫瘍mixed tumor of salivary gland)この良性腫瘍は唾液腺腫瘍の９０％を占める。特徴的な組織所見は、主要な異種異質な成分から構成されていることである。
導管状、腺房状、索状あるいは密集性に増殖する上皮性成分が、島状の明らかな軟骨用組織塊の中に点々と散在する。（時には骨様組織塊を含む疎なしばしば粘液腫様の結合組織間質の中に存在する。）
上皮細胞は小型、暗調。
両性の混合腫瘍が長く放置されると悪性混合腫瘍に転化することがある。
悪性腫瘍・・・
粘液性類表皮癌mucoepidermoid carcinoma
扁平上皮系の細胞が主体であるが、粘液とわずかの粘液細胞が混在するまれな悪性腫瘍。
円柱腫cylindroma（腺様嚢胞癌adenoid cystic carcinoma）
比較的よく見られる悪性腫瘍。40−70歳代、女性にやや多く、耳下腺に好発するが、小唾液腺にも発生する。組織で腺管形成と篩状cribriform構造が特徴的である。
(ロビンス病理学P、６８４〜６８５ シンプル病理学P、１７５)
６） 口腔粘膜の生体防御機構に関与する細胞を少なくとも５つあげ、その形態を図示し、それぞれの役割を書きなさい。
（２００５年病理学期末試験６）
ケラチノサイトは、物理的防御をするほか、サイトカインを産生し、免疫学的防御のスタート地点になる。
ランゲルハンス細胞は、T細胞に抗原を提示する。
（抗原提示細胞）
T細胞は、B細胞の分化を助ける。（ヘルパーT細胞）
B細胞は形質細胞に分化し、抗体を産生する。
メラノサイトは、メラニン色素を産生し、紫外線に対して防御する。
ケラチノサイト ランゲルハンス細胞
T細胞 B細胞
形質細胞 メラノサイト
５） 口腔粘膜に発生する代表的な悪性腫瘍をひとつあげ、病理組織学的所見を図示して、説明しなさい。
（２００５年病理学 再試験 ５）
５)口腔粘膜に発生する代表的な悪性腫瘍をひとつあげ、病理組織学的所見を図示して、説明しなさい。
（２００４年病理学期末試験５）
扁平上皮癌malignant melanoma・・・真珠のような白色ないし灰色の限局性の粘膜肥厚で、白板症の白斑によく似ている。外向性に増大し、最終的には茸状の腫瘤になる。また、内向性に湿潤し、中央部が壊死して癌性潰瘍を生じる。一般には中等度から高度に分化した角化を示す腫瘍である。
好発部位は、１、下口唇の赤唇の外側縁部、 ２、口底部 ３、舌体側縁部 である。
(ロビンス病理学P、６８３)
８．口腔粘膜の白板症について、知るところを記せ。
（２００４年病理学 再試験８）
白板症とは、上皮の肥厚ないし過角化症による白色の境界明瞭な粘膜の斑状病変にたいして用いられる。白板症とは老人にしばしば見られる。顕微鏡的には異形成のない平凡な過角化症から、軽度ないし上皮内癌との境界病変となるほどの高度の上皮異形成まで、幅広い形態を示す。
原因は、不明ではあるが、喫煙との密接な関係がある。
慢性の機械的刺激、過剰なアルコール摂取はそれほど強い関連はない。
扁平上皮癌へ３〜６％の確率で悪性転化する。転化率が最も高いのは、口唇と舌の病変で、最も低いのは
口底部の病変である。
(ロビンス病理学P、６８２)
4. シェーグレン症候群の唾液腺の病理組織像を図示し、説明語句を付記しなさい。
（２００３年病理学再試験４）
自己免疫疾患である。特徴は眼球乾燥（乾性角結膜炎）と口腔乾燥（口内乾燥症）である。これらは涙腺および唾液腺の免疫学的機序による破壊に起因する。原発型よりも続発型のほうが多い。
涙腺と唾液腺が主な標的である。そのほか、鼻咽頭、上気道、膣の分泌腺も侵される。
これらの臓器では、リンパ球や形質細胞の強い浸潤、ときには胚中心を伴うリンパ濾胞の出現が認められる。組織本来の構築の破壊も起こる。
涙腺の破壊によって、涙が出なくなってしまうと、角膜上皮の乾燥が起こり、さらにはこのために炎症を起こし、びらんや潰瘍を生じることになる。（角結膜炎）
同じことが口腔粘膜に起こって唾液腺の唾液分泌が消失すると、粘膜は萎縮性となり、炎症を伴った亀裂や潰瘍が形成される。（口内乾燥症）
(ロビンス病理学P.１７３)
5.（１）口腔粘膜の免疫学的防御機構について記しなさい。
（２）扁平たいせんの組織像を記しなさい。
（２００３年病理学再試験５）
１、口腔粘膜では、
ケラチノサイトは、物理的防御をするほか、サイトカインを産生し、免疫学的防御のスタート地点になる。
ランゲルハンス細胞は、T細胞に抗原を提示する。
（抗原提示細胞）
T細胞は、B細胞の分化を助ける。（ヘルパーT細胞）
B細胞は形質細胞に分化し、抗体を産生する。
メラノサイトは、メラニン色素を産生し、紫外線に対して防御する。
２、扁平たいせんの組織学的特徴は、真皮表皮結合部にそうリンパ球の密な帯状の浸潤である。基底層の角化細胞は浸潤リンパ球と密接に関連して変性や壊死に陥り、おおきさや形は有棘細胞に類似してくる。真皮表皮境界部は角ばったジグザグ状の輪郭を示す。壊死に陥り、核が消失した基底細胞が炎症性変化を示す真皮乳頭層内に取り込まれることがあり、コロイド体とかシヴァッテ体Civatte body と呼ばれる。扁平たいせんでは特徴ある変化、すなわち表皮肥厚（あるいはまれに萎縮）、顆粒細胞層と角質層の肥厚（それぞれ顆粒細胞層hyper granulosisと過角化hyperkeratosisと呼ばれる）が見られる。
１、この問題については（A）、（B）別々の解答用紙に記載のこと。
（A）口腔粘膜に生じる白色病変（肉眼的に白く見える病変）を２つあげ、それぞれにみられる病理組織学的所見について知っている事を述べなさい。
（B）Describe the histological appearances of pathological changes in the jaws resulting from infections.
（２００２年病理学期末試験１）
解答
（A）口腔粘膜病変の肉眼所見と病理組織学所見の対比。
１、白色病変white lesions
１、Thick surface layer (表皮の肥厚)
２、Thick epithelium（上皮の肥厚）
３、Edenatous cells（歯のない細胞？）
２、赤色病変Red Lesions
１、Thin epithelium（薄い上皮）
２、Many blood vessels（血管多い）
３、着色病変Pigmented Lesions
１、Melanocyte （メラノサイト）
２、Nevus cell（斑点細胞）
白板症と扁平苔せん。（じゃない？）
（B）口腔領域における、感染による病理組織学的な変化を示せ。
- ヘルペスウィルス感染症
- 小水疱は上皮細胞間あるいは細胞内浮腫からなる上皮内病巣として始まる。ウィルスが感染した細胞は風船状に膨化し、好酸性の核内ウィルス封入体を生じる。時には、隣接する細胞が融合して巨細胞あるいは多核細胞を形成する。感染した細胞の壊死や浮腫液の限局性貯留によって、臨床的に見られる上皮内水疱が生じる。
- 真菌感染症
- 口腔ガンジダ症は付着した白色の凝固した牛乳状の限局性病変として口腔のあらゆる部位に生じる。
偽膜は粘膜の表面に付着した無数の真菌からなっている。軽度の感染では糜爛（びらん）が生じる程度であるが、
重傷な場合には海洋が生じることがある。真菌はこれらの偽膜の中に、管状の菌体が有蓋貨車様に鎖状に連なって仮性菌糸pseudohyphaeを形成した状態で認められ、そこから典型的なものでは最大径2〜4μｍの卵形の酵母型を分芽している。
8. 口腔領域に徴候をみる症候群を４つ記し、２つについて病理学的に簡潔に説明しなさい。
（２００１年病理学期末試験８）
白板症、扁平上皮癌、扁平たいせん、アフタ性口内炎、悪性黒色腫、天疱瘡と類天疱瘡
- 白板症（Leukoplakia）
角化層の形成・肥厚が見られ、棘細胞層の肥厚も伴うことがある。過角化症（Hyperkeratosis）を伴い、前癌病変である。５−１５％が悪性化する。喫煙と密接な関係がある。
- 扁平上皮癌(Squamous cell carcionoma)
口腔の悪性腫瘍の８０％が扁平上皮癌である。重層扁平上皮に類似した異型細胞の浸潤増殖が見られ、分化度が高いほど角化を伴う。角化真珠・癌真珠（Keratin pearl）を形成する。（高分化型扁平上皮癌）
- 扁平苔癬(たいせん)(Lichen planus)
肉眼的には、白色と赤色のレース状を示す。自己免疫疾患と考えられており、粘膜上皮の過角化、粘膜上皮下の帯状のリンパ球浸潤（主にT細胞）、粘膜上皮下基底細胞層の液状変性（コロイド体の形成）が見られる
- アフタ性口内炎(Aphthous Stomatitis)
肉眼的には、小円形で輪郭明瞭、中心部が灰白色で周囲が赤い有痛性の潰瘍である。組織学的には、中心部に潰瘍形成、フィブリン膜を有し、潰瘍周囲は粘膜上皮が薄く、上皮下毛細血管の数が増えて、拡張している。
- 悪性黒色腫(Malignant melanoma)
粘膜上皮のメラノサイトが悪性化している。メラニン色素を産生することが多い。（肉眼的に黒褐色）。転移が非常に速く、予後が極めて悪い。（5年生存率１０％未満）
- 天疱瘡
粘膜上皮の細胞間密着の統合性が失われるために生じる自己免疫性水疱性疾患である。上皮の棘細胞層の融解（棘融解）がみられ、基底細胞層上に水疱を形成する。
- 類天疱瘡
上皮の棘細胞層の融解が見られない。基底細胞層の下層に水疱を形成する。自己免疫の関与が推測されている。
試験問題
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2年生
3年生
4年生
6年生
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