病理学��
骨・軟部
１） 骨・軟部腫瘍に関して以下の問いに答えなさい。
１. 腫瘍について正しいものを選びなさい(複数可)．（１５点）
Ａ 腫瘍とは細胞が生物学的変化（遺伝子変異）を積み重ねて異常増殖する現象である．
Ｂ 細胞異型がみられれば腫瘍である.
Ｃ 腫瘍の診断においては，腫瘍細胞における分化の方向性が重要である．
Ｄ 原発性骨軟部腫瘍では上皮性腫瘍が多い．
Ｅ 転移性骨腫瘍では非上皮性腫瘍が多い．
解答・・・
A：正しい B：間違い C：正しい D：間違い E：間違い
解説
B・・・異型atypiaとは、細胞や組織構築の正常からの隔たりである。異型性は、構造異型と細胞異型に分かれる。
構造異型は細胞の配列や極性の消失など組織構築の異常である。
細胞異型は細胞や核の大きさ、形、染色性、クロマチン構造などの形態学的異常である。
細胞の異型性を決める基準として、以下のものがあげられる。
１、細胞や核の大小不同および形の多形性
２、細胞質に対する核の占める割合（核 / 細胞質比 、N / C比）の増加
３、核分裂像の増加
４、多極分裂などの異常核分裂像
５、核クロマチンの増量と粗大化
６、核小体の腫大
これは、反応性でも悪性腫瘍でも生じるが、悪性腫瘍は、異型の程度が高度である。
異形成とは、異常な増殖である（異型的な細胞が、組織の一定の割合を占める）が、非腫瘍性である。異形成とは原則的には上皮で見られる。（ロビンスP,２１３）
D・・・骨軟部腫瘍では、非上皮細胞からなる腫瘍が大部分である。非上皮細胞は間葉系細胞mesenchymal cellであり、結合組織を構成する線維芽細胞や平滑筋、骨格筋、血管などに分化する。互いに結合性がなく、通常ばらばらと個在性に増殖、浸潤する。
２．骨病変（腫瘍もしくは反応性病変）の診断に当たって，病理学的肉眼所見および組織学的所見のほかに，考慮しなければならない点は以下のどれか（複数可）．(１５点)
Ａ 患者の年齢
Ｂ 病変の発生部位
Ｃ Ｘ線所見
Ｄ 臨床所見（疼痛の有無・薬物に対する反応性・経時的変化など）
Ｅ 上記のすべて
解答・・・E（じゃないの？）以下、ロビンス病理学P.941から。
「原発性骨腫瘍は転移性のものよりかなり頻度は少ない。骨転移を起こしやすい原発巣の部位は、頻度の順に、前立腺、乳腺、肺、肝臓、腎臓、消化器および甲状腺である。
転移性と原発性骨腫瘍の場合の区別はほとんどの場合問題はないが、骨以外のところに原発性腫瘍の既往がなくて骨に単発性病変が有る場合は困難となることがある。
ある種の原発性病変は前年齢層に生じ、体内のあらゆる部位に生じうる。しかし、ある種の腫瘍は特定の年齢層と解剖学的部位に生じる。たとえば、ほとんどの骨原性肉腫は未成年期に生じ、それは、正常の発達に際して骨成長が早い領域である膝関節周囲に特に多い。骨腫瘍の診断には、臨床病歴とレントゲン所見を腫瘍の大きさ並びに組織像とともに注意深く総合する必要がある」
３．骨・軟部腫瘍の細胞形態と代表的腫瘍の組み合わせを完成させよ．(２０点)
Ａ 紡錘形細胞 (spindle cell)、Ｂ 小円形細胞 (small round cell) 、Ｃ 類上皮細胞 (epithelioid cell) 、Ｄ 上皮細胞 (epithelial cell)
１ 転移性癌、２ 類上皮肉腫・血管肉腫、３ 横紋筋肉腫・ユーイング肉腫/始原性神経外胚葉性腫瘍(PNET)・リンパ腫、４ 平滑筋腫・神経鞘腫・線維腫
解答
A・・・１ 、B・・・３ 、C・・・２ 、D・・・４
１、転移性癌・・・悪性間葉細胞による類骨の形成が起こる。腫瘍性間葉細胞は紡錘形である。
２、血管肉腫・・・これらの腫瘍にはあらゆる分化度が認められる。つまり、大部分が血管状で膨らんだ未分化な腫瘍であるが、識別可能な内皮細胞が血管腔を形成しているものから、全く未分化で明らかな血管形成がみられず、異型性が非常に高く、充実性の紡錘細胞像を呈するものまで認められる。内皮細胞由来である。
３、Ewing肉腫・・・組織学的に、小型で非常に均一な形のかくとごくわずかの細胞質を持った幼弱な細胞のシートからなる。（ロビンスP,947）
４、平滑筋腫・・・組織学的に、この腫瘍の特徴は、平滑筋細胞束が渦巻状に走行する像で、正常の筋層を模倣している。
４．骨軟部腫瘍について正しいものを選べ. (１５点)
Ａ 脂肪肉腫は小児・青年層では最も多い軟部肉腫で，幾つかの亜型がある．
Ｂ 横紋筋肉腫は成人では最も多い軟部腫瘍で，幾つかの亜型がある．
Ｃ ユーイング肉腫／PNET は小児期の骨軟部腫瘍で２番目に多く，c-myc を発現している．
Ｄ 巨細胞腫は良性だが局所侵襲性で２０〜４０代に多く，骨端と骨幹端から発生する．
解答
- A・・・間違い
- 脂肪肉腫：成人では最も軟部肉腫で、４０〜６０歳代に多い。（小児にはまれ）四肢近位や後腹膜に多く、ときに巨大化する。局所再発が多い。
- B・・・間違い
- 横紋筋肉腫：小児、青年層（通常20歳未満）では最も多い軟部腫瘍で、頭頚部・泌尿生殖器に多い。正常の骨格筋から発生するかは疑問があり、四肢に発生するものは骨格筋と関連がある。腫瘍は、vimentin, actin, desmin, myoglobin, myogeninに陽性。
- C・・・正しい
- Ewing’s sarcoma / PNET : 骨原発の悪性小円形細胞腫瘍で、小児期（20歳未満が圧倒的）の骨軟部腫瘍で2番目に多い。男：女＝1.4：1である。Oncogene c-mycを発現しており、primitive neuroectodermal tumor(PNET)と同一の染色体転座を有する。PNETでは光顕・電顕・免疫染色で神経系への分化をしめし、長骨の骨幹〜骨幹端―骨幹・骨盤・肋骨等が好発部位である。Onion-skin：多層性骨膜反応が特徴的である。
- D・・・正しい
- 巨細胞腫 giant cell tumor : 両性だが局所侵襲性で、20〜40歳代に多く、骨端と骨幹端から発生する。膝付近（大体遠位、脛骨近位）に多く、X線では大きく溶骨性で、偏在性で軟骨下骨板を侵食する像が認められる。（反応性に形成された薄い骨で縁取られた突出する軟部腫瘤を形成する。）除去後４０〜６０％に再発し、４％に転移する。
５．腫瘍と反応性病変の病理学的診断は時として非常に難しい場合があるが，両者の鑑別診断について重要と考えられることを記述しなさい．（２０点）
６．HE 染色のみで病理学的診断がつかない場合，確定診断に至るために，どのような補助的診断方法(臨床的な情報ではなく病理学的なものに限る)があるか挙げなさい．(１５点)
（２００５年病理学 期末試験１）
８） 次の各小問に答えよ。
１．骨の成長異常をきたす疾患を分類し、それぞれの疾患名を挙げよ。
２．骨のリモデリング（remodeling）とは何か、説明せよ。
３．骨のリモデリング異常による疾患を挙げよ。
（２００５年病理学 再試験８）
１、 先天性成長異常・・・軟骨形成不全、骨形成不全症、大理石骨症
後天性成長異常・・・ビタミンC欠乏（壊血病Scurvy）、ビタミンD欠乏（くる病、骨軟化症）、副甲状腺機能亢進症、
２、 骨のリモデリング
標準組織学総論から。
古くもろくなった骨の一部を壊して（骨吸収）新しく作り変える働き（骨形成）を骨のリモデリングという。
３、骨のリモデリング異常・・・骨粗しょう症
６）「病的骨折」とはどのようなものか、簡潔に述べなさい
（２００４年病理学 小テスト６）
シンプル病理学P.301
骨粗しょう症や骨腫瘍のため骨が脆弱化し、わずかな外力で起こる骨折のこと。
Cf : 疲労骨折・・・一度では骨折を起こさないような外力が繰り返し加えられた結果起こる骨折。
外傷性骨折・・・骨が耐え切れないような外力が加わった結果起こる骨折。
5. 80才の女性が自宅で軽くつまずき転倒し、大腿骨頚部骨折を生じました。骨折の原因あるいは背景となる骨組織変化について考察を述べなさい。
（２００３年病理学中間試験５）
解答・・・骨粗しょう症による病的骨折である。
骨粗しょう症は多因子性の病態であり、加齢に伴う骨消失は骨形成減少によるものであり、全てのタイプの原発性全身性骨粗しょう症に共通に関与している。この骨消失は、閉経期後の女性では、骨吸収亢進と、エストロゲン量減少による骨形成減少がともに働いている。このように、骨形成減少と骨消失増大の両方が骨粗しょう症では生じている。これら両方の因子はほとんどの骨粗しょう症の症例に関与しているが、骨消失に対するそれらの因子の相対的役割は、年齢、性、栄養状態および遺伝的影響によって異なる。
骨組織の変化・・・骨粗しょう症の特徴は骨の消失である。骨の消失は、豊富な海綿状骨梁を持つ骨格部に顕著である。特に、椎体と、大腿骨頸部に高度であり、椎体は骨折し縮小していることもある。
骨量の薄化とハーバース管の拡大が見られる。
2. Osteoarthritis (OA) を直訳すれば「骨関節炎」とでもなりますが、OA の日本での診断名は「変形性関節症」です。この診断名を妥当と考えるか否かについて、OAの病態、組織変化をもとにして考えを述べなさい。
（２００２年病理学期末試験２）
解答・・・
OAとは、関節が破壊される疾患である。軟骨のびらん、骨棘形成、軟骨下の骨硬化が起こる。
- 加重関節（股、膝）が好発部位である。
- 高齢者、肥満に多い。
- 女性より男性のほうが多い。（スライドから）
以下、ロビンス病理学P,９４９から。
骨関節炎の特徴は、軟骨の組成とその機械的特性の両方の明らかな変化である。この疾患の初期には、変性しつつある軟骨には正常軟骨に比べて水分が増加してプロテオグリカン濃度が減少している。さらに、コラーゲンの網目も脆弱化しているように見え、おそらくこれは局所における�況織灰蕁璽殴麈鵬�亢進のためである。
関節軟骨の引っ張り強度と弾性を減少させるように働く。これらの退行性変化に反応して、深層にある軟骨細胞は増生して新たにコラーゲンとプロテオグリカンを産生して傷害を修復しようとする。この修復性変化は最初のうちは軟骨の劣化にペースをあわせることができるが、軟骨細胞消失と細胞外基質の変化をもたらす分子信号が最後には優勢となる。
組織変化
最初期には、関節軟骨表層部の軟骨細胞の腫大と配列の乱れが見られる。これに、関節表面の細繊維化fibrillation（亀裂化）を含めた軟骨基質の変化が伴う。関節軟骨の部分は最後には完全に侵食されてしまい、そこは肥厚して象牙様の堅さになる。（象牙質化eburnation）軟骨と骨の断片はしばしば剥離して関節腔内を遊離して動き回る関節ねずみjoint mouseとなる。滑液は残存している骨や軟骨の欠損部からもれ出て骨の中にのう胞cystを作ることもある。骨増生が関節の辺縁に付け加わり、骨棘osteophyteと呼ばれる骨性隆起物を作る。
2. 高齢化社会を迎えつつある今、骨・関節疾患の重要性が増しています。中高年者に発症する代表的な骨・関節疾患を一つとりあげ、その原因、臨床症状、組織変化を説明しなさい。
（２００１年病理学中間試験２）
解答 骨粗しょう症。前述。
試験問題
1年生
2年生
3年生
4年生
6年生
リンク集
最新の20件
2022-09-06
2021-01-31
2021-01-06
2016-11-16
2016-11-14
2016-11-11
2016-11-09
2014-07-27
2014-01-30
2013-01-12
2012-05-15
2010-10-04
2010-07-18
2010-07-04
2009-09-21
2009-03-01
2009-01-23
メニューバーの編集
- counter: 2761
- today: 2
- yesterday: 1
- online: 1
