BookMemo / 未来適応企業


未来適応企業

  • 作者: アルビン・トフラー
  • 訳者: 徳岡孝夫

今から約20年前の1985年に出版された本。1985年と言えば、小林明 子の「恋に落ちて」がヒットした年である(スポーツ新聞を読んで いてたまたま知った)。この本は当時から見て20年後の未来(つまり 今、現在)をかなり意識して書かれている。書かれている内容は広 い意味での「アジャイル」であった。

いま、日本で-「訳者まえがき」に代えて

コンピュータも機械である。だが、これまでの機械とは、その正確が全く違う
従来の機械類が人間の筋肉の力を拡大するものだったのに比べ、
コンピュータは頭脳を拡大する道具として、人間の考える領域にまで入ってくる。
p113

産業主義時代なら、行動の規範を最も明確に定め、最も綿密な基準
マニュアルをつくった会社が、最も効率的に機能した。
立派なマニュアルに最も効率的な対応法が明記してあれば、
従業員は新しい客や仕入先や政府規制機関と接触したとき、いちいち
手順を創意工夫する必要がなかった。

しかし、斬新比が高まるにつれ、マニュアルの効用は薄れた。
これまで標準的なマニュアルの制作に最大の努力を払ってきた企業は、
かえって、古い約束事を破るのを特色とする新しい現実に対して、
最も遅れをとることになった。

斬新性のプラス面は、経営者からも一般的管理者からも、職務に関して、
より高いレベルの創造性や想像力を引き出すことである。ただし、
企業がそれを抑えず、奨励するならばの話だが。したがって、
斬新比の向上は、新しい経営と新しい企業組織を二つながら必要
とするようになる。
p122

超産業主義社会では、官僚主義はますます「間に合わせ主義(アドホクラシー)」に
取って代わられる。この間に合わせ主義とは、無数の一時的な作業単位の仕事を
調整する機構で、そうした作業単位は企業を取り巻く環境の変化速度に応じ、
適当に浮かんだり消えたりする。

そのような傾向は、特命事項作業班(タスクフォース)、問題解決グループ、
プロジェクト・チームなど、その場限りの作業単位の急増という形で、
すでに多くの企業や業界の中に現れ始めている。
p126

企業にとってとくに重要なのは、物質主義的な目標を取り巻いて成り立ってきた
価値構造の崩壊だろう。(snip)中産階級の子弟に見られる報酬の多い職業の拒否、
代わりに、「意味があり」「充実感があり」「社会に役立つ」仕事を選択する傾向
-- それらはみな、荒波が産業主義時代の物質的価値体系から「脱経済的」
価値体系へと、われわれを押し流し始めた証拠である。

超産業主義社会に特有の脱経済的価値体系は、企業や企業が雇う人々に、
新たな行動の尺度を求めるだろう。基本的に豊かな状態が揺るがないかぎり、
個人の関心も社会全体の関心も、経済中心の目標から、心理的、倫理的、社会的、
美学的な目標へと移るだろう。
p135

POJO(Plain Old Telephone Service)。
p135

ATTはコンピュータ業か?コンピュータ業になるべきか?ATTの通信
ネットワークそのものが、コンピュータなのか?
p139

未来のATTの目的は、以下のように集約できるだろう。

価格、品質、社会的重要性の点で、同等のレベルで他の会社が提供でき
ないような製品とサービスを、しかもそのようなものだけを、
供給することによって、音声およびデータ用の最先端を行く通信
システムをアメリカに提供すること。これがATTの使命である。
p156

私は「フレームワーク」と「モジュール」という二つの概念を使っ
てATTの社業の中心であった業務の分離を提唱し、ATTのタテ割り
組織を批判した。
p159

最も重要なのは、そのような転換方針のコンビネーションが、ATTを、
古いピラミッド型機構から、半流動的なフレームワークと、もっと
流動的な「モジュール」群に基づく超産業主義時代の企業へと変
容させることである。