ニーベルングの指環


ニーベルングの指環(Der Ring des Nibelungen)

リヒャルト・ワーグナー(1813-1883)作の歌劇。 1876年8月バイロイト祝祭劇場で初上演された。 四部作で前夜を含め四日かかるという大作。

中世ドイツの英雄叙事詩「ニーベルンゲンの歌」に影響を受けているが、「ニーベルンゲンの歌」のルーツたる古代ゲルマン神話の世界観を「ニーベルングの指環」は継承している。特に「ヴェルズンガサガ」を中心に北欧神話?に散在するシグルズ伝説やブリュンヒルド伝説の影響が強い。

第一日「ヴァルキューレ」第三幕第一場の冒頭で演奏される「ヴァルキューレ(ワルキューレ)の騎行」は、フランシス・F・コッポラ監督の映画「地獄の黙示録」(1979年)で使用されて以来有名。 劇中では空中騎兵(第9騎兵隊第1大隊)が心理作戦と称して強襲ヘリの機内から大音量でこの曲を掛けていた。

あらすじ

あらすじや配役はWikipedia:ニーベルングの指環を参照。

北欧神話との関係

「指環」北欧神話
ジークフリートシグルズ/ジグルト
ブリュンヒルデ/ブリュンヒルトブリュンヒルド
ジークムントシグムンド
ヴォータンオーディン/オージン
ドンナートール
フローフレイ
フリッカフリッグ
フライアフレイア
ローゲロキ
グンターグンナル
グートルーネグズルーン
ハーゲンヘグニ

経緯

1200年ごろ現在のオーストリア地方の詩人によって「ニーベルンゲンの歌」が書かれる
18世紀後半「ニーベルンゲンの歌」が再発見される
1808年ド・ラ・モット・フケーの戯曲「大蛇殺しのジグルド」が発表される
1810年フケーの戯曲「大蛇殺しのジグルト」「ジグルトの復讐」「アスラウガ」をまとめた三部作「北方の英雄」が発表される
1819年フランツ・ルードルフ・ヘルマンの戯曲「ニーベルンゲン」三部作が発表される
1828年エルンスト・ラウパッハの戯曲「ニーベルンゲンの財宝」が初演される
1840年代美学家テーオドール・フィッシャーが「ニーベルンゲンの歌」のオペラ化を提唱
1848年10月散文草稿「ニーベルンゲン神話」を書き上げる
台本「ジークフリートの死」の散文原稿・韻文原稿が完成する
1849年ワーグナー、ドレスデンの反乱に参加し失敗。宮廷楽長の任を解かれ、スイスに亡命する
1850年「ジークフリートの死」についての音楽「ヴァルキューレの歌」「ノルンの情景」「ブリュンヒルデとジークフリートの別れ」がスケッチされる
1851年6月「若きジークフリート」散文・韻文草稿が完成する
1852年3〜11月「ラインの黄金」散文草稿が完成する
「ヴァルキューレ」散文草稿が完成する
「ヴァルキューレ」韻文草稿が完成する
「ラインの黄金」韻文草稿が完成する
1852年10月全四部作の舞台祝祭劇「ニーベルングの指環」と題名が決定する
1852年12月「若きジークフリート」「ジークフリートの死」に手直しが加えられる
1853年1月「ラインの黄金」「ヴァルキューレ」の決定稿が成立する
1853年9月イタリア旅行中「ラインの黄金」の冒頭部分の着想を得る(?)
1853年11月「ラインの黄金」全体草稿に着手
1854年1月「ラインの黄金」全体草稿完成
1854年5月「ラインの黄金」浄譜草稿が完成
1854年6月「ヴァルキューレ」全体草稿に着手
1856年3月「ヴァルキューレ」浄譜草稿が完成
1856年「若きジークフリート」「ジークフリートの死」に再び手直しが加えられる
1856年9月「若きジークフリート」の全体草稿に着手
1857年8月「若きジークフリート」第二幕第二全体草稿が完成
いったん「ニーベルングの指環」に関連する創作活動が中止される
(この間「トリスタンとイゾルデ」(1859年)「ニュルンベルグのマイスタージンガー」(1867年)の台本執筆及び作曲がなされる)
1861年フリードリヒ・ヘッベルの戯曲「不死身のジークフリート」「ジークフリートの死」「クリームヒルトの復讐」からなる三部作「ニーベルンゲン」初演
1863年「ニーベルングの指環」の台本が公刊される。この際「若きジークフリート」は「ジークフリート」、「ジークフリートの死」は「神々の黄昏」と改題される
1864年12月「ジークフリート」再開
1866年1月
〜1867年10月
再び「ジークフリート」作曲が中断される(この間「ニュルンベルグのマイスタージンガーの作曲及び仕上げが行われる)
1869年3月「ジークフリート」作曲が本格的に再開される
1869年10月「神々の黄昏」第一幕第一全体草稿に着手
1871年2月「ジークフリート」第三幕浄書が完了、「ジークフリート」が完成する
1873年5月「神々の黄昏」第一幕総譜浄書に着手
1873年11月「神々の黄昏」第三幕総譜浄書が終了する。「ニーベルングの指環」四部作が完成する
1876年8月完成したバイロイト祝祭劇場で「ニーベルングの指環」四部作が初めて上演される

(参考文献:オペラ対訳ライブラリー「ニーベルングの指環」(高辻知義訳)・音楽之友社刊
「ニーベルンゲンの歌」を読む(石川栄作著)・講談社学術文庫)

ウブメ