トロイア戦争


トロイア戦争

非常に有名な逸話「トロイの木馬」の出典。

トロイア(または「トロイ」)へギリシアの英雄たちが遠征したと言う、古代ギリシアの伝説の一つ。

 トロイア戦争の主な出典は、ホメロス作の叙事詩『イリアス?』と『オデュッセイア?』である。  しかし実際には、トロイア戦争に関する叙事詩は、全体で8編あったと伝えられる。これは「叙事詩の環epikoskyklos」と呼ばれていた。ただしその中でもホメロスだけは別格扱いで、『イリアス』と『オデュッセウス』を除いた6編の作者は「環の作者(キュクリコイ)」と呼ばれている。
 伝えられている8編は以下のとおり。

名称内容
キュプリア「キュプロス島物語」。ゼウスがトロイア戦争を始めようと思ったこと、パリスの審判?ヘレネ?の誘拐、ギリシア連合軍のトロイア遠征が歌われる。命名の理由は不明。
イリアス「イリオス(またはイリオン)の物語」。戦争末期。トロイアの英雄ヘクトル?がギリシア側の英雄アキレウス?に討たれ、戦争の趨勢が実質的に確定するところ。
アイティオピス「エティオピア物語」。トロイアに来援したエチオピア王メムノンがアキレウスに殺されるが、アキレウスもまたパリスに殺される。
小イリアスアキレウスの遺した武具をめぐるオデュッセウス?アイアス?の競争。パリス?も討たれ、トそしてロイの木馬が語られる。
イリオス落城木馬作戦によりトロイアは陥落する。プリアモス?王は討たれ、ヘレネは奪われる。アテネ?神殿でのカッサンドラ?陵辱も語られ、これによりギリシア軍の悲惨な末路が運命付けられる。
メストイ「帰国談」。おそらくオデュッセウス一行以外の帰国物語。小アイアス?の死、アガメムノン?謀殺、オレステスによる仇討ちなどが歌われる。
オデュッセイア「オデュッセウス物語」。オデュッセウス一行が神の怒りに触れて散々な目にあう航海譚。最後は貞節を守る妻を奪おうとしていたよからぬ求婚者たちを息子とともに討ち取る。
テレゴニア「テレゴノス物語」。オデュッセウスと魔女キルケ?の息子であるテレゴノス?が父をたずねてさまよった末に父親を殺してしまう。その後テレゴノスはペネロペイアと、キルケはテレマコスと結婚して終了。

古代ギリシア人の間では、ホメロス作のイリアスとオデュッセイア以外は、ホメロスと並べるのもおこがましい出来であって、あまり優れた作品ではなかったらしい。そのため、現在ホメロスの両作品以外は残っていない。
とはいうものの、叙事詩の美学的価値はともかくとして、その語られる神話伝説の内容はホメロスには見られないものが非常に多かったため、後にトロイア戦争の一断片を題にとって作品を作った悲劇作家たちはこれら「叙事詩の環」を参考にしたらしい。


この伝説を信じた考古学者シュリーマンの発掘により、この伝説の中核は実際に起きた事件ではないかとも言われている。

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