PLC問題 / 理事の意見(2006年09月15日時点)


2006/09/15 時点の文章です。

電波監理審議会の意見聴取に関して    (多くの意見を頂き補足しました)

       社団法人日本アマチュア無線連盟  関西地方本部長 JA3HXJ 長谷川 了彦(良彦)

 平成18年8月23日に行われた「電力線搬送通信設備の技術基準等の整備に関する無線設備規則の一部改正案」に対する電波監理審議会の意見聴取に関し、この席でJARLが述べた意見について多くの会員からなぜ反対から賛成に回ったのか、事前に会員に諮られずになぜこのような結論に至ったのかと、強い抗議と経緯の説明を求められました。JARLの経緯説明はweb上に掲載されています。

 これを受けて今回理事会などの経緯をできるだけ補いたいと考え可能な範囲で説明を加えましたが、この補足に対しても新たな抗議を生んでいます。  それは政治的な背景や、PLC反対の主張がJARLになぜ大きな影響を与えるのか理解できないというものから、ここでの補足情報を逆手に取り上げ全く逆の意図に展開しようとする論調も見受けられます。大半の理事がこれらに沈黙をしていることから、私が標的になるのはある程度容認できますが、あまりにも挑戦的な内容は良識ある社会人であるべきアマチュア無線には馴染まないも印象が強く、何をもってこれらの人たちに理解を求めることができるか困惑します。

 本来これらの説明は、JARAL会長から成されるべきもので、私の立場で制約があるのはご理解いただけると思います。当然理事としての発言は、それなりの責任に及ぶものですから慎重にならざるを得ませんが、この際さらに見解を補足したいと思います。  理事会の中で私の信念は、議案の賛否に関し明確な意思表示を示しますが、評決の結果に対してはその決定に従います。これは執行部一員として当然の義務でもあり今回の補足もその範疇にあります。  私見としては、本来理事会において重要な議決に関しては理事が各々どのような意思表示をしたかをある程度会員に知らせる必要を感じます。これは私自身の意志でJARL定款に定める地方本部区域毎の理事に立候補し、現状に留まっている立場からも当然だと思います。  ただ今回に限らず重要な懸案に際しては、誤解を恐れることなく会員に可能な限り情報を開示し、理事としてどのように関わったかの説明義務があると感じます。  これは国政に携わる議員が地元有権者に対して報告会として行われている慣習と同じものであり理事として当然の責務です。これらの行動が希薄になれば説明不足と誤解や思惑違いを生じさせる結果を招くのではないかと考えます。  今回に限らず、JARLとして重要な判断に際しては適切な事務処理や対応はより慎重に行うべきものと考えます。これだけ申し上げただけで理事として単なるJARL批判であるとか、無責任だとのメールが送られてきますが、私の意図するところは私自身への戒めであり、知りたいと望む会員への状況報告でもあります。

 本論に入りますが、今回私が受けた抗議の趣旨は「PLCに関し、終始反対の立場を貫いてきたJARLが第488回理事会において何故賛成に転じたのか・・・」これに尽きると思われます。  PLCはアマチュア無線家にとって何の利益もなく、不安要素を誘発する迷惑な事業である。しかしこれらを推進する側は、営利と国民性利便に集約された論理を掲げその導入を推し図ってきました。その背景と根拠は政府が打ち出したe-Japan計画に基づくものです。  当初このPLC問題にいち早く気づいたアマチュアの有志は、計画発表の年からハムフェア会場などで当事の専務理事などに問題点を指摘し、私も同時に要請を受けました。  その時点で、これらを打ち砕くためには、感情論や抗議だけではなく定量的なデータを蓄積して実験による科学的な根拠による阻止を図らねばならないという結論で行動を開始しました。  ついてはJARLの看板を活動の根拠にしたいという申し入れがあり、アマチュアの為なら何でも実行しようという意識の高いJARL関西地方本部管内で実験を開始しました。その場として大阪大学施設を借り受け多くの人的物理的協力得て最初の実験を開始しました。  JARLが始めたPLC断固阻止の実働隊が動き出した記念すべき瞬間でした。そしてこの実験はJARL本部に引き継がれ継続して実験が進められ、しかるべき成果を得たことはご承知の通りです。

 その後の、賛成・反対派双方の論争は報告書として公表されている通りですが、一進一退を繰り返した結果、一時的ではありましたがJARL実験の分析結果等が評価され、電力線搬送通信(PLC)の短波帯への規制緩和は2002年時点で見送りとなりました。これをアマチュア側の勝利と評価した人もあり、あたかも終息した感に見えました。  しかし、推進派は一時撤退したかに見えましたが、その膨大な資金と経済背景を根拠に予想通り再浮上し、再びe-Japan計画の中で推進・規制緩和の対象として取り上げられ、パブリックコメントの募集など新たな局面に突入しました。

 さて、JARL理事会でこれらに関し何を議論してきたのかという問いかけですが、JARLは過去からPLC問題はアマチュア無線にとって存亡にかかわる問題であり決して受け入れるべきでないという認識で進み、私を含めて全員の理事も見解は同じでした。その思いは今も変わりません。  問題の第488回理事会は、確かに「電波環境関係での電力線搬送通信(PLC)と電子タグ(RF-ID)」に関する議題に及びましたが、この時点で明確にJARLが賛成に転じるという結果は導いていません。  では、何故今回の結論の根拠が理事会で決定されたということになりますが、PLC論争の攻防の中でその議論の背景が単なる技術論争だけではなく、高度な政治的配慮におよぶ状況も見え隠れし、すでに論争の土俵も終盤戦に入ったという段階ににありました。 反対を貫く意識はこの時点でもいささかも変わっていなかったと言えますが、今後の折衝の中で非常に大きな力による戦術転換も視野に入れる他、既に求められた結果を含めその後も状況により適切に対応する必要が生じたと理解し、これらについては実務担当部署に一任した形式になったのは事実です。  不本意ながら、本来理事会ですべての対応が決められるのは当然ですが、JARLの慣習とその特殊性の中で緊急性を求められる場合は在京理事等の判断に委ねることもあります。

 そして今年のハムフェア会場において、8月23日の電波監理審議会におけるJARLの準備書面が会場の柱に掲載されその内容を見た来場者が驚きの声を挙げました。準備書面が事前にこのような形で事前に出ることの善し悪しを議論するつもりはありませんが、経緯説明のない突然の文書に驚きを感じました。  理事として屈託のない意見を申しあげれば、この重要な文書が理事者に事前に示されず、突然ハムフェア会場の壁に張り出されたのは私として衝撃であり、理事会で承認を受けたというならその根拠に苦言を呈さねばなりません。  多くの意見にあるように、今回の問題はいかなる事情があるにせよ、いきなり原案賛成とJARLが表現する前に何らかの事前説明があってしかるべきだという意見には大いに共感を覚えます。

 手続き論の不本意さはさておき、冷静に判断すれば今回のJARL判断(原案に賛成・・)は、単なる反対を貫くだけでは対応できない高度な政治力(水面下での圧倒的な力の差)に対応する一つの手法であったことは事実だと理解しています。  うがった見方かも知れませんが現時点で、前戦から一時後退しても、相手の動きを見極めて再度果敢に挑戦するという戦略を選んだと考えています。一時的に不利となった推進派がとった手段と同じです。  PLC賛成派は電力会社、大手家電メーカーなど巨大な資金と人材、人脈、並びに技術力に事欠かず活動を続けています。逆に反対派で技術的、論理的に反対できるの対抗要件を備えているのはJARL会員であるアマチュア無線家の中の専門家集団です。彼らが大きな犠牲を払い動いた事実がここまでの成果が得られた事実がこれを裏付けています

 すこし技術的な経緯になりますが、発生ノイズの10dbダウン論は、PLCモデムから発生するノイズを自然界のノイズレベル以下にしなければならないと言う数値ですが、これらを求めたのはアマチュア側の実験による成果です。  議論を重ねて得られた一定基準が双方で受け入れられたならJARLが取るべき道は自ずから決まります。反対を主張し続けることは、社会的に受け入れられないものになるからです。この10dbダウンという数値は結果として賛成派にも影響を与えたはずで、モデムの速度など採算という商業的な課題にもそれなりに検討課題を与えたと思われます。

 PLC問題はe-japan戦略の中で、言わば国策ですが、その導入についての議論は民主的な方法で進められたはずです。この計画に関する舞台は総務省でありJARLはその関係団体という事実があります。決定の善悪は別として、過去これらの会合に出席したJARLはその議論を構成する一員です。  自ら求め得られた結論に反対を主張することは、今後JARLが求める社会的に通用する組織としては適当ではありません。見事でないかもしれませんが例え一時でもその舞台で優位に戦った経緯は、実験グループの成果でもあり決定は遵守する義務の中にいます。JARLがこれらを反故にするれば被る影響は想像に値するものです。  結果論ですがあくまで反対を主張するなら、その時点で交渉のテーブルから離脱する方法しかなく、表向き勇ましいかもしれませんが、PLCはより加速度的にアマチュアに不利な状況で進んだと断言できます。    今JARLは、社団法人を根本的に見直す為の法案が既に衆参両議院を通過し、この法律に定める要件を満たす作業が進められています。選択を誤れば存続に対しても重大な影響を及ぼす課題です。  何より会員から預かった運営のための原資の適切な運用など重大な処理が進行しています。PLCに無関係と言う方もいますが、道義に反する手法をJARLが採るべきものはないといえます。    このように新たな説明を加えれば、また新たな挑戦状のようなメールを頂きますが、JARLという団体はすべて平等の権利を有する社員によって成立しています。その中で熱い議論を交わすのは当然ですが、大阪での実験から延べ数百、いや数千時間を費やし無報酬で活動したグループの存在を忘れてはなりません。 反論を恐れずに言うと、PLC情報はすべて公表されている事実です。単にJARLが反対から賛成に回ったという論法でだけ憤りを行動に移すだけでなく経緯を知る努力は必要だと感じます。  この経緯をJARLが詳細に報告していないことは大いに反省すべきですが、興味のある人にとって容易に入手できるものであり、JARLがすべての社員が義務を負おう民法で定義される団体ならお互いにもっと力を出すべきではないでしょうか。  日頃からふがいない理事会と批判を浴びせるかたも多くいます。知りたいことを知らせる必要を感じ少しばかり踏み込んだこの程度の情報提供でさえも批判の嵐を招きます。これが成熟した組織でしょうか。

 誤解があってはなりませんが、PLC問題はこれで決着したわけではありません。技術的な問題もさることながら論理的矛盾や基本的な問題など果敢に取り組むべき課題が今なお山積しています。  反対の立場を主張しJARL側検証に立ち会ったアマチュアの動きはいささかも衰えていません。私自身心情的には大阪大学での実験からスタートした力強い仲間と今後も協調してまいりますが、反対だけを主張して次代に禍根を残す事のないように務めたいと思います。  この論争の陰で忘れてならない重要なことは、もしPLC製品が市場に出た場合その技術検証と、約束したアマチュア無線への妨害阻止に向けて問題発生時に速やかに対応ができるしかるべき窓口(機関)の設置を強く求めることが最重要課題であり、この実現を目指さねばなりません。

 今回の選択が失敗か否かはやがて歴史が証明しますが、本質を離れた議論に陥ることなく一部の場外乱闘気味の論争は極力避け、未来のアマチュア無線の存続に鋭意努力を重ねながらこの事態を乗り越えて行きたいと考えています。  最後にしますが、この問題は社会的存在を主張するJARLが今後目論む近未来に適切に対応できる組織固めのためにも、新たな生き残りをかける道の一課程だと信じています。

社団法人日本アマチュア無線連盟 理事関西地方本部長 JA3HXJ 長谷川 良彦 ja3hxj@jarl.com

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