これは以下の記事のコピー&ペーストです。
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/ippitsu/at_ip_06100201.htm
素直に喜べない人も多いのではないか。通信環境を巡る都市と地方の格差を埋める切り札とも期待された電力線通信(PLC)が、解禁される。しかし、通信回線に転用できるのは建物内の電力線に限定され、屋外の電力線の使用は見送られた。これでは、格差は縮まるどころか、広がる恐れすらある。
PLCは、家庭や職場の電気配線を使ってインターネットに接続する技術で、現行の光ファイバー・サービスを上回る最大200メガ・ビットの通信速度を誇る。
解禁を巡る議論で問題視されたのは、電源コードから発生する電波の「雑音」だ。建物内での使用に限っても、天体観測やアマチュア無線に支障を及ぼすとの指摘が専門家から寄せられた。まして、電線の地中化が進まない日本で、屋外を含めた全面解禁に踏み切れば、航空管制や漁業無線など、より大きな影響が出かねないとされた。
足掛け6年にわたりPLC解禁の是非を検討してきた電波監理審議会は、結局、建物内での解禁に絞ったうえ、コードや周辺機器から漏れる「雑音」のレベルを、既に実用化されている欧米の基準以下に制限することで決着した。
この結果、PLC実用化の恩恵は、「居間のハードディスク録画機に蓄積した映像を、自分の部屋のテレビで楽しむことができる」など、建物内での通信環境の向上に限られることになった。これらは、建物まで光ファイバーなどのブロードバンド回線が届いていない地域にとって無縁の話だ。
総務省の2006年版情報通信白書によると、光ファイバーの都道府県別の世帯カバー率では、東京、神奈川、大阪でほぼ100%なのに対し、岩手、山形、茨城などは50%に満たない。人口が少ない市町村ほど普及率は低く、1万人未満の自治体では全体の12・3%しか利用できない。
通信インフラの基盤整備はもともと、都市と地方の格差縮小を目指したはずだ。双方向通信の網の目を張り巡らせることによって、医療過疎地と設備が整う病院をつなぎ、データをやり取りしながら十分な診断を受けられる――といった将来像を描いていた。
現実は逆に、光ファイバーにせよ、PLCにせよ、技術の進歩が速い通信分野では、新サービスが生まれるたびに格差は拡大する傾向にある。
屋外を含むPLCの全面解禁について、総務省は「電波の『雑音』を抑える技術革新がない限り、不可能に近い」(総務省総合通信基盤局)という。技術面で限界があるならば、せめて現行の光ファイバー網の拡充に向け、自治体や事業者への補助を拡大するなどして、普及のスピードを飛躍的に向上させる施策をとるべきではないか。
「格差を固定化させない」とする安倍政権が、通信環境の格差是正にどう取り組むのか、今後の政策を注視したい。
(経済部 石田 尚久)
(2006年10月2日読売新聞)
これまでの訪問者 1446 名様
本日 1 名様
昨日 1 名様
現在 9 名様
online:は5分平均値