これは以下の記事のコピー&ペーストです。
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/yw/yw06102201.htm
家庭の電気コンセントにパソコンをつなぐだけで高速インターネット通信が利用できる「高速電力線通信(PLC)」。年内にも一般ユーザーが使えるようになる。新たなブロードバンド(高速大容量通信)の担い手という声もあるが、実際のところ、使い勝手はどうなのだろうか。 本誌 二階堂祥生/撮影 島崎哲也太
「シーテック ジャパン 2006」で展示された子機モデム。コンセントを通じて取り出した情報はモデムから、ケーブル経由でパソコンに伝わる
千葉市の幕張メッセで10月3日に始まった電気・情報通信機器の総合展「シーテック ジャパン 2006」。内外の最先端のIT機器やエレクトロニクス機器を集めた総合見本市の一角に、「コンセントの向こうに、未来のくらしが見えてくる。」と大きく書かれたコーナーが設けられた。メーカー10社によるPLCの専用モデムを集めたコーナーだ。
PLCは海外では、スペインやドイツ、アメリカなどで実用化されている。日本でもいよいよ解禁とあって、注目度は高い。担当者は来場者への説明に追われた。 モデム2台でLAN要らず
PLCとは、どんなものか。
仕組みをイメージ図(左ページ)にしてみた。PLCは、建物内でインターネット接続をするのに使う。パソコンでネットの情報を見るには、光ファイバーやADSLなどで運ばれる情報を、屋内の無線LANやLANケーブルで機器に取り込んで見るのが、一般的だ。PLCの場合、光ファイバーなどと分電盤の間に1か所、コンセントとパソコンの間のもう1か所に専用モデムを使うことで、LANを使わずにネットを見ることができる。パソコンも従来通りのものでいい。
まず親機のモデムが光ファイバーなどで運ばれたネットの情報を電気信号に変えて、家庭内の電線に乗せ、その後、パソコンとコンセントの間の子機モデムが、ネット情報だけをパソコン機器に伝えるというわけだ。
「新規の配線工事や面倒な設定が必要ありません。情報が屋外に漏れるのを防ぐセキュリティー機能も備えています。使ってみれば、すぐに手軽で便利なのがわかるはず」
出展していた松下電器産業の通信子会社、パナソニックコミュニケーションズの広報担当者、中川浩次さんはそう強調する。
モデムの大きさは、親機も子機も厚めの文庫本1冊ぐらいだ。
子機モデムが屋内の無線LANやLANケーブルの代用をするため、LANの設備がない部屋でもインターネット通信ができ、IP電話も場所を選ばない。
家電のネットワーク化も簡単になり、例えば、リビングのDVDやパソコンに取り込んでいた映像を、別の部屋のテレビでも呼び出して見ることができるし、家電や住宅設備にモデムを組み込めば、携帯電話などによる遠隔操作が可能になる。
家に帰る前に、ネット経由でエアコンのスイッチを入れたり、お風呂をわかしたりといった使い方だ。監視カメラにモデムを組み込み、不審者の侵入を自動的に知らせてもらうなど、防犯対策での利用も考えられる。 ハイビジョン映像も
通信速度は、一般的な家屋でおおむね30メガ・ビット/秒以上という。PLCに使う2〜30メガ・ヘルツの周波数帯は短波放送やアマチュア無線も使っており、混信を防ぐために厳しい基準が設けられたが、メーカー各社が技術開発を進めた結果だ。30メガ・ビット/秒以上なら、パソコンでのネット利用がスムーズなのはもちろん、録画したハイビジョン映像を、なめらかにテレビで映し出すこともできるレベルだ。
無線LANの場合、壁などによって通信状態が悪くなり、良くて10メガ・ビット/秒とも言われる。安定した高速通信が得られるLANケーブルの場合、家庭内にケーブルを引き回す手間がかかる。安定した速度が得られる手段として、PLCは選択肢の一つになりそうだ。
モデムの価格は、決まっていない。アメリカでは、親機と子機のセットが約200ドルで売られており、国内でも親機と子機の1セットで2万円前後になると見られる。親機は1台でいいが、子機は機器に応じて買い増すことになる。その場合は1台1万円前後でそろえるわけだ。
実際には、インターネット接続会社が通信サービスの一環として、利用者にモデムをレンタルする方式が主流になるとの見方が強い。家の外まで光ファイバーかADSLを引き、屋内ではPLCを使ってもらう形だ。現在、ソフトバンクが月額1039円で無線LANのレンタルサービスを提供しており、PLC の利用料金の目安になりそうだ。 電波障害が問題に 「シーテック ジャパン 2006」で、メーカー各社が製品を発表した
だが、いくつか注意点がある。
最大の問題は、前述の通り、他の機器に電波障害を起こすことだ。日本で実用化が遅れたのは、アマチュア無線や短波放送などが影響を受けることが問題視されていたからだ。技術開発が進み、9月にPLCを認める答申が出されて、10月4日に解禁になった経緯がある。
短波放送事業者の日経ラジオ社によると、国内には900万台近いラジオがある。技師長の林政克さんが語る。
「電波漏れの基準が厳しくなったとはいえ、家の中でPLCを使えば、短波放送が聞きづらくなるぐらいのノイズが出る可能性が高い。また、窓際にラジオを置いて受信する人が多いのですが、PLCを使っている家が近くにあれば、やはり影響を受ける懸念があります」
近隣から苦情がきた場合、どういう対応ができるか、メーカーに確認しておくことが必要だ。
また、場合によって通信速度が遅くなる点にも注意したい。テクニカルライターの三上洋さんが指摘する。
「古い家屋では、屋内配線が入り組んでいることがあり、それほどのスピードは期待できないでしょう。伝送距離が長い場合やタップを通すことでも通信速度は下がるので、PLCを使うときには、なるべく短い線を、直接、コンセントに差し込むよう勧めます」
PLCには三つの規格があり、通信方式が異なると、モデム同士が通信できないだけでなく、ほかのモデムの通信を邪魔してしまう。最初にモデムを買う場合はあまり問題ないだろうが、子機を買い足す場合には店頭できちんと確認したい。
PLCは、LANの設備のない部屋でネット通信を始めようという人にはいいだろう。また、デスクトップ型パソコンをコンセントの近くで使っていて、LANのない別の部屋にある複数の機器と結んで家庭内ネットワークを組みたい場合も、検討の余地は多いにありそうだ。
だが、ノート型パソコンを部屋のいろいろな場所で使っている場合、無線LANのほうが便利ともいえるだろう。専用モデムは早ければ年内に店頭に並ぶ。
(読売ウイークリー2006年10月22日号より)
これまでの訪問者 1184 名様
本日 1 名様
昨日 0 名様
現在 9 名様
online:は5分平均値