【回答】
中世欧州という世界は「封建制」なので,常備軍の概念も無いし,維持もできない.
そういった国軍という形の軍制は,近世後期から近代くらいにならないと出てこない.
中世において王国を治めているのは確かに国王だが,国王が国家の全てを掌握しているわけではない.
たくさんの領主が国の中にいて,その中の代表が国王として,他の諸侯達の上に座っているだけ.
なので国王といえど,その領地は他の諸侯より小さい場合すらある.
「国家」という概念がまだ定着していないため,農民の側からしたら,見たことも無い「国王」より,自分たちの領主様の方が優先ということすらある.
また,中世の場合,戦争は農閑期にしか出来ない.
領主達にしてみても,農奴制の上にたって民を支配している関係上,農繁期にはそれこそ家族総出で収穫しないと,税金(年貢・作物)も集められなくなる.
戦争の際には,農民達を動員して兵士に仕立てなければならないし,その食料も自弁しなければならないこともある.
この食料なんかは当然,自分の土地から収穫されている物だな.
武装も時に農民へ支給しなければならんので,領主といえど,そうぽんぽん戦争には参加できない.
他国を攻めに行く場合は,準備期間を置いて何ヶ月後かに,やっと戦争というのが普通.
そのため,中世の普通の戦争って,数百人でも大人数.
下手すると数十人しかいないなんてのもあった.
中世で常備軍と言えるのは,せいぜい宗教騎士団くらいかな?
寄進された土地からの収益や金融業で,独自の経済基盤を持ってたし,手持ちの本によると,団員の騎士には武具が支給されてたらしい.
中世・近世風の世界を舞台にしている小説を読む時に,作者がどれくらい,作品を書くにあたって勉強しているのかを判断する方法としては,作者がその物語に出てくる国家の人口を,「ちゃんと設定している」かどうかがポイント.
農作物の生産量が国家を支えているから,ここの設定があやふやな「ファンタジー世界」は危ない.
そもそも日本の「中世ヨーロッパ風ファンタジー」って,実際の中世ヨーロッパよりも,日本や中国の要素や条件をモデルにした上で,しかも実質的には近世ってのが多い気がする.
対して本家欧米のファンタジーは,古代ローマ・エジプト風味が多いから,どっちもどっちなんだが.