【回答】
ユーゴは,
「7つの国境,6つの共和国,5つの民族,4つの言語,3つの宗教,2つの文字,1つの国家」
と言われたほど,民族・宗教・言語が複雑に入り乱れているところ.
そんな複雑な地域を,「1つの国家」にまとめたチトーという人物がすごいとも言えるが,いざ,その「1つの国家」のタガが外れると,それぞれの民族や宗教が,自分たちに有利な国を作ろうとする.
そんな時の民族的なエネルギーはすさまじく,雰囲気は過激になりがちだ.
当事者たちは,自分の所属民族の人々の幸せのためには,それがよいと信じてテロに走り,戦争を起こし,民族浄化を実行する.
だからこそ始末が悪い.
平和的な移行は困難だったろうね.
体制が社会主義と連邦主義を標榜しているなら,資本主義化を目指す反体制は民族自決に結集する.
特に東欧革命前夜の行き詰った経済状況なら,民族主義を煽る指導者がリーダーとなるし,連邦制度をも,自分達を苦しめている牢獄と見られて,敵視される.
ユーゴ意識を守ろうとする人々もいたが,既に構成共和国間で分断が起きていて,団結する事はできなかった.
ただ,資本主義化に関しては,比較的うまくいったというか,チトーも経済に関しては,徹底的な締め付けをしていなかったから――口が悪い人は,資本主義と共産主義の悪いところだけを合わせたような体制だといっているが――,それなりに適応している,または適応していたと言うべきかもしれない.