R氏作品「新たなる力」

編集前ログです。

811 名前:第一話 前編:2004/09/23 00:20 ID:KlvstNik

794氏に感銘を受け、妄想日記、しかも長編始めます。

 とあるゲームセンターにて。
 ゾイドの箇体のまわりに人だかりが出来ている。稀に見る対戦ムードだ。
 そのうち1つの席に、黒いジャケットの男が一人GOを駆り、連勝を重ねていた。
 「あの黒いの、強いな〜」
 「だな。今これ見てる人間のほとんどが挑んでるのに、全然勝てないもんなぁ」
 ギャラリーは、男のCPU戦を研究する者が大半になってしまい、ついに挑戦者が一人
 も来なくなってしまった。4台の内2台は依然対戦ムードであるにもかかわらず、だ。
 男は尊敬と敵意とその他色々な視線を背中に受けつつ、溜息混じりにつぶやいた。
 「・・・・つまらん」
 PNをアグレスと名乗るその男は、すでに
 地元では敵無しと恐れられ、より強い相手との対戦を渇望していた。そして、
 遠征先に希望を託し、この場所に来ていた。
 しかし、この場所にもそれは無かった。
 「まったく……。いつになったら現れるんだ。俺の渇きを満たす奴は」
 椅子に浅く座り、いかにもダルそうにCPU戦をこなしていくアグレスは、
 ついにUS戦まで進んでいた。
 「さて、次は何処のゲーセンに行こうか…」
 そうつぶやいた矢先、突如ブラックアウトする画面。
 その中心に浮かぶ白い文字。
 
 812 名前:第一話 後編:2004/09/23 00:22 ID:KlvstNik

 挑戦者が現れました

 「ほう?」
 先ほどの連勝を見て、まだ挑む奴がいる。その行為に少し興味を覚えたアグレスは
 横に視線を移し、姿を確認しようとした。
 その挑戦者は、丁度隣の席に座っていた。
 その風体は、ジーパンに白いTシャツ。背も高くなく、子供のような容姿だ。
 一際目を引いたのが迷彩柄の野球帽だ。あまり似合っているとも思えないそれが、
 さらにその男を頼りなさげに見せていた。
 お世辞にも強そうには見えない男だった。
 「…まぁ、見た目じゃないだろう。こういう意外な奴が強かったりもする。」
 アグレスは自分にそう言い聞かせた。対戦マップと相手の機体が表示された時
 アグレスの表情が目に見えて落胆したものに変わった。
 PNはケイ。機体は…
 「…MDだと?」
 どちらかというと、あまり目立った性能が無いMD。人気も少なく、
 機体性能も平凡な為、男にとっては初期機体より戦いやすい相手だった。
 「あまり、期待しない方がよさそうだな」
 きっと、ついさっき来店したばかりなのだろう。アグレスはそう思った。
 しかし、アグレスはこの後二度驚愕することとなる。ケイという名の男の強さに。
 そして、
 ゾイドインフィニティが秘密裏に大幅なバージョンアップを施され、
 人知れずVer1.1となっていたことに。
 次回、眠れる龍が目を覚ます…。
 
6 名前:第二話 前編:2004/09/23 23:40 ID:KlvstNik

日記の811、812から引越してきました。
ルールは
2ラウンド先取。90秒ルール。対戦マップはヘラス平地だ。
MDを操るケイは、内心ワクワクしていた。
「楽しみだなぁw長い間コイツに乗ってたけど、どれだけ強くなってるんだろう」
ケイは、稼動当初からインフィニティをやりつづけ、いち早くMDまで乗り換えた
人間の一人だった。しかし、その機体性能からMD乗りはチラホラと消え始め、
ケイのまわりに数人いたMD乗りは、今では全員他の機体に乗り換えてしまっていた。
そんな中でも懸命にMDに乗りつづたケイは、そこそこ強いMD乗りへと成長していた。
ただ、GOやPKとの戦績は低迷していた。
そんなケイが自宅で仲間内とGO&PK対策のチャットをしている時、
不意に見知らぬアドレスからメールが届いた。
そこにはこう書かれていた。
 
7 名前:第二話 後編:2004/09/23 23:41 ID:KlvstNik

「公には発表されていないが近々ゾイドインフィニティがバージョンアップする。
今までの強機体の性能はたいして変わらないが、君の現在乗っているMDは、大幅
な強化を受けた機体の1つだ。詳細を教えられては興がそがれてしまうだろうから
1つだけアドバイスだ。危なくなったら、EN満タンで特殊コマンド←CW→を入力し
てみろ。面白いものが見れるだろう。」

そのメールの端には、バージョンアップされる詳しい日時が記されていた。
大層人の良いケイは、そのメールの差出人に感謝しつつ、この情報を
信じることにした。チャット仲間に話しても悪戯だとしか言われなかったが、
ケイは信じることをやめなかった。
そして、バージョンアップ予告当日。ケイはアグレスとの対戦が
試運転だった。
「いきなり苦手なGO戦だけど、こいつの性能を試すいい機会かもしれないな」
そう考えているケイの足は、微かだが、だが確実に震えていた。
恐怖とも武者震いとも取れるその震えに対し、表情はとても喜々としたものだ。
両者それぞれの思惑渦巻く、ヘラス平地の戦い。
ついに戦いの幕は上がる…。
 
16 名前:第三話 前編:2004/09/24 15:12 ID:qc7c+BRw

>>8 どもです。
第一ラウンド
最初に仕掛けたのはアグレスだった。
ケイの放つミサイルの雨をものともせずに距離を詰め、零距離キャノンを
放った。そしてそれを避けきれずに被弾するMD。
「被弾した数は最小限に抑えた。影付きのGOは、これくらいで転びはしない。」
多少気がのっていないとはいえ、百戦錬磨のアグレス。手を抜く気は無いようだ。
追撃もきっちり抑え、アグレスは起き攻めの体制に入った。
「くぅっ、やっぱりつらいかな…」
序盤からいきなりキャノンに被弾し、意気消沈気味のケイは、次に来る起き攻めの
対応を考えていた。
「今までの性能だと、逃げ切れるかどうか微妙だけど、一か八か…!」
その時のケイには、何か理由のわからない、しかし確かな自信があった。
先程の交戦で彼はなにか違和感のようなものを直感で感じ取っていた。
その違和感の理由を、アグレスはわかっていた。
「あのMD…キャノンと追撃を食らわせただけにしてはダメージを食らい過ぎている。
 このダメージは確か装甲値が通常より1つ下位のものだ。それに、ミサイル数発にしては
 GOの被ダメージが若干多い。速度も誘導性も悪くなかった。これをさらに被弾してたら…。」
装甲値最大のはずのGOが、ここまで食らうのは珍しい。アグレスは先ほどから
浮ついていた気を引き締めた。
そして、MDがゆっくりと立ち上がった。
「ここで逃がしたらいけない。何かいやな予感がする。一気に畳み掛ける!」
走り出したMDを追うアグレス。しかし、アグレスは自分の目を疑った。
「…速い!?」
MDを追いだしたGOだが、少しずつ離されていく。以前に他のプレイヤーと戦った
時のMDはここまで早くなかった。
 
17 名前:第三話 後編:2004/09/24 15:13 ID:qc7c+BRw

「速い…が、問題ない!」
ミサイルを的確に置き、差を詰めつつ攻撃するアグレス。
だが、その攻撃はケイのステップ回避によりほとんど空を切り、ついには
中〜遠距離まで離されてしまった。一度足を止め、様子見に移るアグレス。
「今のステップ…。フィーネを乗せただけではああはならない。距離も反応速度も
 全く別物じゃないか!」
フィーネを乗せたにしては中途半端に伸びている距離。機敏な反応。
正にそれは別物と呼ぶに相応しかった。
驚くアグレスだが、1番驚いていたのは使っている本人であった。
「スゴイ。こんなに強化されてるなんて!機動性も攻撃力もまるで違う。
 ダメージの多さが気になるけど、これなら避けれる!」
中〜遠距離から再び間合いを詰めに来るアグレス。
「なぜこんなMDが存在するかなんてのは、この際どうでもいい。
 厄介な相手だが、PKほどのものでもない。装甲が薄いならダメ勝ちできる。
 このラウンドはもらった!!」
距離を中距離に保とうとするケイ。
「さっきの攻撃で大体武器の性能はわかった。威力だけ見て確実に
 変わっているのは対空ミサイルだ。これなら行ける、やってやる!」
その後の両者の攻防は、素人目から見てもハイレベルとわかる戦いだった。
ミサイルをかいくぐり、キャノンを撃つGO。それを絶妙のタイミングでステップして
回避するMD。それを確認するかしないかのタイミング、GOは尻尾で近接を仕掛けるも、
MDはそれをガードする。常に先を見たプレイングは、見るものを圧倒し、魅了した。
長い長い戦いの果て、1ラウンドを制したのはGOのアグレスだった。
キャノンは避けらても、レーザーやショックカノンはかわしきれなかったのだ。
誰もが次のラウンドもこの展開を予想した。いくら強いMDでも、これが限界だと
その場にいる人間に思わせた。ただ一人、ケイを除いて。このラウンドで、ケイは
格闘を使っていなかった。それが何を意味するか。そして、謎のメールに記された
特殊コマンドの意味は?
全ての答えは第二ラウンドで明かされる…。
 
20 名前:第四話 前編:2004/09/24 22:50 ID:qc7c+BRw

貼るやつ間違えました。すみません。

大破したMDを見つめ、ケイはある決意をした。
「さっきは試せなかった格闘性能、今度はこれを中心に戦術を組み立てよう。
 やられるのが関の山かもしれないけど、意表をつけるはずだ。」
MDがヘタに格闘をすると隙が多すぎる。だが、それは今までのMD。
強化されたのなら、何かあるはず。だが、それに頼ることは
とても危険な賭けでもあった。
「俺もつくづく、博打好きだよぁ。」
そして、アグレスのGOはケイが今まで戦ってきたどのGOよりも強い。
勝てる見込みはうすかった。
「さっきのパターンは通用しない。負ける時は負ける。でも、負ける気は無い!」
第二ラウンド開始直後、ケイは気合と共にMDのブーストをふかした。

「突っ込んできた!?」
熟練したGO使いに特攻を仕掛ける者は、そうはいない。
「やけを起こしたか?無謀としか思えないな!!」
MDが近距離に入るかはいらないかの所で、アグレスはミサイルとショックカノンを
ばら撒いた。
「ここで転んだらいけない。すべて避ける!」
ケイが1ラウンドで魅せた回避行動はここでも健在だった。
全弾回避とまではいかなかったが、被弾したのはミサイル一発のみだった。
ケイが回避中に放ったミサイルを、まるで何も無かったかのように突き進むGO。
その威圧感は、正に鬼そのものだった。
「そこだ!」
アグレスは、MDのステップ着地の隙を突いてキャノンを合わせようとした。
だが、MDが着地した瞬間、ものすごいスピードでGOに向かってきた。
 
21 名前:第四話 中編:2004/09/24 22:51 ID:qc7c+BRw

「!」
アグレスの持つレバーが、無意識に内側に倒された。
「ガードされた!?」
ケイの放った着地直後のHB左近接は、紙一重でガードされた。
さらに、ケイにとって最悪の展開が起ころうとしていた。
キャノンを撃つ準備をしていたアグレスが、本能でガードした直後に
両トリガーを引いていたのだ。
「偶然出た投げだが、MDの近接後なら確実に入る…か。」
MDの左近接は、発生こそ早いのだが、出した後の隙が致命的ともいえる
長い硬直があるのだ。
「やばい、もうすぐあれが来る!」
強化されたと思っていた近接は、何も変わっていなかった。
いまのこの危機的状況を回避する手段は、ケイにはもう残されていなかった。
「久々に少しは骨のある相手だった。だが、ここで大ダメージを食らえば
 万が一にもひっくり返すことは出来ない。MDなら尚更、な。」
アグレスは勝利を確信した。
GOの周りから赤いエフェクトが消えようとしてた。
その瞬間、ケイはあのメールを思い出した。
「危なくなったら、EN満タンで特殊コマンド←CW→を入力してみろ。」
「!やるしかない!!」
ケイがコマンドを入力した瞬間、MDの咆哮がヘラス平地に響き渡った。
「くそっ!間に合え!!」
「何が始まるか知らんが、もう手遅れだな。」
アグレスの言葉と共に、GOの周りから赤いエフェクトが消えた。
「終わらせろ!GO!」
 
22 名前:第四話 後編:2004/09/24 22:52 ID:qc7c+BRw

アグレスの言葉に呼応するように、GOは走り出した。
ここで、奇妙なことにアグレスは気付いた。
「…?何故ダメージを受けていないMDが倒れているんだ!?」
地に伏せるMDの姿を見た瞬間、アグレスはゾクリとした寒気を感じた。
そのMDの姿を見たケイは、これから何が起こるか。直感的に理解した。
「こいつはただ倒れてるわけじゃない。負けたわけでもない。
 まだしっかり、地面に両手両足をつけて立っている!!」
ギャラリーの一人が呟いた。
「……投げのモーション……?」
GOがMDに接触するかしないかの瞬間、
「いけぇ!!」
ケイの気合と共にそれは放たれた。
MDの背中の砲身から放たれた一条の光が三発、GOを貫いた。
不意に放たれたその光は、GOに3000ものダメージ与え、
前のめりに倒した。
その光を、操者2人は知っていた。ギャラリーのCW使い数人にも。
「あれは…」
「そうだ、あれは…」

「…ウネンライフル」
ケイは、予想以上の威力に驚きながら、その名を口にした。
近距離での超誘導が特徴的な、CW専用武装。
しかし、MDのそれは同時に三発。威力も衝撃値も桁違いだった。
MDは反動で後ろに下がり、システムダウンを起こしていた。
ゆっくりと立ち上がるMDを見つめるケイの目に、光が差した。
「こんな奥の手があるなんて…。まだ勝負は終わってないってことか。」
この勝負に微かな勝機を感じ取り、ケイはゆっくりとGOとの距離を離した。
炸裂したウネンライフル。地に伏せるGO。
この後、両者の戦いはさらに激化していく…。
 
23 名前:第五話 前編:2004/09/24 22:55 ID:qc7c+BRw

その後の第2ラウンドの攻防に、ギャラリーは沸いた。
完全にリズムを狂わされたアグレスは、ケイの操るMDにほとんどの
攻撃を避けられ、逆にMDの攻撃は狙いすましたように当たる。
そんな状況が最後まで続き、第2ラウンドはケイが勝利した。
あのアグレスのGOに、MDが勝ったのだ。この出来事は、ギャラリーすべてに希望を与えた。

「…ありえない…。」
アグレスがここまで絶望したのは、以前にGOの動かし方を教えてもらった
師匠との対戦以来だった。
「普通、ああいう特殊攻撃は静止中にしか撃てないはずだ。
 それを硬直中に撃ってくるなんて普通じゃない。…あんなMDに勝てるのか?」
落胆し、俯くアグレス。だが、その表情は徐々に笑顔に変わっていった。
「面白い……。こんなところにここまでの使い手がいるとわな!」
その顔には生気が戻り、闘志に火がついたことを物語っていた。
「ここまで楽しめる相手は初めてかもしれん。存分に楽しませてもらおう。
 そして、最後に勝つのは俺だ!!」

「…勝った…」
自らが勝ったことに未だ実感の湧かないケイは、手のひらを見つめながら呟いた。
そしてすぐに拳を握り、画面に向き直った。
「いや、完全に勝ったわけじゃない。勝算があるのがわかっただけだ。
 まだ喜ぶな。喜ぶのは、勝った時だ!」
そして、ついに運命の第3ラウンドが始まった…。
その瞬間、急に画面が動きを止めた。
「!?」
 
24 名前:第五話 中編:2004/09/24 22:55 ID:qc7c+BRw

2人が周囲を見回すと、他の二台がLANエラーを起こしていた。
その影響がこちらにまで来たようだ。
「…クソ!」
火がついた闘志に水をかけられた気分になったアグレスは、少々
乱暴に席を立った。
そして、ケイの座るシートに早足で歩み寄った。
「おい」
「は、はい?」
急に声をかけられたケイは、咄嗟に振り向いた拍子にシートに頭をぶつけた。
「復旧した後、俺を1ラウンド目でKOしろ。」
「……え?」
少し意味がわからず、首を傾げ、頭をさすりながら聞き返すケイ。
「2ラウンド目は、俺がお前をKOする。」
そこで、ようやく意味を理解した。
「……3ラウンド目で勝負するってことですか?」
係員が復旧作業に入った台から立ち上がりつつ、ケイはアグレスの目を見据えた。
「そうだ。あのままじゃ後味が悪い。90秒一本勝負だ。…どうだ?」
「はい、わかりました。やりましょう。」
その申し出に、ケイは即答した。後味が悪かったのは、ケイも同じだったのだ。
その返答の早さに、アグレスは小さく笑いながらケイに背を向け、ベンダーに向かった。
「…あ、そっか。ベンダーに通しとかないとね。」
バグの影響で戦績がどうなってるかわからない。確認のため、アグレスに送れて
ケイもベンダーに向かった。
 
25 名前:第五話 後編:2004/09/24 22:58 ID:qc7c+BRw

ベンダーで戦績を確認しているアグレス。
「…俺が負けたことになってる、か。」
ベンダーからカードを取り出そうとした瞬間、不意に肩をつかまれた。
「あ?」
振り向いたアグレスの手に、何かメモのようなものが押しつけられた。
「これを生かすも殺すも、君次第だ。自信があるなら、試すといい。」
そう言い残し、紺のスーツに身を包んだ謎の男はその場から去っていった。
「なんなんだ?一体…」
「どうしたんですか?」
遅れて、ケイがやってきた。
「…いや、なんでもない」
渡されたメモに書いている内容を見た瞬間、アグレスの目が見開かれた。
「……面白い。」
メモを握りつぶし、アグレスはベンダーにカードを通し終えた
ケイに向き直った。
「次の勝負、俺がもらった。」
不意に言われた勝利宣言にケイは呆然とし、ベンダーからカードが出てきたことに気付くのが
遅れてしまった。
カードを取って振り向いた時には、アグレスは既に復旧したシートに腰掛けて
ケイを待っていた。
「早くしろ。俺は戦いたくてウズウズしてるんだ。」
そう言い放ったアグレスの瞳は、正に飢えた獣のそれだった。
その威圧感に気おされまいと、ケイも負けじと言い放つ。
「ええ。でも、勝つのは俺のMDです。」
その言葉に満足そうな笑みを浮かべ、アグレスは画面に向き直った。それに、ケイが乱入する。
対戦マップは、ロムルス基地になっていた。
「そういえば、さっきの勝利宣言は何だったんだろう?随分いきなりだったけど…」
ケイの疑問の答えが、戦慄と共に明かされる。
戦いは、ついに佳境を迎える……。
 
30 名前:第六話 一編:2004/09/26 13:39 ID:V3njtsCc

アグレスの提案どおり、1ラウンドと2ラウンドは互いに1セットづつ取り合い、
3ラウンド目に突入した。

「さぁ、舞台は整ったな。」
アグレスは大きく深呼吸した。久しく感じていなかった緊張感。
全力を出さなければ勝てない相手。今、それが目の前にいる。
「この戦場に立つ日を俺はずっと待っていた。そして、俺が強いと認めた
 相手に勝つことを!望んでいた!!」
2体のゾイドが咆哮を上げ始めた。
「いくぞ……」
アグレスの操るGOが、静かに走り出した。

一気に射程距離へと詰め寄ってきたGOの攻撃をかわしつつ、ケイは
ベンダーで見たMDの武装を思い出していた。
「強化されてたのはわかってたけど、ベンダーに通す前に乱入したしな。
 ホント、びっくりしたなぁ。」
カスタマイズ画面を確認したとき、MDの武装の名前が変わっていたのだ。
対空ミサイルがナイトミサイルに。魚雷ポッドがモサミサイルに。
「これが、本当のBLOX集合体の姿なんだな。」
ずっと疑問に思っていた。なぜ、合体している素体の武器が使えないのか。
そして羨ましかった。その武器を使えるGJやDBが。
「お前は俺の理想のゾイドだ。お前とならどんな奴にも負ける気はしない。
 さぁ、いこうぜ!MD!」
GOのキャノンを紙一重でかわし、ケイはマシンガンとミサイルの一斉射撃を開始した。
 
31 名前:第六話 二編:2004/09/26 13:40 ID:V3njtsCc

「マシンガンか…」
避けきれずに被弾したミサイルを気にも止めずにレーザーを放つアグレス。
「ウネンライフルが発動しやすいように、電磁キャノンと交換したか。」
機動性の良くなったMDにとって、マシンガンに換装したことは
総じてプラスになっているようだ。
「奴の戦術にもあっている。厄介だな。」
マシンガンによって蓄積されたダメージにより、GOの
硬い装甲が悲鳴をあげはじめる。弾のばら撒き方も上手い。
「ダメージ効率が上がってる。これは気が抜けないな!」
キャノンのチャージが終えたことを確認し、反撃に移るべく
零距離射程にまで詰め寄った。
「それに当たるわけにはいかない!」
GOと密着しそうになった瞬間、MDがGOの頭上を飛び越えた。
しかし、GOはキャノンを発射していない。
「!? しまった!」
「遅い!」
タイミングをずらされて放たれたキャノンは、的確にMDを貫いた。
「ジャンプで回避しようとは奇抜なアイディアだが、それも計算のうちだ。」
アグレスは一気に減ったMDのライフゲージを見つめ、微笑んだ。
「いくらお前のMDとはいえ、ここからの逆転は難しいだろうな。
 そして、そんなチャンスを与える俺でもない!」
立ち上がったMDを執拗に追いかけるGO。相手の動く方向を先読みして
的確に差を詰める。スピードの上がったMDに対してここまで差を詰めれるのは
ここらではアグレスただ一人であろう。
「くそぅ…、やっぱあの人、強いな。」
弱気な言葉を漏らすケイだが、その目から諦めは感じられなかった。
 
32 名前:第六話 三編:2004/09/26 13:40 ID:V3njtsCc

「今までのMDならもう負け確定だ。でも、さっきの格闘性能が本物なら、勝機はある!!」
その言葉を証明するように、なんとかGOから逃げ延びたMDは
近距離から一気に格闘戦へと発展させ、徐々にGOに詰め寄ってきた。
「さっきの戦いで見た限り、左近接の硬直が目に見えて短くなってる。
 元々俺は格闘戦が得意なんだ。キャノンが恐いけど、押し通して見せる!」
GO有利に見えたこのラウンドも、ケイとMDの底力によって
混戦となっていた。
被弾数はGOの方が多いのだが、装甲が薄いMDには多少の攻撃でも
十分なダメージとなってしまう。そんな戦いも残り30秒となっていた。
MDの武装はマシンガン数発を残すだけだったが、近接合戦で多数の勝利を
収めていたため、HP残量はGOの方が劣っていた。
「このまま近接を多用すれば、勝てる!」
キャノンを撃ってくるタイミングに近接を重ね、幾度となく
それを潰してきたケイは、すでに勝利への方程式が頭の中で出来上がっていた。
この状況下で、アグレスはある決心をした。
「…当たらぬキャノンなど、ただの重荷に過ぎん、か。
 師匠、あんたの言うとおりだったな。」
アグレスの師匠は、零距離キャノンの多用を固く禁じていた。
「たしかに、零距離は強い。だが、それを避けられたあとが問題になってくる。
 キャノンの性能に甘えるな。でなければ、確実に敗北の時は来るぞ。」
それが、師匠の言葉だった。実際、キャノンを積まないGO同士で師匠と
対戦したとき、アグレスはなにも手出しできないまま負けてしまった。
それを教訓にアグレスは訓練を重ね、今の実力を手に入れた。
しかし、ひたすらに対戦を重ねてきたアグレスは、その言葉を忘れ
「今またキャノンに頼っていた…か。」
自分のいままでの行為に反省しつつ、アグレスはレバーを両側に開いた。
出方を探っているMDを真正面から見据える形になった。
 
33 名前:第六話 四編:2004/09/26 13:44 ID:V3njtsCc

「見ず知らずの人間の助けを借りるのは癪だが、やってみるか!」
レバーを開いたまま両トリガーを引いた。
次の瞬間、GOの咆哮で大気が揺れた。
「な、何が起こってるんだ?」
突然の出来事にケイは戸惑った。
「格闘のノウハウはお前のほうが上だ。それは認める。
 だが、これならどうだ!」
アグレスの言葉と共に、GOの背中、腕から武器が外れ、地面に落ちていった。
腕にはレーザー兵器だけが残り、GOの体から白い蒸気が立ち上がる。
「…バーサーク。重い装備をすべて排除し、一般兵が乗れるように設定していた
 リミッタ―を外すことによって、より野生に近い状態のGOにする。スピード、
 パワーが増加するが、20秒後にはオーバーヒートでしばらく動けなる。」
謎の男から渡された紙には、そう書かれていた。
「つまり、今までの俺や他のGO乗りは一般兵だったってことか。
 開発者も、舐めた真似を…。」
試合の残り時間は25秒となっていた。バーサーク起動は既に終わっている。
「俺はこのシステムを使いこなす。そして、奴を必ず撃墜する!」
アグレスの放つ威圧感に、ケイは圧倒されつつあった。
「この戦い、簡単には終わりそうも無い…。勝てるかどうかさえ
 わからなくなってきた。…あのGOがキャノンを捨てた。ならば、
 当然格闘戦を挑んでくるはずだ。パワーアップもしてる。」
レバーを持つ手が汗ばんだ。
「試運転のつもりが、とんだ激戦になっちゃったなぁ?MD。」
ケイはレバーを握りなおし、正面にたたずむ鬼を睨みつけた。
「こうなったら華々しく、でっかい白星で初陣を飾ろうかぁ!」
両者のゾイドがブーストをふかし、急速に近づいていく。
「俺のMDが…」
「俺のGOが…」
「「 勝つ! 」」
次回、決着……。
 
40 名前:第七話 前編:2004/09/26 23:17 ID:V3njtsCc

両者の狙いは格闘一本。それだけに、間合いが狭まるのに時間はかからなかった。
先手を取ったのはアグレスだった。増加したGOのスピードは、MDと互角といえるほど
上がっていた。そのスピードの速さに、ケイは攻撃のタイミングを逃したのだ。
範囲も速度も申し分の無い尻尾の一撃が放たれる。
「確かに速いけど、来る攻撃がわかっていれば当たらない!」
尻尾の飛んでくる方向の反対側に移動しながらガードするケイ。
「いくら速くても、硬直がなくなるわけじゃない。一瞬でもあれば、そこに勝機がある!」
ケイは右近接をGOの隙に合わせて放つが、それもまたガードされる。
「こりゃあすごい。このタイミングでガードが効くのか。」
バーサーク状態になったGOは、正に格闘の鬼だった。
格闘の出の早さ、スピードの増加に加え、ガード入力の認識まで速くなっていた。
「さて、折角GOの右側に来たんだ。ダウンの1つぐらいお見舞いしてやろう。」
アグレスはそう言い放ち、右トリガーを引いた。
バーサークの効果でさらに出の早くなった右ストレートでダウンさせようというのだ。
「逃げる隙は与えない、かぁっ。とりあえず、ダメージは最小限に抑えなきゃ…!」
ケイは右が来るのガードして待つことにした。ヘタに逃げようとすれば、確実に
直撃することを見越しての行動だ。
だが、放たれたのは2人が予想していた右ストレートでは無かった。
GOは咆哮と共に、右から薙ぐようにMDに噛み付いてきたのだ。
それも、尻尾よりも速い発生速度だ。
「何!?」
予想外のモーションにケイは驚いた。範囲は尻尾と同等かそれ以上。
おそらく、食らえばただではすまないだろうダメージ。
GOの解放された野生に、その場にいた全員が恐怖を抱いた。
 
41 名前:第七話 中編:2004/09/26 23:18 ID:V3njtsCc

ただ、発生後の硬直は若干長かった。その隙をケイは逃さなかった。
「今だ!!」
ケイはここぞとばかりに左近接を叩き込み、追い討ちにすべてのバルカンを撃ち尽くした。
「これで、俺にはもう近接しか残されていない。ヘタに射撃武器があると
 判断を鈍らせそうだしね。これでいいんだ。」
ケイは起き上がるGOの背後に移動した。
「現在のMDの3800…か」
おそらく、一撃でも食らえばすぐに窮地に立たされる。
ミスの許されない状況は、ケイに更なるプレッシャーを与える。
「今逃げれば確実に追いつかれるし、射撃武器もない分こちらが圧倒的不利。
 残り時間は16秒。攻めきってみせる!」
起き上がった直後にHBでMDに向き直り、突進してくるGO。
「GOの残りHPは2100。まだ、返せる!」
アグレスはレーザーを放ちつつ間合いを詰めてきた。
レーザーを避けるべくステップしたMDに、アグレスは尻尾を重ねてきた。
「それは食らわない!絶対に!!」
やはりそれを読んでいたケイは、先ほどと同じようにガードした。地面に落ちた
MDはすぐさま左近接を入れた。尻尾のわずかな硬直でも確実に入るであろうタイミングだ。しかし、
「甘かったな。さっきの尻尾の攻撃は修正された硬直時間を計るためのものだ。
 結果はこれから見せてやる!食らうがいい!!」
MDが回転しながら攻撃してくるその頭上から、GOはその鋭い牙で
容赦なく喰らいついた。普通ではありえないほど吹き飛び、ステージ中央付近から
段差の上にまで飛ばされてしまった。そこにさらにレーザーが追撃で入った。
「ああっ!!」
MDの残りHPが90にまで激減していた。バーサークの近接は、3000ものダメージを与えていたのだ。
 
42 名前:第七話 後編:2004/09/26 23:19 ID:V3njtsCc

「実に楽しかったぞ。ここまで楽しめる相手はそういない。
 お前に出会えたことを神に感謝する…。そして、この戦いに勝利することも!!」
MDは起き上がる体制に入ったことを確認し、アグレスのGOは止めを刺すべく突進する。
「レーザーなどというつまらんもので決着はつけん。近接で葬ることこそ、
 この勝負の終わりに相応しい。」
アグレスの手は、右トリガーにかかっていた。
「まだだ……。まだ終わりじゃない!!」
起き上がったMDは咆哮を上げ、地面に両手両足をついた。
「ウネンライフルか!だが、もう遅い!!」
GOとMDとの間合いは、今まさに近接距離にまで詰まろうとしていた。
しかし、ここである変化が起きた。なんの前触れも無く、GOが転倒したのだ。
「!?何が起きた!!」
予期せぬ事体に驚くアグレスの目に映ったのは、残り時間5秒の文字
「オーバーヒートか!」
ブーストの慣性で滑っていくGOの目の前には、今まさに放たれようとしている
ウネンライフルの銃口があった。GOの動きはまだ止まらない。
「これが最後のチャンスだ!絶対に逃がさない!!!」
ケイの言葉と共に、青い閃光が放たれる。残り時間はすでに2秒を切っていた。
「早く、早くタイムアウトになれ!!」
「時間制限が来る前に、終わらせる!」
アグレスの祈りと共に時は進み、ケイの気迫とともに閃光がGOを貫いていく。
残り0秒の文字が映る。GOの動きが止まり、ウネンライフルの最後の弾が放たれようとしていた。
「いけえぇ!!!」
すべての視線がMDの銃口に集まった。そして、それはついに放たれた……。
 
43 名前:第八話 一編:2004/09/26 23:21 ID:V3njtsCc

一週間後
アグレスは、またそこに来ていた。予期せぬバージョンアップの情報をもたらされ、
最高の激戦を繰り広げたその場所に。
例によって、アグレスは連勝を重ねていた。そして、ブレードの力を過信し、
無謀にもアグレスに挑んだBL使いは当然の如く負けていた。
負けた男は、怒気を含みながらアグレスに詰め寄った。
「てめぇ!舐めた真似しやがって!!」
アグレスの胸倉を掴み、怒声を張り上げる。
「何のことだ?喧嘩を売った覚えは無いが?」
「とぼけんじゃねぇ!!キャノン積んでるくせになぜ使わなかった!!」
その試合で、アグレスはキャノンを一切使わず、射撃武器もほとんど使わなかった。
バーサークでさえも、起動せずに勝利を決めたのだ。
「別に、お前が本気を出すにたる男ではなかったからだ。だから、格闘の練習がてら
 相手をしたに過ぎん。」
男の怒気はいっそう強まる。
「ブレードの性能に頼りきったお前なんぞに、負ける気はしない。ブレード無しでまともに
 戦えるようになったら、また相手になってやる。」
「っ!!このやろう!」
男はついに殴りかかった。しかし、それを顔面ギリギリでアグレスは手のひらで受け止めた。
「意味がわからなかったか?貴様じゃ役不足だと言っている…!」
男の拳を、すごい握力で握りしめる。ギシギシと、骨の軋む音さえ聞こえそうなほどに。
「…くっ…ぅあ」
「……失せろ」
アグレスは男の拳を振り払い一瞥をくれてシートに戻った。
男は完全な敗北を感じた。やり場の無い憤りをかかえつつ、乱暴にその場から去っていった。
そして、その横を通り過ぎ、アグレスに近づいていく野球帽の男が一人いた。
 
44 名前:第八話 二編:2004/09/26 23:22 ID:V3njtsCc

「ゾイドだけじゃなくて、リアルでも強いんですね。」
先ほどの場面を見ていれば、声をかけることさえ躊躇してしまうところを
その男は何も無かったかのように話し掛ける。
「…ケイか」
「ええ、久しぶりですね。一週間ぶり……かな?」
お互いに微笑みを交すその光景は、一週間前に激戦を繰り広げたもの達とは思えないほど
穏やかなものだった。
「俺の実家は道場だ。それなりには、力もつけているさ。……おい。
 もちろん、対戦しに来たんだよな?あんな決着じゃあ、終わるに終われん。」
『あんな決着』……。そう。あの戦いの終結は、じつに意外なものに終わった。
放たれた弾丸はタイムアウトになる前にGOに当たった…ハズだった。
段差の上にいたMDの弾丸は、たしかにGOに飛んでいった。しかし、GOの
慣性が止まっていたのは丁度段差の切れ目だった。弾丸は、GOに当たるか当たらないかの
ところで地面に当たり、掻き消えていた…。
「結局、あのままタイムアウト。最初の二発は慣性が効いていたときに出てたから当たってたけど、
 ほんとに惜しかったなぁ…。」
一週間前の出来事を、昨日のように振り替えるケイの顔はとても満足そうだった。
「でも、あれだってステージ運が悪かっただけだし、あんな決着ってわけでも…?」
「本当なら、場所はヘラス平地だったんだ。平地だったなら俺は負けていた。
 それに…。」
ケイの持つカードを見ながらアグレスは続けた。
「俺とお前の戦績は、今のところ一勝一敗になっている。勝負をつけたにしてはきり
 が悪いと思わないか?」
アグレスが悪戯っぽく笑う。
「…ですね。」
ケイが空いているシートに座る。
 
45 名前:第八話 三編:2004/09/26 23:25 ID:V3njtsCc

「いいんですか?次にやると、確実に俺が勝ちますよ?」
箇体にコインとカードを入れる。
「ふん。たいした自信だ。だが、今回も俺が勝つ。」
2人の実力を知るギャラリーは、これから始まるハイレベルな戦いを見逃すまいと
画面を食い入るように見つめる。
2体のゾイドの咆哮が、戦闘開始の合図を告げる。
「さぁ…」
「いくぜ!!」
両者の戦いが、始まった。

戦いが始まり、ギャラリーが沸き始めたにもかかわらず、そのギャラリーの一団から
紺のスーツの男がその場から離れていった。
「彼らに一番に情報を与えたのは、正解だったようですね。彼らは良いライバルになる。
 …そう思いませんか?マスターさん。」
男の視線の先には、アグレスの黒いジャケットに似たものを着た男が立っていた。
唯一違うのは、背中に鷹の絵が刻まれている点だった。
「俺もそうなると思ったから、奴を推薦した。今回のテストの対象に…な。」
マスターと呼ばれたその男は、煙草を取り出し、宙に向かって煙を吐き出した。
「ええ。テストは成功です。彼は実に良い逸材だ。次回のバージョンアップでもあれば、
 協力しててもらいましょうかねぇ。」
男は少し、高めの声で小さく笑う。
「しかし、あの男…。試運転のMDの性能をあれだけ早く理解し、使いこなすとは…。
 あれこそ、本当の逸材だろう。一体、どこであの男の情報を?」
2人は外に向けて歩き出した。
男は感慨深げに空を見上げる。日が暮れえて、白い満月が浮かんでいた。
 
46 名前:第八話 四編:2004/09/26 23:25 ID:V3njtsCc

「血統…でしょうかねぇ。あの人の弟までもが、天才と呼ぶに相応しい才能を
 お持ちだとは…。正直、私も驚きました。」
マスターの目が変わる。
「天才?まさか、奴の弟だというのか?!」
「ええ。貴方と数々の激戦を繰り広げてきた、伝説のLZ乗り。LZシリーズをこよなく愛する彼は、
 最終的にはLXに乗っていましたが、あの人の実力は機体性能を遥かに上回っていた。その中でも
 、格闘戦では無類の強さを発揮していた。…また、あの人のプレイを見てみたいものですねぇ…。」
「……」
マスターは無言で歩き出した。
「何処に行くんです?」
「奴に逢いに…だ。血が騒ぐのさ。俺とGGの、な。居場所がわからなくとも、探し出す…!」
マスターの目が光る。
「GG…。今回のバージョンアップで、GOを越える格闘性能を獲得した機体…。
 いいでしょう、彼の居場所、お教えしましょう。」
それは、意外な発言だった。彼は、小説家という場所を選ばない職業を活かし、各地のゲーセンを
渡り歩いていたのだ。無論、その所在を掴むものはいなかった。この男を除いて。
「奴の居場所がわかるのか!?」
「ええ。もし、もうすこし私の仕事を手伝ってくれるなら、お教えしましょう。」
マスターは少し困惑したが、すぐに答えを出した。
「いいだろう。だが、期限は一週間だ、その後俺はすぐに奴を追う。」
「いいでしょう。では頼みましたよ。仕事の内容ですが…」
人々の歓声が聞こえる。戦いは、より一層の盛り上がりを見せているようだ。
「わかった。引き受けよう。…約束は守れよ?Dr」
Drと呼ばれた男は、小さくうなずいた。
「もちろんです。多くの人の記憶に残る激戦を創ることこそが、私の仕事なんです。
 貴方達の戦いもまた、その激戦なんですよ…。」
犬の遠吠えが聞こえる満月の夜、それは静かに動き出したのだった……。

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