行政法 / 行政作用法


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行政行為

行政行為の意義

 行政行為とは、行政庁が法律の定めに従い、一方的な判断に基づいて、国民の権利義務その他の法的地位を具体的に決定する行為をいう

行政行為の種類

 行政行為は、大別して法律行為的行政行為と準法律行為的行政行為に分かれる。

法律行為的行政行為

 意思表示を要素とし、行為者が一定の効果を欲するが故にその効果を生じる行為をいう。行政庁が「そのようにしたい」という意思を持ち、その実現のために行うもの

 更に、命令的行為と形成的行為に分類される。

  • 命令的行為
     本来国民がもっている自由を制限し、または逆に義務を免除する行政行為で、以下の3種類に分類される。
    1. 下命・禁止
       作為・不作為を命じる行政行為を下命といい、そのうち不作為を命じる行為を特に禁止という
      ≪具体例≫
      1. 違法建築物の除去命令
      2. 営業の停止
      3. 道路の通行禁止
      4. 性病患者への治癒命令
    2. 許可
       本来ならば国民が生まれながらにして自由に行えることが法令などによって一般的に禁止されている場合、それを解除する行政行為
      ≪具体例≫
      1. 風俗営業の免許
      2. 火薬類製造の免許
      3. 自動車運転の免許
      4. 医師の免許
      5. 建築の許可
      6. 質屋営業の許可
      7. 酒類製造の許可
      8. 旅館業経営の許可
      9. 公衆浴場経営の許可
    3. 免除
       特定の場合に、作為・給付・受忍の義務を解除する行政行為
      ≪具体例≫
      1. 租税の免除・猶予
      2. 予防接種の免除
  • 形成的行為
     国民が本来有していない特別の権利や法的地位などを与えたり剥脱したりする行政行為で、以下の3種類に分類される。
    1. 特許
       国民が生来にはもっていない権利などを与える行政行為。特権行為ともいわれる
      ≪具体例≫
      1. 鉱業権設定の許可
      2. 公企業の特許
      3. 公務員の任命
      4. 河川の占有許可
      5. 帰化の許可
      6. 公有水面埋立の免許
      7. 道路の占有許可
    2. 認可
       私人間で行われた契約などの法律行為を補充することによってその効果を完成させる行政行為
      ≪具体例≫
      1. 地方債起債の許可
      2. 公共組合(土地改良区等)設立の許可
      3. 農地の権利移動の許可
      4. 特許企業の運賃および料金等の認可
      5. 河川占有権の譲渡の承認
    3. 代理
       第三者がするべき行為を行政が代わって行い、第三者自らが行ったときと同じ効果を発生させる行政行為
      ≪具体例≫
      1. 臨時代理者の選任(地方自治法153条)

準法律行為的行政行為

 判断や認識などの意思表示以外の精神作用の発現を要素とするものであり、一定の判断や認識などの意思表示以外の精神の発現があれば、法規の定めた効果がある行為をいう。要するに、行政庁の意思ではなく法律の規定によって効果が発生するというもの

 以下の4種類に分類される。

  1. 確認
     ある事実や法律関係が存在するか否かを公的に判断する行政行為。要するに判断の表示
    ≪具体例≫
    1. 所得額の更生決定
    2. 建築物の違法性の確認
    3. 当選人の決定
    4. 発明の特許
    5. 審査請求の裁決
  2. 公証
     特定の事実または法律関係の存否を公に証明する行政行為
    ≪具体例≫
    1. 選挙人名簿・土地台帳その他の公簿への登録
    2. 各種証明書・鑑札の交付
  3. 通知
     特定または不特定多数の人に対し特定の事項を知らしめる行政行為
    ≪具体例≫
    1. 特許出願の公告
    2. 納税の督促
    3. 代執行の前提としての戒告
  4. 受理
     他人の行為を有効な行為として受領する行為
    ≪具体例≫
    1. 各種申請の受理

行政行為の附款

意義

 行政行為の附款とは、行政行為の効果を制限したり、あるいは特別な義務を課すため、主たる意思表示に付加される行政庁の従たる意思表示をいう。例えば、自動車の運転免許を与える際に、運転者に眼鏡の仕様を義務づけるような場合は、「免許」を与えると言う主たる意思表示に、眼鏡の着用を義務づけるという従たる意思表示が付加されるような場合がこれに当たる。

 この行政行為の附款は、「主たる意思表示」に付加する「従たる意思表示」であるため、意思表示を要素とする法律行為的行政行為にのみ付することができ、意思表示を要素としない準法律行為的行政行為には付することができない

限界

  • 行政目的とは無関係に付することはできない。
    1. 目的の範囲を超えて付されたものは違法であるが、直ちに無効にはならず、附款が重大かつ明白な瑕疵を有する場合のみ無効
    2. 附款が無効な場合
      • 本体たる行政行為の重要な要素であれば、全体が無効となる
      • 本体たる行政行為の重要な要素でなければ、附款のみ無効となる
  • 必要最小限であること。

瑕疵ある附款

  • 原則として有効となるが、取消しうる
  • 附款だけの取消を求めることができるか否か
    • 附款と本体が可分:できる
    • 附款と本体が不可分:できない
  • 附款が無効な場合
    • 本体たる行政行為の重要な要素であれば、全体が無効となる
    • 本体たる行政行為の重要な要素でなければ、附款のみ無効となる

種類

  • 条件
    • 行政行為の効果発生を将来発生することが、不確実な事実にかからせる意思表示をいう
    • 条件の成就により効果が発生する「停止条件」と、条件の成就により効果が失効する「解除条件」の2種類がある
  • 期限
    • 行政行為の効果の発生・消滅を、将来発生することが確実な事実にかからせる意思表示をいう
    • 事実の発生により行政効果の効果が発生するような場合を「始期」、効果が終了する場合を「終期」という
    • さらに、期限には、確定期限と不確定期限がある
  • 負担
    • 主たる意思表示に付随して、行政行為の相手方に対し、これに伴う特別の義務を命ずる意思表示をいう
      • 運転免許に付加される眼鏡の着用義務や道路の占有に辺り占有料の納付を命じる場合など
    • 負担については、これに従わない場合でも、本体たる許可の効力がそれにより当然に失効するということは無い
      • 従って、行政庁は、相手方が負担に応じない場合には、負担の履行を強制したり、本体たる許可を取り消すなどの別途の措置を講じる必要がある
  • 取消権の留保(撤回権の保留)
    • 主たる意思表示に付加して、特定の場合に行政行為を撤回する権利を留保する意思表示を付加することをいう
      • 公共物の使用許可にあたり、一定の要件に該当する場合には許可を取り消すというような留保が付される場合など
    • 但し、撤回権の留保は、相手方たる国民の地位を不安定にすることから、合理的な理由も無くむやみに撤回権を行使することは許されないと解されている
  • 法律効果の一部除外
    • 行政行為をするにあたり、法令が一般にその行為に付している効果の一部を発生させないこととする意思表示をいう
      • 公務員に出張を命じつつ旅費は支給しないとするような場合など
    • 法律が認める効果を行政庁の意思で排除するものであるため、法律効果の一部除外を行うためには、法律の根拠が必要であるとされている

行政行為の効力

効力発生時期

 以下の条件が揃った時に効力が発生する。

  1. 行政行為が成立する
  2. 相手方に告知される
  3. 相手方が行政庁の意思表示を了知することが出来る状態になる

種類

  • 拘束力
    • 行政行為の効力が、行政行為の相手方である国民のみならず、行政行為を行った行政主体をも拘束するという効力
  • 公定力
    • ある行政行為が、たとえ違法であっても、その違法が重大かつ明白で、当該処分を当然無効ならしめる場合を除いては、適法に取り消されない限り効力を有するという効力
      • 言い換えると、ある行政行為が、重大かつ明白に違法であるような場合を除いては、正当な権限を有する機関が取り消しをしない限り、相手方や第三者は、その行政行為が有効であることを証人せざるを得ないという効力
  • 不可争力(形式確定力)
    • 行政行為が為されてから一定期間以上を経過すると、もはや行政行為の相手方(国民)側からは、その行政行為の効力を争うことができなくなるという効力
      • ただし、行政側から自発的に職権で取り消すことは許されている
  • 不可変更力(実質的確定力)
    • 行政行為の中でも一定の行為にのみ認められる効力であり、一度行われた行政行為は、もはや行政庁自身も取り消すことが許されないという効力
      • 行政行為の中でも紛争解決を目的とする、異議申立てに対する決定や審査請求に対する裁決などがこれに該当する
  • 自力執行力
    • 行政行為によって命じられた義務を国民が任意に履行しない場合には、法律に基づいて行政庁が自分で強制的に履行を実現できる効力
    • 法律に根拠のある場合にのみ認められ、かつ性質上、義務を課す行政行為(下命・禁止)にのみ認められる

行政事件訴訟法との関係

 行政庁の行政処分に対して相手方より処分の取消しの訴えが提起されても、処分の効力、処分の執行または手続の続行に影響はない(執行不停止の原則、行政事件訴訟法<25条1項>)。

国家賠償法との関係

 行政庁の違法な行政行為により受けた損害につき、国家賠償を求める場合、予めこの行政行為の取り消し訴訟を起こして取り消し判決を得ておかなくても損害賠償を求めることができる。


行政行為の瑕疵等

行政行為の瑕疵

行政行為の不存在違法な行政行為不当な行政行為
無効の行政行為取消しうべき行政行為
基準),猟蠅瓩觜埓行為の
 成立要件を全く欠き、
 外観上も未だ行政行為と
 称するに値するだけの
 形態を備えない場合
行政行為として外部に
 表示されるに至らない場合
行政行為に内在する瑕疵が
重大な法規違反で、かつ
その瑕疵の存在が外観上
明白である場合
瑕疵が無効としなければ
ならないほどではない場合
※公務員に詐欺、強迫等による
 意思の瑕疵がある場合または
 賄賂その他不正行為に
 基づいて行った行政行為など
行政行為につき法定の要件は
充たしているが、その公益目的
における裁量を誤った場合
公定力
争い方そもそも、行政行為が存在
しないので争いもない
取消訴訟による必要はない
⇒期間や形式に拘束されず
 争いうる
取消訴訟によらなければ
ならない
∵公定力を排除するため
⇒期間制限や争い方に
 制限がある
【原則】
取消訴訟では争えず
(不服申立で争う)
【例外】
逸脱・濫用にわたる場合は
取消訴訟で争いうる
(行政事件訴訟法30条)
主張権者-何人にも無効を主張しうる々埓行為の相手方
権限のある行政庁の
 職権による取消
行政行為の相手方
効果-はじめから全く法律効果を
生じない
権限ある行政庁または裁判所
により取り消しされるまで、
有効なものとして扱われる。
取消した場合、効力は遡及し、
初めからなかったものとされる
同左

違法性の継承

 先行する行政行為に瑕疵(違法性)がある場合に、それと関連する後行する行政行為が、その瑕疵(違法性)を承継するのか、という問題が、違法性の承継といわれる。
 違法性の承継については、原則としては、これを否定するのが一般的となる。ただし、例外的に、先行行為と後行行為が連続した一連の手続を構成して、一定の法律効果の発生を意図するような場合には、違法性の承継を認めるべきとされている
 例えば、先行した農地買収計画の違法を理由に、後続する農地買収処分を取消請求する場合などは、両者ともに同じ法律効果を目指す一連の手続と言えるため、違法性の承継を認めることができるとされている。これに対し、例えば、租税の賦課処分とその滞納処分とは、相互に関連した行政行為であるが、租税の賦課処分は租税の納付義務を課す処分であり、滞納処分は既に課せられた義務の履行を強制する処分であるため、両者は別個の効果を目的としており、違法性の承継は認められない。

瑕疵の治癒

 瑕疵の治癒とは、瑕疵ある行政行為が行われた後、事情の変化により欠けていた要件が実質的に充足され、処分を敢えて取り消すには値しないと考えられるに至った場合に、瑕疵は治癒された物としてその行政行為を適法として扱うことをいう。
 例えば、瑕疵ある召集手続によって会議を開催したが、たまたま委員全員が会議に出席して異議なく議事に参加して議決がなされた場合などがある。

無効(違法)行為の転換

 Aという瑕疵ある行政行為があった場合に、これをそのまま見れば違法な行政行為となるが、別の行政行為として見た場合には瑕疵が無く適法な行政行為となる場合に、そのまま別の行政行為として扱ってしまうことをいう。
 例えば、死者に対して農地買収処分がなされ、その通知が相続人に対してなされた場合には、その相続人を名宛人として処分がなされたものとして、その買収処分の効果を維持するような場合などがこれにあたる。


行政行為の撤回

意義

  • 撤回
    • 瑕疵なく成立した行政行為について、その後の事情により、その効力を維持することが妥当でないとして、処分超がその効力を将来に向かって消滅させること
      • 撤回が条文上「取消」と規定されている場合が多いので、注意を要する
  • 取消
    • 行政行為が成立当初から瑕疵を有するために、その行政行為の効力を消滅させることが公益上要求される場合に、そのことを理由に、その効力を遡って消滅させること

原因

  • 撤回
    • 後発的事情
  • 取消
    • 原始的瑕疵

契機

  • 撤回
    • 行政庁の職権
  • 取消
    1. 関係人の申請
    2. 行政庁の職権

行使者

  • 撤回
    1. 原則として原処分を行った行政庁(処分庁)
    2. 原処分を行った行政庁の上級監督行政庁であっても、法令上の代執行剣が認められている場合その他明文の規定のない限り撤回の権限は認められない
    3. 裁判所も撤回の権限は無い
  • 取消
    1. 裁判所
    2. 処分庁
    3. 上級監督行政庁

効果

  • 撤回
    • 原則として将来効
  • 取消
    • 原則として遡及効

その他

  • 撤回
    1. 撤回の撤回は認められない
    2. 公益上の必要があれば、例え法律の規定が無くても撤回しうる
  • 取消
    • 下記の行為については制限を受ける
      1. 不可変更力の生ずる行為
      2. 授益的行政行為(国民に利益を与える行政行為)については、既得の権利または利益の侵害を正当化するだけの公益上の必要がある場合に限り、その目的に必要な限度においてのみ、取消ができる

その他の行政活動

行政立法

 行政機関が、法文のような形で一般的、抽象的な定めをすること

 本来、立法は原則として国会の制定する法律の形成によるべきと憲法で定められているが、々埓に関する立法の量的増加、⇔法内容の専門化・技術化、情勢変化への適応性の必要性などのような事情から、法律では一般的・抽象的な根拠・基準を定めるにとどめ、その具体的・実質的な内容は行政立法に委任する例が増加している。

種類

  1. 法規命令:国民の権利義務に直接変動を及ぼすもの
    1. 執行命令:憲法・法律その他上級の法令の実施に必要な具体的細目や手続的事項を定めるもの
    2. 委任命令:法律その他上級の法令の委任に基づいて、その委任された事項について定めるもの
  2. 行政規則:国民の権利義務に直接影響を及ぼさないもの
    1. 告示:公示を必要とする行政措置の表現形式
    2. 訓令:上級官庁が、その下級官庁またはその職員に対して発する命令
    3. 通達:上級官庁が下級官庁に対して発する命令。これに違反してもその処分は有効。

行政計画

 行政が総合的視野の元で、将来の一定期限内に到達すべき目標を設定し、そのための必要な諸手段を調整する作用。
 国土利用計画法による国土利用計画、土地利用基本計画などがこれに当たる。

行政契約

 行政庁が他の行政庁や私人と対等な立場で締結する契約。
 公営住宅への入居・公営交通機関の利用などがこれに当たる。

行政指導

 行政庁が行政目的を達成するために、助言・指導等の日権力的な手段を行使することにより、国民を行政庁の意図する方向へ指導する事実的行為。
 法的効力は無いが、現実には行政庁が公の権力を背景として、国民の服従を強制しているのが実態であり、法律による行政の原理に反するとの批判もある。

分類

  1. 助成的行政指導
     農業指導・経営指導・保健指導など給付行政の一貫として行われるもの
  2. 調整的行政指導
     建築腫と近隣住民との間の紛争の調整など、関係者の利害の対立を調整し、好ましい秩序を作り出すもの
  3. 規制的行政指導
     違法建築物是正の指導・物価の値上げ抑制の指導など、公益実現に障害となる行為を予防し、抑制するもの

救済

 行政指導により、国民が不利益を被った場合…

  1. 行政指導は法的効力を有しないため、行政不服審査・行政訴訟(取消訴訟)の対象とはなり得ない
  2. それゆえ、国家賠償法により損害賠償はなし得る。

行政の実効性の確保

行政強制 - 行政上の強制執行

代執行

  • 意義
    1. 他人が変わってすることができる作為義務(代替的作為義務)が履行されない場合であり
    2. 他の手段によってその履行確保が困難であり、かつ、その不履行を放置することが公益に反する場合に
    3. 行政庁が自ら義務者が行うべき行為を行い、または第三者にこれを行わせ
    4. その費用を義務者から徴収すること
      • 他人が変わってすることのできない非代替的作為義務や不作為義務は代執行することができない
      • 一般的な根拠法として行政代執行法、個別法として伝染病予防法・土地収用法などがある
  • 具体例
    1. 違法建築物の強制的取り壊し
    2. 収用された土地の明渡の強制

執行罰

  • 意義
    • 不作為義務(ある行為をしてはいけないという義務)または非代替的作為義務(他人が代わっては行うことができない義務)の履行がなされない場合に、一定の期間を定めて、その期間内に義務を履行しないときには一定額の過料を科する旨を通知し、その心理的な圧力により義務の履行を確保する手段のこと
    • 間接強制ともいう
  • 具体例
    • 同様に制裁金を科すのであれば、裁判所の刑事判決による罰金の方が威嚇効果が高いため、現在はほとんど採用されていない
    • 唯一、砂防法36条にのみ残存しているが、実務上はほとんど適用されていないというのが実情となっている

直接強制

  • 意義
    1. 業務城の義務の不履行がある場合に
    2. 義務者の身体または財産に直接に実力を加えて義務が履行されたと同一の状態を実現する行政庁の作用のうち
    3. 代執行を除いたもの
      • 基本的人権の尊重の見地から、法律で特に規定している場合以外にはできない
  • 具体例
    1. 出入国管理令に基づく退去強制のための収容
    2. 性病予防法による受信命令に基づく強制検診

強制徴収

  • 意義
    • 私人が国または地方公共団体に対して負担している金銭債権を履行しない場合に、行政庁が強制手段によってこれを徴収する手続のこと
    • 租税債権以外の債権も対象となるが、多くの場合には、それぞれの法律に「国税滞納処分の例により」という準用規定がおかれ、国税収用法の手続を準用している
  • 具体例
    1. 国税徴収法による滞納処分
    2. 地方税法による地方税滞納処分
      • 滞納処分は、租税対象者の財産を差押えし、その差し押さえた財産を換価し、その換価代金から配当を受けるという一連の手続

行政強制 - 行政上の即時強制

  • 意義
    1. 義務の履行を強制するためではなく
    2. 目前急迫の障害を除く必要上、義務を命じる暇のない場合、またはその性質上義務を命ずることによってその目的を達しがたい場合に
    3. 行政法規の根拠に基づいて、直接に私人の身体や財産に実力を加えて行政目的を達する作用
  • 具体例
    1. 予防接種の強制
    2. 風俗営業法による営業所への立入

行政代執行法

 代執行とは、代替的作為義務(他人が代わって行うことができる作為義務)が履行されない場合に、行政庁が自ら本来義務者が行うべき義務を履行し、または第三者にこれをさせ、その後に、かかった費用を義務者から徴収することをいう。  代執行については、戦後に行政代執行法が制定され、これによって代執行に関する一般法として代執行に関する手続を定めているが、法律により個別に代執行手続が定められている場合には、代執行法の規定よりもそちらが優先する

代執行の要件

  1. 代替的作為義務の不履行 ex. 違法建築物を除去しない
  2. 他の手段によってその履行を確保することが困難であること
  3. その不履行を放置することが著しく公益に反すること

代執行の手続

 以下のような流れで行われる。

  1. 行政庁が義務の履行期限を明示して文章で戒告を通知する
  2. 履行期限までに履行が無い場合には、行政庁は、代執行の時期、代執行の責任者、代執行に要する経費の概算を代執行令書で通知
  3. 代執行令書に記載した代執行の期限までに履行がない場合には、現実に代執行を行う(代執行責任者の証票の携帯義務。要求があれば、何時でも呈示する)
  4. 代執行に要した費用の納付を文書で命じる
  5. 納付がなされない場合には、国税滞納処分と同様に強制徴収する

 なお、1,2の手続は、緊急の場合には例外的に省略することができる

行政罰

 行政法上の義務違反に対して、制裁として科される罰の総称を行政罰という。
 行政罰は、過去の義務違反に対する制裁であるため、将来の義務履行を促す目的の行政上の強制執行とは、その目的が異なる。

 行政罰には、行政上の義務違反に対して、刑法に定める刑罰を科す行政刑罰と、行政庁の秩序を維持するための行政法規違反に過料を科す秩序罰の二つがある。

行政刑罰

 行政刑罰とは、行政上の重大な義務違反に対して、これを犯罪として処罰する場合に刑法に定める刑罰を科す場合をいう。なお、これはあくまでも行政法規に違反する場合に科されるものであって、刑法に違反する場合では無い。
 この刑法に定める刑罰とは、刑が重い順に、死刑・懲役・禁固・罰金・拘留および科料を指す(但し、現行法上は行政刑罰には死刑を定める物はない)。

 行政刑罰の特徴として、法人の代表者などが違反行為を行った場合に、法人そのものにも処罰がなされる「両罰規定」が認められることや、刑法の刑罰を科すことから、刑法総則の適用があり、また刑事訴訟法に定める公判手続により裁判所で科される点が挙げられる。

秩序罰

 秩序罰とは、犯罪とまでは言えないような、行政上の軽微な義務違反に対して科される罰則をいい、届出義務違反に関するものが多い。この秩序罰に該当するのは過料のみとなる。

 秩序罰は、国の法令に基づく場合には、非訟事件手続法によって裁判所により科され、条例や規則に基づく場合には、地方公共団体の長が科す。

その他

 憲法39条において、同じ犯罪によっては同一人は二度処罰されないという、いわゆる二重処罰の禁止の法理を定められているが、この二重処罰の禁止の法理と行政罰の関係が問題となる。
 まず、行政刑罰は義務違反に対して科される制裁であり、一度の義務違反に対して二重の制裁を加えることは、まさに二重処罰の禁止に反するため、行政刑罰を反復して科すことはできない。なお、判例は、秩序罰である過料と行政刑罰とは目的等がことなるため、これを併科しても二重処罰には該当しないとしている(最判昭39.6.5)。
 次に、行政上の強制執行についても問題とされるが、行政上の強制執行は、将来の履行を目的とするものであり、この点で過去の義務違反の制裁である行政罰とは目的が異なるため、行政上の強制執行をした上で、行政罰を科すことも可能であるとされている。