レイノルズ数


粘い空気

 虫の羽と鳥の羽は何か違うと思いませんか?鳥の羽の断面はは真ん中が膨らんだ感じで、飛行機の翼と同じです。一方虫の羽は薄くて一枚の膜のようです。それに飛び方も違います。虫の飛び方は鳥と違い「浮いている」といったほうがぴったりします。(今度蚊を叩き潰す前によく観察してみましょう。)

 実は、虫にとって空気は私たちの感じる空気より随分粘り気があるのです。粘ってるのでその中を「飛ぶ」というよりは「もがく」といったほうが正確なのかもしれません。

 この違いはどこから来るのでしょうか?虫と鳥の決定的な違い---それは大きさです。空気、つまりは水、油なども含めた流体の物体に対する粘りっこさはその物体の大きさに依るのです。つまりRをサラサラ度(粘りの度合いではありません。逆です。)だとすると、それと物体における代表的な長さをLとして、次の関係が成り立つ事が予想されるでしょう。

R ∝ L

物体の代表的な長さとは、たとえば飛行機なら翼弦、車なら車高、円柱ならその直径などです。

サラサラ度Rの正体

 サラサラ度Rは他にはどんな数と関係を持つのでしょうか?まず、物体の速さUに比例します。物体が早く動けば動くほど、流体は物体を拘束しにくくなりそうですね。当然のように思われますが流体そのものの粘性、ここでは動粘性係数νには反比例します。粘り気が増えるほどサラサラではなくなる、この考えは自然でしょう。動粘性係数とは粘性係数μと流体の密度ρの比、ν=μ/ρです。
 以上をまとめると、どうやらRを次のような数とおけそうです。

R = UL/ν

このRはレイノルズ数と言い、流体力学でもっとも大切な数のひとつです。

 レイノルズ数は流体の振る舞いを決定します。つまり流体中の物体の大きさや流体の速度、動粘性係数(流体の種類など)一つ一つが違う値をとっても、レイノルズ数が等しければ流体の流れる様子は変わらないという事です。

 レイノルズ数は大きくなると流体の流れが乱れます。

風洞実験

 風洞実験においてレイノルズ数は大変重要です。風洞模型とは基本的に実機よりも小さく作る必要があります。たとえば1/50の模型を作ったとしましょう。先ほどのレイノルズ数の式に当てはめると、レイノルズ数も1/50となります。どうすればレイノルズ数をそろえる事ができるでしょうか?

 レイノルズ数の式を見ると、変えられそうな変数は流速Uくらいしかありません。(動粘性係数を変えるには流体の種類を変えるか密度を下げる、つまり気圧を下げる必要がありますから。)流速を50倍にすればレイノルズ数を実機と模型で合わせる事ができます。だからと言って流速をあげるのはつらいので、できるだけ模型の大きさは実機に近づけたいところです。


注)以上はレイノルズ数に関するかなり荒っぽい説明です。もっと物理的、数学的な説明も付けたすべきでしょう。~

参考文献

今井功、流体力学:前編、裳華房
牧野光雄、航空力学の基礎、産業図書