最強の盾と最強の矛


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ピロンッ♪ 「ライガーブレード」を入手しました。 「きた・・・ついにきた!!!ゾイド∞をはじめて数ヶ月!!ついに俺も!!!ブレードライガー乗りだ!!!」 CPUの少年バンを倒し、ついにライガーブレードを入手した俺。 知ってる人は知っている。俺の名は司郎だ。 「永遠のシールド乗り」と言われていたこともあったが、そんな通り名は俺には必要ない・・・。 俺より後からゾイド∞を始めたプレイヤー達がどんどんBLに乗り換えていく中、 俺はずっとシールドライガーのままだった・・・。 眠れない夜に、マクラを濡らすこともあった。だがそんな日も今日でおさらばだ!!! と、京介のヤツにも連絡しておこう。 俺はケータイを取り出した。 ピポパピ・・・プルルルル・・・プルルルルル・・・・

「・・・で、ライガーブレードを入手したはいいが、いったいいつまで乗り換えないつもりなんだ?」 京介のやつ、俺がいつまでもBLに乗り換えないのが不満らしい。 「ん〜・・・、いざ乗り換えるって思ったら、なんかシールドライガーが名残惜しくてさ・・・。」 「あんなに乗り換えたがってたくせに、・・・もう一週間は経つだろ?ライガーブレード手に入れてから。」 確かに俺はBL乗りを目指していた、そのための踏み台でしかなかったはずのSLが、いつのまにか俺の中でこんなにも大きな存在になっていたとは。 正直な話、俺自身もびっくりしている。 「別にさ、シールド乗りでも俺はいい思うんだ。司郎はあんまり自覚してないみたいだけど、強いぜ?お前のシールドライガー。」 「京介にそう言われると、なんか照れるな・・・、ハハハ。」 自販機のある休憩所でペプシコーラを飲む俺と京介。 「・・・もう一週間以上経ったんだな、京介があのアグレスって人と戦ってから。」 俺は話をきりだすと、京介もコクリと頷いた。 「あの戦いから、俺も腕を磨いてきたつもりだ。でも・・・今でも勝てる気がしないよ。」 「気持ちで負けてたら勝てる試合も勝てない、って京介が言ってた事だろ?お前がそんなんでどうするんだよ。」 「ハハ、そうだったな。俺がフューラーから教わった一番大事なことだ。」 「それはそうと、コマンドウルフ対策は出来たのかよ?」 CWは京介にとっての天敵だ、京介はこのゲーセンでも強い方だがCWにはなぜか勝てないという妙な弱点を持っていた。 以前、黒いGTOに乗るアグレスという男と激しい戦いを繰り広げ、そして負けた。 それから練習に練習を重ね、以前よりもより強く成長した京介だ。いまだにCWが苦手ってことはないはずだ。 「・・・・」 「きょ、京介・・・?」 「いろいろ試してはいるんだけど・・・どうやっても・・・勝てないんだ・・・。」 がっくりと肩を落とす京介。その姿からはBFで強豪達と渡り合っている男とは思えないほどの哀愁を感じる。

ふと、ゾイド∞の台に目を向けると、ベンダーの前をウロウロしてる女の子が目に入った。 「なぁ京介、あの子ゾイド始めたいのかな?」 「ん?あぁ、今カード作ってるみたいだな。気になるのか?」 「いや、そんなんじゃないけどさ。ただ女の子のプレイヤーなんて珍しいな〜って・・・。」 「そんなに気になるなら、いろいろ教えてあげればいいじゃないか。」 「そんなんじゃないって・・・。」 そう否定する俺だけど、まったく気にならないと言えばそれは嘘になる。 京介もそれを分かっていてこんなこと言ってるんだろう。 「見に行ってみよう。」 俺は京介を誘ってゾイド∞の台へ向かった。京介のやつがニヤニヤしてるのが気になるが・・・。 「はいはい。」 そう言って、空き缶をゴミ箱へ捨てる京介。 ゾイド∞の台の前に行くと、彼女のプレイを後ろから見ていた高校生くらいの男が目に入った。こういう場合、あまりいい予感はしない。 ゲーム画面を見ると、彼女はライガーゼロで戦っていた。HBもできず、攻撃もデタラメ、システムダウン当たり前という典型的な初心者だ。 俺も最初はこんなだったよなぁ・・・などと考えてると、彼女のゲーム画面に「新たなる挑戦者が現れました」の文字が。 彼女の隣の席に、さっきの高校生くらいの男が座っていた。 何が起きたのか分からず、あたふたしている彼女。お互いの機体が表示された時、俺はショックを受けた。 「シールド・・・ライガーかよ・・・。」 よりによってシールドライガー、俺の機体と同じ。 ステージの遺跡が表示され、1ラウンド目がスタートした。 ぎこちない動きでSLに向かっていくLZ。 SLも展開ミサイルをばら撒きながらLZとの距離を縮めていく。LZは数発被弾してしまうが、かまわず距離をつめた。 だがSLは距離が近づいたのを確認すると、すぐにEシールドを展開し、そのままシールドアタックを仕掛けてきた。 それも一度や二度ではない。あきらかに狙ってシールドアタックをくりかえしていた。 確かにEシールドを突破できる武装がない相手には有効な戦術だが、俺はこういう戦い方は好きじゃない。 さすがの京介も、この戦い方を見てニコニコしてはいなかった。 初心者のLZが対抗できるはずもなく、あっという間に彼女のLZは負けてしまった。 ションボリして席を立つ彼女。 「あ・・・待って!」 「え・・・はい、なんでしょう・・・。」 なんで俺、呼び止めたりなんかしてるんだろ。俺自身引っ込みがつかなくなってしまった・・・。 「もし時間あるなら、少し見ていきなよ。」 「え・・・?あ、はい。」 彼女が少し困っているように見えた気がしたが、俺はかまわず席に座り乱入した。 同じSL乗りとして、俺はこのSL使いのした事が許せなかった。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 「これで終わりだ!」 SLの背中から2連装20mmビーム砲を発射し、俺は対戦相手のSLを仕留めた。 バトルに負けた高校生くらいの男は、何も言わずにゲーセンを出て行った。 俺はCPU戦を初戦で負け、彼女に席を譲った。他に並んでいる人もいなかったし、初心者が練習するには丁度いいと思った。

305 名前:最強の盾と最強の矛[sage] 投稿日:2005/03/26(土) 12:31:42 「あの、お強いんですね。」 席に座った彼女が話しかけてくる。 「練習すればキミもきっと強くなれるよ。それより・・・」 「・・・はい?」 「その・・・シールドライガーのこと、嫌いにならないで欲しいんだ。いきなりあんな目にあっちゃったからさ、  でもあんなことするSL使いって一部のヤツだけだから。」 我ながら何を言っているんだろうか、女の子と話をするのが苦手というわけではないんだけど・・・。 「嫌いだなんて、そんなことないです。最初から負ける覚悟は出来ていましたから。」 そうニッコリ笑う彼女。大人しそうな雰囲気だが、心は強いようだ。 「そっか、よかった。」 俺は彼女の笑顔を見て、安心した。 「あの、もしよかったらいろいろ教えてくれませんか?操作とか、えっと・・・。」 「もちろんオッケーだよ。俺は司郎、向こうにいるのは京介。」 「京介です、よろしく。」 「ありがとう、私 こよりっていいます。よろしく。」 自己紹介が終わったところで、京介が肩を叩いて小声で話しかけてきた。 「がんばれよ!」 「お、おいっ」 慌てる俺を無視して京介は話を進めていく。 「こよりさん、僕は用事があってもう帰らなきゃならないんだ。また今度お会いしましょう。」 「はい、京介さん。また今度お願いしますね。」 そういって手をふりながら、ゲーセンを後にする京介。 「と、とりあえず・・・、ベンダーの使い方からいこうか。」 「ベンダー・・・?」 「そう、こよりさんがカードを買ったこの機械のことなんだけど・・・ここにカードを入れると・・・。」 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 「ここで右ステップして、格闘!!」 「それっ!」 LZの右格闘がザルカの乗るDSTにヒットした。HPが0になり、DSTが動かなくなった。 「やったぁー!!」「やったぁー!!」 二人で一緒につい叫んでしまった。周りの視線が気になるけど・・・怖くて見れない。 こよりさんも顔が赤くなっちゃっている。 「お、おめでとう。これでストーリー1をクリアだ。」 「ありがとう、司郎さんのおかげです。」 排出されたカードを受け取り、席を立つ こよりさん。すごくうれしそうだ。

「司郎さん、今日はそろそろ帰ります。どうもありがとうございました。とっても楽しかったです。」 そう言ってお辞儀する こよりさん。 「いや、俺も楽しかったよ。こちらこそありがとう。そこまで送ってくよ。」 二人でゲーセンを後にする。 「それにしても驚いたよ、まだ始めてから一時間くらいなのに。もうデススティンガーを倒しちゃうなんてさ。  俺なんかストーリー1をクリアするのに一週間はかかっちゃったのになぁ・・・。」 「ふふっ、司郎さんのアドバイスが上手なんですよ。」 「いや、こよりさんの飲み込みが早いからだよ。」 そんな話をしながら道を歩いていた。 「ここまででいいです、すぐ近くですから。」 「あぁ、わかった。それじゃ。」 俺はそう言ってゲーセンに戻ろうとした。 「あの、次の土曜日、お暇ですか?」 彼女の言葉に俺は驚いて振り返った。 「あ・・・うん、特に予定ないけど・・・。」 「もしよかったら、またゾイド教えてください!」 「ああ、俺でよければ。」 「ありがとう、それじゃあ司郎さん。またね!」 こよりさんはそう言うと、走り去っていった。 俺は走り去る こよりさんの後姿が見えなくなるまで、ずっと見送っていた。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 土曜日になった。京介も誘ったけど、用事があって午後にならないと来れないらしい。 「京介の車で来れれば楽なんだけどな〜・・・。」 仕方なく、俺は徒歩でゲームセンターへと向かった。 横断歩道を渡ろうとしたとき、信号が赤になった。 目の前を様々な車が走っていく。 「司郎さんっ!」 後ろから急に呼ばれ、俺は驚いて振り返る。そこには こよりさんの姿があった。 「こよりさん!こんなところで会うなんて、すごい偶然。」 こよりさんはケータイ電話を取り出した。時間を確認しているようだ。 「あはは、司郎さん。まだ約束の時間より20分も早いですよ?」 「はは、こよりさんこそ。ここからだとゲーセンまで5分もかからないのに。」 そう俺が言うと、こよりさんは少し困ったように笑い出した。俺も一緒に笑った。

信号が青に変わった。 「それじゃ、いこっか。」 「はいっ!」 俺と こよりさんは、二人でゲームセンターへと向かった。 周りの人から見たら恋人同士のように見えるだろうか、俺はそんなくだらないことを考えていた。 ゾイド∞の前に到着すると、CPU戦を進めている人で席は埋まっていた。 「少し並んで待ってて、前の人が終わったらストーリーの2を始めよう。」 「うんっ!」 こよりさんは気合十分のようだ。気のせいか目が燃えている。 程なくして前のプレイヤーが席を立ち順番がまわってきた。カードとコインを入れ、ゲームを始める こよりさん。 「基本的な動きはこの前教えたのと一緒、CPUがちょっと強くなってるくらいだから。」 「わかりました!」 ゾイド∞をはじめてまだ日も浅いはずなのに、危なげなくCPUを撃破していく。 ・・・俺、ほとんどアドバイスしてないよ・・・。 チャクトの乗るLZPHもストレートで倒し、あっという間にストーリー2をクリアしてしまった。 末恐ろしいなぁ・・・こよりさん・・・。 カードを受け取り、うれしそうに席を立つ こよりさん。 「クリアおめでとう、こよりさん。ずいぶん強くなってるね。」 「ありがとうございます、司郎さんのおかげですよ。」 「俺ほとんどアドバイスしてないし、こよりさんの実力じゃないかな?」 「いいえ、確かに今日はアドバイス少なかったですけど、司郎さんのおかげですよ。」 「アドバイスしてないのに・・・俺のおかげ?」 「そうですよ。あ、司郎さんお腹すきません?」 時計を見るともう12時を過ぎていた。ゲームに夢中で気づかなかったみたいだ。 「はは、気づかなかったけどお腹すいたね。」 「私もお腹ペコペコ。近くにあるカレーのおいしいお店、そこ行きませんか?あ、司郎さん辛いの大丈夫ですか?」 「こよりさんもカレー好きなんだ、俺も大好きだよ。辛いのも、もちろん大丈夫!」 「よかったぁ、それじゃ行きましょ!司郎さん!」 強引に手を引っ張っていく こよりさん。 「ちょ、ちょっと待って。そんなに急がなくても・・・。」 「いーえ、ダメです。この時間だと混んでるかもしれないですから。急ぎましょ!!」 俺には こよりさんに抵抗する力はなかった・・・。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 こよりさんオススメのお店に着いた。お店の中に入るとカレーのいい香りが漂っている。 お店の雰囲気もよく、これは期待できそうだ。

幸いなことに席は空いていた。 案内された席に座る俺と こよりさん。 メニューを手に取り見てみると、様々な種類のカレーが並んでいる。 「司郎さんは何にしますか?」 「そうだな〜、いろいろ種類あるけど、ビーフカレーにしようかな。こよりさんはもう決まってるの?」 「え〜っと、私は・・・私もビーフカレーにしようかな。」 「ご注文はお決まりでしょうか?」 店員さんが丁度いいタイミングで来てくれた。 「はい、このビーフカレーを二つ、お願いしま〜す。」 こよりさんはメニューを指差しながら注文した。 「かしこまりました。」 注文を受けると、店員さんはお店の奥へと向かっていった。 「ねぇ、こよりさん。」 「はい、なんでしょうか?」 「さっき話していたことなんだけど・・・、アドバイスしてないのに俺のおかげで強くなってるってどういうこと?」 話が途中で、ずっと気になっていたことだ。 「えっと、司郎さんならここでこう動けって言うだろうな、そう思ったように動いてたんですよ。」 こよりさんはニコニコ笑っている。けど・・・これはすごいことじゃないだろうか。 こういうのは京介のほうが詳しいとは思うが、こよりさんにはきっと、 どう動けばそれが最善の動きなのかが分かっている。そう思えた。 「ね、司郎さんは夢ってある?」 「夢・・・か。うん、あるよ。」 「それってどんな夢?聞かせてよ!」 「いや・・・夢っていうほどのことでもないよ。ゾイド∞で目標にしてるヤツがいるんだ。今の俺だと全然歯が立たないんだけど、  そいつにいつか必ず勝つ。勝って俺のことを認めさせる!」 そう俺が言うと、こよりさんはクスクスと笑い出だした。 「そ、そんなに変だった・・・?」 「ううん、変じゃないけど・・・その目標にしてる人って京介さんのことでしょ?」 ・・・大正解。 「ま、まぁね・・・。そんなところだよ。」 注文したカレーをかかえた店員さんがこちらへ歩いてきた。 「おまたせいたしました。注文のビーフカレーになります。」 目の前にビーフカレーが置かれた。予想通り・・・いや予想以上においしそうだ。 「それじゃ、いただきまーす。」 「いただきまーす。」

俺はスプーンを手に取り、そしてビーフカレーを口へと運んだ。 「・・・おいしい。辛いけど辛すぎない、丁度いい辛さだね。」 「でしょでしょ?おいしいよねー。」 おいしそうにカレーを食べる こよりさん。・・・俺は手と口が止まらなくなってしまっていた。 「私もあるんですよ、夢。」 カレーを食べながらポツリと呟いた こよりさん。 「それなら、こよりさんの夢も教えてよ。ぜひ聞きたいな。」 「あはは、私もね、目標にしてる人がいて・・・少しでもその人に追いつくこと、かな。」 「ふぅん・・・、そういえば こよりさんって、どうしてゾイド∞始めたの?」 「やっぱり変でしょうか?女の子でゾイド∞やってるのって。」 「変じゃないけど、珍しいかな。俺が知ってる女の子のプレイヤーって こよりさんのほかに一人しか、いないんだ。」 「そうですかぁ。私がゾイド∞を始めたきっかけは、このライガーゼロなんですよ。」 そう言って、カードを取り出した こよりさん。 「ライガーゼロが・・・きっかけ?」 「はい、私が小さい頃に飼ってた犬にそっくりなんです。真っ白くて・・・大きくて。たまたま他の人がプレイしてたのを見て・・・。」 「そっか、それで・・・。ライガーゼロそっくりな犬ってカッコいいね。名前は?」 「ポソ吉です。」 「え?」 「ポソ吉です。」 「そ、そう・・・。」 「え・・・どうかしました?」 「な、なんでもないよ。」 白くて大きい、LZ似のカッコイイ犬を想像していた俺は、正直な話、ポソ吉という名前を認めたくなかった・・・。 程なくして、俺も こよりさんもカレーを食べ終えていた。 「ごちそうさまでした。」 「ごちそうさまでした。」 レジでお金を払い、俺と こよりさんはお店の外へ出た。 「司郎さん、私そろそろ帰ります。」 「そっか、わかった。おいしいカレーのお店教えてくれてありがとう。」 「どういたしまして。あ、そうそう・・・ケータイの番号教えてくれませんか?」 「あ、ああ。えっと090の・・・。」 「・・・はい、オッケーです。後で連絡入れます。それじゃまた!」 「うん、また!」 俺は手を振り、こよりさんを見送った。俺は京介が待っているであろうゲーセンへと向かった。

ゲーセンに到着し自販機のある休憩所へ向かうと、京介が待っていた。 「悪いな、京介。待たせちまったか。」 「ついさっき来たばっかりさ。ペプシ飲んでたトコだよ。ところでどこか行ってたのか?こよりさんは一緒じゃないのか?」 俺はさっきまで こよりさんと一緒だったこと、昼食を食べた後に こよりさんは帰った事を京介に話した。 「そうか、二人で仲良くカレーを食べて帰ってきたのか・・・楽しそうじゃん。」 「あぁ、ホント楽しかったよ。俺、こよりさんのこと本気で好きみたいだ。」 俺は自分の気持ちを正直に話した。 「そういうのうらやましいよ。応援してるからさ、がんばれよ。司郎!」 「それはそれとして・・・今度こそ京介のフューラーに勝たせてもらうぞ。勝負だ京介!」 俺は話を変えてごまかした。その後、3回戦ったのだけど・・・今日も一勝すらできなかった。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 俺達はそれからも こよりさんと何度も会い、そして一緒に遊んだ。 ストーリーモードはあっという間にクリアしてしまったので、俺や京介、そして他のプレイヤーたちと対戦で盛り上がった。 はじめて会ったときから考えると こよりさんは本当に上手になっていた。 こよりさんのLZはCWを装備していない、背中に武器を積んでいないのだ。 もちろん俺はCWをつけることを薦めた、でもどうしても見た目が気になるらしく、ずっと装備しないまま戦っている。 そのせいか、このゲーセンでも有名なプレイヤーの一人になっていた。 ・・・そんな彼女に、俺の想いを伝えることの出来ないまま、もう数週間が経過していた。 「ハァ・・・、告白って難しいよな。でも、今のままじゃまずいよな・・・。」 こよりさんと会う約束をするたびに、俺は告白することを考えていた。 いつも告白できずにサヨナラして、そして後悔に悩む。そんな日が続いていた。 ・・・今日は こよりさんも京介もゲーセンには来れないと言っていたので、俺もゲーセンには行かないつもりだった。 だけど時間が空いてしまい、ついフラリとゲーセンに来てしまった。 何人かがゾイド∞をプレイしているのが見えた。その中に見慣れた二人の姿を見つけた。 「京介・・・?プレイしてるのは こよりさんか。今日は来ないはずじゃ・・・。」 近づいていくと こよりさんのプレイしている画面が見えてきた。画面にはオレンジ色のCASに換装したLZが映し出されていた。 「こよりさんが・・・シュナイダー?」 そう言った俺の声に京介が気づいた。 「司郎!なんでここに。」 「・・・それはこっちのセリフだ!京介、どういうことだよこれ。二人とも今日は来ないんじゃなかったのか?」 俺と京介の間に険悪なムードが漂っている。 俺が来たことに少し遅れて気づいた こよりさんが俺と京介の間に入ってきた。 「司郎さん、これは・・・。」 「こよりさんはだまっててくれ。京介、別にお前が こよりさんと二人で会ってても俺はかまわない。  でも俺を騙してまで・・・どうことだよ?」

「司郎、それは誤解だ。」 「俺に何の相談もなくシュナイダーに乗り換えて、二人で楽しそうに遊んでるってことは・・・そういうことなんだろ?」 俺はそう言い残して、走ってゲーセンを後にした。まるで逃げるように・・・。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 「まいったな、司郎のヤツ、完璧に誤解してるよ。」 「はい・・・私のせいです、ごめんなさい京介さん。」 そう言って頭を下げる こよりさん。 「いや、こよりさんが謝ることないよ。それにちゃんと話せば司郎も分かってくれるって!」 「でも、私が変なことお願いしたからこんなことになっちゃって・・・。」 「気にしないで、こよりさん。司郎のことは後でなんとかするよ。それより練習だよ練習、司郎は強敵だからね。」 「わかりました、お願いします。」 「ブレードアタックって特殊な技だから難しいと思う。でもこれをマスターできないようだと、  司郎には絶対勝てない。がんばってね。」 「は、はい。」 俺は こよりさんに、俺が持っているSCの情報や戦術のすべてを教えた。 ・・・SCで強くなるのはとても難しいことも。 実際、SCに乗り換えたばかりの頃はランダム戦のCPUにも勝てなかった。 LZでの動きが鋭く、相手に接近するのが得意だった こよりさんだけど、まだSCは扱いこなせていない。 だけど こよりさんは諦めることなく、練習を重ねていった。 「こよりさん、今のプレイが終わったら少し休憩しよう。もうプレイしはじめて一時間近いよ。」 俺は こよりさんに休憩するように促した。 「もう一時間ですか・・・こんな調子じゃ・・・。」 こよりさんはSCの扱いに苦戦し、焦っていた。 「焦る気持ちは分かるけど、少し休むんだ。少し気持ちを落ち着けたほうがいい。」 「・・・わかりました。」 排出されたカードを受け取り、渋々休憩所へ向かう こよりさん。 俺は自販機でペプシコーラを二本買って、こよりさんに一本渡した。 「ありがとうございます、京介さん。」 俺はペプシを飲みながら話を始めた。 「ねぇ、こよりさん。ブレードライガーに乗り換えるっていう選択肢もあるよ。」 「ブレード・・・ライガーですか。」 「ブレードライガーなら射撃武器も豊富にあるし、シールドもある。SCよりも扱いやすいはずだよ。」 「いいえ、だめです!シュナイダーじゃないとダメなんです、ポソ吉と・・・司郎さんと一緒に戦ってきた  ライガーゼロじゃないと・・・意味がないんです。」 「そっか・・・。そうだったね。」 俺はペプシを飲んだ。こよりさんはSCを乗りこなそうとしている。その決意は固かった。 「京介さん、シュナイダーを選んだのは・・・間違いだったでしょうか?今のままじゃ、とても司郎さんと戦えない・・・。」 こよりさんの瞳には涙が溜まっていた。きっとSCを乗りこなせない自分が悔しいんだろう。 「間違ってなんかいないよ、こよりさんと一緒に戦い続けてきたライガーゼロなんだ。  シュナイダーのこと、そして こよりさん自身を信じて戦うんだ。きっとゼロは答えてくれるから。」 顔を隠して、涙を拭いている こよりさん。俺は話を続けた。

「そしてゾイド∞を楽しむんだ。こよりさんは司郎と戦うのが楽しみなんだよね?」 「そうですね・・・そうですよね!」 こよりさんに笑顔が戻った。 この後 こよりさんは再び練習を開始した。 さっきまで落ち込んでいたとは思えないくらい、上手にSCを乗りこなしはじめた。 CPU戦程度ではほとんどダメージを食らうことなく撃破できるようになっていた。 そういえば基本的な動作は司郎が教えていたことを思い出した。 お世辞抜きで こよりさんの動きは上手だ。司郎が一生懸命教えた結果だろう。 「油断してると負けるぞ・・・司郎。」 司郎に聞こえるはずもないが、俺はそう呟いた・・・。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 一週間程して、司郎からゾイド∞の決闘を申し込む電話がかかってきた。 京介は、こよりさんに電話をして知らせる。 こよりさんが見守る・・・。 「勝負だ京介!」 「司郎、・・・本気なんだな。」 俺は挑まれた勝負を逃げるつもりはない。司郎の表情も真剣だ。断る理由は見つからなかった。 「わかった・・・。司郎、俺も本気でやる。手加減はいっさいしない。」 「上等だ京介。そうじゃないと意味がない。」 俺は席に座りカードとコインを入れ、対戦の準備をした。

新しい挑戦者が現れました。

と、画面に表示され、お互いの機体が表示された。 一番大好きなBLに乗ることを諦めてまでSLにこだわった男のSLだ、司郎の使うSLは並みのSLじゃない。 ・・・正直、司郎と俺は腕の差なんてほとんどない。 それでも俺が勝ち続けてこれたのは、司郎が俺には勝てないと思い込んでいたからだ。 だけど今の司郎は勝ちに来ている。俺に勝つつもりできている。司郎の気迫がビリビリと伝わってくる。 それでも、俺は負けるわけにはいかない。腕が同じなら気力で勝つ。 ステージはシドニアが表示された。 「フューラー、この勝負は絶対に負けられない。頼んだぞ。」 バスタークローを振り回し、咆哮をあげるフューラーに俺はそう呟いた。 バトルが開始された。開始直後は互いにロック範囲には入っていない。待つか攻めるかの二択しかない。 司郎のSLがステップを織り交ぜながらまっすぐこちらに向かってきていた。 俺はBFをスタート位置の台から降ろすと、スロットをきりかえてSLに向けて全方位ミサイルを発射した。 司郎のSLはEシールドを展開しミサイルをすべて防いだ。俺はミサイルの爆風に二連ショックカノンを隠して発射し、命中させた。 「さすが京介、やるな!」 シールドを解除し、展開ミサイルをばら撒く司郎SL。俺はダッシュで回避し、二連ショックカノンのリロード完了後にHBした。 司郎のSLは二連装20mmビーム砲を発射してきていた。急いでステップを入力して回避したが、 さらにその後ニ連ショックカノンが飛んできていた。ステップの着地地点に置かれていたためにBFに一発命中してしまった。 「くっ・・・司郎こそ、やるじゃないか!」

シールドを展開しながら突っ込んでくるSL。 全方位ミサイルのリロードは完了しているが、相手は物理強化Eシールドだ。効果は期待できないだろう。 ・・・BFでSLを相手にしたとき、遠距離で戦うと大抵はBFが不利になる。 特に司郎のSLは手数が多い。武装は展開ミサイル、二連ショックカノン、二連装20mmビーム砲。どれもリロードが速く隙がほとんどない。 司郎はOPにアンビエントを装備しているため、一撃の威力も上昇している。BFにとってはどの攻撃を受けても致命傷になってしまう。 かといって近接戦闘も容易なわけではない。近接戦闘をしかけてもEシールドに阻まれてしまったら勝つのは難しい。 本当に司郎は強い、強くなった。こんな形で本気のバトルをしているが、俺はうれしかった。 Eシールドを展開し正面から接近してくるSLに対して、俺はスロットを切り替え、 185mmビームキャノンを発射、少し遅らせて二連ショックカノンも発射した。 どれもEシールドでは防げない攻撃だ。 「なめるな、これくらい避けれる!」 ブーストダッシュの勢いのままステップで回避するSL。 「甘いぞ司郎!」 俺はSLのステップ着地地点に向けて格闘を放った。BFのバスタークローがシールドライガーをつらぬいた。 俺はすぐに特殊コマンドの拡散荷電粒子砲で追い討ちした。 「フューラーの格闘は前に長い、シールドも貫通するんだったな。」 そう言いながらスティックを勢いよく回す司郎。SLはすぐに起き上がった。 俺はブーストとダッシュを繰り返し、SLとの距離をとった。 戦況を確認すると、俺は残りHP9200程、司郎は7000程だった。時間は20秒経過していた。 展開ミサイルを撒きながら追いかけてくる司郎のSL。 俺はステップ旋回を使いながらSLをロック範囲に入れ、全方位ミサイルを発射した。 すぐにシールドを展開されたため、すべて防がれてしまい、 全方位ミサイルとほぼ同時に発射した二連ショックカノンもあっさりとステップで回避されてしまう。 「もらった!」 司郎はそう叫ぶと、シールドアタックをしかけてきた。 BFの側面からのアタックだったため、BFは反撃することも避けることもできず吹き飛ばされてしまった。 「くっ!」 スティックを回してすぐに起き上がろうとしたが、SLの展開ミサイルを混ぜた追い討ちダメージは1000を超えていた。 追い討ち後、BFの後ろへ回り込むSL。 俺は起き上がったBFをすぐにHBさせた。 司郎はHBに気づくと展開ミサイルを発射してきた。BFがステップで回避した先へ向けて、再びシールドアタックを仕掛けてくるSL。 「距離が近い・・・格闘での迎撃が間に合わない。」 そう判断した俺はスティック二本を後ろに倒し、BFをバックステップさせた。 「それで避けたつもりか!!」 そう叫んだ司郎はEシールドを展開したままSLをHBさせ、ステップさせた。

俺はすぐにスティックを内側に倒し、BFをガード体制にした。・・・少しでもダメージを軽減するために。 SLはシールドを展開したままステップ格闘を放ってきた。ガード体制のBFも、Eシールドで吹き飛ばされてしまった。 ダウンしたBFに容赦なく追い討ちするSL。この時点でBFのダメージはSLのダメージを上回った。 「どうした京介?お前の力はそんなものじゃないだろう!」 「・・・司郎、お前は本当に強くなった。もう俺より上手になっているのかもしれない。」 「えっ・・・!?」 司郎は俺の言葉に驚いていたが、俺は正直にそう思っていた。 「だけどな、俺もフューラーもプライドがある!!そう簡単には負けられない!!!」 フューラーがゆっくりと起き上がる。残り時間はあと26秒。 「行くぞフュラー!!これからが本番だ!!!」 「来い京介!!今度こそ俺はお前に勝ってみせる!!!」 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 BFにブーストとステップを繰り返させ、俺はSLとの距離をとった。 「背中が丸見えだ、京介!!」 距離を離そうとするBFに向けて司郎は展開ミサイルとニ連ショックカノンを放った。 「俺のフューラーにはそう簡単に当たらない!!」 俺はフューラーを右へ左へステップさせ、展開ミサイル、二連ショックカノン共に回避した。 「そんな馬鹿な!!展開ミサイルはともかく、ショックカノンはステップの着地を狙っているんだぞ!!」 攻撃が当たらなくて焦りはじめた司郎。 「これが京介の[見えない翼]か・・・、本当にフューラーが翼を持ってるみたいだ。  だがHPでは俺が勝っている!逃げてばかりならこのまま俺の勝ちだ!!」 「当然逃げるつもりはないさ!」 そう言って俺はBFをHBさせた。少しの間、SLとBFはお互い攻撃することなく睨みあった。 そのとき、俺の隣でプレイを見ていた こよりさんが話しかけてきた。 「京介さん、お願いが・・・。」 「・・・わかった。」 「はい、本当にごめんなさい。」 時間にして3秒程経っただろうか、司郎のSLが先に動いた。

「時間もないし、シールドアタックが決まれば俺の勝ちだ!!!」 シールドを展開しているSLにかまわず突っ込むBF。 衝突の瞬間、BFが荷電粒子シールド展開!! SLのシールドよりも範囲が大きく、SLが吹っ飛ぶ。 「ここで使ってきたか、追い討ち荷電で俺の負け。やっぱつえーな京介・・・あれ、追い討ちがこない?」 タイムアップでSLが勝利。 「おい!追い討ち荷電で俺が負けていたのに、なぜ撃たなかったんだ!」 「・・・・」 2ラウンド目スタート 京介は、ほとんど動かず司郎が勝利。 「ふざけるな!真剣勝負だといったはずだ!!」 カードを取り静かに席を立つ京介に、司郎は怒鳴った。 「落ち着けよ、お前が戦うべき相手は俺じゃない。」 「何?」 席を見ると、真剣な表情の こよりさんがカードを入れて座っていた。 「いったいどういうことだよ?」 こよりさんが問答無用で乱入して、シュナイダーが表示される。ステージはレムス基地。 「司郎、彼女の機体をよく見ろ!」 「???」 「こよりさんはお前が好きだから、そしてお前の乗るSLが好きだから!!!  だからLZシリーズで唯一のシールド機体のシュナイダーを選んだんだ!!!  お前に黙って俺と二人でいたのは、司郎、お前を驚かせたかったのと、お前と全力で戦いたかったからだ!!!」 「そ、そうだったのか、すまない京介、俺は・・・」 こよりさんも司郎も動かず、1ラウンド目ドローで終了。 「司郎さん、私と・・・戦ってくれますか?」ニッコリ笑顔で話しかけてきたこよりさんの笑顔はまぶしかった。 「もちろんよろこんで。いろいろごめんね。」 2ラウンド目が始まった。

京介は自販機のある休憩所へいき、ペプシを飲みながら、 「よかったな。司郎も、こよりさんも。」 ふと、ポケットから携帯電話取り出し、あすかに電話をした。 プルルルル・・・・プルルルルルル・・・・プルルル・・・ピッ。 「もしもし」 「もしもし。あ、京介君?」 「仕事終わった?」 「うん」 「今日はもう終わり?」 「うん・・・どうしたの?」 「なんか寂しくなっちゃって・・・。」 「・・・へんなの。それよか、今ゲームセンターに向かってるんだけど、なんでも高速機が集まるゲームセンター  らしいの。負けないように頑張らなくちゃね。まっ、京介君は負けることなんか無いんでしょうけど!」 「いやぁ、負ける時もあるさ」 「え〜。京介君がまけるところなんて想像できないよ。」 「ついさっき司郎に負けたよ。」 「ウェ!?まじですか!?」 「あぁ、女神さまに負けてくださいって言われちゃってね。」 「・・・?なにそれ。」