JOLT氏『ゾイド∞2on2 第6話 華麗なる夕食』


 夕日の一欠けらが山の稜線に落ちようとする中、男女6人はゲームセンター 『Zircon』の駐車場を歩いていた。  止めておいたクルマの側に近づいた時、ルーシアが口を開く。 「ア、オ家に帰る前にオ買い物行かないト」 「……そうね、人数増えたから材料足りないかも」 「ああ、それなら俺の車に乗せればいい。コペンでは乗らないだろう?」 「HAHAHA、問題ないですネ!ボクたちのMy CarでOKですネ!」  陽気な声に振り向いてみれば、アレックスが自慢げにニコニコと、愛車のド アを叩いている。 「へえ、ファンカーゴなんだ。いい車に乗ってるね」 「あら、嬉しいですわ♪」  シロウの声に、ルミが満面の笑みを浮かべる。 「あ、ルミさんのセレクトなんだ。それでオレンジなんだね」 「はい♪わたくしが一番好きな色なんですのよ♪」 「OH!クロウ君のはワゴンRの初期型ですネ!BlackとはCool!」 「……これ、後ろのドア、左しかないんですね」 「ああ、ルカさん。それ、欠陥車だからね」 「おい、いい加減そのネタは止めろ。初期型だけはそういう仕様なだけだ」 「アハハ、個性的でいいと思うですヨ」 「そう言えば、シルバーってことは、コペンはルーシアさんの趣味?」 「そうなのよねー。このコったら、これ以外イヤだって言うのよ♪」 「……それで、2時間ダダこねて、父が陥落したんですよ」 「あうあう、言わないデくださいヨ!」  ジタバタ暴れるルーシアに、一同は笑いに包まれる。 「さて♪買出し行って、我が家へご案内ですわ♪」  それぞれのクルマへ向かおうとする中、シロウがルカを呼び止める。 「ゴメン。クロウのRに乗ってくれないかな?」 「えっ?」

「おいおい、どう言う吹き回しだ?」 「ルカさんたちの家を、オレたちは知らないでしょ?ナビ役してもらおうと 思ってね」 「どうも怪しい。本音を言え」 「バレた?本当はね……」  チラッとルカの方を見るシロウに、ルカは思わず頬を染めてしまう。 「オレが、コペンに乗ってみたいだけなんだよね」  あっけらかんと言い放つシロウに、クロウは苦笑する。 「どうせ、そんな事だと思っていたがな。まあ、よかろう」  クロウは愛車のナビドアを開け、ニヤリと笑うと恭しくお辞儀をする。 「では美しいお方よ、エスコートさせていただきましょう」  その言葉に、ルカは首まで真っ赤になりながら俯く。  おずおずとシートに納まったルカを確認すると、クロウも乗り込む。 「さて、すまないが道案内を頼む」 「……は、はい」  夫婦のファンカーゴに続いて動き出すワゴンRを見ながら、シロウはコペン の助手席に滑り込んだ。 「シロゥさん、キューピッドですネ?」 「やっぱり普通は分かるよねぇ?クロウの鈍さには参るよ」 「ルカ姉さんの態度にモ、問題ありソウですけどネ」  二人は流れ出した空に向かって笑う。 「でもまあ、それだけじゃないんだけどね」 「エ?」 「本当にコペンに乗ってみたかったんだよね。好きな車だし」 「早く言っテくれれバ、いつでもOKでしたノニ」 「いや、まあ、女性にドライブをせがむのってどうかな、ってね」  照れくさそうに話すシロウに、ルーシアは一瞬ためらってから口を開く。 「……別に、シロゥさんとなら、一緒にドライブ行ってモいいですヨ」

「え?」 「シロゥさんなら、えと、一緒にいて楽しそうですシ」  にこやかな表情で話すルーシアの頬が、少しだけ赤くなっている。 「そ、そうかな。それじゃ、今度みんなでどこか行こうか?」 「……ソウですネ。せっかくですシ、オ父さんモオ母さんモ一緒ですヨ」  にこやかな顔で、無言のまま流れる景色を見つめる二人。  幸せそうな中にも、一番大切なことを誤魔化したような、そんな自己嫌悪の 欠片が浮かんでいた。

 大型スーパーに着いた6人は、分担して買い物を進めていく。

「シロゥさん、辛いノ大丈夫ですカ?」 「あ、オレは好きだけどクロウは駄目だよ。特に唐辛子は苦手だから」 「そなのですカ。じゃあ、分けて作りますヨ」 「まあ、ルカさんが知ってるとは思うけどね」 「あ、そですネ」  多少品のない笑みを浮かべながら、二人は通路の向こうに視線を向ける。

「……あ、あの、こんなに持っていただいて、すみません……」 「気にする必要はない、たいした重さでもないしな」  大量の食材が詰まったカゴを両手に持ちながら、クロウはゆっくりと歩く。 「……や、やっぱり、もう一つカゴ持ってきて、私が一つ持ちますから」 「かまわない、うまい飯を食うための努力は当然だからな」 「で、でも……」 「俺が持ちたいのだから、持たせてくれないか?」 「……は、はい。それじゃ、その分もおいしいご飯作りますから」  楽しげな笑みを浮かべるクロウに、ようやく笑顔を向けるルカ。  その二人を、にこやかな笑みで見守る人影があった。

「いい雰囲気ですわね♪」 「Yes!クロウ君はGentlemanですネ」 「彼なら、ルカをまかせても安心ね♪」 「チョット、寂しい気分もあるノですがネ。でも、クロウ君ならボクたちも大 切にしてくれるト思いますネ」 「まあ、気が早いですわよ♪結婚どころか告白もしてないのに」 「OH、そうでしたネ。デモ、そう思いませんカ?」 「ふふふ、わたくしも同感ですわ♪あ、珍味3点セット1000円ですって♪」 「Good!タクサン買っておくトしますネ」  夫婦の買い物カゴには、大量の酒のアテばかり。  この二人、夕食と宴会を勘違いしているのではなかろうか?

 清算をすませ、食材を積み込んだ3台の車は、郊外の住宅地を進む。  やがて、一軒の家の前でファンカーゴは止まった。  降り立ったルミが、手馴れた手つきでガレージのスイッチを操作していく。 「ほう、3台も止められるのか。すごいな、君達の家は」 「……ち、父の友人が頻繁に来ますから」 「なるほど。外国の人は、車移動が普通だからな」  納得したクロウに、ルカはホッとした表情を浮かべる。 「ソウ言えば、シロゥさんは免許持ってないノですカ?」 「持ってはいるんだけど、ペーパー全開。車庫入れもできるか自信ないなあ」 「それナラ、今度どこかデ練習しませんカ?」 「え?」 「コペン、自分デ運転してみたくないですカ?」 「そりゃあ、してみたいけど。いいのかい?」 「ハイ、横デ少しハ教えるですヨ」 「うん、それじゃ今度よろしく」  微妙な約束をしながら、二人はコペンを降りた。

「サテ、My HomeへWelcome!」 「自慢できるほどの家ではありませんけれど、どうぞ♪」  案内された家の中は、十分自慢できる部類にあった。  3階建ての、いわゆる『2世代住宅』としても広い間取り。  ガレージの上は、テーブルが置かれた緑の庭。 「なんていうか、すごいね」 「いや、まったく。家族4人で2DKの俺には別世界としか見えん」 「一人暮しで1Kのオレは異次元に見えるよ」  戸惑いながらも、二人は家に入った。

 ダイニングに案内されて数十分、ルーシアとルカが4枚の皿を運んできた。 「エート、とりあえずコレでオ腹もたせておいテくださいですヨ」  ニンニクとオリーブオイルの香りがダイニングを包む。 「あ、ペペロンチーノ!オレ、これ大好きなんだよね」 「ハイ、そう聞いテいましたカラ」 「……クロウさんのは、こちらです」  ルカが置いた皿には、ペペロンチーノには付き物の赤い欠片が無い。 「唐辛子を、全て取ってくれたのか?すまないな」 「……い、いえ、たいした手間でも、ありませんから」 「いやいや、ありがとう。では、いただくとするかな」  ファミレスなどで、自分でいつもしている身としては、その手間が分かる。  感謝の気持ちと共に、クロウはフォークを取った。 「それはそれとしてさ、クロウのだけ皿大きくない?」 「あ、あ、あの……」 「俺が大食いだと知っているから、気を利かせてくれたまでの事だろう。なん なら、少し分けてやろうか?」 「遠慮しとくよ。別に欲しかったわけじゃないしね」 「なら、言うな」

 何事もなかったように食事に戻るクロウ。  他の4人は、同時にそっと溜息をついた。

「ごちそうさま。さて、何を手伝えばいい?一人暮し長いから、結構できるよ」 「俺も、アウトドア経験があるからな。野菜を切るぐらいなら手伝えるだろう」  まとめた皿を持ったシロウとクロウが立ちあがる。 「エ?ダ、ダメですヨ、オ客サマなのですカラ」 「……そ、そうです。私たちに任せて下さい」  姉妹がキッチンに向かおうとする二人から皿を取り上げる。 「しかし、何もしないというのもな」  なおも渋るクロウに、後ろから声がかかる。 「クロウさん、娘たちの顔を立ててくださいな♪」 「二人トモ、料理はVery Goodなのですネ!安心してクダサイ!」  にこにことしながら、夫婦は手招きする。 「クロウ、今日は甘えておこうよ。今度はオレ達が作ればいいんだしさ」  夫婦と向かい合うように席に着いたシロウに言われ、、クロウも席に戻る。 「ん?今度って何の事だ?」 「さっき、ルーシアさんと話してね。みんなで、ドライブ行こうって事にね」 「ほほう、いつの間にそんな仲に」 「『みんな』だっての。オレの運転リハビリも兼ねて、って話になってね」 「それはいいな。お前が運転できると俺の負担が減る」 「残念でした。オレはコペン以外のハンドルは握りたくありません」 「ワゴンRのどこが不満だ」 「ドアが一つ足りないところ」 「まだ言うか」

 ルカはキッチンで皿を洗いながら、ジャガイモの皮を剥いているルーシアに そっと話しかける。

「ルーシアちゃん、そんな約束したんだ」 「ハイ。……デモ、ホントは二人デって言いたかったのですケド」  頬を染めながら、ルーシアは皮むき器を動かし続ける。 「……やっぱり、好きなんだ」 「エ、エト……ソなのだと思うのですヨ」  ルーシアとルカの手が止まる。 「思うって?」 「一緒ニいるト、楽しいのですヨ。時間ガ足りないクライですヨ。デモ……」 「でも?」 「ルカ姉さんは、クロゥさんのコト、Likeですカ?Loveですカ?」  突然ストレートに訊ねられて肌までも真っ赤に染まるルカだが、小さな声な がら、きっぱりと答える。 「……Love、よ……」 「ソですよネ、ヤッパリ。ワタシは、分からないのですヨ」 「ルーシアちゃん……」 「……分からナイのですヨ。オトコのヒトのオ友達、初めてなのですカラ」  少しつらそうな、沈んだ表情を見せるルーシアを、ルカは優しく抱きしめた。 「……ルーシアちゃん、焦らないで」 「ルカ姉さん……」 「ルーシアちゃんを魅力的だって言ってくれたじゃない。きっと、大丈夫」 「デモ、シロゥさんがLikeなダケだったラ?」 「Loveにしちゃえばいいの。協力するから、ね」  ルカの小悪魔的な顔に、ルーシアもクスッと笑う。 「アリガトですヨ。デモ、マズハ姉さんのホウですヨ」 「え?え?」 「クロゥさんをLoveニしちゃうのデショ?協力するですヨ」 「あ、でも、あの、その」  ルーシアが見せた表情に、ルカはオタオタと手足を動かすばかり。

「まずハ、今日の料理でファースト・アタックなのですヨ!」 「ル、ルーシアちゃん、声大きいよぉ」 「あ、あう、ゴメンナサイ」  しばし無言で聞き耳を立てるが、ダイニングの4人は気付いた様子はない。  ホッと息をついた後、姉妹は料理に集中し始めた。

 ダイニングでは、4人の会話が続く。 「そう言えば、二人のOPは何つけているんですか?」 「シロウさん、敬語使わなくてもいいですわよ♪」 「Game Friendに年齢関係ないですカラネ」 「それでは、遠慮無く。で、さっきの質問なのだが」 「わたくしは、WEMレーダーですわ♪」 「ボクは、HGジェネレーターですネ」 「え?何でまた、そんな中途半端なOP?」 「……出ないの」 「ん?」 「出ないデスネ、欲しいアイテムが」  二人は、ハァと溜息をつく。 「500戦してるのに?」 「いや、対戦ばかりだからじゃないか?CPUはしているのか?」 「ルミがKWニ乗り換えてカラは、対戦ばかりデスネ」 「この人は、CSになるまではCWオンリーでしたの♪」 「何ぃ!CWで准将まで行ったのか!」 「す、すごい。愛のなせる技だね」 「Yes!CWはサイコーなのですネ!素晴らしいZOIDSなのですネ!」 「わたくしは、KWの方が綺麗だと思うのですけどね♪」 「Yes!でも一番美しいのはルミですネ!」 「まあ、あなたったら♪」  人前もはばからずイチャつく夫婦に、二人は呆れた視線を向ける。

「……あれ?でもルーシアさんたちは高級OPつけてるよね?」 「そう言えばそうだな。ベースは共用なんだろう?融通してもらえないのか?」  その言葉に、夫婦はバツの悪そうな顔を見せる。 「ダメなのよねー」 「HAHAHA、この前の件デ、レンタル禁止になったのデスネ」 「この前って……」 「ああ、アレか……」  二人の脳裏に、姉妹の錯乱ぶりとスリーサイズが浮かぶ。 「それはもう、すごい剣幕だったの。1週間お弁当抜きにされちゃったのよ」 「おかげデ、コンビニ弁当な日々ですネ」 「それは、ご愁傷様な事だな」 「アンタがそれされたら、死んじゃうね」 「失礼な。食事代でゾイドできなくなるだけだ」 「それって、死んでるのと変わらないよ」  あっさりと言いきるシロウに、クロウは疲れた顔を見せる。 「あのな……。まあ、ともかくだ。当分はCPUすればどうだ?」 「そうだね。どうせカノンなんかは違うベースへ送信不可能なんだし」 「ああ、カノンはCSに合うな。スペシャルシナリオが必要だがな」 「まあ、CPUしてればシナリオイベント出るだろうしね」 「OK!ガンバッテみるネ!」 「そうですわね♪ひさしぶりにCPUも楽しそうですし♪」  そこへ、姉妹が大きな鍋を抱えてリビングに入ってきた。 「オ待たせしましたですヨー!」 「……お父さん、お母さん、食器運んでください」 「OK!GOですネ、ルミ」 「はいはい♪」 「あ、オレたちも……」 「ダカラ、シロゥさんたちはオ客様なのですカラ、座ってテくださいヨ」

 鍋を置いたルーシアが、後ろから抱きしめるように椅子に戻らせる。  シロウはされるがままに、椅子に座らされた。 「……クロウさんも、座っていてくださいね」  にっこりと笑顔を向けながら、ルカがクロウの前にスプーンを置く。 「あ、ああ。しかし、いい匂いだな」 「ふふ、がんばって作りましたから。どんどん食べてくださいね」  そして、全員の前には素晴らしい香りのカレーが並んだ。

「ふう、うまかった。満腹だ」  デザートのフルーツサラダをつつきながら、クロウが満足げな声をもらす。 「そりゃあ、カレー6皿も食えば満腹だろうね」  ちなみに、シロウは3皿で限界だった。 「Greatですネ」  アレックスは、4皿。 「……聞いてはいましたけど、本当にすごいですね」 「ホント、タクサン食べたのですヨ」 「気持ちいいですわね、それだけ食べてもらえると♪」  なお、姉妹とルミは1皿しか食べていない。 「聞いたのですケド、焼肉100人前家族4人で食べたのってホントですカ?」 「ああ、事実だ。ただし、俺は22人前しか食ってないがな」 「……すごい家族ですね」 「ヒトツ聞いていいですかネ?そのスリムな体型は、どうやって維持してるの ですかネ?」  アレックスの何気ない質問に、女性陣の耳がピクンと動く。 「はっはっは、フェラーリと同じだ。高性能ゆえに燃費が悪い。それだけだな」 「要は、太らない体質なだけだね。家族もそうだし、家系かな」  というシロウも、どちらかと言えばスマートな体型をしている。  女性陣は、溜息と共に恨めしそうな視線を向けた。

「ストレートに切り捨てるんじゃない」 「オレは、いつでもストレートだからね。しかし、いつも思うんだけどさあ、 アンタん家のエンゲル係数ってどうなってるの?」 「全員働いているし、お袋がうまくやりくりしている。問題はない」  その言葉に、ルーシアがルカに囁く。 「ルカ姉さん、将来タイヘンかもですヨ」 「……」  ルカが真面目に考え込んでしまったのを見て、ルーシアとルミは思わず吹き 出してしまった。

「サテ、落ち着いタラ、庭で飲みましょうカ!」  いそいそと、酒瓶とつまみを用意するアレックス。 「オ父さん、オ母さん!料理作らナイのにタクサン買い物してるト思ったラ!」 「……クロウさん、車運転しないといけないのですけど?」  ジト目の姉妹に、ルミがあっさりと言い放つ。 「あら、泊まっていってもらえばいいじゃない♪」 「ボクタチは、ソノつもりダッタのですけどネ」  アレックスも、ケロリとした顔を向ける。 「オ父さん、オ母さん!」 「どうですカネ?予定があれバ、ENDでもOKですガネ?」  アレックスは、ルーシアを無視して二人に問いかける。 「オレは別にいいけど。クロウは?」 「ちょっと待ってくれ」  クロウは携帯を取りだし、メールを送る。 「OKだ」 「……あ、あの、返事が来てないと思うのですけど」 「問題ない。どうせ『了解』の2文字が返ってくるだけだからな」  タイミング良く、クロウの携帯が短い着信音を奏でる。

 メールを確認したクロウは、ルカに画面を示す。  そこには、タイトル『了解』・本文無しのメールが表示されていた。 「ま、こういう家族なのだよ。大体、30過ぎた息子は放置するだろ、普通」 「エッ!クロゥさんって何歳なのですカ?」  驚きの表情を見せたルーシアに、シロウが不思議そうに答える。 「オレも、クロウも30ちょうどだけど?いくつだと思ってた?」 「……25ぐらいだと思っていました」 「ワ、ワタシもですヨ」 「若く見られるのは嬉しいがね。もうオッサンなのだよ」 「年は取りたくないもんだね、まったく」 「そんな事ないと思いますわ♪まだまだ、若くてステキですわよ、二人とも♪ ねえ、そう思うでしょ?」  ルミが、姉妹に向かって同意を求める視線を送る。 「ハ、ハイ。ワタシもステキだと思うですヨ」 「え、ええ。私もそう思います……」  言ってしまってから、言葉の意味に気がついた姉妹は赤面する。 「そう言ってもらえると、正直悪い気はしないな」 「そうだね。特に、美人に言われるとね」  二人の台詞に、姉妹はさらに真っ赤になってしまう。 「HAHAHA!若さは、Heartですネ!」 「そうですわね♪ワタクシたちも、いつも愛を忘れないから若いのですし♪」  人目をはばからず抱き合う二人に、いい加減ゲンナリした視線が刺さる。 「さて、そろそろ準備しましょうか♪」 「Yes!Let’s Partyですネ!」  夫婦は、大量の袋を抱えて庭に出て行く。  多少呆れながらも、クロウたちも後を追う。

 そして、運命の瞬間は刻一刻と迫っていく……。